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ファンだったわたしが『天然生活』 の休刊(倒産)から復刊の経緯を調べたり考えたりしてみた

かなりの長文になってしまいました。
今日は7月5日です。
ですが、事態は3月4月に起こっていたことです。
知ってる人には「何を今更」案件ですが、今朝知った私には超絶ホットな話だったので、めちゃ調べてめちゃいろいろ感じた経緯をまとめました。


『天然生活』版元破綻、雑誌休刊に驚く(情報遅い)

「えええええ〜〜〜」
びっくりした。今朝知った。寝起きのツイッタチェックでたまたま、リツィートされて回ってきた情報だった。

『天然生活』休刊。
というか出版社の地球丸が倒産していただなんて。
びっくりした。
あと、自分の情報の遅さにびっくりした。2月末の話だってよ。

かつては月に20冊は買ってたほどの雑誌フリークだったわたし。書店やコンビニの棚は随時チェックしていたから、今までだったらそんな気配はすぐに嗅ぎつけて調べてリリースしてたのに、ワシもおいぼれたもんじゃな……

とかなんとか独り言は置いといて、だ。
とりあえず飛び起きて、一気に調査開始である。

地球丸、2019年2月28日付で倒産

とのことで、しかもなかなか急展開だったんじゃないかとネットでは囁かれていた。地球丸からの最後の発行となった『天然生活』3月号にも、普通に次号予告が出ていたようだ。特集も連載も変わりなく、きちんとしたボリュームの告知がされている。月刊誌のペースだったら当然取材も何号分も進行していたはずだ。

会社畳むにも、発行を止めるにも、準備する時間があるなら、きちんとお知らせをしているはず。何しろ”ていねいな暮らし”界隈では老舗。丁寧が口癖のわりに、いきなりずいぶん雑じゃねーか、と格好の突っ込みどころである。だから、そんな間も無くまさに青天の霹靂だったんだろうな、現場は。

ああ、想像するだけでなんかザワザワする…。

2019年、8月20日に扶桑社から復刊

それから半年後の8月20日に復刊の号が、扶桑社から発売されるんだそうで、えっ、もうすぐじゃん。
ごめん、かつてあれほど全号もれなく揃えていたのに、ここ数年立ち読みもしてなかった。。

『天然生活』は倒産後、4月10日付で扶桑社に事業譲渡されていたらしい。

以下抜粋。

2003年に創刊した『天然生活』は、雑誌としては初めてナチュラル・スローライフをテーマに取り上げ、小さなこだわり、小さな暮らし、ていねいな暮らしを楽しむリーディング・マガジンとして、幅広い年齢の読者に根強い人気があります。

扶桑社では、「天然生活」の事業を譲受することにより、暮らしの質にこだわりをもつ新たな読者層や広告をブランド化し、本誌とデジタルの連携(WEB,SNS,EC)を積極的に行い、幅広いビジネス展開を目的としています。
また、創刊38周年を迎える総合雑誌『ESSE』とのシナジー効果を得ることで、女性向け媒体総合力の更なる成長を図り、幅広いライフスタイル提案を創出してまいります。

とのこと。

扶桑社ってあんまり自分では買ってた印象はなく、どうもゴシップ的なというか『SPA!』の印象強いし、意外だな…と思ったら、ESSEがあった。となると、トンマナは若干違えどもライフスタイル系の素地はないわけではない、と。栗原はるみの季刊誌『haru-mi』、またファッションだと『Numero TOKYO』もまた、扶桑社だった。


売れなきゃ続けられないが、人気コンテンツならば、再生のチャンスは訪れる

わたしはかつて『天然生活』のバックナンバーを全部持っていたくらいのファンだった。流石に保管しきれない!ということで、思い切って処分し、ここ数年はすっかり購入もしなくなっていました。同時期に、ライフスタイル系の雑誌が大量に出てきた時期なのもあったかも。

とはいえやっぱり安定して発行されているという事実だけで、なんだか安心するし満足していた。年々雑誌が減っていく中で、続いてるな〜よしよし、と。だがしかし、雑誌もプロダクトも、事業である以上は売れないと続けられない。売れなければ存続できないのである応援したいなら、買わなくちゃダメなんですよ、消費者は。ホントこれに尽きる。前にも下記のように、今回みたいに勢いで書き散らかしたnoteがあるのですが…。

