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サボテンの売り方 とソクラテス、あるいは立志の話

クラシノの代表をしております芝田です。弊社はマーケティング支援を事業にしておりまして、創業は2016年。すみません、いきなりですがサボテンは今は売っていません。今日はなぜ私はクラシノを立ち上げるにいたったか、それを語るに外すことのできない鮮烈な過去の体験の話をしてみます。なんだよサボテンの売り方の話じゃねーのかよ、と思ったサボテン業界関心者の方にも損させないよう頑張って書きますので(というかほんとにサボテンの売り方の話です)、まだ離脱しないでください。


SEがサボテンを…

私の社会人生活は、一般企業での業務系システムエンジニアからはじまりました。そこからYahoo!に転職、さらに数年後に、友人たちとコンサルティングや自ら事業開発も行う会社を設立したのですが、その会社で始めに担当したのが多肉植物/サボテンの通販事業の立ち上げでした。2007年、私が28歳の時でした。
 
https://www.solxsol.com/
 
現在のクラシノを創業した話は別の機会に話したいと思いますが、今回のサボテンの事業はクラシノの前に立ち上げた会社での話です。
いろんなアイデアを当時の会社のメンバーと議論しては新規ビジネスの構想を練っていたのですが、その中の1つとして、メンバーの知り合いがやっているサボテンの事業の話題がでてきました。
 
今でこそ雑貨感覚で樹形の珍しい(可愛らしい)多肉植物やサボテンを扱うお店が増え雑誌やメディアでも多く取り上げられていますが、当時はまだまだ趣味家の人たち向けに盆栽の延長で販売されていることが殆どで、オシャレな鉢や器と合わせてインテリアや雑貨に溶け込ませるような世界感はまず見かけなかった時代でした。
 
私はそれまでシステムエンジニアだったし、Yahoo!でも働いていましたが、実際ネット通販事業というのはまったく関わったことのない領域でした。けれどもその知り合い(松山美紗さんといいます)が作る多肉植物の鉢植えの世界は非常に目を引く新しさがあり、強い衝撃を受けたと同時に「これはネットで売れるのではないか?」とビビビっときてしまいました。遠に趣味の領域は超えてサボテンづくりと販売に精を出していた松山さんでしたが、彼女にはそのままこちらの会社に合流してもらい、会社としてサボテンのネット通販事業を立ち上げることとしました。
 
先に結果を発表すると、直感は当たり、ネット通販に留まらず多くのメディア露出をしたり、書籍も多数出版し、リアル販売の取扱店も増え一時は東急ハンズさんと組んでカフェの出店をお手伝いしたりと、とても成功したと思います。
 
ですが、けっして"甘い道のりではなかった"。結果として成功したと言えるところまで"絶え間ない努力をし続けた"というのが事実に近い。

売れないって大変(あたり前)

何につけても事業の立ち上げというのはいろんな複雑な業務が絡んでくるのです大変なものですね(遠い眼差し)。
 
多肉植物/サボテンの通販事業においても、
 
・苗の仕入れ、栽培、育成管理
・鉢・花器の買付、仕入れ、在庫管理
・卸先への配達、不良在庫の回収
・ネットショップの注文管理、配送センターとの連携
・各種キャンペーン企画、商品開発、広告戦略
・配送業務(特に梱包は大変だった)、配送業者さんとの連携
・支払い、入金管理、経理業務
 
こういった業務、体制をゼロから作っていくわけです。
取引先を探すところから、システムの構築やショッピングモールへの対応、卸販売の管理、配送センターの構築など、全てがわからないことだらけ、手探りの連続。
しかし何よりも最初に大変だったのはずばり、"売れないこと"。これに他なりません。メンタルにもきます。
 
当時、周囲の人に商品を見せると恐らく本心で"かわいい"とか"欲しい"というコメントを貰えるのですが、そこから買ってくれる人がいるのかというと、まず居ないのです。(何故だ!かわいくて欲しいなら、買ってくれ!)

単純なことに気づけるかどうか

躍起になっていろいろと売れない原因を深堀りしておりましたら、買わない理由がいくつか明らかになりました。
 
・植物を育てたことがない(習慣がない)
・枯らせてしまったことがある(失敗経験)
・育て方が分からない(知識不足)
 
大きくまとめるとこんな感じです。
雑貨のような感覚で"かわいい"と思えるけれど、生き物だし、雑貨のような感覚で"買う"わけにはいかない、そういうことでしょうか。(なんと善良な消費者たちよ!けっして生き物への責任感を忘れない、我が潜在顧客の皆様よ!)
 
