彩氷

確かに、夢に辿り着く道があった。
しかし、１日はあまりに短すぎる。
私には大切な家族がいる。
会社にも行かないといけない。
夢実現に投資できる時間は限られる。

だから今までこの道を走り続けてきたが、
突然凍ってしまった。
その道の氷はもう解けないかもしれない。
その道に彩りを見出せるのか。

全力疾走することができた道が
急に凍結してしまったんだ。
茫然自失になるのも無理はない。
今まで追い求めてきた夢は
幻になってしまうのか。

こんな時こそ、今自分に出来ることに
集中したい。今、私は何が出来るのか。
凍結した道でもゆっくり歩けば夢に近づける。
同じ夢に辿り着く新しい道を探すことだって
出来る。

彩りを見出すのは自分次第だ。

サラリーマンの私が昨年９月に、なんと無謀にもYouTube毎日投稿にチャレンジした。会社は必ず定時で帰り、時には睡眠時間を削ることもあった。その結果、一日も休むことなく毎日投稿を達成できた。確かに、達成感は得ることができた。

しかし、私が投稿したYouTube動画は、ほとんど見られることはなかった。視聴者はもちろん、息子でさえこっちを振り向いてくれなかった。私は、毎日投稿するのに必死なだけに、その結果に反省することなく突っ走ってしまった。

確かにYouTubeの毎日投稿は達成できた。しかしながら、動画はエクセルマクロの一辺倒でクオリティーが伴わず、昨年9/末時点でチャンネル登録者数はたった６名であった。YouTubeに配信する動画は、視聴者が楽しめる動画にすべきだが、「毎日投稿」という手段が目的化し見事撃沈した。

毎日投稿を終えた後に、ようやく腰を据えて成果を検証することができたが、成果を論理的に測定するために、ありとあらゆる数字を見た時に思わず愕然としてしまった記憶がある。数字は決して事実を歪曲することはない。

サラリーマンをやりながら、YouTubeに毎日動画を投稿する能力は、私にはないことを思い知らされた。普段の仕事は、スピード重視で感覚的に進めて結果を出せているので、YouTubeも同じ要領でとくかく投稿すれば良いと思っていたが、大きく間違っていた。会社の看板があるのとないのとでは雲泥の差だ。

第１話で話したが、１ヶ月間毎日隙間なく投稿したYouTube動画のうち、一番の自信作はジェットコースターのエクセルマクロの動画だったが、息子は１秒も見ることがなかった。息子を喜ばせたくなかったのか？と私は自己嫌悪に陥った。

ジェットコースターのエクセルマクロの動画は、徹夜でつくった渾身の一作だけに流石に落ち込んだが、ならば誰も思いつかない踏切動画を創造してやると私は奮い立った。そして生まれたのが月火水木金土日曜日の踏切動画である。

月火水木金土日曜日の踏切動画とは何か。

月曜日には「月曜日の踏切動画」と銘打ち、
踏切と電車が途中でお月様に変わる動画を。

火曜日には「火曜日の踏切動画」と銘打ち、
焚き木の炎で火事になり踏切と電車が炎で
燃え上がる動画を。

水曜日には「水曜日の踏切動画」と銘打ち、
海に沈んだ踏切は泡と化し、
海に沈んだ電車は魚群と化す動画を。

木曜日には「木曜日の踏切動画」と銘打ち、
踏切は背景の木と同化し、枝葉が急成長
していく様子を電車に見立てる動画を。

金曜日には「金曜日の踏切動画」と銘打ち、
金閣寺が急に輝きを増し、踏切は金貨と化し、
円単位が流れる様子を電車に見立てる動画を。

土曜日には「土曜日の踏切動画」と銘打ち、
踏切の柱付近の土から雑草が生え、その雑草が
踏切と化し、電車も同じ大きさで走る動画を。

日曜日には「日曜日の踏切動画」と銘打ち、
雨上がりの太陽に照らされた踏切の遮断棒は
描き、電車が虹と化し、踏切も後を追うかの
ように虹と化していく動画を。

この踏切動画を月から日の７日間隙間なく投稿していった。特に土曜日の踏切動画は、視聴回数1,500回以上を叩き出し、昨年９月に唯一結果を残せた動画と言えるかもしれない。

