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「マタハラなんかやってるの?」それが恥ずかしいことだよ、と常識を変えていくことが最大の突破口。

『渋谷社会部』 4月5日(火)9:00~10:55放送

【出演】 小酒部さやかさん/宮下浩子さん/山名芳高さん(マタニティハラスメント対策ネットワーク)

―― この時間は、マタニティハラスメントというテーマについて、深掘りをしていく時間にできればと思っています。今日は3人のゲストの皆さんがいらっしゃっていますので、それぞれ自己紹介をしていただければと思います。

(小酒部)おはようございます。NPO法人マタニティハラスメント対策ネットワークの代表理事をしております、小酒部さやかと申します。マタニティハラスメントという言葉を広めたのが私たちNPO法人です。私たち2014年の7月に通称マタハラNetというのを立ち上げました。会の立ち上げから1年9ヶ月くらいですかね。この3月にですね、マタハラ防止が企業に義務化されるという法案が可決されまして、来年2017年の1月からマタハラ防止が企業に義務化されます。ここに向けて活動してきたのが私たちマタハラNetでした。今日は私とあとは理事のおふたりが来てくれて応援に駆けつけてくれてますので、2人どうぞ。

(山名)山名芳高といいます。なんでこんな男がマタハラNetを応援してるのかと聞いている方はお思いかもしれませんけど、私自身、50代の頃、ある広告会社で子育て支援のプロジェクトを立ち上げました。

そんな経過がありまして、小酒部さんと知り合いになりました。

なぜマタハラNetを応援してるかというのは、非常に理由はシンプルでして、この少子高齢化の時代に、子どもをつくって育てて、なおかつ働いていくという、そういう女性を労働市場から締め出してしまうと、まずモラル的にもおかしいですし、これから小酒部さんからお話があると思うんですけども、経済的にも、じゃあ一体誰が税金払うんですか、誰か消費するんだよという大きな経済問題で、こんなことをやっていたら、日本沈没しちゃうよなというふうに思って、マタハラNetの応援をするようになりました。

(宮下)おはようございます。理事の宮下浩子です。私も13年前に妊娠を理由に解雇されて、代表の小酒部と同じ被害者でして、ずっとこの妊娠を理由に解雇されている人はいないか、不当な扱いをされている方はないかっていうのネットで追ってきまして。

小酒部さんが立ち上げたマタハラNetっていうのに、ネットでぶつかりまして、自らお手伝いさせてくださいっていうことで連絡を取り、今に至っております。

―― 宮下さんはもともとどういうお仕事されてらっしゃったんですか?

(宮下)もともとホームセンターで、レジやみんなをまとめる役をやっていたりして、週5ぐらいで働いていました。

―― ありがとうございます。今日は初回でもありますので、まずはマタハラの「イロハ」といいますか、マタハラとは何かというところからお話をしていくのがいいのかなと思うんですけども、ここから先は山名さんの方でお願いします。

(山名)はい。私の方で進行役というと大げさですけども進めていきたいなと思っています。

実は小酒部さんが今年1月でしたよね、筑摩新書で『マタハラ問題』という著作を出されましたけども、ここにマタハラのすべてが書かれている。

これは別に宣伝文句じゃなくて僕も拝読してそう思うんですけども、これに基づいて進行していければと思います。

まずマタハラ。セクハラ・パワハラ・マタハラの三大ハラスメントの一つとされているっていう前置きがありますけれども、実はこのマタハラが、セクハラ・パワハラと異なるというのを小酒部さんはどういうふうにお考えでしょうか?

(小酒部)そうですね。マタハラが一番大きく異なるのは、「組織型」というのがあるんです。加害者に人事が入っているとか、経営層が入っているとか。

普通ですね、セクハラなんかでいえば、人事や経営層はそれを防止する立場にありますよね。今は企業が、「セクハラなんかいけないよ」というふうに、もし職場内でセクハラの話が上がってきたら、それを解決するっていう役割をなさってると思うんですけども、マタハラにおいては逆に、人事から退職強要を受けてしまったり、経営者から、「産・育休をとっても君の戻ってくる場所はないよ」と言われてしまったりという組織型があるのが特徴ですね。

(山名)今おっしゃっている話ですけども、連合の調査では、セクハラ17%を大きく上回る25.6%がマタハラ被害を受けたと。これも、ちょっと調べてみてびっくりしちゃったんですけれども、日本で未だに第一子を妊娠した場合、なんと6割の女性が仕事を辞めている。これは自発的に辞めている方ももちろん入ってるんでしょうが、そうじゃない方もたくさんいます。さらにさらにびっくりしたのは育児休業。利用している方で、利用した後に職場に復帰した方っていうのか、正社員では43%。しかしパート派遣などの非正規社員はわずか4%になっている。

これだけの数字って、ちょっと僕も「あれなんかこれ誤植じゃないのかな?」というふうに一瞬思っちゃったんですけども、この辺はどのように、小酒部さんは考えでしょうか?

(小酒部)正社員でさえ、いまだに育休からの復帰率4割なんですよねぇ。

経済先進国の日本のはずなのに、女性の労働力っていうのが経済先進国の中では極めて低いというのがやっぱり日本の特徴ですね。

あとは、今は非正規雇用というのがものすごく増えてきています。女性の今6割が非正規だって言われている中で、派遣・パートの育休復帰率がたった4%というものすごく低い数値です。非正規っていうのは正社員に比べて、ボーナスなんかがなくて、そもそも給料少ないですよね。そこから妊娠をきっかけに仕事を辞めさせられてしまったら一気に貧困に追いやられてしまうと。そこがものすごく問題だなというふうに思います。

(山名)私も企業に勤めたことがもちろんあるんですけども、まずマタハラというものが意外と複雑な構造だっていう。たとえば簡単に言っちゃうと男性上司と妊娠した女性。男性上司vs妊娠した女性という関係だけじゃなくて、同僚同士にも起こり得るし、もっと恐ろしいのは、って言っちゃいけないのか、女性対女性の確執みたいなのがありますよね。マタハラNetでは、そこら辺のいろんなマタハラ被害の事例を、4分類ですかね、4つに分類して発表されていますけども、ちょっとそこら辺は聞いてる方も興味あるじゃないかなと思いますので、そこを説明いただければと思います。

(小酒部)私たちがとったマタハラの加害者のデータでは、直属の男性上司が一位なんですけども、今山名さんがおっしゃったように、同僚においては男性より女性の方が2倍近く多いというデータがあるんですね。先ほどのように、人事や経営者も加害者に入っていると。

つまり、よく知られるセクハラって言うのは異性からされることが多い。よく知られるパワハラというのは上司からされることが多い。ところがマタハラにおいては、異性同性問わず、上司同僚問わず、四方八方が加害者になってしまう可能性があるというのがマタハラの悲惨なところです。

今、マタハラNetに250件近くですかね、被害相談来てるんですけども、その中から、4つの類型っていうのが見られるなというふうに思いました。

まず4つの類型、大きく分けて組織型と個人型というふうに分かれます。個人型の一つに、「昭和の価値観押し付け型」っていうのがあるんですけども。

(山名)僕のほうを見ないで(笑)。私は昭和の男ですが(笑)。

(小酒部)山名さんは違いますよね。マタハラの根っこは2つあると言っていて、一つは長時間労働、そしてもう一つが性別役割分業意識。男性が外で働いて女性が家事育児を担ってきた。

「昭和の価値観押し付け型」は、男性が外で働いて女性が家事育児を担うんだ、そのあり方が一番幸せなあり方なんだって思い込んでいる方々が、「子どものことを第一に考えないとダメだろう」「君の体を心配して言っているんだ」「旦那さんの収入があるからいいじゃないか」と言って、この言葉のあとに「だからやめたらどう?」と退職強要を促してしまうようなのが、「昭和の価値観押しつけ型」のタイプですね。

(山名)これは悪意が実は、ない。

(小酒部)そうなんです。ご本人たちはよかれと思っている。なぜなら自分の奥さんが専業主婦で、自分が外で働いてうまくやっているこれが幸せの形だ。育児しながら働くなんて大変だろうと。ということでよかれとやっているパターンが多いですね。ただ良かれと思っているからといって、別にいいわけではなく、余計タチが悪いと。余計に歩み寄れないというのが、この「昭和の価値観押し付け型」になると思います。

次が「いじめ型」ですね。妊娠や出産で休んだ分の業務をカバーさせられる同僚とか上司の怒りの矛先が、本来であれば会社や経営層に向くべきなんですけども、そうではなくて、産休・育休を取る女性に怒りの矛先が向いてしまうと。

「迷惑なんだけど」「休めていいよね」「妊婦様って何様?」「自己中」「やる気あんの」「ズルしている」というような、いじめとか、あとは無視したりとか大切な情報を共有しないとか。こういう形でネチネチと、女性を排除する方向に向けていくと。こちらのいじめ型の場合はやめてしまえと思ってやってるので「悪意がある」の方向にベクトルが向きます。

マタハラNetで調査した企業への意識調査ですと、産休・育休で休んだ分の業務は周りの残った社員がしわ寄せを受けている状態で、7割の企業が、そのような状態であるということが分かりました。マタハラという言葉もここ2年くらいで急速に広まったんですけども、それと同時に“逆マタハラ”という言葉も広まったんですね。

(山名)“逆マタハラ”ってちょっと興味があるんですけれども。どういったものですか?

