見出し画像

カバーアルバム『Reflexion』長文レビュー

Reflexion、良〜〜〜!となったので、レビューです。

初視聴の感動を目減りさせたくないのでTwitterのショートムービーもXFDムービーも避けてました。早く24日になれと思っていたら4日前の夜に届いた。はやい。さすがオフィシャルストア。

これ幸いと繰り返し聴いています。

何度か聴いて感想を語りたくなり、ツイートしようと「#Riflexion」を覗くと、スペイン語圏の謎界隈とタグのバッティングが発生していて感想ツイートが見えやしねえ!

という訳でnoteに書く事にしました。

普段追えてないライバーさんについて語るのって緊張するけどこれもいい機会か、と思ってたら曲の感想以外の事もつらつら書いてしまいました。案の定長文になったので、目次から読みたいところを読んでいただければ幸いです。

まだ聴いてない方は後悔しないので是非買っておくれ。

キミがいる/魔使マオ

原曲:いきものがかり 
「ホタルノヒカリ2」(2007年)主題歌

先の3Dお披露目にてその歌唱力が周知のものとなったものの、やっぱりマオの歌はまだレアなイメージがある。なので1曲目にマオが来るのは少し意外だった。曲順ってどう決めたんだろうね。興味がある。
でも初っ端にレアなマオの歌が聴ける!っていうのはこのアルバムの特別感が一層感じられていいよねー。滅多に聴けないものがこれからどんどん聴けるぞーって喜びがムクムクと湧いてくる。

ライバーさんの歌は普段の配信のノリとのギャップも楽しみの要素だけど、マオはそこが顕著だと思う。ケラケラ笑ったりキレッキレのツッコミかましたりクソザコムーブしてるちんまい女の子ってイメージが強いんだけど、歌には幼さを感じないんだよね。バックボーンと自我があって、曲と人間(使い魔)のつり合いがきちんと取れている感じがする。
例えば、幼稚園児の女の子がラブソングを歌ってたら、かわいいなぁとほっこりしたりメロメロになりはしても、ドキッとはしないじゃん(する人がいたらごめん)。マオの歌は詞の世界観がしっかりと声に乗ってるから、ちゃんとドキドキさせられてしまう。そういう意味で幼さはなく、女性ボーカルとして確立してるように思う。配信がガキっぽいぶん不意打ち感が強くてずるいんだよなぁマオの歌。

「夢に見てた」と「こがれていた」の表情の違いがすごくいい。連続する二節で憧れと切なさのコントラストを表現してくるのがやばい。

3Dお披露目の締めは『じょいふる』だったけど、いきものがかり好きなのかな?『笑ってたいんだ』とかも歌ってくれないだろうか。

浮世CROSSING/不破湊

原曲:UVERworld
「働きマン」(2010年)主題歌

イントロでは「さ~てどうくる」と片眉上げて様子をうかがってたんですよ。

ありのままが素敵だと 言ってくれたことが

ここまで聴いた時点で満面の笑みになってた。鏡もないのに自分の表情が分かったのは口角が吊り上がって頬が痛かったからです。ふわっちの声に合ってる~!!

歌詞に“平成”ってワードが入ってくるとなんか改めて「もう平成って過去なんだな……」と思った。この曲を聴きながら自分の中であの頃のロック&ポップが反響していた。
でもしんみりって感じよりはむしろ、同世代の連帯感みたいなものを感じて嬉しくなったかな。連帯感にプラスでエネルギッシュな歌唱が来るから、ダイレクトにパワーが伝わってくる感じがした。すごい元気出るわ。

この曲ラストの歌詞がすごいよね。

AH 素直に 生きたいだけなのに 複雑な時代だな

曲のラストってそれまで歌ってきたことの結論みたいなものじゃん。「ありのままでいい」「もう迷うことはない」って散々言った最後の最後にこんな弱気な発言を持ってくるんだ、って驚いた。
そんでもってこの部分がまた妙にふわっちに合うんだよね。言ってることが噛み合ってないノリとか、天を仰いでボヤいてる雰囲気が。このカバーで特に好きなポイント。

なんでこのラストになるの?って考えてみたんだけど、多分、最後までCROSSING(交差点)の歌なんだよね。進むべき道を見つけたって歌じゃないんだ。選択肢があるだけで正解はなくって、迷いを断ち切って道を選んだとしても、ゴールじゃなくてまた新しい選択肢に辿り着く、その繰り返し。

