シフティングを使う(3)

3. ビジネスで使う

 目的別にシフティングがどのような形で利用できるかみてみましょう。まずはビジネスの分野です。もっとも分かりやすいのはエリアシフト、相手と自分の意識の分離を無くすことにより、セールスなどのコミュニケーションがとても楽になります。普通の説明では商品やサービスを説明する時に、機能説明が多くなったり、突っ込まれた時の防衛的表現が多くなったりして、説明が長くなる傾向になります。それが、相手と一体化することにより、機能説明が少なくなり、その商品やサービスを使った時の楽しさや嬉しさが説明の中心になり、説明が短くなります。そして、答える方も抵抗感が少なくなります。

 ある程度、人間関係ができている場合はクレイムを受けるということをやる場合もあります。これは相手と一体化する感じか、相手が笑顔になる感じで、クレームを聞くのです。ロールプレイであり、真剣に怒っている訳でもない関係もあり、クレーマー役の人が途中でクレームを言えなくなったり、途中で笑い出したりします。これはサービス全般に使えるノウハウだと思います。

 もちろん社内のコミュニケーション全般にも使えます。上司から部下への指示の仕方、関連部門への依頼の仕方、取引先とのコミュニケーション、全てに活用が可能です。そして業績アップにつながるだけでなく、社員のメンタル面の改善にもつながると思います。最近、社員のメンタル面のケアに悩んでいる企業にとってとても有効なツールになるのではないでしょうか。以上がエリアシフトの活用です。

 次に活用できそうなのはペルソナシフトです。だれか別の人の意識に入る感じで、その時、ふと感じる気持ちを感じたり、思いを話したりするものですが、様々な活用パターンが考えられます。一番分かりやすいのは、商談相手の中に入ってみて、どう感じているのか、何を気にしているのか、何を求めているのかといった情報を引き出すのです。

 東京である方に集客に悩んでいるという話を相談されて、一度、代表的なお客様の意識に入って私の質問に答えていただきました。宣伝や告知を見てどう思うかを尋ねたのですが、ご本人が「媒体が間違っている、ラインとかが良い」とか答えられて、その後ラインでの集客を始められたと聞きました。同じようなケースで、お客様の意識に入ったら、自分のサービスは敷居が高いと気付かれた方もおられます。そのようにお客様の意識に入るというのは、代表的な活用のひとつです。

 集客ではセールスレターとかが大切だといわれます。またウェブ集客ではランディングページの大切さなどが言われています。こういう場合は、セールスレターを実際に書いてみたり、ランディングページを実際に作ってみて、お客様の意識に入ってどう感じるかを検証しながら精度をあげていくという方法も考えられると思います。

 それから、有名人や尊敬する人に入るというアプローチもあります。名古屋で本田宗一郎さんの意識になったつもりでご自身の問題をみてみてヒントを得られたエンジニアの方がおられましたが、同じようなアプローチは様々な分野で出来るのではないかと思います。

 過去の有名な科学者や技術者、発明家の意識に入ってみて、科学的、技術的な問題をみてみると、思わぬ解決法とかヒントが見つかるかもしれません。そうしたら、科学や技術の面で大きな進歩が起こるかも知れません。医療とか製薬の部分も同じです。また、経営に関する問題に関しては、尊敬する経営者の意識に入って考えてみると経営が上手く行くかもしれません。

 あとタイムシフトで未来の自分になってアドバイスをもらうことも可能です。事業の将来の状況を読み取り、その変化のターニングポイントがいつなのか、その要因が何なのかを確認することが可能です。もちろん、自由意志の世界なので未来が確定されている訳ではありませんが、現在の意識が読み取っている、一番可能性が高い未来に関する情報を知ることは可能だと思います。

 そして、もっと有効なものはディファインシフトだと思っています。ディファインシフトで、自分の定義や自分のビジネスや事業の定義をする訳です。これはビジネスの世界でいう経営理念やクレドを明確にすることと同じです。この経営理念やクレドを明確にすること、明文化することの重要性がビジネスの世界でも認知が広まってきました。また、この話はブランディングの世界とも連動しています。私もシャープという会社のブランド事業本部という部門にいましたが、経営理念やクレドとブランディングとは密接な関係にあり、ブランディングにも有効です。

 このように、シフティングはビジネスの様々なシーンにおいて具体的な活用が可能だと、私は考えています。

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