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デジタル課税は筋が悪いと考えてる /2018/11/02 The News Masters TOKYO出演まとめ

『GoogleやAmazon、Facebookといった巨大なIT企業が、国境を越えたサービスで巨額の利益を上げながら、現状の国際課税ルールでは十分に課税できていないことからG20などで見直しが検討されてきました。

しかし議論の進展は遅く「結論を待てない」としたイギリスが、新たなデジタル税制を2020年4月から導入すると公表しました。課税の対象となるのは、年間の売上高が5億ポンド=およそ720億円以上で、経営が黒字状態にある企業。オンライン広告やネット通販などでイギリスのユーザーから得た収入に2%を課税するというもの。イギリス政府は年4億ポンド=およそ570億円規模の税収を見込んでいます。』

タケ小山「これニュース見たとき、やるんだぁって思ったんですけど。デジタル課税の議論っていうのは、なかなか少なかったですよね。でも、一気にニーズが動いたってことですか?」

自分「そうですね。本当はグローバルに全世界で動いてほしかったんですけど、こういう大きな企業を抱えているアメリカとしては『何で課税するの?』という話になると思いますし、中国も大きな企業を抱えているので自分のところが有利になった方がいいという考えがあります。

で、ヨーロッパを見てみると、EUとしては全体でやりたいんだけども、EUの中の小さな国…例えばルクセンブルクとは税金が安いからGoogleとかAmazonとかの本拠地があるんですね。そうするとそこに税金が落ちる。だからEUの中でも足並みが揃わない。でもイギリスは離脱する。『だったら、先にやっちまおうぜ』という流れだと思います」

タケ小山「イギリスらしい発想なんだけども、そもそもIT企業のデジタル課税っていうのは僕は“あり”だと思ってたんです。松浦さんはどうですか?」

自分「僕は“なし”だと思ってるんです」

タケ小山「その理由は?」

自分「生活に跳ね返ってくるから。例えば、みなさんGamilはタダで使ってますよね?タダで使ってますけど、そこはある意味たくさんの収益を得ていて、それで色んな研究開発が進み、そして便利になっている。Googleっていう企業が支えられてると思います。

これがいきなり“課税になります”、“課金になります”となる。『Googleカレンダー』とかもすごく便利に使ってますが、課金になります。『radiko.jp』も電波ではなくオンラインを通じてみなさまに届いているその技術のバックエンドにGoogleやAmazonの技術が使われてるとします。これがデジタル課税になり、収益があがると、税金の支払いでお金がかかってきてしまうので、例えば『radiko.jp』が有料になるとか、デジタルが密着しているところで消費者が支払うコストがあがってくる可能性が容易に想像できるんですね」

タケ小山「僕が思うのは、コンピューターの中っていうのは本来空っぽで、その中でGoogleが入っていてメールが使えるようになったりクラウドが使えるようになったりするけど、ある意味『動かすソフトをお金を払って入れてるからでしょ』っていうのが、僕ら消費者のイメージ。

所得の再分配で、所得の格差がありますけど、いわゆる所得を平等にしましょうっていうのが“税”だと思っているから、儲かっている会社は、税は取ってもらった方がいいんじゃないかなってやっぱり思うんだけど、そうじゃないんだ?」

自分「ある意味、広告表示とかを通じてその税金的なものが全世界の人に一様にかかってるからこそ、一様に全世界の人々がGoogleのサービスを使える、Amazonのサービスを使える、とも言えると思うんですよね。だから、巡り巡って全世界の方々が平均的にどこに行っても使えると考えるのであったら、私はデジタルやソフトウェアに強い会社っていうのは、もちろんそれぞれの国で税を納めるべきだと思うところもありますが、だからといって上乗せで税金を収めるのは、ちょっと筋が悪いんじゃないかなと思います」

タケ小山「そのロジックで言うと、今回イギリス単独でデジタル課税をやりますけど、これできますか?」

自分「できるとは思います。そうするとGoogleは何をするかというと、Androidと呼ばれているスマホに入っているGoogleの無料ソフトとかを無料ではなくします」

タケ小山「じゃぁ、イギリス圏内は(無料ではなくなる?)」

自分「もうすでにEUでは『Googleのソフトを入れるときはお金がかかりますよ』っていうのは、Google言ってるんですよ。宣言してるので、それがどんどん(広がって)そのコストが巡り巡って、オンライン上で無料で使えていたものが少しずつコストがかかるようになってくるというのは十二分に想像できます」