開き直った直後にその事に気付いて「めんどくせぇ~」って若干萎えてそうな、カッコつけきれてない感じがたまらなく好き。

奮起して、萎えて、奮起して、萎えて、そうやって生きていくもんだよね。それを肯定してくれる歌だと思ったよ。

萎えたら萎えたでエナジードリンクキメて頑張るんだよ!

secret base ~君がくれたもの~/椎名唯華

原曲:ZONE
「キッズ・ウォー3~ざけんなよ~」(2001年)主題歌

にじさんじライバーさん達に“親しみ”を感じる時は、ちょいと下世話なんだけど、短所を見れた時だったりする。『隙=好き』なんて言いますよね。やらかしエピソードとかみんな大好物でしょ?
かわいい!面白い!で見始めて、ダメなところを見た時に人間性を知れた気分になって、もう一歩踏み込んで好きになる。
まあダメなところはあくまでも魅力の一端だから、ネタにしやすいからといってそこばかりフィーチャーするのはご法度。レッテル貼りと紙一重だから自重は必要だよねー。

で、椎名さんはそれが特に強い。愛すべきクズキャラ。「ほんっとコイツはもうw」と思ってるうちにこちらの警戒心がユルユルになってズブズブ深みにハマっていく。世間的に短所とされるものを全て魅力に変換できるような、天性の才があるのではなかろうか。カリスマの対極にして同列というか。
シンプルかわいいのも間違いないけど椎名さんの魅力としてクズさは欠かせないエッセンスだろう。

だからこそ歌で非の打ち所がない椎名唯華を見せつけられた時のインパクトは本当にすごい。椎名さんの歌が出てくる度に毎回感嘆してしまう。

ライバーさんの歌は普段とのギャップも魅力と先述したけど、椎名さんの場合は“ギャップ”じゃないんだよなー。「こんな事もできたんだ」って驚きというよりは、いつも目の前にあったのに不思議と気が付かなかった“本来の魅力”を目の当たりにしている感覚に陥る。

だから「こんなに歌えてすごい」じゃなくて、むしろ「こんなに歌えるのに普段あれだけ親しみを感じられるのがすごい」と思うわ。歌からいつもの配信に立ち返って感動しちゃう。

もちろんそう思うのもこのカバーが素晴らしいからこそで。

夏の終わり。別れの切なさ。この曲にあって欲しいものが完璧に備わった歌唱!「また出会える」の「ま」の震えとかほんっともうね。最高。

歌声の儚さもこの曲ならではの調和を感じた。
椎名さんが霊能力者である事は度々死に設定とネタにされるけれど、折に触れてにじさんじでも随一のハマりっぷりを魅せる設定でもある(『幽霊東京』とか)。登場頻度が少ないだけで、他には考えられない程マッチしているので、死に設定から幽霊設定に格上げしてはどうだろうか。幽霊部員的な。

Can You Keep A Secret?/白雪巴

原曲:宇多田ヒカル
「HERO」(2001年)主題歌

女王様として君臨できるだけの器量を持った人間が、ワタシ 対 キミ という関係性を歌う破壊力たるや!傾城傾国の色香がたった一人の人間に注がれていく、余りにも刺激的な一曲。

本家はスタイリッシュな曲として聴いてたけど、こちらはより一層エモーショナルな雰囲気。想い人であるキミを焦がれてやまない片思いの曲と思っていたけれど、このカバーで実は結構「思わせぶり」な曲なんじゃないかと思えてきた。胸に秘めてる思いを歌うのではなく、キミに対して結構アプローチしてる、動的な関係性を歌ってるなと。
「Come on」のあの切ない喉の鳴らし方!ゾクゾクしてしまった。構成的には「どうかこっちに来て」「こちらを向いて」っていう切実な懇願のニュアンスなんだけど、誘われるままに引き寄せられてしまいそうなほど蠱惑的。