(小酒部)“逆マタハラ”というのは、産休・育休で休んだ分のしわ寄せを受ける自分たちの方が残業、残業で死にそうだと、自分たちの方が仕事量が増えて血反吐を吐く思いだ。逆マタハラだ!というのが“逆マタハラ”ですね。

ここが本当にマタハラの解決のポイントで、この逆マタハラの解決をなくしてマタハラの解決ってないんですよね。なので制度を利用する側と制度の利用をフォローする側と、どちらもハッピーになるような構造を考えていく必要があるなと思ってます。

(山名)つまり、産休・育休で一時的に仕事を離れる人がいて、その分仕事量が増えますよね。その仕事量が増えた方に対しても、いろいろな手当てが必要じゃないかということですかね。

(小酒部)そうですね。まずは代替要員、その産休・育休の女性の仕事をカバーしてくれる人員が入ってくれることが一番なんですけども、中小企業なんかだとすぐに新しい助っ人を雇うことができないということが多くて、周りでフォローすると。周りでフォローするのであれば、産休・育休で1人分のお給料が1年分浮いているわけですよね。それを会社側は吸い取ってしまうのではなくて、周りのフォローをする社員たちにお給料として分配するとか、あとはフォローしてる分の評価を上げてあげるとか、それから今は妊娠や結婚を望まない方もたくさんいるので、そういう方の長期の休暇をとれる制度を導入するとか。

今、育児をしながら働く人とか介護をしながら働く人の制度はあるんですけども、それをフォローする人たちは何も制度を受けてない状態なんですよね。

(山名)何の恩恵もないと。

(小酒部)なので、この不公平さ感からやっぱりハラスメントにつながってしまうと。ここを解決しなければやっぱりみんながハッピーにはなれないですし、ここを解決することによって、マタハラ解決がすべての労働者の労働環境の見直しへとつながっていく、働き方改革へとつながっていくポイントだと思っています。

(山名)今のお話ですと、行政のシステム設計ですよね。それも必要で大事でしょうけども、個々の企業、大企業・中小企業問わずそういうトップマネジメントの考え方が変わっていかないと、いつまでも、イタチごっこになっちゃうんじゃないかなと感じました。

(小酒部)そうですね。できている企業はできているんですよ。きちっとフォローする人たちの評価をしてあげている企業もちろんありますし、ペア制度なんかを利用して産休・育休の人だけじゃなくて、相手側も休みやすくしたりだとか、やってる企業がやってるんですね。これから少子化になって労働人口がどんどん減っていくと働く人は居なくなってきます。その時に企業は優秀な人材をいかに確保するかっていう、

人材の争奪戦が始まりますよね。そのときに自分たちの企業は働きやすい会社なんだっていうイメージを社会に発信することによって、優秀な人材の確保にもつながっていく採用力にもつながっていきます。働きやすい職場のイメージというのは、これからの企業の経営戦略になっていくんだというふうに、企業の経営者がいかに考えてくれるか、いかにそこに早く気づいてくれるかどうかというのかポイントかなと思います。

(山名)今の話を伺っていると、短期的ないわゆる企業のリクルート対策だけじゃなくて、本当に長期的に働く意欲のある女性をしっかり雇用していく企業じゃないと、これから伸びていかないのかなという気がしますね。

(小酒部)そうですよね。もうブラック企業はどんどん淘汰されていくべきですし、そういうところには人が集まらないというふうにみんなが思って、経営者もそこを認識していくことですね。

(山名)「ブラック企業」、結構公表されてますけれども、もしかしたら、ブラック・マタハラ企業と言葉があるかどうかわかりませんけど。うん。公表化というのは全然進んでないんですよね。

(小酒部)厳密には、労働局の均等室が強い指導に入った場合は、企業名公表というのがありまして、昨年の11月に一つ、医療法人が公表されただけにとどまっているので、もうちょっと厳しく指導に入ってもらいたいなと思います。

(山名)実際にその医療法人は、名前は出せないでしょうけども、結構ダメージがあったんでしょうか。

(小酒部)あったと思いますね。その後は病院の院長先生は休業してしまったらしいですし今どうなっているか、ちょっと情報がないのでわからないんですけど。

(山名)少し話を戻します。いわゆる今の「いじめ型」というのが、男性も女性も問わず、ということですね。

(小酒部)そうですね、いじめ型は男性女性も問わず。また、昭和の価値観押し付け型は男性だけじゃなく女性の中にもあって、「子どもが小さいうちは、やっぱり育児に関わるべきでしょう」っていうふうに女性の上司が言ってしまう。

(山名)話題になりましたね、「保育園なんかに預けるのはとんでもない」と。

(小酒部)そうですね。「保育園に預けるのは子どもがかわいそうだと思わないのか。」実際マタハラNetにもそういうメールが来ました。

(山名)個人型には、昭和親父型、実は親父だけじゃないけど押しつけ型があり、と「いじめ型」、悪意なしと悪意ありがあるということですね。実際に組織型っていうふうにあと2つ分類されていますけれども。

(小酒部)ここはですね、先ほど言ったように、人事が加害者になってしまうとか、あと、経営層が加害者になってしまうってのがこちらの組織型に含まれます。ここはですね、マタハラの要因である長時間労働が根っこにあって、長時間労働できなくなった、育児を抱える女性に長時間労働を強いる方にベクトルが向くと「パワハラ型」、「もう長時間働けないんだったら、残業できないんだったらやめてくれよ」というふうに排除の方向にベクトルが向くと「追い出し型」ということで分けています。

「パワハラ型」だと、「時短勤務なんて許さない」「夕方帰る正社員なんていらないから、そんなだったらアルバイトになれば?」もしくは「辞めたら?」。それから、「妊娠しても甘えは許さない、働け」「普通の社員どおり働け」と。あとは、「特別扱いしない、できない」。この「特別扱いできない」って言葉はよく使われるんですね、マタハラの単語として。産休・育休は企業からしたら特別扱いしてあげているっていう感覚なんですよ。産休・育休は国の制度で決まったものなんです。

(山名)すごく基本的なことですけど、産休・育休を取った方に対する、助成のようなものは、企業がしているわけじゃないですよね?

(小酒部)一切していないです。

(山名)勘違いしている方が多そうですね。

(小酒部)税金の面でも企業が払うことはないです。

(山名)企業は全然損はしていないですよね。

(小酒部)そうです。企業側は休んだ分の業務をどうやって分配するかというところと、戻ってくる・これるような体制準備だけを整えてあげればいいだけなんですけども、なかなかその体制準備が手間だと思うのか、面倒だと思うのか。

あとはやっぱり、できるだけみんな同じ方向に向いていてもらいたいと企業は思うんですよね。みんな一律残業できるようであってほしいのです。1人が右を向いてなくて左を向いてる奴がいると、「じゃあ君がいなくなってくれよ」っていうのが今の企業の言い分ですね。

(山名)私も務めたところで思い当たることありますけども、小酒部さんもそういった経験をたくさんされていると思いますが、それはまた後ほど語っていただくということにします。

(小酒部)「追い出し型」はこれが一番マタハラのパターンで多いケースなんですけども、「残業できないと他の人に迷惑でしょ」「子どもができたらやめてもらうよ」「妊婦を雇う余裕はうちの会社にはない」「産休育休なんて制度はそもそもうちにはない」なんて言ってしまうようことですね。

(山名)これは嘘ですよね。

(小酒部)そうです。国の法律で決められているので、例え社内の就業規則に産休・育休が書かれてなかったとしても、産休・育休がとれるんですよね。でもひどい企業だと、制度はないなんて言ってしまうところもあります。

(山名)そこまで言っちゃうと、逆に労働争議になったとき、まずいですよね。

(小酒部)そうですね、企業は負けますね。企業は不利な立場になるはずなんですけども、マタハラのつらいところは、やっぱりみんな女性は妊娠中、それから出産したてで子どももまだ0歳児を抱えて、ハラスメントですよっていうふうに会社に声を上げていくのはすごくつらい立場なんですね。

(山名)泣き寝入りですね。

(小酒部)はい。やっぱり泣き寝入りが多いです。だから今まで顕在化してこなかった。それにも関わらず、やっぱり水面下でセクハラを上回る被害者がいるんだってことをもっともっと認識してもらいたいですね。

(山名)マタハラっていうのは、大企業だけでなく、もちろん中小企業だけではなく大企業でも結構蔓延してるという、ウイルスみたいな言い方ですけど、蔓延してますね。

(小酒部)私たちが取ったデータでもその結果でしたし、去年の11月に厚労省が取ったデータでも、マタハラが起こっている企業の規模は問わない、ということがわかりました。

