【忘備録】光・ライティング

今まで演劇の地方の公演などを見る機会に恵まれていたように思う。
年に一度はやってくる劇団を見ていた。もしかしたら他の学校や地域でも当たり前にあった話なのかもしれないが。

初めて観た大きな劇場は劇団四季だった。
それを見る前は小さなステージの上での演劇を読んだことのある本たちの脚本で演出を楽しむような楽しみ方をしていた。
劇団四季を2階席から見たためか装置や配置の統率の高さには感激したものの、何かぼんやりとした気持ちで通り過ぎてしまったのを覚えている。

そしてしばらく時間が過ぎたとき、椎名林檎さんが音楽を担当した歌舞伎「三人吉三」に出会った。
見たことのない量の紙吹雪が当然のように舞う中で三人が足を取られ三人が折り重なる。一面の白に。

呆然とした。

遠くから見ても絵になるもの、「絵面(えめん)」というものをそこで知ることになる。
以降、他の舞台に行った時に2階席が苦手なのだということが分かるようになった。遠くても演者と同じように見上げ横から見た時に美しく見えるものが好きなのだと。

双眼鏡を使って演劇を楽しむようになる頃、ここでようやくライティングについて考えるようになった。
強い光で顔を黒に塗りつぶし、表情がわからなくなるものを見た。
漫画でよくあるかもしれない表現だが、その時はまだあまり漫画に触れていなかったためベンタブラックみたいだなと思ったのを覚えている。

自分は塗りつぶされた顔に凄みを感じたが人によっては汗で泣いているようにも見えたという話を観劇後に聞いて、鵺を見たような気分になった。

歌舞伎「三人吉三」雪降る最終シーンと舞台の顔が分からなくなるほどの逆光ライティング。
全体と人。

おそらく私の光に対してのイメージの原風景はここからきている。
乱反射する初雪のような紙吹雪の山に埋もれた三人を仄かに照らすスポットライト。
俯くような後悔を感じた気がする一人芝居の逆光ライト。

効果的に使用できれば印象的な作品になるだろうとそこで学んだ。
昨今の素敵なイラストを見るうちに眩しいと感じるような絵が光っているような作品を見かけるようになった。その作品たちの美しさをうまく取り入れられたら、と今は思っている。

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