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公演予算の考え方 ①基礎編

どうもしばいいぬです。昨日に引き続き、公演予算の組み方について書いています。今日はようやく基礎編ということで、支出の考え方と相場観について書いていきます。

↓前回の記事↓

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【忙しい人へのまとめ】
・演劇公演の予算は4つに分けて考える。
 Aクリエイティブに対してかかるお金(出演料・演出料・デザイン料等)
 B舞台上にあるものにかかるお金(劇場費・舞台費・照明オペ料等)
 C作り上げから客に届けるまでにかかるお金(稽古場費・制作費・印刷費)
 D劇団の未来のためにかけるお金(記録写真/映像費・広報費)

・配分はおおよそ A: 40%, B: 35%, C: 20%, D: 5%
・予算にはバランスが最重要。AとBだけではなく、CとDにも配分する
・広報費をかけられないなら
招待チケットを利用する。
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一般的な予算書は上級者向けに書かれている

 予算を書くには、まずは演劇にかかるお金をすべて把握しないといけません。とは言っても詳しくない部門についてはよくわからないと思います。

 fringeの「公演予算の組み方」によると、「日本芸術文化振興会「芸術文化振興基金」(政府出資金と民間寄付金の運用益による助成)で使われている「助成金交付要望書」の経費区分表に従うのがよい」らしいので、とりあえずそれを見てみましょう。

画像1令和2年度の募集要項から引用

 初心者の方は、これを見ても何のことかよくわからないと思います。経費区分がやや直観に反する形で計上されており、具体的な出費が一体どこに計上するべきなのかがよくわかりません。また、予算の適正な比重などはさっぱりわかりません。
 ですが、これも無理はありません。なぜかといえば、こういった文章はすべて業務に精通している人向けに書かれているからです。

 fringeは「予算組みは初心者では無理」と断言していますが、それだとあまりにもなので、基本的な考え方と多少の相場観について語っていきます。
 何公演も成功させている制作さんも、見落としがちな考え方なので、中・上級者の人も覗いてってください

予算の考え方

 演劇の公演にはいろんな経費が掛かりますが、その意味合いから考えると、以下の4つに分けることができます。

クリエイティブに対してかかるお金
舞台上にあるものにかかるお金
作り上げから客に届けるまでにかかるお金
劇団の未来のためにかけるお金

 一つずつ見ていきましょう。


クリエイティブに対してかかるお金=文芸費

 まず、演劇は芸術であり、出演者や演出家、あるいは舞台美術家や照明家など、様々な人のクリエイティビティの重ね合わせでできているものです。
このデザインしてくれたことに対して支払うお金が、「クリエイティブに対してかかるお金」になります。
 費やして消えないので、~費ではなく、~料です。
 実際の舞台製作や、照明オペレーションのような、実労働に対するお金は別と考えることが多いです。具体的には、以下の項目が入ります。

俳優や演奏家  に対して:出演料
脚本      に対して:脚本料・著作物使用料・翻訳料
演出や振り付け に対して:演出料・振付料・演出助手料
舞台の統括・運営
に対して:舞台監督料
舞台や照明、音響
に対して:舞台美術デザイン料・照明/音響プラン料
衣装やヘアメイク
に対して:衣装デザイン料・ヘアメイクデザイン料
映像やVR演出等 
に対して:映像デザイン料・CG制作料


舞台上にあるものにかかるお金=舞台費

 つぎに、舞台を成立させるためにかかるお金です。
 これは、物の購入や制作などの実費に対してかかるお金ですので、最も直感的に分かりやすいものでしょう。本番中の舞台に必要なものは、音響や照明も含めてすべてここに当てはまります。設営のための人件費や運搬費、および本番中の照明などのオペレーションにかかるお金も、ここです。
 具体的には、以下の項目です。

劇場   に対して:劇場費・付帯設備費(楽屋代や、電気代など)
舞台   に対して:大道具費(製作人件費や資材購入費)・道具スタッフ費
照明・音響に対して:機材借料(スピーカーやライト)・オペレーション費
映像演出 に対して:機材借料・オペレーション費
衣装   
に対して:衣装費・メイク費
小道具  
に対して:小道具費・消え物費
運搬・廃棄
に対して:道具運搬費(レンタカー・運転手など)・廃棄費


作り上げから客に届けるまでにかかるお金=制作費

 上の2つのほかに、制作料というものがかかります。これは、演劇を作り始める時から、お客様に届けるまでにかかるお金のことです。
 具体的には、3つのレイヤーがあります。

① 演劇を作り上げるためにかかるお金
  具体的には稽古場などの利用料ケータリング
  旅公演の場合の旅費、あるいは打合せ代や、弁当代など

② お客様に公演を知らせ、予約してもらうためのお金
  広告宣伝費チラシ代(デザイン料・印刷費)DM送付料
  あるいはウェブサイト制作チケット予約のシステム利用料など

③ 会場でお客様を安心して客席にご案内するためのお金
  当日運営のための人件費当日パンフレット代(デザイン料・印刷費)

①や②についても制作費に関係するものなので、注意してください。

劇団の未来のためにかけるお金=広報費・PR料

 劇団を成長させてゆくためには、ただ打って終わりではなく、次につながるような公演にしていかないといけません。
 前回の文章で「劇団の中長期目標にてらした予算を考える」ということを話しました。劇団の中長期目標のための投資に関係する経費が、広報費となります。劇団として次に呼びたい俳優などへの招待などもここになります。
 具体的には、次のものがあげられます。

期間外でのPRに対して:ウェブサイトデザイン料・運営料
上演の記録  に対して:記録写真料・録画/映像編集料
今後の宣伝のために  :偉い人への推薦文依頼・招待チケット
            ポストトークへの謝礼・メディアへの企画書送付料

予算の配分

 どの予算も重要なものですが、収入が決まっている以上バランスをとる必要があります。クリエイションに対するお金や、制作費・広報費などは目に見えにくい者に対するお金のため、軽視しがちですが、健全な運営のためにはしっかりと配分する必要があります。

 fringeの言うように、この予算塩梅は劇団ごとに異なる点ではありますが、しばいいぬの経験知的には次のような配分が適正だと考えています。

文芸費:舞台費:宣伝制作費:広報費
= 30-35  : 35-45 : 
  20-25  : 5      

 上が理想的な塩梅になっています。すこし説明します。

 まず、文芸費と舞台費を合わせて75-80%とし、残りを宣伝制作費、広報費として考えます。

演出家が何も考えずに演出したとき、最も増加してしまうのが舞台費です。舞台費は一見多そうに見えますが、劇場費も含むので、実際は10-20%程度しかありません。ですので、この中での予算配分が、演出上の肝になっていきます。
 プロデューサーや制作は、舞台費の管理を演出家と協力して進める必要があるため、稽古場に出入りして都度都度確認を行っていきます。

広報費をかけられないなら招待チケットを配る

 小さい劇場での公演であるとか、全体予算の都合などから、広報費を5%確保できない場合もあると思います。
 その場合活用できるのが、招待券です。用意してあるチケットのうち5-10%のチケットは今まで見に来たことがない客や今後仕事をしたい方への招待として使用しましょう。
 その場合は招待客に対して、公演後にプロデューサーか演出家が必ずあいさつし、今後の仕事につなげるようにしましょう。




長くなりましたが以上になります。したっけまた明日。




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