(山名)いろんな業態・業種でそういったことが行われているんでしょうけども、小酒部さんの著作を見ていて、ちょっと面白いって言うと語弊があるかもしれませんけど、びっくりしたのが、法律事務所の弁護士さんもマタハラに遭っているんですね。

これは、フィクションじゃなくてノンフィクションなんですよね。

(小酒部)そうですね。それは全部マタハラNetに届いた実例です。結局、法律・制度はあっても慣例・習慣の方が先行してしまうんですよね。今までそんな制度は無かったじゃないか、と。

(山名)昭和的な働き方が残っているんですかね。

(小酒部)そうですね。今まで女性は家庭にいるべきものだったじゃないか、というような価値観や、慣習・習慣が優先されて、制度の利用をさせないというような文化が根づいてるんですね。

(山名)実際に今ラジオをお聴きになったり、後ほどでしょうけど、Podcast や音声のテキストを見る方が、「私もマタハラに今後遭うかもしれない・遭っている」という方もたくさんいらっしゃると思うし、心配する事も多いと思うんです。ここでちょっとノウハウ編じゃないですけど。マタハラを受けやすいタイプのパターンがあるというふうに書かれています。ここでは、どういった女性が危険なのか、みたいな発想でお話をお聞かせください。

(小酒部)寄せられた被害事例の中で、5つのパターンが見えてきました。1つが、勤続年数が短い女性です。入社して1年も満たずに妊娠してしまうと、「まだ企業に何も恩返ししていないくせにもう制度を利用するのか」というふうにマタハラをされてしまいます。

次が妊娠の症状が順調でない女性です。産休にたどり着くまでに重症のつわりとか、切迫流産・切迫早産。私の場合、切迫流産になってしまったんですけども、そうするともう休みがちになってしまうんですね。すると会社側が「産休・育休とこれから長い年月休むのに、もう休んでるじゃないか。産休までたどり着く前にもうだめじゃないか、だったらもうやめたら」「今からもう休んだら?」というふうにマタハラされやすくなってしまいます。

本来であればやっぱり妊娠による体調の不調・不良って言うのは女性にとってはものすごく辛い状況なので、できれば見守ってほしいときなんですけども、逆にマタハラされるということです。なんでこんな残酷なことが起こってしまうのかというと、日本人の「妊娠」とか「性」に対する知識がものすごく国際的に低いというデータがあります。

(山名)そうなんですか。

(小酒部)マタハラNetでとった調査でも、妊娠の症状を、例えば体温が上昇するとか、そんなこと知らない方もいらっしゃるんですよね。悪阻とつわりが違うっていうこともご存じじゃなかったりとか、後は妊娠による高血圧症とかその他もろもろいろんな症状が出ることもご存じじゃない方が日本人は多いということがわかっています。

もう一つのパターンが、正社員じゃない方、やっぱり非正規の方は、多いですね。あと2つは、2人以上のお子さんがいる方へは、「産休・育休の制度があるから、1人目くらいはその制度を使わせてやってもしょうがないけども、復帰してまた2人目、また休むの?また3人目、また休むの?」と。「復帰しても当てにならないじゃないか。しょっちゅう休んでいないじゃないか。だったらもうやめて、全部産み終わって子育てし終わってくれ。」という本音が出てしまうんです。

(山名)あと恐らく、最後に小酒部さんのような方だと思うんですけどね。要するにフロンティアになる人?

(小酒部)そうですね。その職場で最初に産休・育休を取る方は割とマタハラに遭ってしまいますね。やっぱり企業側が、どうやって制度をとらせていいかも知らなかったりだとか、マタハラNetを最初に立ち上げるのに手助けしてくれた女性の場合は、まさにそのフロンティアになる女性で、育休の申請書なんかもご自身で書かれて提出されたりとか、引き継ぎもしっかりされて会社側も「君がいないと困るから早くに戻ってきて欲しい」と言って4~5ヵ月で育休を切り上げて復帰する予定だったのに復帰間近で、「育児を理由に、急に帰られたりすると困る」というふうに言われて育休切りに遭ってしまったんですね。企業の中で産休・育休をとりながら、また育児しながら働く女性の成功事例がまだないと、所詮無理だろうというふうに思ってしまう、ということが起こっていますね。これが5つのパターンです。

(山名)実は昨年ですね。マタハラNetにかかわってイベントとかをやっていたときに、Facebookなんかで「こういうイベントをやっているよ」とあげたときに、以前働いてた子会社の人から「マタハラって日本独特なの?海外ではどうやって解決したのかな?」という質問がありました。

マタハラって、もしかしたらこれが国際語になるかもしれないんですけども、じゃあ海外ってどうだったとか。ここらへんは非常に深い話でね、例えばいろんな働き方があるとか、小さな政府のアメリカとか大きな政府の制度ではどうかなど、とても社会学的になっちゃいますけども。そこまでいくと1時間じゃ終わらなさそうなので、サラッと教えていただければと思います。

(小酒部)はい。やっぱり子育てしながら仕事をする育児と仕事の両立というのは海外でも難しい問題です。アメリカでは「プレグナンシーディスクリミネーション(pregnancy discrimination)」という言葉がありまして、pregnancyって「お腹が大きい、まさにその状態」それから「お腹が大きいその期間」を指すんですね。

よくマタハラって言葉を訳すと、日本語で「股」とか「腹」って漢字が浮かぶじゃないですか。また、マタハラっていう言葉の音もあまりよくないと。よく「なんでそんな汚い言葉を使っているんだ」みたいなメールが来たりするんですけども。

(山名)すごい勘違いですね。

(小酒部)日本の場合、なんでマタニティハラスメントという造語が必要だったかというと、日本の場合のマタハラは、その妊娠している時点だけじゃないんですね。つまり、pregnancyの期間に収まらない。出産した後も、育休から復帰する時も戻してもらえなかったり、復帰した後も降格されたり減給されたりっていうふうに出産後も続くというのが日本のパターンです。なのでマタニティハラスメントっていう別の造語が必要だったんです。pregnancy discriminationでは収まらない。

(山名)なるほど。

(小酒部)アメリカのpregnancy discriminationは「妊娠差別」ということで、アメリカでも同じように妊娠差別法という法律があります。ただ、日本と違ってアメリカはやっぱり働く女性が八割以上ということなので、日本の方がより深刻ですし、フランスなんかだと、もうおじいちゃんおばあちゃんの時代の話だよと。おじいちゃんおばあちゃんの時代の話で、その時はマタハラと同じような概念があっただろうけども、今もし、フランスで妊娠によって解雇なんていう事件があったら、新聞の一面が全部その記事になるくらい大問題になると。そのくらいあり得ないことと言っていましたし、北欧のほうは福祉が進んでいますので、もちろんマタハラなんかはないです。

(山名)逆に女性をガンガン働かせているものね、良い悪いは別にして。

(小酒部)そうですね。後は韓国は少子化が深刻なので、おそらく日本と同様マタハラというような問題があると思われていますし、実際そのような事例が上がってきているんですけども、日本のような「マタハラ」という言葉はまだないですし、そういう共通概念がないですね。なので、まだなかなか顕在化してきてないというのが韓国の状態です。

(山名)なるほど。ざっくりでしたけど本当にありがとうございます。

(小酒部)やっぱり顕在化している中では日本が一番深刻と言えます。

(山名)わかりました。次に、「少子化」。これもマタハラNetのほうでいろいろ調査したりとか、表にあげたりとか、ここにある著作の中であげてますけども、結構東京都は深刻なんですよね?ちょうど韓国の話が出ましたけども。韓国を笑っている場合じゃないぞ、と。これはどういうことなんでしょうか。

(小酒部)今、待機児童問題がかなり浮上していますけども、東京がいちばん少子化なのは、やっぱり保育園の数が足りてないっていうところで。あとは東京に一番人口が集中しているにも関わらず、東京がいちばん少子化だという状態だと、より日本の少子化を加速化させていますよね。そこは問題かなと思います。

(山名)今、ちょうど改正育児介護休業法がこの間通ったばかりですよね。

(小酒部)そうです。3月29日に参議院で可決されて全会一致で可決成立しました。

(山名)小酒部さんも、参議院で参考人として出席というか、持論を述べられたということなんですけども。そこらも含めて、マタハラだけじゃないんですけども、一番ホットな話題だと思うので、ちょっとそこらへんのお話を聞かせていただけますか。

(小酒部)今回の育児介護休業法と均等法の改正で、私たちマタハラNetが一番活動してきたのは、山名さんも宮下さんも記者会見に一緒に出てくれましたけれども、最も要望していたのが、非正規で働く人たちが育児休業を取得するためには三つの要件をクリアしないと、今まで使えなかったんです。その制度が海外から見てもかなり高い壁で、わずか4%しか育休から復帰率がないという要因になっているなと。「非正規の育休取得の要件を緩和してください、その高いハードルを少しでも低くしてください」というふうに活動してきまして、無事それが通りまして緩和に向かいました。