にじ歌DAYの折にはロングトーンの終わりをビブラートで抜けていくのがなんとも嫋やかで魅了されたけれど、宇多田ヒカルみたいなリズミカルな歌もいけるのはすごい。

曲中に挿し込まれるフェイクは、しなだれかかる肢体を思わせるような圧倒的な質感。ラスサビの感情の込め方もたまらない。

キミ視点でこの歌を聴いて魅力に蹂躪されるのも格別だけど、キミに別の誰かを置いてドラマチックな歌とするのも一興かもしれない。

What You Want?/朝日南アカネ

原曲:JUJU
「偽装の夫婦」(2015年)主題歌

アカネさんが話してるところは生憎公式チャンネルくらいでしか拝見できてないのだけど、歌はそりゃあもうたっぷりと堪能しております。セレ女の歌のコ!ってイメージですね。セレ女みんな歌上手いのだけども、やっぱり特にそういうイメージ。

流石というかなんというか、”これぞポップス”と言いたくなるような跳ねるような軽快さ!最っ高に聴き心地が良かった。

魅力のバリエーションがすごい。ここが“良い”ってとこめちゃくちゃあるんだけど、その“良い”が全部違う“良い”なのよ。かわいくて良い。キレイで良い。格好良くて良い。私の語彙で追いつかない多種多様な“良い”。

聴き心地 ✕ 多彩な魅力で、マジで何回でも聴ける。
スッと入ってくるのに、ばっちり心躍る。

アルバムを通して聴いた後、最初に自分で口遊んだのはこのカバーのサビだった。What you want What you want 〜♪
ふとした拍子にこの歌がリフレインする。

“圧巻!”という歌もいいけど、聴いてて楽しい歌もいいなぁ。

太陽は沈まない/ジョー・力一

原曲:THE ALFEE
「ショムニ FINAL」(2002年)主題歌

広っっ……。

ってのが視聴開始1秒時点の感想。空間的な広がりを感じた。さいたまスーパーアリーナ的な、国立競技場的な空間。平たく言えばTHE ALFEEのライブステージが見えた。バンド隊は若干奥に配置され、広いステージの真ん中にボーカルが凛と立っているイメージ……。

THE ALFEEって歌唱力の頂点みたいなアーティストじゃないですか。その楽曲をこれほどまでに威風堂々と歌えているのが本当に本当に格好良くて。
やっぱりロングトーンが一級品だから、歌唱から歌詞まで“まっすぐ”なこの曲が途轍もなく合っている。

圧倒的なスケール感!力強さと格調高さを併せ持った歌声!聴いていると暖かな日差しを浴びているかのように生命力が湧いてくる。

蓋し、ジョー・力一は太陽である。

高みに在りて暖かく、衣装と顔面の白飛びも厭わず燦然と輝け。

POISON ~言いたいことも言えないこんな世の中は~/花畑チャイカ

原曲:反町隆史
「GTO」(1998年)主題歌

カバーアルバムには「これを待ってた!」っていう期待ド真ん中と「そう来たか!どうなるんだこれ?」っていう意外性の二通りのワクワクがあるけど、この曲は圧倒的に前者!告知で曲題を見た時から期待感が振り切れてた。

1回目の視聴は、さあいよいよだぞ、と精神を集中したもん。

アウトローなムードたっぷりの武骨で気怠げなイントロ。
見える!見えるぞ!アスファルトから立ち昇る陽炎に揺らぐ、花畑チャイカの姿が!

このカバーからは、窮屈な世の中に対する反骨心が~……とかなんとか言って“メッセージ”を汲み取ろうとしなくてもいいかもしんない。ビジュアル面があまりにも完璧すぎるから。

張ってはないけど力強い、揺らがぬ芯を感じさせる声が誰に歌うでもない「男一匹の歌」って感じでたまんね~の。「世の中じゃ」の「じゃ」のしゃくり上げるとことか、男の色気も申し分ないの。只々聴き入るのがこの曲の正解だと思う。

なんで反町隆史がベストマッチするのがオカマエルフなの?にじさんじってなんなの?

GTOなの?

Gentle Transvestism Ojisan(変態女装おじさん)ってコト!?

Transvestism [名]《心理学》服装倒錯( 異性の服を着ることに喜びを感じること)。異性装。

……さすがにGが苦しいか。変態という名の紳士って言うからGentleでもいいかなって。フゥン。

LOVE & JOY/笹木咲

原曲:木村由姫
「花村大介」(2000年)主題歌

Reflexionはドラマ主題歌カバーアルバムと聞いていたから、そこにLOVE & JOYがあって驚いたよね。ダンエボの曲と思ってた。
ドラマのタイトルも「花村大介」とイモくさくって、LOVE & JOY感ねえな~と思い、逆に気になってドラマのあらすじ調べてしまった。めっちゃ面白そうな弁護士モノだった。主演ユースケ・サンタマリアなんだね。

ゲームとコラボしてる楽曲を笹木にあてるのは完璧。Reflexionは選曲が全部有能。

笹木の歌はなぁ~~~。

笹木の歌はなぁ……。

笹木の……、歌はなぁっ………………かわいいんだよっっっ!!

