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平田オリザ『わかりあえないことから~コミュニケーション能力とは何か』を読んで

人の紹介で気になっていた平田オリザさんの本を読んでみた。

最初から脱線しますが、先日会社の合宿において「コミュニケーションが大事です」「これからはもっとコミュニケーションを密にとりましょう」なんて話をしていたもんだから、「そんなのは自明、むしろ何故いままでコミュニケーションが取れてなかったのかにフォーカスして、今後の対応を議論しないと意味がないだろ」と1人で勝手に憤っておりましたので、本書を読んでそもそも「コミュニケーション」とは何なのかを考えさせられました。

発言一つとっても話し手の意図、受け手のスタンスで噛み合ったり噛み合わなかったりする。日本人は比較的同質な民族だから所謂「あ、うん」で通じることが多かった。そんな中だと口数は少ない方が粋なんでしょう。これは英国の上流階級とも似ているんだそうです。
逆に移民が多い文化圏だと、まず自分は怪しいものではないことを自ら示し、相手を探ることが必要なので、必然的に言葉のキャッチボールが増える。
なんて、一度は聞いたことあるような話ではありますが、それを優劣つけるわけでもなく、日本語の特性を、国語教育の観点から掘り下げていて大変面白かった。
僕自身、いまだに小学校の作文や作詩の課題で、文の構成とかを勉強せずに「自由に、思ったままに書いてください」と言われるのか、それで成績をつけるのか納得できなかったのですが、この本で国語教育のあり方を考えさせられました。

最後にこの本の好きなフレーズを抜粋します。
・少なくとも1980年代までの日本は、遠くの誰かが決めてくれていたことに、何となく従っていれば。いろいろ小さな不都合があったとしても、だいたい、みんな幸せになれる社会だった。
・しかし、いまは自分たちで自分たちの地域のことについて判断をし、責任を持たなければならない。
・その一点が変わったために、日本人に要求されているコミュニケーション能力の質が大きく変わったのだ。

空気を読んで察する能力、一致団結のための忍耐力・根性論から、「バラバラな人間が、価値観はバラバラなままで、どうにかしてうまくやっていく能力」が、今の日本では必要とされているようです。

具体的にどうやって?と思ったらぜひ本書を読んでみてください。
コンサルタントとして耳が痛いものの、もう数回本書は読み直したいと思う本でした。

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