タケ小山「でもそうなると、Googleを使わないで他のものってことになってこない?」

自分「そうですね。そうすると、イギリスの中だけでGoogleに代わるものが開発される。そもそも中国も、GoogleとかFacebookとかを遮断して、自国で強い企業のテンセントとかを生み出してきたので、(イギリスも)そうなってくる。

でも、そしたらせっかくのグローバリゼーションで、どこに行っても同じものが使えるっていうのが、『使えなくなる未来(に変わること)』が果たして良いのだろうか?悪いのだろうか?っていう風に考えて、今世界は少し分断化みたいな形で動いてます。

だから、世界で一様に同じサービスがどこで使えるようになってほしいな、と思っている身からすると、筋が悪いなと考えます」

タケ小山「将来、日本がデジタル課税の対象になるかならないかは分からないけども。eコマースで莫大な利益を生んで、資産を増やしていっている方たちがいますよね。その人達にかかってる法人税の割合っていうのは、ほかの業種とあまりにも乖離してる。製造業なんかは、原材料を加工して売っている中に技術料が入ったりしているんだけど…。

(ITは)空間の中でプログラミングをして製品を作ってので原材料はなくて。自分の“脳の中”に(原材料は)あるって言われると終わってしまうんだけど、貧富格差は今回の消費税ですごく出てきてる。同一にかかってきてるけど、本当は付加価値税なんじゃないか、と思うんですが。

結局、売ってもお金がかかるし、仕入れのときもお金がかかる。中小企業の方には、非常に重くかかってしまっている“税”を考える中で、潤沢に資金が入ってくるというところ(ITやデジタル関連)では、もう少し税金が大きくかかってもいいんじゃないかなって」

自分「そこのバランスの問題ですよね。実際、インフラでどのくらい入ってきているかの実感がないというのも事実なので。

例えば、お手元のスマートフォンの中で日本国産以外ののアプリってどのくらい入ってますか? むしろ、スマホの一画面目に日本のアプリがものがいくつありますか? これ、実際かなり少ないと思いますよ」

タケ小山「多分、今俺スマホ見たらないね。あ、でも“乗り換え案内”とかは日本か」

自分「そう、そういうのが一部ありますけど、それは日本ローカルな話。結局、グローバルで利益を得ている会社からのサービスを、我々は知らず知らずのうちに受けている。というのを、実感として感じていただきたいですね」

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タケ小山「今ね、AGFA(Apple、Google、Facebook、 Amazon)これなくなっちゃったら生活できるっちゃできるけど…」

自分「できるっちゃできるけど、結構企業でGoogleとかFacebookとか。マイクロソフトも大きな会社なので、そのインフラを使ってる会社がたくさんあります。というか、使っていない会社を探す方が難しいぐらい。」

タケ小山「それは僕たちがITの中に取り込まれていって、知らない間に生活の一部に変わってるってこと?」

自分「そうです。生活のインフラの一部として、日本だけに限らず世界中のインフラに入り込んでいる」

タケ小山「国をまたいだネットビジネスの世界では、すでにユーザーも国を超えたところに行ってしまっているということで、『その税をとるにはどうしましょうか』って後付けてきたってことだね」

自分「そうですね。だからこそ、“国と国”ではなくて“国と企業”という形のバランスの悪さっていうのは、これから出てくるテーマなのかな」

タケ小山「でもイギリスは難しいテーマに食いついたわけだね」

自分「そうですね。それから知ることはとても多いと思います」

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▼放送後の補足

目に見えないからわかりづらいけどね。広告っていうビジネスは、そういう意味では超富豪でもそうじゃなくても一様にビジネスの対象になる。世界中で均してって考えれば、富の再分配してるともいえるという視点です。国が税金で巻き上げて、それが本質的にそれぞれの人の手元に返ってくるかもしれないけど、国によってそのバックが全然違うし。まあ、そしたら国を移ればなんだけど、ハードルがそこは高いので。金銭的な格差はここで出ちゃうところもあるし。


クリエイターというわけではないですが、受けた支援は自分のモットー「みんなでしあわせになろうよ」のために使います!