別に甘えた声出してるわけじゃないのに、あざといと感じるくらいにかわいい。たまに配信でお兄ちゃんの話をしてる時と似たかわいさ。笹木って妹属性あると思う。
意外とにじさんじって妹属性いないと思うんだけど、どうでしょうか?リスナーがママばかり求めてしまうから……。姪っ子的可愛さ、後輩キャラは結構いると思うんだけどね。
笹木は庇護欲を煽らないかわいさなんだよな。不憫な様子も“かわいそうはかわいい”的な見方じゃなくて、思いっきり笑うのが楽しい。そういう気の置けなさみたいなのが素敵。

笹木の歌は本人のシンプルかわいさが引き立つノリのいい曲が合うねー。ダイパンダが正しくそうだけど、曲の世界観というよりキャラクターを前面に出してパフォーマンスした時の魅力がピカイチだと思います。

音楽聴きながら運動するのが好き(というか音楽のおかげでしんどい運動に耐えられてる)なんですけど、アルバム中だとこの曲が一番エアロバイクのケイデンスが上がりました。いいスパートの曲を手に入れられて嬉しい。

恋におちたら/鈴鹿詩子

原曲:Crystal Kay
「恋におちたら ~僕の成功の秘密~」(2005年)主題歌

詩子お姉さんの、一音一音、歌詞の一字一字を丁寧に歌ってる感じが好きなんだよねー。歌ってみたにも精力的な方だから、最近のスタイリッシュな曲も色々歌っているけど、キレッキレにかっこいい曲を歌っても言葉に温かみがあるよね。歌に対する誉め言葉としては不適切かもしれないけど、いい意味で朴訥としてるというか……。

そんな歌い方が、隠喩的表現の少ない素直な歌詞によく合ってて、あったかい気持ちになれた。手書きのお手紙を読んでいるかのようなぬくもり。

ラスサビ前のハミングもやさしくて好きだなあ。

詩子お姉さんの歌と言えば高音と低音の使い方が巧みなイメージだった。“乙女解剖”とかね。男装BAR(カフェだっけ?)での勤務経験も納得の、“聴き手を堕とせる低音”が強いよなあ、と思っていたけど通して低めの音程で歌うのも落ち着いた魅力でいいなあ。
ゆったりした曲が合わないわけないんだけど、意外とそういう歌ってみたがないのよ。基本今回の音程よりちょい高めのかわいい系の声で歌ってることが多いのよ。
話題曲だとアップテンポに寄りそうだし、今後懐メロも歌う機会が増えたら嬉しいな。

何度でも/ニュイ・ソシエール

原曲:DREAMS COME TRUE
「救命病棟24時」(2005年)主題歌

ニュイは涙あり笑いありのRPG実況然り、感情豊かなところが素敵なんだけど、たまにドライな部分を見せてくれるイメージもある。ドライというか、「私は私」とスパッと線を引く感じ。
魔女以外に武闘家の経験もあるのが下地になってるのかは分からないけど、芯のある感じがかっこいいなぁって勝手にリスペクトしてる。皆さんもライバーさんがリスナーに対して、ピシャリと“NO”を言う姿に頼もしさを感じたことはないでしょうか?

そういうところも好きなんで、こないだ出た“ギラギラ”はすっげえ良かったですね。普段めちゃくちゃ愛想のいいねーちゃんが、これだけの我の強さを秘めてるんだぞって感じで。

そんなニュイの歌う『何度でも』は、ニュイ自身が戦っていると感じる必死さがあってすごい良かった。

このカバーを聴いて、「『何度でも』が有名すぎて、大名曲すぎて、自分が誤解してた事がある」と気が付いたんだよね。

これ頑張ってる人の歌じゃん、と。

歌詞はあからさまにそうなってるのに、吉田美和の歌声の包容力と、応援歌の定番中の定番という先入観から、頑張ってる人に向けて歌う歌というイメージで完全に固まっていた。自分の中でZARDの『負けないで』みたいな位置づけになってたけど、これ頑張ってる人自身の歌じゃん。

