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椎名林檎「NIPPON」/勝ちにいく曲

NHKのサッカー中継テーマソングとしてオンエアされている椎名林檎の新曲。まず言いたいのは、NHKの「中の人」、いい仕事してるな―ということ。

ここ数年のNHKのサッカー中継を振り返ってみると一目瞭然。

2010年、前回の南アフリカW杯の時のテーマソングが、superfly「タマシイレボリューション」

2011年~2012年がRADWIMPS「君と羊と青」

2013年がサカナクション「Aoi」。(これはYouTubeになかった)

そして、ブラジルW杯でのNHKサッカー中継テーマソングが、この椎名林檎「NIPPON」なわけです。この並びには明らかに統一した流れ(というか、好み?)を感じる。それ以前のJリーグ中継の主題歌が倖田來未、岡本玲、GIRL NEXT DOORだったことを考えると、おそらく2010年に何らかの組織変更があって担当の人が変わったのでは?とか勘ぐっちゃう。

アーティストの選定だけじゃない。こうして見ていくと、(特にRADWIMPS以降)はタイアップにあたっても、アーティストにかなり強い”お題”と”制約”が与えられているのがわかる。アッパーに、力強く、興奮を煽るような曲調で。歌詞のキーワードにはサッカー日本代表=サムライブルーの「青」という言葉を使って。アーティストお任せの制作というよりも、かなりピンポイントのゴールにめがけた発想を求めるようなタイアップになっている。もともとシングルのほとんどがタイアップ曲であるsuperflyにとってはこういう制作は珍しいことじゃないかもしれないが、RADWIMPSやサカナクションのようなミュージシャンにも、あえてそれをさせることで「強いクリエイティブ」を引き出している。というのも、中の人、いい仕事してるなー、と思うわけです。

というわけで、椎名林檎が手掛けた今回のテーマソングにあたっても、NHK側からはかなり明確なオーダーがあったはず。それを120%のフルスイングで打ち返したような楽曲になっている。たたみかける曲調。冒頭20秒で言うべきことを言いきってしまう潔さ。ホイッスルの音。やりすぎなくらいにファナティックな曲調。実際、コメンタリー映像では「今まで味わったことのないプレッシャーを感じて、気負って書きました」と、椎名林檎自身が語ってる。「勝ちにいく曲」に徹している。

WHAT’S IN WEBに書いたセルフカバー集『逆輸入~ 港湾局』のレビュー(http://www.whatsin.jp/review/58253 )でも書いたけど、たぶん椎名林檎というアーティストは東京事変解散後の新たなモードをフットワーク軽く模索しているようなタイミングなんだと思う。だから、このタイミングでのサッカー中継のタイアップもハマったんだと思う。かつての彼女のイメージからするとこういう直球の応援歌なんてしゃらくさいと思っちゃうし、「NIPPON」という曲名とこの扇情性の組み合わせが気になる人だっているはず。でも、今の椎名林檎がこれをやるの、すごくいいと思う。

W杯、楽しみですね。(46/100)

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