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小心者ドミトリーへ

祖母の故郷に立ち寄る。
観光客がいないごはん屋さんを探して入ると大きな声で「ありがとう〜おおきに〜」と何度も繰り返す、腰や膝が曲がったおばちゃんがあまりにも愛想良かった。
基本的に倹約節制旅なので安く済ませたいと思ってたのにビール中瓶を1本入れてしまった。
そして生姜焼き定食を食べ終える頃、まだ感動を伝えるのに足りない気がして、きつねそばも追加。
昼を抜いた意味がなくなるくらい奮発してしまったのだった。

宿に戻ると客の9割が外国人、と言うだけあって英語が飛び交っている。
学生時代、激しい英語アレルギーに見舞われていたわたしは今日もひとり、淡々と寝支度を進めていた。しかし共有スペースで乾燥機を待つあいだ、タイから来たというお姉さんが話しかけてくる。
ひとりでの滞在だといい、コミュニケーションをリードしてくれそれなりに楽しく話した。部屋は別だったので、少々名残惜しく思う。

電気を消してベッドに入り消灯モードになっていると、3人組の外国人が部屋に入ってくる。
寒いといって暖房をつけ、感度の悪いエアコンはパワフルモードに設定された。しばらく経って、私が寝ていることに気づいた様子でピタリと静まった。ものすごい切り替え。

かつては英語で話しかけられるのはもとより、英語の勉強やテストに至る英語との関わりしろ全てに怯えていた小心者だったので、その名残りも大いにあって、カーテンの向こうに顔を出すことはできず、暖房ひとつではしゃぐ彼女たちが話している内容も全てはわからなかった。

でもそれを差し引いても、すごいよ私こんなことしてるんだ。都の真ん中のほぼ外国みたいなところで、こうして眠ろうとしている。なんてこった、すごいじゃないか。
もっと英語がわかるように、自在に使えるようになったら、話しかけてくれたあの女性のようにフランクにフラットに人と関わって、その時をもっと楽しめるのかな。

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