本家は歌自体がパワーをくれる感じなんだけど、こちらは戦っているニュイの姿に感化される事込みで力になるイメージ。この歌を歌っている人自身に対して「頑張れ!」と言いたくなるとは思ってなかったなぁ。
この歌にこういった双方向性を見出せたのが驚きだった。本家を聴いた時とは違う種類の涙が流れる。

最高に熱くてかっこよかった。


あとこれ力ちゃんがコーラスで参加してるんだけど、力ちゃんと聞いてなきゃ絶対分かんなかったな。「叫べ!」の後のとこよね?
確かに力ちゃんっぽい、とは思うもののパワフルな男声コーラスって解像度でくっきりとは力ちゃんを感じなかった。やっぱりコーラスでは露骨に存在感は出さないものなのかも。
そうなってくると他のカバーにもライバーさんのコーラスがさりげなく入ってそうで気になる。他の曲にも参加してるよーって力ちゃん以外のライバーさんも言ってたら教えてファンの皆様。自枠でReflexionの話をしてるとこ探すの大変なのよ。

やさしくなりたい/夢追翔

原曲:斉藤和義
「家政婦のミタ」(2011年)主題歌

まぁ~た合うに決まってる曲歌ってくれちゃってもう!

いやぁ、いいなぁ~~~……

……ん?

あれ?

となって聴き返したカバーです。

なんか思ったより明るい?

『死にたくないから生きている』のようなオリ曲の数々から、ゆめおの音楽には“痛み”をテーマにしたものが多いイメージだった。“若さ”と“痛み”かな。
本カバーにあたっては、“痛み”というテーマから少し時間を進めたところにある、“スレた”雰囲気を想像してたんだよね。若く悲痛な青年から哀愁携えた男への変遷というか。
色で言うと灰色のイメージ。ミタさんのキャップとダウンジャケットみたいな色。

しかし聴き終わった時には、風の吹き抜けるような爽やかな心持ち。どういうこったよ。

これは私の原曲と斉藤和義のイメージに誤りがあったんだと思う。

この曲を聴いたのも随分昔だったんで、サビの前半だけ頭に残ってたんだよね。

愛なき時代に 生まれたわけじゃない
キミといきたい キミを笑わせたい

ここの印象が強かったから、キミに縋ってるイメージがあったんだと思う。虚しい時代だけどキミがいるから愛があると思える、的な。
「キミがいなくちゃ」って事自体は間違ってないかもしれないけど、この曲の一番言いたい事って↓だよね。

強くなりたい やさしくなりたい

タイトルの通りだよ。穿った見方の必要ない曲だった。
「愛なき時代に生まれたわけじゃない」ってのは自分に言い聞かせてる言葉じゃなかったのか!
大切な人にその言葉をかけてあげられるように、「強くなりたい やさしくなりたい」って決意の曲なんだ。

その決意に「キミのために」って押し付けがましさがないんだよな〜。強い想いをあえて飄々と伝えてくる感じがオトナでいいよね。

ゆめおの声色が明るいのもいい。
強くなりたいのは、やさしくなりたいのは、襲いくる困難に立ち向かう為じゃなくて、キミといる為。 あくまで“困難”じゃなくて“キミ”にフォーカスが当たってるから、悲壮感がないのよ。