(山名)新しい数字は「1年6ヶ月」でしたっけ。

(小酒部)そうですね。まず、産休を取る時点で、それから、復帰する時に1年6ヶ月まで契約更新がされないことが明らかでないことという書かれ方をしているんですけども。

(山名)これは微妙なところですね。

(小酒部)そうですね。できれば私は、その未来の要件は入れないでほしかったです。

(山名)言葉は悪いけど、いくらでも悪用される恐れがあると。

(小酒部)ブラック・マタハラ企業だとこれを理由に「契約更新はもうないものだ」というふうに言ってしまう可能性があるので、出来れば入れないでほしいなと思ったんですけども、一応今回の法律では、それをやったらマタハラになるというふうに、棲み分けをするということになりました。もうちょっとカバーしてくれたらいいなと思うんですけど。

(山名)ステップバイステップということですね。まあ、改正。改悪ではないですよね。

(小酒部)そうですね。大きな一歩だと思います。こうやって育児法が緩和されることによって、介護法の方も緩和がされるんですね。そこがマタハラNetのねらいで、私たちは「すべての労働者の労働環境の見直しへ」ということを思っています。

(山名)妊娠した女性だけ特別扱い、ということではないですよね。

(小酒部)そうです。私たちは育児法の方に向かってボールを投げたアクションをとっているんですけども、そうすると介護法も連動するということはもちろん視野に入れて動いています。

(山名)そこらへんの話をちょっと詳しく教えていただけますか。

(小酒部)今、マタハラっていう問題は、これから企業に防止しなさいと義務化されてくるんですけども、マタハラを防止しないと、次にはケアハラスメント、今度は、高齢化で上司たちが親御さんの介護のために、介護休暇というのを取得するようになってくるんですね。その介護と仕事との両立を妨げるようなことをするのが「ケアハラスメント」(ケアハラ)です。

それから、女性が仕事と育児だけを担うのはやっぱり大変なので、これから男性の育児参加というのがものすごくキーワードになってくるんですけども、男性が育児に参加しようとする時に阻害されるのが、パタニティハラスメントのパタハラですね。

マタハラを解決していかなければ、次なるハラスメントとしてケアハラやパタハラっていうふうに連動していってしまいます。なので、今の段階でなるべくマタハラ防止をしていてほしい。マタハラが解決できなければまた次なるハラスメントにつながるんだってことを視野に入れながら、法改正してくださいね、というのがマタハラNetの要望でした。

(山名)結果的に、改正である程度是正されてきたんですけども、もう一つは、いわゆる企業は研修をしなきゃいけないんじゃないですかね。そこらへんも法制化されたんじゃないか、という話もありましたが。

(小酒部)そうですね。これからされていくと思うんですけどセクハラは、措置義務10項目というふうに企業に課せられてるんですね。例えば、セクハラが起こった時の相談窓口を設けなさいよ、とか、防止する啓発、周知徹底を企業の中にするために研修を受けたり、就業規則の中にそのようなことが防止されているというのを明文化しなさいよ、というものですね。それと、それにならってマタハラの方も措置義務ということで、たぶん相談窓口を設けることとか、あとは研修受けたりとか、というのが入ってくると思います。

(山名)研修を奨励しているのですか?それとも、研修を制度化しないと何か罰則があるよとか、そこまでは言っていないですか?

(小酒部)そうですね。日本の場合、義務化は課すんですけれども、義務化を怠ったとしても、その義務を果たさなかったとした罰則規定はないですね。なのでどちらかというと、奨励の方に近いと思います。ただ、大企業はやっぱり動いてくれると思うので、大企業から始まり、中小企業に流れていけば、「マタハラは恥ずかしいことなんだよ」っていう意識ですよね。いくら罰則をものすごく厳しいものをつけたとしても、やっぱり意識が変わらなければみんな守らないので、意識が変わっていけばなというふうに思います。

(山名)小酒部さんの著書を拝読していてちょっと面白いなというのが、「対抗するには恥の文化」というふうに書いています。

(小酒部)そうなんですよね。日本って結局罰を科さないというか、性善説のもとに法律がなっているんですよね。人間の性善説をやっぱり重んじているというか。なのでやっぱり、唯一マタハラを解決していく突破口は、日本には恥の文化があるので、恥ずかしいことっていうふうにみんなが思う、「マタハラなんかやってるの?恥ずかしくない?」っていうふうに言う。それから部下たちも上司に向かって、「そんなことやって、もう時代遅れですよ。」そうやって、恥ずかしいことだよっていうふうに常識を変えていくということがいちばん突破口になるのかなと思うんです。

(山名)社会に対してそういった気運を醸成していくというか、発信していくということですね。

(小酒部)そうですね。アメリカの場合ですと、懲罰的慰謝料っていうのがあるので、裁判を起こせば会社がもう何千万何億ととられてしまうというのがあります。

(山名)単純に損得で、どう考えても損するからそんなことをしている場合じゃないということですね。

(小酒部)そうですね。そうしたら会社としてはものすごい痛手だから、そんなことはしない、っていうふうな思考回路がアメリカのパターンなんですけど、日本の場合は懲罰的慰謝料というものも無いですし、義務化を怠ったときの罰則も無いですし、企業名公表ペナルティーもあるんですけども、なかなか公表を政府もしていかないという現状を踏まえると、やっぱりもう恥の文化に訴えていくしか、日本の場合ないんですよね。

(山名)企業名の公表、いわゆるブラック・マタハラ企業と、それと同時に著作の中でもいくつかの会社を取り上げられていましたけど、こういう会社は本当に素晴らしいと、逆に企業を褒めてあげる。そういう活動というのも、結構面白いのかなと思います。

(小酒部)そうですね。制度がいくらでき上がっても、結局産休・育休で人が抜けるとか、戻ってきても残業できないっていう、こういう働き方の違いを企業がどうやって受け止めてきるかという、受けとめ方の解決策がない限り、やっぱりマタハラが続いていってしまうんですね。できている会社はものすごくいろんな解決策でできているので、ぜひそういうできている会社の解決策、アンサーをどんどん情報として広めていって、できていない企業に教えていってあげたらなというふうに思います。

(山名)あともう一つ、最近のいわゆるマタハラNetニュースですか、中国人女性が民事勝訴したという報道がされていましたけど、これはマタハラNetとは関係ないのですか?

(小酒部)メンバーです。昨年の6月に合同記者会見っていうふうにしたときも、彼女も一緒に同席してくれて記者会見に出てくれましたし、マタハラNetのおしゃべりCafeというのを開いてるんですけど、直接みんな集まって、状況を話しあうっていうものです。

(山名)いわゆるオフ会ってやつですね。

(小酒部)そうですね。そういうのがあるんですけど、そこにも何回か来てくれて。強いですよね、やっぱり。裁判してその職場に戻るっていうことは、ものすごく精神力がいることですが、彼女は戻るつもりみたいなので、ぜひ同僚の方々は温かく迎えてくださったらなと思います。

(山名)どういった経緯があったんですか?もう報道されているし裁判に勝たれていますが、差し支えない範囲で、事例の一つとしてご紹介いただければと思います。

(小酒部)彼女はかばんメーカーで勤められていたんですね。彼女は中国の方でも日本語ももちろんペラペラなんですけども、中国語の通訳をやったりとか、中国の方にあるそのかばんの工場に一緒に同行して、通訳の役割をやったりとかされていたんですけども、妊娠の報告をした数ヶ月後に「もういらない」と。

(山名)会社側は実にストレートですね。

(小酒部)それで会社側が解雇してしまうとマタハラになってしまうので、会社側は理由をすり替えるんですね、「いや、妊娠が理由じゃないよ」と。「君の能力不足だ」というふうに言われてしまったのが彼女のパターンです。彼女は、「そんなことない」と。「能力不足であれば、こんな何年も雇うなんておかしいじゃないか」という話ですね。「これは妊娠が理由なんだ」というふうに、彼女は裁判を起こされまして、それが認められました。

(山名)弁護士さんも頑張ったんでしょうね。立証するってなかなか…。どの程度能力があるのかないのか、それを数値化するというのは難しいですし、会社側は会社側で、当然こんなひどいことをやっているということですね。

(小酒部)そうですね、ただ、いわゆる「マタハラ裁判」というのが2014年の10月にあったと思うんですね。最高裁が「妊娠を理由にした降格は原則違法だ」と。あの最高裁判決があったことによって、厚労省が通達を出したんですよ。今まで、妊娠を理由とした解雇や退職強要は違法と、「理由」というところが今まで切られてしまっていて、企業側が「妊娠が理由じゃない」と、「君の能力不足だ」と、「業績が悪化してるからだ」と別の理由にすりかえてしまうと、労働者側がそれを立証できなかったという厳しい状況だったんですけど、最高裁の判決によって、「妊娠を契機に、妊娠を期間で見ますよ」と「妊娠を挟んで前後はもう妊娠が理由だというふうにみなしますよ」という通達を出したんですね。なので今の中国人の女性のケースも、「妊娠を契機に」に入ると思います。

