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2014 ソングガイド100

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記事一覧

Sia「Chandelier」/パーティーガールの孤独

この時期はいろんな人の年間ベストを読んだり、そこから新しい音楽に出会ったりするのがすごく楽しい時期。というわけで、2014年、聴き逃してたのがSiaの「シャンデリア」。これいいわあ。

MVで踊っているのは11歳の少女。歌詞を読むと明らかにセレブリティのパーティーライフの孤独を歌っていて、すごく切ない。

「パーティガールは傷つかないの。何も感じないの」
(Party girls don't ge
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tofubeats with BONNIE PINK「time will tell」(『宇多田ヒカルのうた』より)/邂逅のカバー

これについてもnoteでは書いてなかったなー。『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について』は、ほんとに強烈なアルバムだったと思います。今がカバーブームだからこそ、なんというか、音楽家の「本気」を見せられた感じ。井上陽水も椎名林檎も吉井和哉も浜崎あゆみもみんなすごいんだけど、tofubeatsの才気走ってる感じがツボ。去年くらいから宇多田ヒカルの話ばっかりしてたし、BONNIE もっとみる

大森靖子「ノスタルジックJ-pop」/スウィート90'sメモリー

そういえばちゃんと言ってなかったけど、大森靖子がアルバム『洗脳』でやっていたことって、実はすごく時代的な必然がちゃんとあると思うのだ。

というのは、90年代J-popリバイバル、ということ。海外でポスト・パンクとかニューウェーブとかの80'sの再解釈がブームになったのはちょうど今から10年前の2004年くらいで、そこから考えると、時期的にも納得がいく。

大森靖子はすごく批評的なミュージシャンな
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Us The Duo「Shake It Off」/この歌はこう歌われるべきだったのかも

Us The Duo「Shake It Off」/この歌はこう歌われるべきだったのかも

Vineを通じて評判を呼んでメジャーデビューにこぎつけたという夫婦デュオが、ニューアルバム『1989』をリリースしたばかりのテイラー・スウィフトの新曲「Shake It Off」をカバーした動画。これ、なんだかすごく好きなんです。

アコースティック・ギターを爪弾いた優しいサウンドと、やわらかな男女ハーモニーからなる動画。これ、原曲がなかったら「いい歌だね〜」なんて片付けられそうなんだけど、テイラ

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坂本慎太郎「あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団」/カラフルな邪悪

すごい……。

坂本慎太郎が11月7日にリリースするアナログ7inchシングル「あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団」の表題曲のMV。アニメーションを手掛けたのも坂本慎太郎自身ということで、曲も映像も強烈な感じになってる。たぶん多くの人は気付くと思うけれど、かなり社会批評的な仕上がりにもなっている。かもめ児童合唱団が陽気に歌って、ロボットと子供たちの笑顔が描かれて、でもそこには巨
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くるり「There is(always light) 」/『THE PIER』の語られ方

くるり「There is(always light) 」/『THE PIER』の語られ方



くるりのニューアルバム『THE PIER』のラストを飾る一曲。noteでやってるのはあくまで曲単位の紹介なんですけど、これはアルバム一枚で聴いたときにすごく意味を感じる曲。ストレートなロックンロールの「いい曲」が、50分強の多国籍な音楽の旅を経てきた最後の地点に待ち受けている、という。なので、アルバム『THE PIER』について、僕なりのやり方で書いておこうと思います。

ほうぼうで言われてる

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サザンオールスターズ「天国・オン・ザ・ビーチ」/クレージーキャッツ→桑田佳祐→星野源の系譜

サザンオールスターズ「天国・オン・ザ・ビーチ」/クレージーキャッツ→桑田佳祐→星野源の系譜



サザンオールスターズの一年ぶりのシングル『東京VICTORY』のカップリングに収録された新曲。表題曲については、かなり力を入れて書いた原稿がしばらくしたら公開されるはずなのですけど、こちらもすごく好きな曲なんです。

PVではドリカム、AKB48、奥田民生、斉藤和義などなどの豪華な共演者でも話題を呼んだこの曲。歌詞では直球の「エロ」路線で、《割れ目が「ジュン!!」と鳴っちゃった》とか《反り立つ

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syrup16g「生きているよりマシさ」/嬉しいという感情