ケ・セラ・セラって雰囲気。気負わずに前を向こうと思える。

最初に思った“夢追翔と言えば”からは外れた印象になったけれど、それがかえって良かった。
このアルバムで度々思ったけど、曲を丁寧に聴いてみるのって楽しいね。

空も飛べるはず/緑仙

原曲:スピッツ
「白線流し」(1996年)主題歌

歌謡曲の歌枠とかもやってるけど、動画としてはアップテンポの歌が多いじゃないですか。

この度、公式から出た珠玉のバラードカバー……。

めちゃめちゃ声が良いなぁ~~~~〜〜〜、とうっとり。

歌が上手いなぁという感想には技巧への感動も含まれてるんだけど、今回は音程やテンポがシンプルな分、声への感動が占める割合が大きくなった。

ハチャメチャに声が良いなぁ~~~~~~~~。

じっくり聴き込めるから、本家との味わいの違いも感じ取れて嬉しい。

「君と出会えた奇跡が」の「が」が好きだなぁ。本家の軽やかな響きとはまた違う、実在感とでも言うのかな。息遣いとか、緑仙の存在を感じる歌声。

バックサウンドが騒がしくないから、マジで息遣いがよく聴こえるな。息吸う音好きなんだよね。

緑仙の歌は聴き切れない程あるけど、このカバーは緑仙の声に浸るには最高の音源だと思うわ。マジで。

Time goes by/文野環

原曲:Every Little Thing
「甘い結婚」(1998年)主題歌

アルバムのトリに野良猫がくるのはなんか納得感があったよ。満を持して聴きたい気持ちがあるというか。

歌上手いのは知ってたから「えっこんなに歌えるの」って驚きはなかった。
でも高音質野良猫ソングの清廉さは想像以上だったね。あんなに奔放なキャラクターなのに、子守歌のような安らぎを湛えた歌声。

イントロは雑踏の中の野良猫ってMVのイメージが浮かんだ。あの、道行くモブは輪郭線だけの単色塗りで、メインキャラだけカラーで描画されてるアレ。(例があたしンちのOPしか思いつかない。あれはこの表現を逆手に取ってメインキャラを単色、モブをカラーにしてるのでちょっと違う)

野良猫はにじさんじの中でも特に奇特なキャラクターという印象があるので、この歌の印象も変わって聴こえた。野良猫と相対する“誰か”をイメージしづらいから、男女の関係を歌ったものとしては聴かなかったかも。誰か一人ではなく、大きい括りを対象にしてる感じ。“みんな”が一番しっくりくるな。“みんな”に向けて歌ってる感じがしたわ。

だから歌い出しが特にすき。
「きっと きっと 誰もが」っていう大きい主語。本来は「(自分含むみんな)誰もが」という意味でしかないんだけど、野良猫が歌うと「(人間は)誰もが」みたいな、人間社会を俯瞰で見てる感じがしていいなーと思った。イキってるとか上から目線なのではなくて、俯瞰。塀の上、屋根の上を悠々と歩く、人間よりちょっとだけ高い野良猫の目線で、みんなのことを見てくれている感じ。

この曲中で描かれている関係性の中に登場人物として野良猫がいるのではなくて、この関係性を野良猫が塀の上から眺めていて、優しく慰めてくれるような歌として聴いていた。

野良猫は私生活等々ミステリアスなところが多いので、“共感”という聴き方がしっくり来なくて、聴き手である私と“世界観をずらして”解釈してしまった。俯瞰というのはそういうこと。
でも「野良猫の歌を私が聴いている」という状況で「野良猫が私達を見ている」と感じられたのが、“観測者の逆転”が起こったみたいに思えて面白かったな。

聴き心地の良さもさることながら、解釈のし甲斐があって、これも繰り返し聴きたくなるカバーでした。


特典CD

LA・LA・LA LOVE SONG
朝日南アカネ/緑仙

原曲:久保田利伸
「ロングバケーション」(1996年)主題歌

ラブソングは“愛”をテーマにした歌だと思うけど、この曲はラブソングそれ自体、“歌そのもの”もテーマになってる感じがするから、歌うことが大好きなこの二人にめちゃめちゃ合ってるな~と感じた。

私の思う歌が上手い人の特徴に「小さい声でもキレイに歌える」ってのがある。詳しくは分からないけど、腹式呼吸がしっかりできてないと小さい声では音程がとれないんだってさ。
この二人は本当に小声がいい。小声の部分でも安定感を損なわない、とかいうレベルじゃなくて、これで堕とせるって小声。二人とも表現に幅を持たせるための手段がすごい多いんだろうなーと感じる。

笑い声の掛け合いが愛くるしい。歌の妖精か何かですか?

収録は一緒だったのかな~、別々かな~。この二人が生でセッションするのもいつか見たいね。

君がいるだけで
ジョー・力一/花畑チャイカ

原曲:米米CLUB
「素顔のままで」(1992年)主題歌

最初の一節、力ちゃんの歌唱を聴いた時に力ちゃんファンとしての感動があったな。
「力ちゃんの歌声……、これ、寄せてないな」って思ったんだよね。カールスモーキー石井さんに寄せてたらもっと露骨にそれっぽくなったと思うんだ。

