Rainy days never stay

 2019年に放送されていた「ストロベリーナイト・サーガ」を今更ながらに拝見した。観ようと思ったきっかけは単に今作品のW主演の一人である亀梨和也くんのファンであるからだ。ファンであるのにも関わらずサーガを観たことがないのは、放送当時の生活があまりにも忙しくドラマを見る暇が全くなかったことに加え、刑事ドラマを一度も丁寧に観たことがなく作品の良さを理解できるか心配だったことが理由である。話を戻すが放送終了後にDVDBOXを購入していたこともあり、一昨日初めて開封した。

 初めに私は原作である小説、前作のストロベリーナイトのどちらも拝見したことはないが"菊姫"のワードだけはよく耳にしていた。特に前作のストロベリーナイトを好きだと話される人は皆、口を揃えて"菊姫"について話している印象があった。それくらい2人の相性?がエモーショナルな関係であるのだろうと解釈していた。

 先述した通り、私には刑事ドラマを観るセンスは全くない。その代わりとは言えないがラブストーリーならば、どんな深夜ドラマでも描かれていない空白を勝手に埋めて楽しめるという不必要な技を持ち合わせていた。それ故、サーガを"菊姫"前提にすれば楽しめるのではないかと考え、私はその視点で観ることにした。

が、全話完走した結論から話す。サーガの

"菊姫"は恋仲からは程遠い2人だった。

 しかもそれは、少しすれ違っているわけではない。決して交わることはない平行線を辿っていた。今までも、そして、これからもだ。

 これは驚いた。本当に驚いた。想像していたよりも"菊姫"には、結論がはっきりとしていた。もっとこう、そういう感じを匂わせることもできなくないのに、それができないのがわかる。

 極論を言えば、姫川が姫川を生きることが菊田と恋仲になれない理由だと思う。姫川は犯罪被害者になった過去を持つが、被害者は一生不条理に戦い続けなければならない現実がある。例えば2話で、鋭い勘を持つ姫川に対して「どうしてそこに辿りついているのか分からない」と菊田は話す。それに対して姫川は『菊田にはそう見えてるのね』と返すのだが、これは後々、牧田の言う"人を殺したいと思ったことはあるか"の違いで、その視点を持っている姫川は犯罪心理を理解して事件解決に辿りつくことができる。だから反対に菊田には辿りつくことができない。そして、姫川はこの自分の勘をあえて使うことで事件を早急に、かつ動機を明らかにして解決しようしている。これが菊田と出会ったときには既に姫川が決断した生き方であり、この先も姫川は犯罪被害者である限り変えることはできない。ここに共鳴できるのが復讐心で人を殺したことがある牧田だけ。だから恋仲になれるのは牧田だけなんだと思う。余談であるが、菊田は刑事としての勘は秀でているので仕事のできる部下であることは間違いない。そして姫川とは違う実直な視点で事件に向かっていけるタイプであるから、同じ星を追っていくにあたり、自分とは異なる角度から犯人逮捕に迫っていく菊田は確かに姫川にとって「頼りになる」部下であることにも間違いないんですよね。

 決定打に菊田が牧田とアプローチが違うのは6話の『菊田は知らないでしょ、私の怖いところ』と話す姫川に対して「そうじゃないところを知っている」と返したところ、9話の「牧田にあって、俺にないものってなんですか」と聞くところだなとしみじみ思う。

 10話で菊田が「結局、最後まで主任のことが分からなかった。あまりにも心の有り様が違う気がして、同じ場所にいても同じ景色を見ることはできないと思った。」と言っていて、仰る通りなんだよ菊田、と。1話から些細な溝がみえるたびに一向に埋められない何かを感じていたが、まさにこれを私も言いたかった。好きな人の本心がみえない、いや、好きな人が自分に本心をみせてくれない。でも、それが姫川の生きて勝ち続けるということだから。そして菊田と出会った時からそうだったのだから、最初から2人が結ばれることはないと分かる。

 たった2日間でストロベリーナイト・サーガ全11話を完走して、率直にまさか自分がラブストーリーじゃないドラマを一気見することができるとは思っていなかった。しかもラブの要素を全く見つけることすらできなかったのに。あ、もちろん、なんて言うんだろうか、アイドルを応援する身としての見方もして、そこは確かに美味しくは頂いたけれど、菊田から亀梨和也みを感じなかったことに驚いている。アイドル亀梨和也を消す作業をできる役者、亀梨和也にまた惚れ込んだのも事実。でも、終わってみれば菊田よりも姫川の心情、生き様に魅了されていて、いつの間にか感情が振り回されていた。

 最後に、ドラマの主題歌である「Rain」タイトルが雨であることにドラマを観る前までは何も汲み取れていなかったのですが「降り止まない雨、不条理の続く世界」を現していたんですね。大変烏滸がましいけれど、姫川には人を愛す資格もあるし、愛される資格もあるから。いつか、きっと。姫川が、不条理の続く世界が。降り止まない雨はないと信じて。

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