6年ぶりの再始動を果たしたsyrup16g、ニューアルバム『Hurt』からのリード曲。『MUSICA』のアルバムのレビューでは、こんなことを書いた。

(以下一部引用)

白石一文の小説『翼』に、こんな一節がある。

「小さい頃から、死は“記憶の消滅”だとずっと思ってきた」

小説の中で、主人公と上司の「人は死んだらどうなると思う?」という会話を通して、死と記憶に関しての深い洞察が語られる。こ

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田中茉裕「ゆるして (demo) 」/息を呑む曲

田中茉裕「ゆるして (demo) 」/息を呑む曲



ピアノと歌だけで、これだけ揺さぶられるとは……。

すごい曲。名曲だと思います。一人で深夜に聴いていたら、なんでかわからないけど、泣きそうになった。胸の奥底のほうまで手を突き入れて、えぐられるような感じがあった。

田中茉裕さんのことを初めて知ったのは、2年半前、2012年の冬のこと。ミニアルバムに収録されていた『小さなリンジー』という曲が、本当に素晴らしかった。

そのときのツイート。

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くるり「Liberty&Gravity」/「?」が「!」に”変”わる新曲

くるり「Liberty&Gravity」/「?」が「!」に”変”わる新曲



くるりの約2年ぶりのニューアルバム『THE PIER』 から、新曲「Liberty&Gravity」。最高。これはほんと、すごい曲ですよ……。奇想天外だし常識外れなんだけど、強烈にキャッチー。ポップソングの今までにない回路をこじ開けてしまったような曲。

というのも、この曲、普段ポップソングに求められている「わかりやすい」、つまり情報が噛み砕かれて手に取りやすい形で提供されていることから完全に

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大友良英スペシャルビッグバンド「地元に帰ろう音頭」/フェスと祭りと「地元に誇りを持つ」ということについて

大友良英スペシャルビッグバンド「地元に帰ろう音頭」/フェスと祭りと「地元に誇りを持つ」ということについて

今年のフジロックでもやってました。大友良英スペシャルビッグバンドの「地元に帰ろう音頭」。『あまちゃん』のあの曲を、20人以上の大所帯で「盆踊り」にした曲。唄は二階堂和美。踊りと振り付けは作曲者でもあるSachiko M。7月23日に出たアルバム『ええじゃないか音頭』に収録。

アルバムには、もちろん「あまちゃん音頭」も入ってます。

宮藤官九郎が連ドラを手掛け、能年玲奈はCMや映画に出演し、『あま

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BUMP OF CHICKEN「you were here」/魔法の時間はすぐ過ぎた

BUMP OF CHICKEN「you were here」/魔法の時間はすぐ過ぎた



昨日、BUMP OF CHICKENの東京ドームに行ってきました。「BUMP OF CHICKEN TOUR“WILLPOLIS 2014」のツアーファイナル。そこで、本編の最後に披露されたのが、この曲。聴けばわかる通り、ライヴで受け取った感動の余韻をそのまま閉じ込めたような曲。

行った人はわかると思うんだけど、今回のBUMP OF CHICKENのツアーは、最先端のテクノロジーと「物語」が

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Sleepyhead Jamie「Sweet Home Yokohama」/ビジネスモデルの新しさ、だけじゃない

Sleepyhead Jamie「Sweet Home Yokohama」/ビジネスモデルの新しさ、だけじゃない



Sleepyhead Jaimie(スリーピーヘッド・ジェイミー)という男女二人組の「スウィート・ホーム・ヨコハマ」という曲。このnoteでは基本的に個別の記事はぜんぶ無料で公開しようと思ってたんだけど、これは「投げ銭」スタイルです。理由は最後に書きますね。

こないだ、とあるイベントでかなり久しぶりに彼らのライブを観たんですよ。そこでやってたのが、この新曲。これが、よかった。

Sleepy

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OK GO「The Writing's On the Wall」/もはや映像パフォーマンス集団

OK GO「The Writing's On the Wall」/もはや映像パフォーマンス集団



すごい! 一回観ただけじゃ、ちょっと、どうなってるかわからない。もはやポップロックバンドというより映像パフォーマンス集団と言っていいんじゃないかと思う。

OK GOの新曲「The Writing's On the Wall」のミュージックビデオ。目の錯覚と立体感、カメラの回転を巧みに利用した不思議空間を作り上げている。しかもワンカットのカメラ回し。最後の「カット!」からのスタッフ全員の拍手と

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