幸いなことに、『天然生活』はファンが厚い。しかも結構年齢幅が広く、おそらく30代から60、70代まで。家事の技を披露する出演者も、いぶし銀なおばあさん層がでてくるようになったなあ…と思ったこともあったっけ。
雑誌がネットに取って代わって売れない時代と言われても、やっぱり雑誌で読みたいと言って買ってくれる世代のファンが多かったのが功を奏したのでしょう。まあコンセプト的にも”ていねいな暮らし”なので、SNSやウェブでクイックに情報を得る、というよりは、

ていねいに挽いて淹れたコーヒーを窓辺で飲みながら
時折、雨音に耳をそばだてる。
そして、ゆっくりと天然生活の頁を繰る。そんな休日。

的な。
そういう文脈を醸成できていたので、とにかく残すべき事業だったのでしょう。それにしても、出版界(雑誌界)では激震だったのでは。

そのなかで、扶桑社が手上げしたのはなんでなのか、他の出版社では上がらなかったのか、出版社的には欲しい事業なのかそうでもないのか…その辺の事情も聞いてみたいが…。一体誰に聞けば教えてくれるのやら。


SNSは「ブランドの生命線」となる

倒産となった出版社・地球丸のWebページは当然消えている。
これまでの情報はウェブに集約されていたから、版元のサイトが消えてしまえば当然、自動的にそれまでのコンテンツは全部消えてしまう。これこそがウェブならではの便利さと表裏一体のスーパードライなとこでもある。

ところで『天然生活』もPRツールとしてfacebook、Twitter、InstagramというSNSを運営していた。これまでの更新頻度は決して高いとはいえなかったのだけど、朴訥として目立たないけれどきちんと自分たちのスタンスで綴っていた。アカウントも、これまでのものを継続している。しかもまったく、シームレスに。まったく波風たってない。「編集部が扶桑社へ引っ越しました。」と穏やかなトーンで言っているのに驚いた。
まあ、読者にとってはこれからも変わらぬトーンで発信を続けるよ、ということが伝えるのが何より大事ですからね。例えば、アーティストやタレントが所属事務所が変わるくらいのことで、その当人自体が変わらなければ、それだけでファンは安心なのだ。裏側のドタバタを知りたいなんていう人はごく一部ですよね(わたしのことですよね)。

本体のPRツールでしかなかったSNSが、本体が一時的になくなった現在では『天然生活』というブランドの生命線となっているのだ。

そこから垣間見るに、どうやら主要スタッフはそのまま扶桑社へスライドする形で、継続できていそうである。多弁でない文章の「いろいろありましたが…」の一言から、大変な時間を過ごしたのだろうなと想像できる。

スタッフが全変えなどすると、雑誌の名前はそのままなのにトンマナもターゲットも路線も変わって、ファンからしたら「いっそそれなら名前変えてくれ!廃刊にしてくれ!生殺しか!」(某クウネル騒動みたいに…)なることもあるのですが、どうやら、穏やかなトーンで綴られているので、ひとまず穏やかな時間が流れているらしく胸をなでおろした。

ツイッターのフォロワーは2万人。

インスタは、5万9千人!(なぜか文字化けしてるけど…)

もちろんこのフォロワーが全員雑誌を買ってるわけではないにせよ、濃度はともかくファンがこれだけいるということは事実で、これをみすみす捨ててしまうわけにはいかない。感情的にも、打算的にも。だ。

倒産と同時にそのまま廃刊となれば削除となったであろうそれぞれのアカウントも、体制を整えて復刊までファンへ向けた発信を続けることができている。長年のファンにとっても、わたしにとっても、胸熱案件だ。

PRツールではなくて、もはやSNS自体それぞれがメディアとして自立している。(内容は3種類とも同じなので媒体特性で分けて欲しい気もするけどそんなこと言ってられない。何しろ存続するかどうかもわからないところで、編集スタッフも自身の身の振り方だって見えない状況だし…わかる、わかるぞ)


