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ワープロの商品企画(2) − 仕組み作り

 創造性とか独創性に関しては、本質、宣言、システムの3つの要素が、ビジネスを安定化させるには、絞り混んだオンリーワンの表現が大切だという話をさせていただきました。

 しかし、ビジネスを安定化するためには他にも大切な要素があります。それは仕組み作りという要素です。仕組み作りというのは、組織作りという意味ではありません。

 この仕組み作りは、システムの発想=構造把握の延長になりますが、自分が構造を把握できなくても、人から教えてもらう形でも大丈夫です。

 ある方が、労働者は時間を売って対価をもらい、投資家はリスクを取って対価をもらい、企業家は仕組みを作って対価をもらうという話をされていましたが、この仕組みを作るということは、組織の中で活きる人にも大切ですが、特に自分自身で起業したり、個人業をされている方にはとても重要な話だと思います。

 分かりやすい例でいうと、書院に関しては春と秋のモデルチェンジを定期的に行っていました。春にフルモデルチェンジを、秋にマイナーチェンジを行い、開発はほぼ一年毎、というパターンでした。

 このパターンはどうして生まれたかというと、ワープロの最大需要期が冬であり、年賀状商戦がワープロの勝ち負けを決めるという状況があったからです。冬のシーズンに向けて、秋にモデルチェンジを行います。この時点でフルモデルチェンジを行なって、トラブルが起きたり、目玉の新機能がコケたりすると、シェアが一気に下がり、事業がおかしくなります。

 ですから、秋の段階ではマイナーチェンジに割り切っていました。しかし、春に出た商品をそのまま冬の商戦に使うと、他社に比べて古く感じられ、見劣りするので、マイナーチェンジにより、新しさを訴求した訳です。
しかし、ベースは春に開発した機種であり、市場に投入することにより、様々なフィードバックが来ています。目玉機能が弱ければ強化できるし、表現も変えることができます。また、営業マンやインストラクターの教育をする時間もあれば、不具合やトラブルに対応できる時間もあります。

 このように、フルモデルチェンジとかマイナーチェンジの時期を決めるだけでも、仕組みを考えることになるのです。自動車は、四年でフルモデルチェンジ、二年でマイナーチェンジが定番です。私は自動車業界のことは詳しくないのですが、多分、ビジネス的に考え込まれたモデルチェンジをされているのだと思います。

 他にも、様々な仕組みがあります。例えば消耗品ビジネス。これは商品を売るのではなく、商品を売ることによって、それに関する消耗品を売ることを主目的とするビジネスです。有名なのは複写機のトナーとかです。

 シャープの昔に複写機を1円で入札したと話題になったことがあります。複写機の多くは、複写機よりも交換するトナーで利益を稼いでいました。ですから、本体を1円で販売しても十分に元は取れたのです。今は適切な価格で販売されていますが、昔は本体をただ同然で販売するみたいなことは多く存在しました。ワープロ自体も額は多くなかったものの、インクリボンや推奨紙といった消耗品の売り上げと利益はバカに出来ないものでした。このようにメインの商品やサービス自体でなく、別の面で売り上げや利益を出す方法もあります。これも仕組みです。

 最近、キングコングの西野さんが話をして有名になった「矢沢のタオル」という話があります。これは西野さんなりの分析ですが、歌手の矢沢永吉さんは音楽コンテンツの収入より、コンサートの時に販売するタオルの収入がメインではないか、という話を書かれていました。コンサートの最後にタオルを放り投げるというパフォーマンスがあるのですが、そうするとタオルを無くす人も多く、毎回コンサートの度にタオルを買うと、その売り上げがバカにならないのではないかと思います。

 このようにメインの商品やサービス以外で売り上げや利益を作り出しているところも多いと思います。あるファーストフードチェーンは、商品の売り上げより不動産収益が多いといいますし、権利収入みたいなものも多いかもしれません。どちらにせよ、ビジネスの仕組みを考えるにあたり、どこで売り上げをあげるか、利益を上げるか、そういうことを考えることは必須です。

ビジネスの基本(8):ビジネスの仕組みを考える

 それから新規顧客か既存顧客かという話も仕組みの話です。ワープロに関していえば、新規顧客が半分、既存顧客の買い替えや買い増しが半分といった比率でしたが、どちらにフォーカスするかで、ビジネスの仕組みも変わってきます。

 ワープロの場合は、今まで作った文書や住所データがそのまま使えることが、買い替え、買い増しの時に書院を選んでもらう重要なポイントだったので、そこにはずっとこだわってきました。一般の商品やサービスでも、新規顧客を重視するのか、既存顧客を重視するのか、両方を重視するのであれば、そのバランスをどう取るかは重要です。

 既存か新規かの話でいつも思うのは、携帯電話会社の話です。買い替えを促進するために、ずっと同じ会社のものを使っているユーザーよりも、頻繁に買い変えるユーザーを優遇してきました。互換性とか慣れの話もあり、同じ会社を使い続ける人も多いので、ビジネス的にその戦略は分かるのですが、ほとんど同じ会社を続けている私のようなユーザーには、やはり釈然としないものがあります。

 飲食店で、常連さんを無視して新規さんを大切にしたら常連さんは来なくなるし、常連さんとだけ話をして新規さんを蔑ろにしたら、新規さんが来なくなる、みたいな話です。同じ会社の携帯電話を使い続けたらメリットがある、そういう常連さん優遇の話があったら嬉しいと思います。

ビジネスの基本(9):新規顧客と既存顧客のバランスを考える

 既存顧客と新規顧客の話は、実はビジネスが積み上げ型かどうかに深く関係してきます。これは、狩猟と農耕の違いをイメージしていただけば分かりやすいと思います。

 狩猟はある程度、獲物を取って獲物が少なくなったら移動して新しい狩場を探さないといけません。農耕は少しニュアンスが異なります。田畑を一度作ればメンテナンス的な仕事をするだけで、毎年の収穫が可能になります。

 こういう一度ベースを作ってしまえば、あとは安定的にビジネスが営めるビジネスのことをストック型ビジネスと呼ぶ方もいますが、毎年、新しいお客さんを探して苦労するより、ある程度、定期的にお客さんに来てもらえる仕事の仕組みを作ったり、安定的に販売できる商品を考えたりするのも仕組み作りの一つです。

 私も退職後、コンサル塾とか企業塾とかに入ってビジネスの勉強をしています。企業の中での仕事は経験もあるし、自信もあるのですが、企業を経営したりした経験がないので、そういう塾に入って勉強をしているのですが、どこでも仕組み作りの大切さを強調されます。

 最近は、特にストック型のビジネスということで、フロントエンドとかバックエンドの話をされるところが多いと思います。物やサービスに溢れる時代、自分の商品やサービスを体験してもらったり、自分という人間を知ってもらうことは大切です。だから、あまり価格を高くできないのですが、逆に価格が安すぎるとビジネスとして売上も、収益も出てきません。

 そこで考えられたのが、フロントエンドとバックエンドの考え方です。フロントエンドで、お客さんに安い価格で体験してもらい、バックエンドで売上や収益に結びつく、商品を販売するというスタイルです。通販でいう、お試し商品がフロントエンドと考えていただいても構いません。このフロントエンド、バックエンドの話に限らず、こういう仕組みについて考えること、学ぶことはビジネスにおいて必須だと私は考えます。

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