COVID-19その後。なぜ、どうやって岩田先生・高山先生の記事を書いたのか

コロナウィルス感染症は、クルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号からの下船が国別・グループ別などで徐々に進行している。一方、日本国的には不顕性に感染していた旅行者などを起点とする国内各地での感染がどこまで広がっていくか、それは押さえこめるのか、というフェーズに至っている。

私の先の記事「COVID-19、岩田先生、高山先生」はFBとツイッターから拡散し、3日間で11万PVほどになったようだ。私自身は拡散という現象の規模感について詳しく知らないし、これはたいした量ではないのだろうと思っているが、それでもこの記事がこの程度に広まったことに驚いている。

あの記事で私が書いたことを要約すると;
・原則論を述べるプロがいる
・フィールドで実働しているプロがいる
・それぞれの立場で感染の押さえ込みに貢献しようとしている
・クルーズ船からのその後の感染拡大への影響を示すパラメータが、あの場所での押さえ込み活動の成否を示すだろう。
(・無駄事は無視)
といったことだった。
「物事には多くの面があり、異なる立場からのそれぞれのアプローチが起きる」ということについて書いたわけだが、それに対し、有難いことに「フラットだ」「フェアだ」「公平だ」「腑に落ちた」などのポジティブな意見をいただいた。自分では普通にごく当たり前と思うことを書いたので、当たり前のことをいろいろな人が再認識されたのだと思う。

不思議なことに、記事をリリースしてからわずか3日で「自分がなぜあの記事を書いたのか」がわからなくなった。逆にそのことに興味を持ったので、どういう経緯であの記事を書くに至ったのかのプロセスを跡付け、理由を再考してみる。そして最後に今回の検疫はどの程度成功だった(またはぐちゃぐちゃだった)のかについて触れることにする。

なぜ、どうやって書いたのか?

シンプルに自分が記録しているタイムライン情報を書いていくことにする:
2/19:不明の時刻に岩田医師がYoutubeにビデオを公開した(ぐちゃぐちゃでゾーン分けがない等)。私が知ったのはおそらく日本時間の午前中。
2/19、22:20:高山医師がFBでそれにコメントした(諸々の事実関係の確認。いろいろ課題はあるが、現場で頑張っている人たちの元気を削いで欲しくない)。
2/19、23:42:FBで「敵味方」というコメントがあった。正確には;

敵を増やすか
味方を増やすか
の違いかな

だった。七五調の川柳に読めなくもない。
このコメントを書いたのは私の知人で、ある同じチームのメンバーで仲間でもある。私は彼がそれを書いたことになんのわだかまりもない。彼でない誰かがそれを言っても不思議ではないコメントに思えるからだ。彼は単に、私に気づくきっかけを与えてくれたに過ぎない。
私はその時「いやいやそれちがうから。それにそうなってほしくないし。」と思った。その後ずっとこのことが気にかかっていた。
2/20、06:23:岩田先生がビデオを削除し、陳謝した。昨日の「敵味方」のコメントが頭に浮かんだ。本件はおそらくは本人たちより周りが騒いで炎上するな、と感じた。私は彼ら二人に敵味方に別れるようなことにはなって欲しくなかった。たぶんこれがトリガーになったのだと思う。
2/20、13:11:私はマインドマップにアイデアをメモした:

スクリーンショット 2020-02-26 4.24.53

タイムスタンプからすると2分間で書いてその後いじってない。それをテキストエディタに貼って、ほとんどそのまま記事にしているようだ。(追加したのは「プラクティカル」ということぐらいだ。)
2/20、19:12:岩田先生・高山先生双方にFBで連絡し、記事のプレビューを紹介し、公開に問題がないか確認した。高山先生から諾との返事があった。
その後1日の間、テキストを寝かせながらディテールを編集しつつ、岩田先生の返事を待った。(既読はついていた)
2/22、01:35:記事を公開した。以後はerrataの修正のみを行なっている。

結局のところ、自分があれを書くに至ったのは「敵味方」のコメントを見たからだ。私はどちらにも敵対して欲しくなかったし、本人たちの意図にかかわらず世間がそう流れて周囲から後押しするような代理戦争を始め、敵対的になって欲しくなかったのだろうと思う。

彼らに近い人でも、遠い人でも、わかる人はわかって欲しい。ヘイトや立場の差からくる無駄な争いでなく、ファクトに基づく生産的な事実と知恵の共有をしてほしい。

クルーズ船その後

その後の専門家会議でクルーズ船内の感染拡大に関する初期的データが示されたようだ。それによれば、クルーズ船内での「旅客」の感染対策はかなりうまくいったようだ。他方「スタッフ(船内クルー+感染対応スタッフ)」は必ずしもそうではなかったのかもしれない。詳細は専門家の方々がコメントするだろう。

ファンタジー・塩野七生

これは私のファンタジーに過ぎないが、この出来事が検証のフェーズに入った頃に、岩田・高山両氏がデータを前に酒でも酌み交わしながら、ああだこうだと議論しあえていればいいと思う。

たまたま、2月24日にNHKテレビを見ていたら、イタリア在住の作家・塩野七生氏が、母校である学習院大学で高校生と対話した様子を放送していた(「2000年を生きる 塩野七生と高校生の対話」再放送)。興味深いので対話をメモしていたのだが、中に以下のくだりが現れた:

===(塩野七生+高校生:自分のメモより)
一番嫌いなこと:自分が正しいと思い込むこと
自分の考えと一致する人とだけ付き合わない
どうして自分がワーグナーが嫌いか知るために1週間ワーグナー漬けになる
嫌いなもの:狂信
鳥の視点・虫の視点両方持たないといけない
複眼的な視点も免疫(注:ここでは人生でタフさを身につけるようなこと)になる
===

ものすごく心に響く言葉だった。


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