「シリコンバレーがやって来る」(前編)

“Silicon Valley is coming.”

前回の「フィンテックはどこから来たのか?」では、フィンテックがアメリカの金融機関の従来の取り組みの延長線上にはなく、むしろ金融機関の死角から突如として出現したことを、アメリカの金融機関の視点から説明しました。

では、なぜシリコンバレーがやって来たのでしょうか?そのことを理解するために、まずは、シリコンバレー全体の動きを俯瞰してみましょう。

先月末、Uber(ウーバー)が2016年上半期で12億ドル(約1,200億円)もの損失を出していたことが明らかとなり、アメリカで大きな話題となりました。時価総額10億ドル(約1,000億円)を超える未上場企業を「ユニコーン」と呼びますが、Uberは、ユニコーン190社の中でも最大の時価総額(約6.2兆円)を誇る存在です。

Uberは、世界494都市で、ドライバーと乗客のマッチング・サービスを提供しています。アプリ上の地図に契約ドライバーの車が表示され、目的地を入力するとだいたいの待ち時間と料金がわかります。予約ボタンを押すと車がやってきて、目的地で降ろしてくれます。料金はアプリ上での決済で、現金やクレジットカードも必要ありません。

Uber
会社設立:2009年3月
本社:サンフランシスコ
時価総額:625億ドル(約6兆2,500億円)
累計資金調達額:87億ドル(約8,700億円)
事業内容:ドライバーと乗客のマッチング・サービス

Uberはサンフランシスコで創業し、ニューヨークで爆発的にヒットしました。

ニューヨークをはじめ、世界の主要都市では慢性的にタクシーが不足しています。(雨の日の朝を除けば、タクシーがいつでもすぐにやってくる東京は例外的に恵まれています。)その理由は単純で、タクシーを利用したい人の方がタクシーの台数より多いからです。ニューヨークの場合、タクシーの台数は市が1.2-1.3万台に抑制していて恒常的に足りません。その結果、タクシー毎に必要な「メダリオン」(認可)のバブルが発生し、2013年にはオークションでの落札価格が100万ドル(約1億円)に達しました。

タクシー不足の結果、NYの通勤時間帯には、タクシー1台に対して3-4人が同時に手を挙げるような状況になっていました。タクシー運転手が一斉に交代する午後4時過ぎや、ミュージカルやオペラが終わる11時前後には、タクシーが全くつかまらなくなり、寒風吹きすさぶ中、30分以上待つことが当たり前でした。

深刻なタクシー不足に苦しんでいたニューヨーカーにとって、アプリ一つで乗れるUberは画期的で熱狂的に支持されます。私自身も、ニューヨークに引っ越して3日目には、友人からアプリをダウンロードするよう、熱心に勧められた記憶があります。口コミで広まるよう、クーポンも配られました。

Uberがサービスを提供するためには、運転手と自動車が必要です。真っ先にUberの契約運転手になったのが、ハイヤーの運転手でした。空き時間にも仕事ができるからです。続いて、普通自動車の免許証と自家用車さえあれば運転手になれるということで、普通の人たちがUberの運転手として登録するようになりました。

現在では、Uberの台数は、NYのタクシーの台数の2倍以上の3万台に達しています。Uberをそのままコピーしたと言われるLyftも1万台を超え、タクシーに迫る勢いです。

図表1:NYにおけるタクシー(黄色)、Uber(黒)、Lyft(紫)の台数

元の記事はこちら

驚くべきことに、グラフの黄色の線が示す通り、ニューヨークのタクシーの台数はUberとは対照的に全く増えていません。長年規制に守られてきた産業は、Uberからの大きな脅威にさらされても、微動だにしないということなのでしょうか。

UberやLyftの参入によってタクシー不足が解消されつつあるため、ニューヨークのタクシーの「メダリオン」のバブルも崩壊し、取引価格はピーク時の半分、5,000万円まで暴落しました。メダリオンを買い占めていたタクシー会社はもちろん、個人で購入していた運転手も大きな含み損を抱えています。このことも、タクシーの台数が増えない理由なのかもしれません。

「シェアリング・エコノミー」の光と影

自分の運転スキル、自動車、そして空き時間を他人とシェアするというビジネス・モデルは、当初は「クレージーなアイデア」と呼ばれていましたが、Uberの成功により、やがて「シェアリング・エコノミー」と呼ばれるようになります。

同じように自宅の空きスペースを旅行者とシェアするのが、日本でも有名なAirBnBです。(ユニコーンの中では世界5位。)

AirBnB
会社設立:2008年8月
本社:サンフランシスコ
時価総額:270億ドル(約2兆7,000億円)
累計資金調達額:39億ドル(約3,900億円)
事業内容:空き部屋と旅行者のマッチング・サービス

少し長くなってしまったので、今回はここまでにして、次回はなぜUberとAirBnBが成功したのかと、シリコンバレーがなぜフィンテックをはじめたのかを解説します。

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Fintech- フィンテックに詳しくなるノート

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