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Gotch「Good New Times」、花束を抱えた21世紀のビートニク


Gotchのソロ・アルバムからのリード曲。すごくいい。跳ねたビートに乗せたチアフルな感じのメロディで、ヌケのいいポップ・ソング。前のアルバムはロック・バンドであることを引き受けざるを得ないアジカンに対してパーソナルな趣味性の高い音楽を追求するプロジェクトという感じだったけれど、ソロでの「やるべきこと」を照準を定めて射抜いてる感じがする。

歌詞がいい。

ポケットにはジャック・ケルアック
新しい世紀のイメージを言葉にして僕らは歩むんだよ
財布は空っぽ 打ちのめされた世代よ
何もないなら 何でもありだぜ

実家だけがシェルター 現代のホーボーたちよ
目指せ ほら バックパッカー 駆けずれよ この世界を
世界地図はインターネット
僕らの魂を街頭に飛び出して書きつけてまわるんだぜ

http://6109.jp/akg_gotch/?blog=388529

ジャック・ケルアックの名前を歌い出しに用いていることからも明らかなように、この曲がモチーフにしているのはビートニク。50年代アメリカに花開いたビート詩人たちの筆致を、インターネットの普及した21世紀に受け継いで更新させるようなモチベーションで書かれているのだと思う。

この曲で歌っていることを、僕なりに解釈する。

この曲は、かつての「トレインサーフィン」が「カウチサーフィン」によって上書きされる新しい時代の到来について歌っている。ケルアックの『路上』の時代、放浪者たちは、奪われ、追い立てられて、列車の屋根に無賃乗車して移動した。それが当たり前だった。今はSNSに担保された信頼と互助のネットワークの上を、互いに与えあいながら旅をすることができるようになっている。それがカウチサーフィンの仕組みだ。まだ当たり前じゃない。でも、そうすることはできる。

そういう感覚が、この曲の鳴らすポジティビティのバックグラウンドにある気がする。

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