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真実とは何か

ITジャーリストAyanoさんという人がいて、彼女はすごい人なのである。
何がすごいかというと、ものすごいダイエットに成功した人なのだ。

そんなAyanoさんと初めて会った時、せっかくだから一緒に写真を撮りましょう、ということになったのだが、Ayanoさんは「だったらこのカメラで撮って下さい」と、中国製の自撮りに特化したスマホが出てきた。プリクラのように、少し目が大きくなったり、肌が綺麗になったりするようなアレである。

それで撮ると確かに可愛くなる。Ayanoさんはもともと美人だが、さらに1割増くらいになるのである。

そして「私の真の姿はむしろ(自動的に加工された)こっち」と言い張るのである。

その時は多少は奇妙に感じられたのだが、その後、ふらりとルーブルに寄った際、そういえば肖像画の多くは君主や富豪などが画題になってるな、ということに気がつくのだ。

当たり前だが、肖像画を描くにはそれなりのコストがかかる。画材もそうだし手間もかかる。だから、これは発注して出来上がるまで相当な手間を待たなければならない。

仮にちょっとバランスが微妙な人が居たとして、それをそのまま描いては残金を払ってもらえるかわからない。そこでおそらく画家たちは一所懸命にいい感じに描き上げて、喜んだクライアントはそれを自宅に飾るのだ。

すると、毎日それをみていると、それが自分であるという自己認識に変わっていくのではないだろうか。それどころではない。そもそも、絵画の寿命に比べて、人間の寿命は遥かに短い。今、我々は過去の偉人や君主の姿を知るためには、肖像画のイメージに頼るしかないのである。我々が知るピョートル大帝は、真のピョートル大帝ではないのだ。人間の寿命が精々100年としても、絵画や写真はその10倍は残る可能性がある。

現代ではこれがもっと進んでいる。

以前、雑誌の編集をやってる友達から「今日は女優の〇〇さん撮るよ」と誘われて、とある雑誌の表紙撮影の現場に遊びに行ったことがある。いざ現場に行ってみると、みんなが慌ただしく準備をしてる中、一人だけ所在なさそうにぽつんと座っている小柄な女の子が居た。

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