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ど素人のピュアオーディオ入門#32 ゼビウスとプレスリー

最近、じっくりオーディオを嗜む時間が取れてなかったなあ、と思って久しぶりに少し時間のあいた朝、マランツPM-7000Nに火を灯した。

JBL4309が小気味良いサウンドを奏でる。
うーん、しかしちょっと物足りない。新しい音が聞きたい。
そう、僕はもう扉を開いてしまったのだ。

あの異界への扉を。
中古CDを買いに行こうと思って駿河屋に行った。
駿河屋は中古品を扱うお店の中でも、古いゲームや漫画、アニメCDなど、とにかくちょっとオタクっぽいものが得意だ。

何かいいものはないかなあと物色していたら見つけたのがこれ

スーパーゼビウス。
この当時のコンピュータグラフィックスとしてはもう最高レベルの出来。
西暦1984年とは思えないクオリティ。すごすぎる。子供の頃すごく憧れた。

そして買ってみてわかったのだが、これ、YMOの細野晴臣プロデュースバージョンだった。すごすぎる。

そしてもちろん、EVEZOOこと元祖天才プログラマー、邪神の異名を持つ遠藤雅伸さんのインタビュー入り。これはお宝グッズですよ。

そしてさらに、なんとゼビウスの原作小説・・・というか、当時「たかがゲームにこんな複雑な設定いらないでしょ」と言われていた時代に遠藤氏が書いた壮大なSF小説「ファードラウト」がそのまんま掲載されてる。凄い。

この「ファードラウト」は「ファードラウトサーガ」という単行本にもなっていて、当然、我々世代には百万人おとめのバイブルなのである。

この当時、ゲームというのは、ほとんど全て、かなり適当なものだった。
インベーダーは戦術的に無意味な編隊を組んで飛んでくるし、ネズミの警察官がネコの泥棒団を捕まえにいくのはなぞのトランポリンが大量に設置された家だった。配管工は非人間的なジャンプをし、キノコを食べて気が大きくなった。

こうした世界観の荒唐無稽さがゲームの魅力であった一方、「ほんとうにそれでいいのだろうか」という問題提起をしたのが、まさにゼビウス、そしてその根底にながれる「ファードラウト伝説サーガ」だったのだ。

ゼビウスでは、レーダー基地を早めに破壊すると敵が少なくなる。敵は自機の正面を避けて飛ぶ。なぜ三機あって、死んだら生き返るのか。その秘密が全てファードラウトサーガに書かれている。

これは本当に凄いことで、ゲームに始めて「正面からみた」文脈を持ち込んだのだ。

このCDには、スーパーゼビウス、ギャプラス、ドルアーガの塔、そしてSUPER XEVIOUS(Gust Notch Mix)が収録されている。

ゲーム音楽と侮るなかれ、と言われたのも今は昔。今やゲーム音楽は世界全体のミームとなっている。

JBL4809が奏でるスーパーゼビウスは、80年代の底抜けに明るい未来観がそのまま凝縮されていて、気分を高揚させてくれる。

このCDを堪能した後は、プレスリーのライブ盤。

昔はライブCDの良さがいまいちわからなかったのだが、マランツPM7000Nを通してこのライブを聴くとまた違った感想になる。

プレスリーの復活コンサート。彼の再登場を何年も待ち望んだファンたちの歓喜の声、そして会場と一体になるプレスリー、まさにスーパースターの風格、スター復活のファンファーレとしてのライブが息遣いも含めて伝わってくる。ああなるほど、だからオーディオファンはライブ盤をよく買うのか。

要は、音の解像度が高くなると、スタジオ録音だけでは味気ない。
無機質なスタジオの風景がむしろリアルに浮かんできてしまって、確かに純粋に音に集中できはするのだが、熱気が伝わるところまではいかない。

ところがライブ音源に収められているのは観客とパフォーマーの相互作用だ。そのムード、空気感を再現し、ライブの観客になったつもりで一緒に高揚できるのがライブ盤の良さだと考えを改めた。

最後に、随分前にもらったんだけどあんまり真面目に聞いてなかったThe Crying Gadgetsの「Overexcitability」

Overexcitabilityとは、ある刺激に対して過剰な興奮オーバーエキサイトをしてしまう性質を指す。

一般流通には乗っていない同人CDだが、denkitribeの高橋慶次郎氏が手がける一曲目が出色の出来栄え。プレスリーのライブ盤とは真逆で、スタジオすら通さずDAW環境で仕上げた、完全にピュアな電子音の世界でこれほどまでの広がり感、世界観を表現できるのかと脱帽。

まさにOverexcitabilityが刺激される、そんな名盤だった。

うーん、やっぱり、週に一度くらいはこうしてお気に入りの音源に身を浸したいよなあ。

そう考えると、ずっとそこにいるという意味では技研バーや技研ベースの音楽環境をなんとか俺好みのものに変えたい。

しかしPM7000Nと4309の組み合わせは気に入ってるし、ここに何か足すのも引くのも邪道という気がする。かといって同じものをもう一個買うというのも芸がない。

とすればどうするか。悩むなあ。