(山名)そういう画期的な裁判であり、画期的な通達だったということですね。

(小酒部)大きな一歩ですね。女性が声を上げやすくなった。今までその立証が難しかったところが、だいぶ立証しやすくなったというのがあると思います。

(山名)おっしゃる通りに、最初にもお話がありましたけど、基本、大多数の方が泣き寝入りしてしまう。泣き寝入りしなくてもいいんだっていうのは非常に勇気付けられる事象だったように思います。

(小酒部)結局、労働問題って労働者が声を上げることでしか解決していかないんですよね。こうやって全国の労働局に女性たちが声をあげるっていうことが始まった。ここがやっぱりマタハラ問題の解決の一番大きかったポイントだと思います。

声を上げる勇気が必要だなと思いますし、今保育園問題なんかも、1人の女性のブログからここまでムーブメントとか起こることもあるんです。

(山名)「保育園落ちた、日本死ね」ここらへん、どういうふうにお考えでしょうか。

国会ですごい悪質な、と言っても良いかもしれませんけれども野次を飛ばした方もいらっしゃるし、「表現方法は死ねというのは何ごとだ」とか、また、匿名の「そんなものを国会で審議するとは何ごとか」みたいなね。

いろんな御意見の方がいても当然なんですけれども、「マタハラNet」的から、というよりも小酒部さんご本人はどのようにお考えでしょうか。

(小酒部)国会で参考人に招かれたときも、「保育園落ちた、日本死ね」のお話をさせてもらいました。

そしたら、「保育園落ちたの、わたしだ」と言って、国会前に皆さん、プラカードを持って集まられたわけですよね。

マタハラ問題はですね、産休育休が取れずに、妊娠を理由に退職強要なんかされてしまいますと、就労証明がなくて、「保育園へ入れないの、わたしだ」になるんですよね。

(山名)そうですよね。

(小酒部)なので、「保育園落ちたの、わたしだ」も、もちろん大問題なんですけども、「保育園入れないの、わたしだ」も数多くいて、ここも合わせると、“一体どれだけの女性たちが、育児と仕事の両立ができていないか”というのが、また聞こえてくると思うんですけれども。

今まで、子育て世代の女性たちって声があげられなかった、あがってこなかった。

ところが、今、最も声が上がらなかったその女性たちからの声が上がりだし、また、それを社会が耳を傾けるようになり、ひとつ、“ムーブメント”、“大きな市民活動”と言っては何ですけども、“大きなムーブメントが起こり出しているな”と思います。

ぜひこれをですね、このまま良い流れにしていただいて、ここで大きく日本が、時代を変えると言ったら、大げさかもしれないですけど。

(山名)いや、変わってくるでしょうね。

(小酒部)そうですよね、大きな一歩の歩みを進めてもらいたいなと思いますし、日本ってなかなか自分から変わるってことを苦手とするんですよね。

やっぱり、島国で四方を海に囲まれ、ほぼ単一民族ですから、なかなか自ら変わっていくことができない。でも、自ら変わるのを苦手とする日本が、ようやく動き出したと。海外にいた時に言われたんですけども、「日本は確かになかなか変わらないね」「でも、変わり出した時はガラッと変わるから、そこに期待したいね」と言われたことがありまして、私たち「マタハラNet」もそこに期待したいなと思いますし、この大きな良い流れを絶やさずに上手く運べたらなと思います。

(山名)ありがとうございます。佐藤さん、いかがでしょう。

―― うーん、でもやっぱりそうですね。昔ながらの考えが自分にもこう染み付いている、さっきの昭和的っていう話ではないですけど、それが当たり前だと受け取っちゃうというところもやっぱりあったりとか、あと、うちも3月に卒園はしたんですけど、やっぱり認可というか、普通の、やっぱり安いところとかに入れなくて、それで認証保育園にという形で卒園したんですけど、金額も全然違いますし、結構大変な思いをしてる方はいるなぁっていうふうには感じましたね。

(山名)どのくらい違うんですか? 認可とか、渋谷区の。

―― ひと月で3~4万円ぐらい差が出ていて……

(小酒部)では、年間で考えると……?

―― そうですよね、一応何か補助金みたいなのが下りるんですけど、本当に何千円かが戻ってくるっていうので。もう、そっちに入れていたら、もうちょっと楽だったのになぁっていうのはすごくありましたね。

(山名)今度、待機児童の話もまたやりたいですけども、子育てをしていて、まぁ、保育園の問題もそうでしょうけれども、どういった苦労とかありましたでしょうか。

―― わたしの場合は、昨年、ちょうど1年ぐらい前に離婚をしてシングルマザーになったタイミングで、生活がガラッと変わったので、まぁ、そこの5歳とか4歳ぐらいの時から、また、その保育園を探したりとか、仕事もそこで引っ越しをしたので、またそこで仕事も探しつつ、保育園も探したりとかって言うので、やっぱり働き始めにくいというか、そこがすごく大変で。結局は兄弟(姉妹?)の会社にちょっと手伝わせていただくというような形で、正社員みたいなのは難しいなっていうのありますかね。

(小酒部)就職活動はされたんですか。

―― そうですね、一応して、でもそれこそ、「子どもは何時まで」「誰かが見てくれるんですか」とかってのが全くなかったので、「ちょっと、うちでは難しいです」とか、やっぱり、「パートではどうですか」っていう感じでしたね。

(山名)いろんな問題が複雑に絡み合っていますよね。

“イクメン”とか言いますけれども、実際、シングル、まさにシングルファーザーの方も結構いらっしゃって、じゃぁ、「こども作ったけどどうするの?」「作った方が悪いの?」みたいな話になりかねないんで。

本当に。何かそういった公的な補助ですとか、ないと、“日本滅びちゃうぞ”と勝手に思うんですけどね。

―― その不穏な状態というか、育児している女性、男性も含めて大変そうだなっていうイメージが若い世代に流れていってしまうと、やっぱり、「結婚って大変だな」「出産って大変だな」ってなっていってしまうっていう。ここが、やっぱりいちばん怖いなと思いますね。

(山名)まぁ、そうですよね。

妊娠した女性に対し、これはマタハラでしょうけれども、いわゆる“バリキャリ”という方もいらっしゃいますよね。子どもを作らずに、男性社会と言ってもいいんですよね、大部分が。男性で優位な企業で働いてる方からすると、甘ったれてるとかね。

―― ただ、一つの船に乗ってるんだなってことをやっぱり意識してもらえたらなと思うんですね。

結局、私達が子どもを産まなければ、その子どもたちが社会保障費を払えなくなってしまって、いずれ自分たちの年金にも降りかかってきますし、また、企業がマタハラなんかして、子どもたちを排除して、出産・妊娠させないようにしていれば、今度は消費者が減って、今度、企業のサービスや商品を買う人たちがいなくなって、いずれは企業にもブーメランみたいに跳ね返ると。

みんなに回り回って跳ね返る問題なんだっていう所で一緒に手を取り合っていけないかなと思いますね。

(山名)そうなんですよ。僕、最初に言いましたけども、子どもを作って、育てて、働きたい女性を表彰しなくてどうするんだと。

さて、「マタハラNetのおかあさん」と呼ばれている宮下さん。お待たせしました。宮下さん時代も、マタハラという言葉はありましたか?

(宮下)私の時はありませんでした。“妊娠を理由に解雇”というような言葉でテレビや週刊誌とかなどが、取り上げてました。

(山名)そこら辺のお話、もし、もうすでにオープンにされているんでしょうけども、差支えない感じでお話頂ければと思います。

(宮下)わたしは、子どもが4人います。第二子の時に、働き始めて3ヶ月ぐらい過ぎた頃、妊娠が発覚し、それと同時に切迫流産の恐れがあるとなり、緊急入院することになってしまったんです。

その報告を会社の上司、当時の店舗の店長なんですけれども、病院の電話からしたときに、その電話で、「妊娠をして、2~3週間休むなら辞めてもらうようになっちゃうよ」と言われてしまって、で、私、当時は何の法律も知らないですし、なので、「えー!そうなんですか」と返事をし「とりあえず元気になったら復帰はしたいんですけど、今もう安静にしてなきゃいけないので退院したらまたお話に伺います」と伝え、その電話を切りました。

入院中に社員の男性がお見舞いに来て、「店長が退職届を早く欲しがってるよ」みたいな形に言われて……。

(山名)あぁ、そういうの、お見舞いって言うんですね(笑)