【お詫び】月火水木金土日曜日の踏切動画は、現在の私の動画コンセプトを合わない為、削除させて頂きましたので、詳しく知りたい方は上記動画をご視聴頂きたいと思います🙇

しかしながら、見る人によっては摩訶不思議に思うかもしれない。実というと私は狙って摩訶不思議を演出しているのではない。子供の頃からそうだが、感覚的に進めると気がつけばこのような摩訶不思議なことをやってしまうことが多々あり、いつも周りを困惑させていた。

摩訶不思議の演出に潜んでいるのは、私の自信のなさかもしれない。当時は仕事も、プライベートも全く自信が持てず軸がブレブレだった。作品というのは自分を映し出す鏡なのか、息子が大好きなものエクセルマクロで動かす玩具を創る親父になることを誓い「マクロ親父」の名前でYouTubeデビューしたのに、ここすらブレてしまうとは私自身も驚いている。

私はYouTubeデビューし、たった４日で軸がブレるという暴挙を犯してしまう。息子が大好きな玩具を創ると誓ったはずが、まさかの名著「７つの習慣」の要約動画をYouTubeに投稿してしまった。7つの習慣をエクセルマクロで表現してみたら面白そうと自己満に走ってしまった。結果は当然惨敗である。息子は１秒も見てくれなかった。

息子には理解はできなくても沢山ボタンが押せて色んな映像が見れるレベルで楽しんでもらおうと思い、大きくなった時に昔見ていたこの動画は人生を豊かにする上で大事な内容なんだよ！とか言いたいと思っていたが、息子が大好きな玩具を創ると誓った私がいきなり７つの習慣の動画を投稿するなんて誰が見ても暴挙でしかない。

そして昨年９月、更に私のYouTubeは暴走してしまうことになる。エクセルマクロで創るのはブレていないが、

メントスコーラだったり、

オーロラだったり、

Ｔシャツのデザイン文字をプログラム(Ｔシャツの色が変わる)にしたり、

踏切は踏切だけどメタバースの世界にしてみたり、

他にも沢山このような摩訶不思議な動画を投稿していった。YouTubeは既に削除済みであるが、ここまで来ると狂気の沙汰という言葉が相応しいかもしれない。

暴走する私の最大の暴挙は、昨年9/23投稿のこちらの動画である。

もはやこの動画は、エクセルマクロですらない。息子が大好きな動画を創るのではなかったのか！奇行すぎる故にこれをnoteに綴るのは本当に恥ずかしい。

しかし、この動画が皮肉にもなんと私のSNSライフの転機になってしまうとは！

『仕事で悩みを抱える人は、まずは定時で帰る習慣を』

息子が大好きなものエクセルマクロで動かす玩具を創る親父の動画なのに、まさかのサラリーマン向けの動画を投稿してしまうなんて、もはや軸がブレるという次元の問題ではない。

しかし、この動画を見た妻が言った。

「子供向けのエクセル動画より、サラリーマン向けの動画の方が良くない？」

この妻の発言に対して、私はイラッとしてしまい、

「俺は息子を喜ばせたいんだ！」

と怒りを滲ませながら言った。そしたら妻が、

「じゃあ、なんでサラリーマン向けの動画なんかつくったの？」

と言い返してきたので、私は遂に感情的になってしまい、妻と喧嘩してしまった。

愛鳥「どうせ俺は、情けない父親だよ！息子の踏切のおもちゃもろくに組み立てることもできないし、買い物だっていつも何かを買い損ねたり、会社でもいつも会議に遅刻して怒鳴られたり、せめて息子を喜ばせたいと思って始めたYouTubeだってこの様だよ。息子に認めて貰いたかったんだよ。こんな動画も創ることができる！手先は不器用だけど、凄い父親なんだ！と。それなのになんで俺はいつも・・・」