カールスモーキー石井さんのボーカルって「寄せたくなる」ボーカルというか、不可抗力的に「寄ってしまう」くらいに特徴があるじゃん。それなのに寄らなかった。

力ちゃんは“自分のボーカル”を確立できたんだ、と思えて嬉しかった。アーティストなんだよなあ。

『ソラニン』歌った時とか、度々「寄せすぎたなぁ」「寄せずに歌いたいなぁ」みたいなことを言ってた。それを聞いて私は、その志を応援しつつも「まず寄せれるのがすごくね?」と、これはこれで充分なんじゃないかなー的なことを考えていた。
でもこのカバーにおける歌唱は、明らかに当時より進化していて、似てることへの技巧的な感動から、より深いところでの感動に昇華されていた。

個人的には過去の歌で聴いた記憶のない歌声と思うくらい、このカバーにインパクトがあった。

そしてチャイちゃん。

あえて「遜色なかった」という評価を述べたい。

「劣っていない」という評価は力関係の不等号を思わせる、時にファンの不興を買うこともある評価と自認している。しかし『三羽烏男歌』の振り返りにて他の面々とジョー・力一と共に歌唱することへのプレッシャーを口にしていたチャイちゃんにこそ、「花畑チャイカの歌声はジョー・力一に匹敵する魅力がある」と、ジョー・力一の歌声に魅了されている者として太鼓判を押したいのだ。

チャイちゃんって狂人ムーブで突飛なことするイメージがあるけど、結構パフォーマンスは素直だと思っている。変に難しいことはしないと言うか。喜怒哀楽がハッキリしてる。そういうとこが”かわいい”と言われる由縁に思う。
「ラスサビはより一層テンションを上げよう!」みたいな、何がしたいのかいい意味で分かりやすいから、一緒に気持ちが盛り上がれるんだよね。こちら側からもレスポンスしやすい。
チャイちゃんの歌は期待のど真ん中を突き抜けた上で、「そんなキレイな声出るんだ!?」「うわめっちゃセクシー!?」みたいなブーストがかかる、多段式ロケットみたいな魅力がある。どんどん歌ってほしいけど、CDやライブや周年企画みたいな、”ここぞ”の時に聴けるプレミア感もいいんだよなー。

グリーンルージュ最高!

他人の関係
白雪巴/ニュイ・ソシエール/文野環

原曲:一青窈(金井克子)
「昼顔~午後3時の恋人たち~」(2014年)主題歌

絶対にイイ女が登場するイントロ。金管の音色ってボンキュッボンみたいなグラマラスな感じするね。

いいんですかぁ~?こんなふしだらな歌を歌ってしまって。私は大好きですけど。

ニュイの情念たっぷりな歌声はこの歌に合うなあ。ドラマ主題歌は一青窈が歌ってるんだけど、元の『他人の関係』は金井克子さんが1973年に歌ってる曲なんだって。スナック感が合うわけだ。

巴さんはニュイと合わせると少しかわいい寄りに感じるかな?と思ったけど、イヤホンで聴いた時の吐息がやっばいわ。都度やばいわ。
ぶっちゃけると上に書いた巴さんのレビューも公序良俗に配慮してセーブしてるんだよ!思うがままに書いてフランス書院みたいになっちゃったらさすがに失礼かなと思って。

上の二人はまあこの曲を歌うでしょう。

野良猫、マジか。なんかスタイルいいでしょイキりをしてたような記憶はあるけど。マジか。

聴いてみて、本人にとってもチャレンジングな選曲なんだろうなーとは感じたけど、いやぁ……合うもんだね。先述の通り、本人に捉えどころがないと解釈も分岐するなぁ。これがいけないことだと思ってないような無邪気な危うさって感じかな。声色からストレートにイメージすると幼気~な感じでこれもこれで危険な雰囲気。

ある意味、これもフィジカルで押してくるカバーだったな。

サラバ、愛しき悲しみたちよ
笹木咲/椎名唯華/鈴鹿詩子/
魔使マオ

原曲:ももいろクローバーZ
「悪夢ちゃん」(2012年)主題歌

ボーカルの切り替えも激しいアグレッシブな一曲!最高にアガる!

その激しさもあって……パート分けが自分の中でまだ完璧じゃないっ!
笹木か?マオか?って確信が持てない部分があるのよ~~~。すまねえ~~~。
「いかないで」「泣かないで」の部分も椎名さんと……、誰だろう。

そういう理由もあって是非3Dで見たい!