(宮下)一応、なんか果物かなんかを持って来られたんですよ。その男性社員はすごく仲がいい子だったので、「僕が行きます」ってことで来てくれたわけなんですけども。

「えぇ?」っていう形で、ただ、わたしは何の法律も知らない“普通のおかあさん”“働くおかあさん”でしたので、さて、どうしよう……ということで、当時マンションを買ったばっかりで。リアルな話で。

(山名)それはまずいですよね。

(宮下)そうなんです。それなので、ちょっと金銭的にも大変だということで、元気になって病院から太鼓判をもらったので、復帰のお話をしに行ったら、店長はいなかったんですけども、当時の次長みたいな方にも、「妊娠したら辞めなきゃいけないんですか?」って聞いたらば、「いや、知らないよ」みたいな感じで社員の方も知らなくて、「ですよね、元気なんで復帰したいんですけど」って言って、ただ、店長は退職届を欲しがっているってことだったんで、「えー?」って形で納得はいかなかったんですけど、退職届に名前だけ書いたんですね。

でも、やっぱり店長と話をしてからじゃないとダメだって言って、その紙を置いて、「もう一回話に来ます」って言ってその場を離れたんです。

それで5日後くらいに行った時には「店長お話させてください」って言ったんですけど、「え、何の話?」「復帰させてください」って言ったらば、「いやいやいやいや、もう本社に退職届出してるから復帰は認められないし、妊婦がいると、お客さんが気を遣うから。だから、妊婦は雇えない」。

確かに、お客様にね、気を遣わしてしまうかなって自分も思うんですけど、ただもう体調も万全でしたし、「重い物を扱うようなことさえなければ、わたしは大丈夫です。1人目の時で様子もわかりますし、その妊婦の様子というか。なので、大丈夫です」っていう形で話をしたのですけど、でも、いろいろ暴言を吐かれて、「本当にもし、おなかの子が死んだら、この店に噂が立たないでしょう」など。

(山名)あぁ、そっちですか。

(宮下)あとは、「妊婦なんだからゆっくり家でのんびりしてればいいんだよ。お金のことなら旦那さんに考えてもらいな」みたいな。

(山名)昭和型といじめ型の掛け算ですね。

(宮下)そうですね。でもやっぱどうしていいのか、当時13年前なので、全然情報もわからず、ネットで“妊娠を理由に解雇”っていうのを入れたら違法だということを知りまして、当時は、“妊娠を理由に解雇されるのは違法”だっていうことで、「よし」と思って言ってみたんですが、「法がどうのこうの言ったって、人も職種に合わせて作られた法じゃないから、国が何かあったとき責任取れるわけないでしょう? だからうちの職種は無理だから妊婦はダメ」っていう形で復帰を認めてもらえなくて。

そうなんです、それで、一応、やっぱり証拠が必要かなって自分なりに思ったので、主人にも話して、で、もう1回話しに行こうっていうことで、テープレコーダーじゃなくて、なんでしたっけ。録音ですね、それを持って行って、一応その店長さんにも「録音させていただきます」って許可を取って、話をした時にはもう既に言葉をかえて、「あくまでも宮下さんの健康上の理由です」みたいに言葉を変えて、「でも、私は元気です。店長のおっしゃる健康上の理由というのは何ですか?」と聞き返しました。

そこだけをずっと主人と追及したら、「いや、妊娠をされているからですね」って言っちゃったんで……あまりにしつこかったんで(笑)

で、これで、「あぁ、そうですか。わかりました」っていうことで、その場を離れて、労働局にも何か月だったかなぁ、身重の体で暑い真夏に相談しに行きまして、労働局は、「宮下さんは何ら悪いことしてないですね」っていうことで。もう、藁をもつかむ思いで行ったので。

(山名)それは勇気が必要だったでしょう。

(宮下)

そうです、もうねぇ、どうしようもなく、もうこのまま結構、精神的にも追い詰められて。

暴言がすごく酷くて、このわたしが食べれない、飲めない、笑えないみたいな。

今じゃぁ、「どこが?」って言われるんですけど、本当にそんな感じで、すごく胎教にも良くないなっていう状況だったので。

それと、女性が多い職場だったので、労働局に行って相談してみるっていうことで、長男を連れて相談に行ったんですけど、そういう嬉しいお言葉をもらって戻ってきたらば、「一応、会社側にも確認をします」ということで、じゃぁ、私、復帰できるっていう形でちょっとルンルンしてたんですけども、労働局から連絡が入り、「会社側の顧問弁護士と話をしましたところ、ご本人の体調不良で、ご本人からの希望で退職なので、何ら違法なことはしていません」と。

一応、労働局側にも、“勝手に書かれて退職届を出された”というのも全てお話したんですけど、やはり、全然私の方を信じてもらえず、それで、「どうしますか?裁判しますか?調停しますか?何もしませんか?」みたいな。

今は、労働審判とかができたんですけど、当時は全く何もなくて、本当に裁判か、調停か、何もしないか、の3つだったので、わたしは事務的に終わらされた感じで、本当に“第2のハラスメント”を受けたような形で、更に、食べれない、飲めないみたいになってしまって。

もう、何も頼りませんということで主人と相談し、当時、本当に頼るところはネットのメール相談しかなくて、そこで出会った方に、「それは違法だし、戦いましょう」じゃないけれども……

(山名)それは弁護士の方?

(宮下)弁護士じゃないんです。多分、なんかそういう労働関係のやってるところだったんですけども、で、その方が私の自宅の近くの労働に強い弁護士の先生を紹介してくださったんですね。

それで、「よし、裁判するぞ」ということで、裁判しました。

(山名)で、基本的には勝訴した。

(宮下)そうですね、勝利的な和解になるんですけども。

(山名)その時点で、もうちょっと、お勤めになっていた会社に戻ろうとは思っておられなかった?

(宮下)いや、わたしは一応、復帰が条件だったので、第一条件が復帰だったので、それで、その休んでる間給料がなくなってしまったので、その給料保障とあとは、「今後、そこの会社で働き続ける女性のために妊産婦に対する法を遵守してくださいっていうような形を入れてくれない限り和解はしない」みたいな形で裁判を進めてたんですね。

本当に、ドラマで見るような裁判で、証人尋問をしたり、そこでやっぱり、会社側が嘘をすごい言ってきまして、「行ってもない日に行って、周りの人に、辞めますからお世話になりました」って言ったとか。

「えー!?」みたいな。

そうすると、それに対して、「わたしはその日はこういうことをしてました、そこには行ってません」っていう証拠を出さなきゃいけないので。

そういうやりとりで約1年、やっぱり会社側もその妊産婦に対する今後の働き方を遵守するっていうのを入れたくないって。それで、それを入れると……

(山名)逆に会社は法律と戦闘ってるんですね。

(宮下)そうなんです。それはそうなんです。

(山名)すごい会社ですね(笑)

(宮下)入れることによって、“妊娠を理由に解雇した”ことを認めることになってしまうので。

でも、私はお金よりも、もうそれを入れない限りは和解にしないということで1年闘って、向こうがやっと折れて、それを入れるっていうことで勝利的和解で解決したんです。

(山名)それはよかったですね。

(宮下)そうなんです。

本当に店長の暴言が、「一主婦が大企業相手にできることならやってみな」っていう、あれで、やっぱり、“泣き寝入りするしかないのかな”と、当時思いました。

(山名)その店長だってね、大企業をバックにしているだけで、「店長=大企業か」なんて思いましたけどね。

今の話を聞いて……まず会社は嘘をつく。当時の労働局、今もそうかわかりませんけども、役に立たない。

(宮下)当時は、そうですね。

(山名)本当に厳しい時代に闘われたんだなと思いますね。

(宮下)当時、わたしも、いろいろもう名前を出して、顔出して。

(山名)それも勇気が必要だったでしょう。

(宮下)でも、自分は何ら悪いことはしていない、なんで普通に妊娠して働き続けたいだけなのにそれがいけないの?っていう。

(山名)今、フランスで起こったら一面ってことですよね。そういうことですよね。

うん、ありがとうございます。

今まで一部からずっとお話頂いていましたけども、小酒部さんも実は、ご存知の方はご存知だと思いますけども、小酒部さんはNHKからAERAからいろんなメディアに出て自分自身のことをオープンにされていますが、じゃあ小酒部さやかさんはどんな人なんだろうと。なんでマタハラNetと、まぁ、フロンティアっていうね言い方しましたけども、始めたのかなという、そこら辺の話を聴取者に向けて、お願いできればなと思います。

(小酒部)そうですね、もう、わたしの被害体験をご存知な方も多いかもしれないですけど、詳しくは、筑摩書房さんの新書の「マタハラ問題」に書かせてもらったんですけども、わたしも、切迫流産、流産しかかってる状態のときに上司が自宅にやってきて4時間に及ぶ退職強要を受けました。

さっき、マタハラに遭いやすいパターンということで、“妊娠が順調じゃない女性”と、宮下さんの場合もそうなんですよね。

切迫流産で、わたしもそうなったときにマタハラされていると。本当に、こどもがどうなるかわからない、自分の体もどうなるかわからないっていう、精神的に辛い時に、仕事まで取り上げられるっていう、次々にいろんなものを取り上げられていくってところに追い込まれる。

その少しの間だけでも、見守ってくれるっていうのがなぜできないのかなと。

それは人として当然のことにも関わらず、そうじゃない対応をされるっていうところに、ものすごい激しい怒りを覚えましたね。

仕事を続けたい、宮下さんもそうですけど、わたしも続けたかったですし、それがなぜこんなにも叶わないのかと。

日本は均等法ができて30年ですけども、全く変わっていないというか、もう、“女性が家庭に入るのが当たり前”で、いまだにみんな多くの人が思っているし、女性の中でも、そういう想い、そうあるべきなんだろうなっていうのも思ってしまっていると。なんか、そこに一石投じたかったんですよね。

(山名)小酒部さんの場合は、いわゆる一般事務ですとか、営業だとか、そういう仕事じゃなくて、クリエイテイブな仕事をされていたんですよね。そういった会社でも、そういう風潮ってあったんですか?