新しい価値を提供するってこういうことなのかと。良さは感じていただけていても、不安な要素を取り除いて、一歩踏み出すためのハードルを下げるための努力、おもてなしができていなかった、ということですね。気付いてみれば単純なことなんですが、ほんとすいません、探究心旺盛な我々事業立ち上げメンバーなどはですね「わからんかったら自分で調べるっしょ?」とかどっかで思ってたわけなんですよ。早い話が気が利かなかったんですね。
 
"サボテン知識"を積極的に提供することが必要なのだと気付いてからは、そこからは様々なことを行いました。WEB上でサボテンの育て方のコンテンツを増やすことはもちろん、イベント販売でリアルでのコミュニケーションの場を作ったり、寄せ植えイベントをやったり、顧客との接点の機会を増やし、ファンを増やし、口コミを生み出し、認知率を高めていく。そんなことを地道にやっていくうちに徐々に販売が回りだしたのを覚えています。
 
いやあ、単純なことが世界を変える、ってことはよくある気がしますね。単純さというのはそれだけで力がある。ただ単純なことでも「気づく」力は難しい。天才か、逆に岡目八目という言葉があるけど門外漢だから気づくこともありますよね。あとは、訓練で鍛えられるというのもあります。マーケティングを顧客へのサービスとしてやっている我々は、訓練やテクニックによって「気づき力」を磨き、それを商品として提供していると言えるかもしれません。無知の知、ソクラテスの言葉を胸に刻んで精進しよう…

頼りになるパートナーが見つからないって大変

次に大変だったのはサイトへの集客。当時はSEO(サイトのコンテンツを強化・改善して検索エンジンからの流入を増やす取り組み)を中心に集客をしていたのですが、よりいっそう拡大していくには、広告出稿もある程度は必要と感じました。最初は私自身がGoogle広告やYahoo!広告の運用を担当していたのですが、つきっきりになってしまい他の業務への影響が出てしまうことも度々。どこか代理店さんに相談をしよう、となるわけです。
 
いやアレってけっこうめんどくさいんですよ。ネット広告って今も昔も意外と手間がかかるんです。やはり数こなしてて、手慣れてて、経験データもたくさん持っている代理店に頼むのがいい。餅は餅屋だと。(ちなみに現在クラシノはネット広告の代理店事業もやっておりまして、まさに数こなして、手慣れて、経験データも豊富にございますのでなにかございましたらぜひご用命ください☆)
 
ですが代理店探しでまた苦労があり、最終的にお願いする方が見つかるまでの間、非常に迷走しました。

嫌なやつですが何か

営業の方、コンサルの方、どなたからも杓子定規なことを言われ「この広告が今、数字取れますよ」といった類の話をされる。ですが私、実はYahoo!では広告技術部のエンジニアをやっておりまして、配信技術の裏側とか、その広告商品が設計されているコンセプトや思想、アルゴリズムみたいなことはそんじょの営業マンやコンサルよりはよほど理解していたのですね。
 
うまく回すためには、もう少し細かいターゲティングをしたいだとか、ユーザーの行動履歴を元にした広告メニューを活用したいだとか、そういう一歩踏み込んだ情報や提案が欲しくて相談しているのですが、そこまで踏み込んで答えられる人が全然居なかった。
 
 
ネット業界のコンサルや営業マンというのは、マーケティングの知識だけでは通用しない(戦えない)のだなと感じたのはこの頃からでした。後々気がつくのですが、当時の広告業界はアドテクと呼ばれる配信技術の裏側をしっかり理解できている人材はまだまだ少なかったといえます。しかも自分は広告商品そのものを開発している会社に居たというのものアドバンテージがあったのだろうと思います。当時相談したコンサルや営業マンにおかれましてはさぞかし嫌な客だったに違いありません(笑)

今の事業の原型を見出し、人生で最も学んだ時期

その後サボテンの通販事業ですが、成長するにつれ、売上が上がり販売数が増えれば配送のトラブルも出てきたり(破損等)、在庫管理の問題、利益率を考えた時の商品ラインナップの難しさなど、フェーズごとに難敵と戦ってきたと思います。
 
最終的にある程度の規模になり、私はこの時の経験を活かしてマーケティングの受託事業に転じていくのですが、このサボテン事業に取り組んでいたころが自分の社会人生活の中で最も学びの多かった期間であることは間違いありません。未だにこの頃の経験を土台に仕事をしているように思います。
 
適材適所という意味で、自分のような人間が居なかったらこういう事業の成長は難しかっただろうと思います。サボテン事業を支えているアートディレクターの松山さんは多肉植物のスペシャリストで、そういう意味で彼女も適材適所、事業を生み出し、大きくすることに不可欠の存在でしたが、彼女だけであの成長がなしえたわけでもない。
 
振り返るに、自分のやっていたことは松山さんに対する"伴走支援"であったのだな、と思います。クラシノのマーケティング支援・コンサルティングサービスの原型とも言える仕事だったわけです。
 
現在は会社こそ別々となりましたが、松山さんとは友人であり、クラシノの東神田オフィスの観葉植物を我らがsolxsolのサボテンで飾ってくれています。いつ見ても癒やされますし、私も販売員としてお店に立っていた日々が思い出され、懐かしい。
 
弊社のサボテンたちは月1回の入れ替えがあり、そんな訳でいつも元気なサボテンが並んでいます。オフィス外からもギャラリーのように見えるのでお近くに来られた際は是非覗いてみてください。弊社で購入は出来ませんが、solxsolでご注文いただけますので是非こちらものぞいてみてください。

https://www.solxsol.com/

東京、東神田のオフィスはこんな感じ

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