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お気に召すまま

熊林弘高さん演出のシェイクスピア「お気に召すまま」を東京芸術劇場に観に行ってきました!
あぁ、シェイクスピアがこんなにも甘美でエロティックだったなんて!

満島ひかりちゃんと中嶋朋子さんのコケティッシュな可愛らしさ!
坂口健太郎くんの暴力的なまでの体の線!
開演してすぐに、あぁ、これは好きな作品だぞ、と引き込まれました。
そして、「チャイメリカ 」以来半年ぶりの満島真之介くん。
彼が口を開いた瞬間、その声がプレイハウスに響き渡るのを聞いた時、やっぱり劇場の似合う人だなぁと、うっとり。ちょっと嫌な役なのに、すぐ声にうっとり。

他の俳優陣も圧巻でした。
ベテランの皆さんの道化に徹した可愛らしさ!
中村蒼くんは衣装のクセが強いのに、エロくなりすぎず、厭世的で、でもちょっと寂しがり屋の哲学者を体現していました。

演出は客席までを贅沢に使い、まるでモグラ叩きゲームのように、ヒョコヒョコと演者がいろんな場所から出てくること出てくること!
通路側だったので、彼らがブツブツ言いながら通って行ったり、時にお客さんに話しかけたりを堪能!
途中、まるでシェイクスピアの時代の円形劇場で、ワイワイザワザワした雑踏の中で劇を観ているような錯覚に陥りました。

アーデンの森の演出では、大量のカラフルな衣装が天井から降ってきて、そのカラフルさが猥雑と混沌さを見事に表現してました!
歌い手さんの、ギターと歌の生演奏もとても合っていたなぁ。

下品じゃないエロさに終始クスクス。
この下品じゃないエロさに仕上げられるのは、まさにこの役者陣だからこそで、この演出だからなんでしょうね。

あー面白い!
途中でアーデンの森に迷子になりそうになりながらもずっとニヤニヤしちゃいました。

登場人物みんなまぁまぁシリアスな悩みを抱えているのに、追放されても
「よし、こっちから出て行ってやる!」って状況を楽しんでいく感じとかがこれぞ<喜劇>って感じでした。

中村蒼くん演じるジェイクスのセリフで
「世界はすべて一つの舞台、人間はすべてこれ役者にすぎぬ」
というのがあったけれど、わたしたちもそれぞれが役者で、この世界で生きていく中、いろんな出来事に出会って感情を揺さぶられて、右往左往している。
それを<喜劇>にするのか<悲劇>にするのかは、わたしたち自身が役者であり、演出家でもあることに気づいた時に決まるんじゃないだろうか。

カラフルな舞台の上でコロコロと楽しそうに笑うロザリンド(満島ひかり)の可愛らしい笑顔を見ていたら
(わたしは喜劇を選びまーーーす!)と心の中で声高らかに宣言したよね。

最後に少し真面目なことを書くと、とにかく私たちは枠にはめたがる生き物だ。
結婚とはこういうものだ、恋愛とはこういうものだ、そして「シェイクスピアとはこういうものだ」と。
それが悪いとは言っていないけれど、「それって面白い?」って思うことがある。
もっと面白い方へ楽しむ方へ意識を向けたっていいんだよ。
だって、所詮この世は舞台。私たちは役者で、道化なんだもの。

今回、その”枠”を見事に取り去って見せてくれたのがこの熊林版「お気に召すまま」だった。

これから9月まで全国公演もあるようなので、気になる方は是非観に行ってみてください。
特に「シェイクスピアってこんな感じ」の枠を持っている人には是非その枠を取っ払って、タガを外して欲しいなーと。

最後まで読んでくれて、ありがとう!
ではまた!

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