(小酒部)会社自体は別のサービスを扱ってまして、たまたま、わたしのプロジェクトが雑誌の編集業務という、会社の大きなサービスとは全く異なるプロジェクトだったんですね。だから余計、代わりの人がいないっていう状況でした。

なので、わたししかその業務がわかってないっていう状況でしたし、そうですね、会社全体と……その、自分が妊娠して初めてわかっていくんですけども、次から次に上司たちが、やっぱり、その“昭和の価値観を押し付け型”の頭の思考回路なんですよね。

だから、1人の上司が片付いたなと思っても、また次また次と、“ゾンビみたいにいろんな人にマタハラされる”っていうのがまぁ、信じられなかったですよね。

いちばんの原動力は激しい怒りだったんですけども、声を上げた当初は、やっぱりパッシングがすごくって、「マタハラ問題」って、こう、なぜ起こるかって言ったら、“マタハラしたっていいじゃないか”、と思ってる人たちがいるからこの問題があるわけで、マタハラNetを立ち上げるときには、そういう人たちからバッシングが来るだろうなーとは思ってました。

(山名)その、今おっしゃっていたストーリー、最初はなんかちょっとフィクションが入っているんじゃないっていうみたいな、ちょっと半信半疑で読ませていただいたんですけど、これ完璧にノンフィクションなんですよね。

(小酒部)そうです。その、「労働審判」っていうのをわたしやったんですけども、それが終わった後、すぐに書き出しましたし、実際、労働審判に使った証拠からも抜粋していますし、何といっても、私の場合、録音があったので、上司の会話はほぼ録音から、録音があるところは全部、録音から書き起こしているものなので……

(山名)ですよね。この筑摩書房新書、小酒部さやかさん、初めての著書ですけれども、これひとつ読めば、マタハラ、社会的・経済的・政治的どうなってるのかっていうのもわかりますし、ノンフィクションとしても、面白いと言っては怒られてしまいますけれども、こんなことが実際にあるんだっていうね。

(小酒部)そうですね。あの、褒め文句と捉えたいんですけれども、面白いっていう反応が多くて、特に私の被害体験のところが、やっぱり、知らない人にとっては本当にこんなことあるんだっていうちょっと物語っぽく読めるのかもしれないんですけど。

(山名)ただ、これは、“決して他人ごとではなくて”、いつか、過去かもしれない、宮下さんのように。これからかもしれない、やってくるかもしれない。自分ごととして、全ての女性に読んで頂ければ。

あとは、女性だけじゃなくて、企業のトップマネジメントの人含めてと。本当に、いい本なんですよね。レビューなんかでもね、こういうレビューがあったんですよね。インターネットで挙げられていますし、匿名だからここで紹介してもいいと思うんですけども。

「女性が主張すると、“面倒くさい女がまた騒いでいる”という印象を持ってしまう人も多いと思います。でも、本書を読んでそれは全くの誤解だったと思いました。マタハラ問題の全てが書かれた本だと言っていいと思いますが、中でも初めのほうにある著者自身の体験談がすごかった。」

これ、多分女性の方だと思うんですけども、私も全く同じ意見なんですね。同じ感想を持ちました。

「こんなに無理解でバカでリスクマネジメントできない上司がいるのが信じられませんでした。著者は一方的に上司を悪者扱いしていません。なんとか歩み寄ろうとし、説明しようとし、女性だから感じる悩みや不自由さとうまく付き合いながら、リスクを回避して最善のことをしようとしているだけです。なのに、理解しようともしない、威張っているだけで無能な男性上司がいかに多いのかと想像させられました。」

まだ続いてきますけれども、確かに、こういうふうに読まれた方は多いのかなと思います。

―― 今、宮下さんや小酒部さんも含めて、すごく、こう、リアルなというか、お話を伺ったんですけど、なんか、こう、本当に日本のひとつの職場のすごく残念な部分というのを見るような感じもしますし、でも、こういったストーリー自体を、こうやってみんなで共有していくということがすごく大事で、やはり、まだラジオって、よくこう昔の言い方だと“文化の入り口”というか、“ラジオが一つの文化のきっかけだ”っていうふうにとらえられた時代もあったと思うんですね。

多分、これからもその部分って、実は変わってなくて、もし、男性が上位みたいなね、或いは結婚したら奥さんは家を守るんだとか、そういう文化みたいなものがあるんだとしたら、やっぱり逆にこの『渋谷のラジオ』とか、こういった番組では、「いや、そうじゃない」と。もっとこう、そういうのが当たり前と思ってるのがさっきの小酒部さんの話で言ったら、「恥ずかしいことなんだよ」ということを、こういう実際のいろんなリアルの話を通じて、みなさんに感じ取っていただけたら。それがこの番組の意味なのかななんて思いながら聞いてました。

(山名)そうですね、こういった“ラジオで情報を発信していって何か、何かを変えていく”。非常に大事かなと思います。

ちょっと話を戻しまして、先ほど赤裸々な告白をしていただきました宮下さん、宮下さんの方に寄せられているメール相談、その辺をちょっと御紹介いただければなーっと思います。

(宮下)はい、えっとですね、わたし、メール相談を担当して、もう1年以上になるんですけど、ここの代表の小酒部が立ち上げてから、だいたい、もう250件ぐらいのメール相談が寄せられてるんですね。

でも、やはりみなさん、本当に藁をもつかむ思いで、寄せてきているような内容ばかりで、わたしも本当に、「泣き虫おかあさん」なんで、、メール相談を読みながら、泣きながら返信を書いてる状況で。

(山名)あ、そういうことだったんですね。

なぜ、「泣き虫おかあさん」と自分のことを呼ぶのかなと。今、理解できました(笑)

(宮下)みなさんのメール、寄せられるメールは、自分の当時の感情もフラッシュバックしてみたり、それと同時に、もうちょっと声をわたしがあげていれば、こういう想いをする人が少なかったんじゃないかなーって、代表の小酒部もそうですけど、わたしがちゃんとやってれば、っていう想いとか……あぁ、また泣いちゃう。そういう想いが、こうこみ上げてきちゃいましてね。

最近寄せられたホットな相談は、妊娠19周目に流産されちゃった方がいたんです。

で、その方がやっぱり、あの、流産しても産休が取れるので、やっぱり精神的ショックに、体力的にも産休を取らせてほしい、ということで産休を取って、体調も良くなって復帰したんですけども、産休前は上司との関係がすごく良好でよかったらしいんですが、復帰してからはもう関係が悪化してしまって、上司からも「産休を取った人に良い評価は与えられない」っていう発言をされてしまったり、そういうことで、会議中とか、怒鳴られたり、その関係も悪化したり、人格を否定されたりして、結局夜も眠れなくて、耐えられなくて転職をしちゃいましたっていうようなメール相談来まして。

そういうふうに流産してしまって、辛い想いまでしたのに、それでもやっぱり会社に復帰したいって言って復帰したにもかかわらず、そういう扱いをされてしまってね。

(宮下)ほんとに、この上司の方、自分の身内だったらどうなんだって私は思ってしまうんですよ。でも、この相談者が、本当に他の人のためにもっと闘えば良かったかなとかも言ってるんですよね。

あとは、専門職で契約社員で10年働いた会社に復帰を求めたんですけど、「復帰しても、ポストがなくて、アルバイトしかないよ」って。時給換算になって、給与も4割程度、昔の4割程度になってしまったり。、この方はもう本当に「出産により、ペナルティを与えられたようだ」って言ってましてここの会社の方で男性の方なんですけどね。

男性が結婚して出産の時は、男性にはプレミアムがつくんです。結局この女性の方も、でも“やっぱり我慢して働くしかない”って言って働き、その条件を飲むしかないんですね。それで、2人目をセーブしようか考えているっていうような。