倒産(破産)と事業譲渡のはなし

さて、『天然生活』は地球丸から扶桑社へと”事業譲渡”されている。事業譲渡というのは要は”売られる”ということで、譲渡されたのが4月10日付ということだから、1ヶ月くらいは宙ぶらりんな状況だったはず。

雑誌の現場は、編集長(※)や編集者は出版社の社員で現場スタッフが外注というイメージが強いけれど、そのまま『天然生活』事業と一緒に人員も丸ごと受け入れたんだろうなあ。あと気になるのは、バックナンバーとか、関連書籍を一度店頭から引き上げたのか、その空白の1ヶ月のうちの売り上げ?ってどうなったんだろうってこと。2月20日に最新号が発売されてその8日後に倒産しているのでほぼ流通していないのではないか…。はあ、つら。もっと早く言ってよねという気分になるな。。(既視感ある…)

※編集長は社内の人事で出世という形で就任する場合と、ディレクター的に外部の著名人や力のある人をアサインする場合とあるかな。


出版事業が斜陽と言われる昨今とはいえ、人気の厚いコンテンツである『天然生活』だから、普通に考えると扶桑社は地球丸が存続しているうちに交渉によって譲渡へ進めていたか、倒産後、その破産管財人からそれなりの価格で買い取ったということになるのかな。

…と思ったら記事出てた。「破産管財人との協議により」ということなので、事前の譲渡の話などはなかったっぽく、扶桑社に権利移行するまでの1ヶ月の売り上げは破産管財人の所に入って、譲渡後の売り上げは扶桑社に、ということかな。


扶桑社へ譲渡のバックストーリーが見えてきた

そんなこんなで今日は朝からずっと『天然生活』とか倒産(…)について調べているのだけど、どうやら創刊時の編集長だった小林孝延さんという方が、Numeroの編集長(創刊時から編集人だったらしい)で、扶桑社へのラインが太いようす。

小林さんがご自身のインスタでも『天然生活』の譲渡について紹介しているので、おそらくご本人も尽力されていた模様。小林さんは編集者のキャリアからいくつかの雑誌の創刊に携わり、出版界ではかなりの重鎮の気配。
存じ上げなかったのだけど、インスタを見ていたら保護犬保護猫の情報が多かったり、「おとーさん」の記述があるなど、なにやら目に馴染みのある風景。石田ゆり子さんとの保護仲間らしくもあり、桑原奈津子さんの”パンといっぴき”の画角に似てたりもあり、思いがけずわたしが好きでウォッチしている界隈が繋がっていてほっこりするなど。

今となっては石田家の一員となったはちみつ兄弟の写真のポスト。

おべんとうといっぴき。なカットに、「今日から「天然生活」編集部がジョインします(ベンチャー企業風に言うてみたww。」というポスト。


一連の情報にたどり着いて、ほっこりしたし、かつ胸熱ではあったけど、創刊時の編集長の小林さんと扶桑社のつながりがあってトントンと1ヶ月足らずで着地できたのだとしたら、逆にそういう条件がなかったとしたら、どうなっていたんだろう。あと、たとえパイプがあったからってすぐに受け入れられる訳でもないだろうなと思うと、1ヶ月で決断したのは扶桑社すごいんじゃないか?とも思わされる。

今回の休刊〜復刊は、出版社が不採算部門を損切りするみたいな話とは違って、会社自体がなくなる(しかも整理する間も無く…)という状況だったのだけど、きっと気づかないけどそういう事柄って毎日どこかでいくつも起きているんだろうなと思った。

総括

長くなりましたが、長らく愛読していた『天然生活』だったこと、倒産・休刊・復刊という非常に関心のある経緯だったこと、なにより情報を得たのが遅すぎる自分への戒め(?)もあって、主観だけでなくちょっと調べながら時系列でのまとめとなりました。

まあ調べていく中で、素敵なお話や素敵な方を知るきっかけにもなったのでよかったよかった。

今後はきちんと『天然生活』のSNSをウォッチして、8月の復刊以降はきっちり”買って応援”していこうと決意しました。

もしもサポートいただけましたら、私もまた他のどなたかをサポートしてサポートの数珠つなぎをしていく所存です!!