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なかったことにしたくない

虐待の話です。抵抗がある方はスキップしてくださいね。

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中学入学式の時、母が声をかけられた女性がいて。ふわっとした髪の毛、毛皮のコート、マダム風の女性。当時はまだ90年代だったので、ユニクロ以前。着る服にもある程度格差がでる時代だった。

菩薩顔で、ぽやっとしている母は、声をかけられた。

「とみながさんて言うのよ」

そう紹介されて、私は娘さんの方と話すようになった。

まだ部活も決まらない、入学して1週間くらいのゆるい時間の間は、お昼休みに隣の公園にいって話したり、なんとなく学校周りをぶらぶらするようになった。

ある時、言いにくそうに彼女がいった。

「嫌われちゃうかもしれないけど言うね。」

何度か言葉につかえながら。

「私ね、おとうさんと」

うん。

「普通の男の人と女の人がすることをしているの」

へえ、としか言えなかった。

それって、してはいけないことだよな。普通の家族はしていない。でも覚悟をもって話してくれた彼女の気持ちを踏みにじりたくはなかった。

そうなんだ。

「うん、そうなんだ、おかしいよね」

あまりうまく答えられず、とみながさんの独白の時間は短めに終わった。

別の話題になったかお昼休みが終わったかで解散して、その後の中学生活、私は運動部にはいったりして彼女と会わない時期が続いた。

少しして、夏前くらいに、とみながさんが退学したという話がまわってきた。どうやら妊娠したとのこと。中絶するにせよ学校にいられない、という懸命な判断である。話が噂として回ってきた頃には彼女は学校にいなかったし、クラスも別で、最後の挨拶もできないまま別れとなってしまった。

彼女が今どこで何をしているのかしらない。
ただ、私のいた学校は中高一貫で、進学校とも呼ばれる学校だった。

中学受験をがんばった彼女に、性虐待がずっとあったなんて、過酷すぎやしないか。一瞬しか見かけていないが、彼女の母親の風貌が頭をよぎる。華やかで、すこし見栄っ張りとも言える服装。

先日東小雪さんの本を読んで、両親ともナレーターをしていて、豊かな家庭だったんだな、と感じ、とみながさんのことを思い出した。性虐待は、以外に身近にある。どんなに素敵に見える家庭でも、実情はわからない。いつまでも他人事と思わないで向き合っていきたい。


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May the force be with you.
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ファッション、映画、ときどきファミリー。
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