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海外旅行に行くならポラロイドカメラ

心が綺麗なうちに書き残しておこう。

shifukuをやる随分昔、まだ二人とも会社勤めをしていた頃、ニューヨークに旅行に行った。

イタリア旅行に行ったときにポラロイドカメラで撮っていたら(冒頭の写真)イタリア人が珍しがって寄ってきて知らない現地の人と話ができたのが楽しかったことに味をしめてニューヨークにも持って行った。

セントラルパークを歩く。
遠くを黒色人種の青年がチャリンコ人力車で、颯爽と駆け抜けていく様がすごくカッコよくて、思わず撮影した。

ポラロイドカメラは、撮影時の音が大きい。遠いからとたかを括っていたのだが、彼が気づいてこちらに向かってきた。

やばい…
まずい…
絶対金よこせって言われる…
(ものすごい偏見)
怖すぎて早すぎて逃げることもできなかった。

「それなあに?」
笑顔だ。

「ポラロイドカメラだよ」
「えーかっこいい!今俺のこと撮ってたよね」
「これね」
「○◉$×△□♡▼◎〜!!
やっば!超かっけー!なにこれ、シャッター押したらすぐでてくんの!?すっげー!すっげー!すっげー!」

あれ?なんかいい人…すごく喜んでるし。
目がキラキラしている。

「あげるよ」
「えっ!!!」
「プレゼント」
「…」
「走ってる姿がすごくカッコよくて思わず撮ったの、だから君にあげる」

「…わかったありがとう、じゃあお礼にこれに乗れよ」
「えええええええええ!ダメダメダメ!払う、ちゃんとお金払うよ!」
「大丈夫、乗って」

まだ完全には信じていない。どっかに連れ去られたらどうしよう。すごい偏見そのニ。
まあ、なんとかなるだろう。そしてあとでお金を払おう。

私たちは人力車が好きだ。奈良に行った時、はじめての街で少し戸惑っていて(どこに行ったらよいかわからない)人力車に乗ってみたら色々説明されながら街を回れたのでそのあとスムーズに街を歩くことができたし、なによりも風をきって気持ちがよく、楽しいのだ。だから人力車にはとても良いイメージをもっている。しかしニューヨークでも、しかもセントラルパークで人力車にのることになるとは。

想像して欲しい。
圧倒的な緑の中。天気も良い。
風を切って走る人力車、本当に気持ちがよかった。
セントラルパークは広いということは知っていたが、こんなにも広いのかと。歩きでは全ては網羅できなかったなあ。しかも青年は色んなフォトスポットで立ち止まり、写真を撮ってくれる。最高か。

建物や、広場や、石像の説明なども沢山してくれたが、私たちはそんなに英語に詳しいわけではないので、全部を理解できなかったけど、彼の愛はすごく理解できた。

心が通じていれば、言語なんてわからなくてもコミュニケーションはとれる。色々観光案内をしてくれたけど、一番鮮明に覚えてるのはそういうことではなく、彼自身の話だった。

「休みの日は何をしてるの」
何気なくきいてみた。
「なにも。みんな(家族や仲間)と過ごすよ。
こないだ花火があがったの。みんなで見て、すごく幸せだったなあ。」

その頃の私たちには、休みの日に何もしないということに生きてる感を見出せなかった。
絶対私たちより若者(下手したら10代なのかも)が、なんかすごいこと言ってる。
歳も住んでる場所も時代も関係ない。知ってるか知らないかだけ。

私たちは休みがあればどこに行こうとか何を買おうとか。そしてその行為に一喜一憂していた。何かをしようとすればするほど不満がつのるのだ。

でも彼は自分と家族と仲間が存在していることに幸せを感じて生きている。
今ならわかる。でもあの頃の私たちは心をザブザブと洗われた。

すごく楽しかったし、色々目から鱗で、とにかくお礼がしたくて。お別れが来た時に私は絶対に絶対にお金を渡すのだ、私たちにはそれしか感謝の意を表すことができない、いらないと言われても絶対に受け取ってもらわないと気が済まない、そう思って、いくらなの?ときいたけど彼は横に首を振るだけ。それでも無理矢理お金を渡そうとする私に彼はまっすぐに、爽やかにこう言った。

「僕は君たちに会えたおかげで今日という日が本当にハッピーな日になった。東京とニューヨーク、離れていても僕達はもう友達だ。だからね、いいんだよ、お金なんていらない。ありがとう。ニューヨークの街を楽しんでってね」
と去っていった。

頭をガーンと殴られたような。

感謝の気持ちをお金を渡すことでしか伝えることができない自分の貧しい発想への絶望感と、
もう、在るから大丈夫という豊かな発想への感動と。
写真をプレゼントしたからそれに対してお礼をくれたのに更にお金を渡そうとする私の意味不明さ、おしつけ、傲慢さ。
もうなんか色んな感情が綯交ぜになって泣きそうになった。泣いてたかもしれない。

彼の言った文章を見てちょっとうるっと来た人、
病んでるわー。心が汚れてるわー。
それは私も同じでして。
私はいつか、こんな風に存在することができるのだろうか。いや、できないと思う。人間の資質の問題。でもこんな風に生きている人もいるんだってことを知れて本当によかった。それだけでもギブアンドテイクで生きていた私たちの人生はかなり変わったはず。

ロン毛 ピンク 自由だなー

あの時の青年に会ったらお礼を言いたい。
あなたに会えたおかげで私たちは今日も自由に生きていまーす。


#たまプラーザ #なにやだろ#良い話#ニューヨーク#海外旅行#ポラロイドカメラ#人力車


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