妻「晴喜って、道草するの好きだよね。」

愛鳥「なんだい！俺がYouTubeで道草したとでも言いたいのかよ！」

妻「道草するのは、晴喜の専売特許じゃないの！」

愛鳥「なにーー！おいおいおい言ってくれたな！」

妻「息子を喜ばせたいって、どの口が言っているのよ！息子を喜ばせたいなら踏切動画を創りなさいよ！分かっているのに、何でサラリーマン向けの動画なんか創ったのよ！また、ついつい道草してしまったんでしょ！」

愛鳥「いや、違うんだ！今回は道草ではない！」

妻「いーや！道草だね。晴喜と言えば道草なんだよ。あなたはいつもそう！この前の旅行だってそう！１時間も経っていないのに、別のことをしだすでしょ。」

愛鳥「同じもん１時間も見たら、飽きるだろうが！」

妻「なに！そしたら息子の踏切動画も飽きてしまったの！だから、サラリーマン動画へ道草したんでしょ！成果もでていないのに飽きてどうするんだよ！だったら、子供向けとサラリーマン向けの二つの動画を平行して創っていけば！」

愛鳥「ごめんなさい。」

こうして夫婦喧嘩も、私の惨敗で幕を閉じた。妻は１ミリも悪くない。いかに自分が愚か者であったか、振り返ってみると本当に恥ずかしくなる。

私だけかもしれないが、進むべき道は決まっているのに、ついつい途中で道草してしまう。いつもの道を歩けば安全なのに、ついつい茨の道へと逸れてしまう。私の最大の敵は「飽き」である。会社の仕事もそうだが、いつも忙しいが同じことの繰り返しなら飽きてしまう時がある。確かに、私は常に新しい何かを求め、毎日「飽き」と戦っている。

また、この妻の一声で、昨年10月に私のYouTube動画の方向性を変えることになった。私はとにかく妻と息子に認めて欲しかった。YouTubeへの動画投稿は単なるおまけだった。しかし、こんな愚か者の私のチャンネルに対してご登録頂いた方々がいる。折角ご登録頂いただけに筋だけはきっちり通したかった。

ということで、私は以下の動画をYouTubeに投稿した。
私がこれから投稿していく動画は「息子が大好きなものをエクセルマクロで動かす玩具の動画」から「家族仲良く仕事楽しく創造力の動画」に変更し、YouTubeは既に削除済みであるが、家族仲良く仕事楽しく創造力の動画とは何の動画なのかを紹介する動画を私はエクセルマクロで制作し昨年10/2に投稿した。

こうして私は、従来の子供向けエクセルマクロの動画は継承しつつ、新たにサラリーマン向けの動画も投稿するという二軸で活動していくことになった。この二軸の根幹を成すのは創造力であり、私のアイデアを通して視聴者の皆さんが幸せの一助になることを祈り、再び動画を制作していった。

「サラリーマン向けの動画の方が良くない？」と言った妻の目は確かであった。私のサラリーマン向け動画は三作目にして早くも結果が出た。この動画が功を奏し、YouTubeのチャンネル登録者数は一気に２１名まで伸ばすことになった。この動画は、人間関係は家族を優先すべき理由を熱弁した動画である。

だが、元々の子供向けエクセルマクロの動画でチャンネル登録して頂くことはなかった。それどころか、子供向けとサラリーマン向けの二軸は、視聴者から見ると全く関係のない動画であり、何のチャンネルなんだ！と困惑させてしまったのだろうか！子供向け動画は逆にチャネル登録者数を減少させることになった。

私のサラリーマン向け動画は新しい作品をYouTubeに投稿する度に、チャンネル登録者数を順調に伸ばしていった。しかし、子供向けエクセルマクロの動画はその逆を行く。これでいいのかよ！息子と妻に認めて欲しいんだろ！こんなんで劣等感がなくなるのかよ。

そもそもなぜ私は劣等感を抱えているのか？

彩氷とは、カメラの偏光フィルターを通すことで薄氷の一部が光の屈折で虹色に見える現象。それは肉眼では見れない奇跡の現象。

私は先日受けたTwitterの凍結に彩氷を見ることができた。そして、Twitterで実現したい夢が変わった。

この物語は、私のSNS活動の軌跡である。

～第２話完～

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。彩氷～愛鳥SNS活動の軌跡～は、引き続き投稿していきますので、どうぞ宜しくお願い致します。

～追伸～
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