(小酒部)ご自身のスキルだってアップしていくでしょうに、その分の評価って一切ないということですよね。

(宮下)本当にそういうような、本当に藁をもつかむ思いで、皆さんメール相談来るんですね。

(小酒部)企業側は安く買いたたいてるようなもんですよね。

(宮下)本当に地方の方でも、やっぱり地方だと周り中が「昭和の価値観押し付け型」じゃないですけど、そういう感じで、誰にも声を上げられないって言ってメールを下さった方がいたり。相談相手も近所にいらっしゃらないみたいですよね。

だから、もう頑張って復帰はしてるんですけども、もう辛いです。もっと、マタハラNetさん、声をあげてくださいっていうようなメールが寄せられたり、本当に今、育休取れて産休で復帰するときに、復帰する場所がなかったり、そういう、今、復帰に関しての相談がすごく、多くなってきてます。

(山名)復帰はさせるけど、今までみたいな仕事はやれるかどうか。という問題もありますよね。

そうじゃない方が沢山いるっていう話は私が前に勤めていた会社でも女性社員から聞きましたけども。

(宮下)復帰してすぐに異動になってしまったとか、とりあえずは復帰させるけど。

(山名)それは辞めろってことですかね、

(小酒部)異動も結構、自分は勤務地として近い所だったんですけども、片道1時間半の所に異動させられるような、要するに、閑職に追いやるとか、困難な勤務地にして自分から辞めるように仕向けてるっていう。企業の方も巧妙になってきてるんですね。もう妊娠が理由の退職勧告とかは違法だってわかっているので、そうやってネチネチといじめをすると言うか、ある意味、余計悪質になっているというふうにも言えると思います。

(山名)昔、今でもそうでしょうけども、いわゆる中年の社員、給料高いから早く切りたい。

(小酒部)そうですね、同じ手法ですね。

でも、本当それって、ボディーブローのように精神的にくるというか、自己否定にもつながってしまうんですね。

自分って必要とされない人間なのかな?自分は社会と繋がってる必要がない人間なのかな?っていうふうに自己肯定感がものすごく低くなってしまう。

そうすると、自分が妊娠したせいかしら、下手したら、自分のお子さんのことに向いてしまう。あぁ、この子さえいなければ、というふうに向かってしまうパターンもありますし、先ほどもコメントありましたけど、第二子がもう考えられなくなってしまった。まぁ、マタハラ被害に遭った女性たちはみんなそうですけれども、「もう次考えられない、また同じことがされるんじゃないか」というふうに、言ってるんですね。

(山名)子どもができたせいで、社会から、会社から、見捨てられてしまった。みたいな、ですね。まさに“負のスパイラル”ですよね。

(小酒部)はい、負のスパイラルです。

産む希望を持っている女性が今、少ないにもかかわらず、その産む希望がある女性にさえ産ませないっていうことが起こっているのです。

逆に育児しながら働く女性が社会・職場にいることによって、男性の長時間労働を是正するベクトルに力が向くことだってできるでしょうし、先ほど話したようにこれから上司たちが介護休暇を取る時代になっていく。

その時に、じゃぁ、どうするのと。

みんな、残業できて当たり前で働ける人たちは少なくなってくるんだよ。

みんな何かしらの時間的制約を持って働くようになるんだよっていうところで、どうやって職場の中で回していくかってことを企業が考えていかないと、もうこのまま馬車馬みたいに働くような働き方は出来なくなりますから。そこに目を向けてもらいたいですよね。

(山名)まぁ、先ほどもおっしゃたように、ダイバーシティの考え方になると思いますし、あと、個人個人で言えば、ワークライフバランス、自分自身が一体、どういうふうに考えるのか、まさに昔で言えば。馬車馬のように働くっていう。まぁ、そういう方がいらっしゃってももちろん、いいんですけども。

(小酒部)そうですね、ダイバーシティというのであれば、残業残業って仕事好きなんだって人は働いていいと思うんですけど

(山名)男性・女性問わずですね。

(小酒部)そうですね、それがスタンダードになってはいけない。日本は今それがスタンダードになってしまっているので、そうじゃないんだっていうふうにしたいですよね。

―― やっぱり、こう仕事を探す上とかでもそうですけど、会社の言いなりになれない申し訳なさっていうのを若干感じてる面もあったので、そうじゃなく、こう、みんなで協力してじゃないですけど。ってことがきれいごとなのかなっていう探す上で思う部分がすごくあったので、もっと、みんなで働けるような、子どもだったり、老人の方の介護する方だったりがうまくできればいいんですが。

(小酒部)そうですよね、だから産休育休取る側も残っている人たちに迷惑かけてしまうほことは知っているので、あまり言えないというか、申しわけなく常に思ってるから、マタハラもそういうところがあって、マタハラされてる自分が嫌な思いしてるっていうのはわかっているんだけども、自分も会社に迷惑かけてるから、もう、黙って辞めるというか。っていうのもありますね。

(山名)でも、黙って辞めても、次にまた同じような条件で仕事があればいいんでしょうけど、日本ってそういう社会じゃないんでね。なんで辞めたんだ、、こういうことをしたからだ。今でも脈々と、特に大企業なんかはね、30数年働いて、そういうことが本当にいいのだろうか。

佐藤さんのお話も一種の愛社精神だと思うんですよね。当然、そういう属している組織に対する愛着もありますし、頑張ろう、とかですね。それが、度を過ぎちゃうと一体どんなもんかなぁと。

(小酒部)あと、長時間労働で仕事を生んでいるところもないですか?

(山名)と言いますのは?

(小酒部)会社に居続けることによって、また余計な仕事増やしたりとか、あとはもう長く働くのが前提だから全然決断していかない、決めていかない、ジャッジをしていかない。それで余計延びていくとか。

もうあらゆる方向から検証するっていうのをやり過ぎてしまって、最初のこの三つくらい検証すれば済んだねっていうところも幅を広げてしまったりとか、余計な仕事を生んでいるところもあると思うんですよね。

(山名)それは、やっぱり昭和的な価値感なのかな? 上司より先に帰れない人とか、そうすると評価が下がるとかね。今でもあるみたいですよ。そういうの。

逆に今まで頑張ってください、マタハラNet、というような話をしてきましたけれどもじゃぁ、君たち何やってるの?みたいな、そういう事例もちょっと紹介していただければなと。

(小酒部)企業の社長さんから連絡をもらったことがあって、うちの会社では、妊娠したら絶対に辞めてもらっていると。

それで、辞めていく人たちも、マタハラだなんて言ってきたことはないと。

で、出産した後も子どもを連れて自分に見せに来てくれていると。

これが本来あるべき形だと潔く辞めるっていう、そういう潔さをなぜ君たちはわからない。そういうメールをもらったことがあります。

(山名)そういうのはどうやって返すんですか。

(小酒部)(笑)貴重なご意見ありがとうございました、と返します。

でも、そういう意見をもらうと、この方は育児しながら働ける成功事例を全然ご存じないんだろうって思いましたし、やっぱり、そういう成功事例というものをもっと出していかなきゃいけないなと思いますし、うまい解決策を持っている企業の情報発信というのがものすごい必要だなって感じますね。

(山名)そうですよね、そして、我々はやっぱり褒める、そういう企業をね。そこで、尊大な言い方かもしれませんけど、そういった企業をどんどん公表して。

(小酒部)そういう昭和の価値観の頭の経営者はやっぱり経営者の話に耳を傾けやすいというか、一般の私たちが、いくら、これが経営戦略なるんですよって言っても余り聞いてくれませんので、経営者の方には経営者の方から発信してもらうのがいいかなって思いますね。

(宮下)わたしは、今、某飲食店で働いているんですけど、そこの社長さんとお会いしたときに「産んで戻って来させていただきましたー」って言った時に、「いやぁ、こういう女性がいてくれて、こういう女性のパワーがあるから、うちのね、会社が伸びるんだよ。ありがとうねぇ」っていうふうに言っていただいたんですね。やっぱりその会社の上の方のね、考えひとつでこうやって変わっていくのかなって思いましたね。

なので、その各店舗の店長さんもそういうような対応になってくれるので「妊娠しました」って言っても、「じゃぁ、元気な赤ちゃん産んでね」っていう形で「帰って来てまた一緒に働こうね」って言っていただけるので

(山名)その話は救いになりますね。

(小酒部)ちなみに、今、日経DUALで月に一回連載させてもらっていて、『小酒部さやかが行く、マタハラの無い企業はここが違う』っていう、連載をやっていて、できている企業の成功事例特集をやっているので、そういうところも読んでもらい、ちょっとしたヒントでできるようになるので。日経DUALで調べていただければ。

(山名)次回からは、先ほど申し上げましたように、今月のマタハラ情報」をはじめ、先ほど言いましたけども、少子高齢化、それから子育て支援とか、各方面でそういった活動をされてる方をゲストにお呼びしていろいろとお話を聞いていきたいなというふうに思ってます。

今日はありがとうございました。


テキストライター/藤本篤二郎さん(前半)、加藤 美鈴さん(後半)

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