さくゆいはNJU歌謡祭で『行くぜっ!怪盗少女』がイケたからイケるはずだ。マオも『じょいふる』のダンスキレッキレだった。

…………詩子お姉さん!イケますでしょうか!?歌唱については甘めのボーカルが多いところを、クールな声でビシィッっとめちゃくちゃカッコよくキメてたから!きっとイケるさ!

甘めのボーカルが多いとは言ったけれど、他の三人も一貫してかわいい担当じゃなくて、要所要所にカッコいいポイントがあるんだよな。ももクロのヒーロー的イメージにハマってたなぁ。3Dライブを見るのが叶わないとしても、四人で決めポーズしてるとこは見てみたい。

NO MORE CRY
不破湊/夢追翔

原曲:D-51
「ごくせん(第2シリーズ)」(2005年)主題歌

バッチバチに相性がいいな!

カバーアルバムの即興コンビとは思えない!お互いのペースを気にしてセーブしてる感じが一切ない、青春群像劇に相応しい爽やかな全力疾走!!
VACHSSステージでも二人のデュオはなかったよね。ラス曲『世界をかえさせておくれよ』の一体感は今もなお健在ということかしら。

二人の高音がめっちゃキレイ……。ふわっちのハイトーンは激しく歌う時のイメージだったんだけど、澄んだロングトーンもすごいキレイ。このホスト何でも歌えるな……。

個人的に聴いてて面白かった二人の差異はサビ前。「そんな昨日の僕にはサヨナラ」の前の部分。

ゆめおは切々と訴えかけるような凄みがあって、シリアスな雰囲気。ここの歌い方が、個人的に“夢追翔の歌”で特に好きなところ。一気に引き込まれて、曲中の感情の当事者になった感じがする。

ふわっちは自嘲的というか、アンニュイな雰囲気。普段おちゃらけてる人が、不意に見せた物憂げな表情って感じでちょっとドキッてした。姫堕ちるでこれ。

そこからのサビの解放感がたまらない。

ソロカバーと特典を通して聴いたので、このカバーが〆になったんだけど、物凄く晴れやかな気分で聴き終わったなぁ。

あとがき

18曲レビューしたぞー!!

持てる限りの語彙を注ぎ込んだので、賛辞のレパートリーがカラッケツだ。
でもそれでもなお足りないってくらいに素晴らしいアルバムだった。

レビューを書こうってなってからも繰り返し聴き込んだんで、自分の中で音楽の楽しみ方が広がった感じもして嬉しい。

カバーアルバムは入り口が多くていいね。歌ってるライバーさんは勿論として、原曲が好きで入ってこれる人もいるし、本アルバムはさらにドラマ主題歌というテーマもあるから、あの時見ていたドラマだ!って入ってきた人もいるだろう。
(イラストも良いんだよな……。レビュー書くにあたって歌詞カードを何度も確認したけど、その都度見惚れてしまった。)

入り口はそのまま出口にもなって、ライバーさんきっかけで原曲歌手、原曲きっかけでライバーさん、と新たな楽しみを見出すこともできる。

色んな所から入ったファンが、また色んな所へ放たれていく。Reflexionというアルバムのもたらした、眩い乱反射。私もその光線の一筋として、ありがとうと言いたい。

因みに私という光線の軌道は、ジョー・力一という入り口から入り、花村大介という出口に射出されようとしています。いや、面白そうなのよね、花村大介。

もしCDショップで買って特典CDはまだという方がいたら、買い直しはハードル高いかもしれないけど、是非聴いてほしい。


じゃあ!「直筆サインキャンペーン」に応募してくるね!
応募フォームのメールが見つからなくて肝が冷えたよ……、迷惑メールフォルダにあったわ。

このレビュー、当選の願掛けの気持ちもちょっぴりあったので、思ったより書きあがるのに時間がかかって焦ってしまった。間に合ってよかったー。
12月8日(水)午前11:59が締切なので皆さんもお気をつけて。午前ね!日付が変わる前じゃなくて正午前だからね!書いてもらう名前とか考えすぎて遅れないようにね!


最後まで読んでくれた方、長文にお付き合いいただきありがとうございました!
お礼ついでに頼みたいのだけど、よければ貴方も好きなカバーの感想をどこかに書いておくれ。
冒頭に書いた通り、Twitterのタグがあまり機能してなくて、感想漁れなくてさみしいんだ。XFDムービーのコメント欄だけじゃ足りない。なにそつ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?