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チャイルディッシュ・ガンビーノ「ディス・イズ・アメリカ」

チャイルディッシュ・ガンビーノの新曲「This Is America」。サウンドプロダクション、パフォーマンス、アイディア、その全てが衝撃的。なにより『アトランタ』のヒロ・ムライが手掛けたミュージックビデオが。

冒頭、やわらかなアコースティック・ギターを弾いていた黒人の男性は、ドナルド・グローヴァー =チャイルディッシュ・ガンビーノにカメラがアップになり再び登場すると顔に布が巻かれる。

突如撃ち抜かれて倒れた彼の死体は運ばれていき、アグレッシヴな低音のビートに曲調が切り替わり彼は「これがアメリカだ」と歌う。再び登場したゴスペルのコーラス隊が笑顔で歌うも、やはり彼がマシンガンで撃ち殺す。

そして「これがアメリカだ」と警告する。

警察車両、焼かれる車、死体、逃げ惑う群衆。それを背後にキレキレのダンスを踊るグローバーと周りのダンサーたちは、今のアメリカの現状とエンタテインメントの分断を象徴しているのか。

下記の記事によると、チャイルディッシュ・ガンビーノが銃を撃つときのポーズはジム・クロウを模しているのだとか。死体がズルズルと引きずられる一方で、拳銃は赤い布で丁重に包まれて仕舞われる。ここで「これがアメリカだ。油断するな」と歌う。銃社会のアメリカだ。

そして、教会の合唱隊を皆殺しにするシーンは、2015年のチャールストンの教会の銃乱射事件をベースにしている。

下記の記事で、渡辺志保さんはMVのクリエイティブ・ディレクターの一人であるイブラ・アキ(Ibra Ake)さんのインタビューを引用している。

「僕たちのゴールは、(アメリカ社会における)ブラックネスを正常化すること。本当はこんな風にダンスをしたいけど、僕たちはその危険性と政治性について認識していなければならないし、それは僕たちが歴史上においてどんな風に扱われてきたか、という点とも深く関わりがあるということも理解しておかねばならない」

そしてチャイルディッシュ・ガンビーノのインタビューも。

「ただ、いい曲を作りたかっただけ。みんなが7月4日(註:アメリカ独立記念日)に聴けるような曲をね」


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