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#37 己を研く

致知出版社
小久保裕紀がイチローから学んだこと
—伸びる人と伸びない人の差ー①


彼との思い出で最も忘れ難いのは1996年のオールスターゲーム。私24歳、イチロー22歳の時のことです。

私は1994年に青山学院大学から福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)に入団しました。2年目で本塁打王を獲得したものの、「俺はパ・リーグ1番だ」と天狗になってしまい、翌シーズンは開幕から全く打てず、焦りは募るばかり。

一方、イチローは高卒でオリックス・ブルーウェーブ(現・オリックス・バファローズ)に入団し、3年目の1994年に初めて最多安打と首位打者に輝くと、翌シーズンはその2つのタイトルに加えて打点王を獲得。1996年も3年連続の首位打者へ驀進中でした。

そういう状況で迎えたオールスターの試合前、イチローと2人で外野をランニングしながら、彼に「モチベーションって下がらないの?」と尋ねました。

「小久保さんは数字を残すためだけに野球をやっているんですか?」「まぁ残さないとレギュラーを奪われるし……」
すると、イチローは私の目を見つめながらこう言ったのです。

僕は心の中に磨き上げたい“石”がある。それを野球を通じて輝かせたい」衝撃でした。

それまでは成績を残す、得点を稼ぐ、有名になることばかりを考えていたのですが、この日を境に、野球の練習をしているだけではダメ、自分をもっと高めなければいけないと思い至りました。

心掛けたのは1人の時間の使い方。空いている時間は読書をすると決め、毎日実践しました。野球を通して人間力を鍛えるというスイッチが入ったのは、彼の言葉があったからこそです。
後年、「あの時の言葉のおかげで俺の野球人生がある」と感謝の言葉を何度伝えたか分かりません。


「心の中に磨き上げたい“石”がある。それを野球を通じて輝かせたい」22歳の青年が発する言葉だろうか?

イチロー選手が活躍し続けた理由はまさに言葉。この言葉を大事に大事にしてきたからこその偉業。大変納得である。

小久保さんの感度、実行力も素晴らしい。
イチロー選手の言葉でスイッチが入り、自分の行動、考え方を改めたからこそ、一流選手になれ、最終的には侍ジャパン監督にまでなれた。

結果を出し続ける、トップになるには、自分が立てた「石(意思)」を磨き続ける。大事な教えである。

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