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令と和と

このツイートが流れて来たので、勝手に続きを書きます

「どうせ私の事なんて古臭いその場凌ぎの相手だって思ってるんだわ!」

30年前まで、和が組んでいた昭は新人だった。
突然デビューが決まった新人に、ベテランをあてがうことはよくあることだ。

和は昭の面倒をよく見ていた。昭も和を慕っていた。
連れ添て60年以上、このまま二人は永遠だと思っていたのに、64年を迎えてまもなく、昭はいなくなってしまった。

最初は戸惑っていた和だが、やがて昭がいないことが当たり前の日常となっていた。またいつか昭が舞台に立つ日が来るだろう。その隣にいるのは自分ではないかもしれない。

けれど再び昭を目にする時は、あの日初めて出会った昭とは違う、堂々とした昭だろう。

そんな風に思っていたある日、思いがけずにまた和に声がかかった。相手はまたも新人の令だ。

――新人の昭と共に最長のユニットを組んだお前に「令」を頼みたい。

そして新ユニットは大々的に宣伝された。その発表と共に怒涛の如く流れていく世間の意見の中には、けして少なくない数のある意見が和の目に止まった。

――なんだ、昭和の和じゃん。

昭和の解散から、30年。短い年月ではないが、それでもまだ人々の記憶には昭和が残っていた。

「和さん、よろしく」

令は一見クールに見えて、性格は温和という現代のニーズにぴったりのイケ漢(メン)だった。対して和は

「昭和の和」

令和が発表されてからよく目にする。

――令和が始まるってのにまだ昭和の価値観なのかよ

――これだから昭和はさぁ……令和になる前に滅亡してどうぞ

――今何時代だと思ってんの? 昭和じゃないんだよ? もうすぐ令和だよ?

「違う……昭和は……昭和はそんなんじゃない……。確かに現代とは違う価値観があった。間違っていたこともあった。でも……やめて……昭和を……昭と私の時代を、誰かを貶すために使わないで!!」

「和さん……?」

令に声をかけられて、我に返った。その純粋なまなざしは、和にはかえって辛かった。

「あなたも……どうせ私の事なんて古臭いその場凌ぎの相手だって思ってるんだわ!」

「そんなこと思ってないよ」

「嘘よ!」

「和さんにとって、昭さんが一番長いパートナーだったって知ってる。でもこれからは……」

「やめて! あんたの口から昭の事なんか聞きたくない!」

和は飛び出した。自分が理不尽な事を言っている自覚はあった。でも、もう限界だったのだ。

「和さん!」

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