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オンラインイベント取材を考える

最初に、言い訳をしておきます。これは昨今の流れである、イベントのオンライン化を否定するものではありません。取材し、メディアに記事を寄せるライターという視点から見て、オンラインイベントとオフラインイベントにどのような違いがあるのか考察するものです。私個人の「好き・嫌い」はどうしても入ってきますが、「良し・悪し」を論ずる意図はまったくありません。

そもそもオフラインイベントのとき、私は何をしていたのか

前提から考えてみましょう。コロナ渦でイベントの大半がオンライン化する前、私は何をしていたのでしょうか。そして、どのような部分に価値を見出していたのでしょうか。

かつて私はクルマを運転し、イベントが開催される会場まで足を運び、イベントを取材し、記事を書いていました。私なりにポイントとしていたのは次の2点です。

1. その場に行った人でなければ触れることのできない情報を取材する。
2. 触れやすいメディアを通して、その場にいなかった人に情報を届ける。

JAWS-UGでも大きなイベントになれば、数百人が集まります。しかし、行きたいと思った人が誰でも行けるというほどの敷居の低さではありません。イベント開催地までの交通費もかかるし、有給休暇を使う必要もあります。そこで、私のようなライターが現地に行き、参加できなかった人に向けて情報を提供することに価値があると思うのです。場合によってはセッション内容について別取材を行ない、内容を深堀りすることもあります。つまりオフラインイベントにおいては「現地にいて」「イベントに参加した」「メディアに寄稿するライター」だから提供できる価値があったと思っています。

オンラインイベントになって何が変わったのか

端的に言うならば、先の段落の最後の一文がそのまま逆転したと考えています。「現地に行なくてもいい」「イベントにはどこからでも参加できる」「メディアに寄稿するライターもいち参加者も得られる情報は同じ」になったのです。

現地からニュースを伝えるのではなく、ニュース番組を見て、そのニュースの内容を伝えるような。これを深堀りできればまた一歩変わるのですが、現地でのアフタートークどころか名刺交換さえできませんから、容易では在りません。

誰もが同じ熱量でイベントに参加できるようになったことは、イベント参加者にとっては喜ばしいことだと思います。四国に住んでいる人と同じ負担で、四国クラウドお遍路に参加できるし、北海道にいる人と同じ感覚でkintone Café 札幌に参加できます。だったら、興味があるイベントにはどんどん参加しちゃえばいいじゃない、いつまで経ってもアップされない私のレポートなんて待たずに。素直にそう思っています。そうなんです。私のレポートなんか待つ必要ないんです。

結局レポートを書きたくないだけ?

私のレポートなんて不要でしょと思いつつも、Webサイトに公開されているオンラインイベントのレポート記事はちょいちょい読んでいます。1時間のセッションをこぎみよく10分程度で読めるレポートにまとめてくれていたり、もしくは見逃してしまった、気づいていなかったイベントのレポートを読んで興味を抱いたり。そう、読者の視点としてはその有用性はわかっているのです。ここに、私のごく個人的な葛藤があります。

ライターの視点から見れば「気になるものはレポート記事なんか待たずにYou自身が参加しちゃいなYo!」と思うのです。スマートフォンで動画見るのと変わらない手間ですし。

でも読者の視点から見れば「やっぱり文字でまとまっているとサクッと要点をつかめて嬉しいよね」と思うのです。

似た仕事を引き合いにして、これからの私の価値を考える

オフラインだったものがオンライン化したからライターとしての価値が変化しているのだろうなと思い、似たものについて思いを馳せました。先にニュース番組の例を挙げましたが、映画やテレビドラマなどについての紹介記事というものがあります。これらは劇場に足を運べば同じ体験ができるし、ドラマは見逃してもオンライン配信などで追いかけることができます。ライターも視聴者も同じ体験しかできないのに、紹介記事には存在意義も需要もあるのです。そこから振り返ると、イベントがオンライン化したいま、ライターとしてやるべきことも見えてくるのかなと考えています。いまはまだ腹落ちしていませんが。

もしかしたら、映画で監督の別作品を引き合いに出すように、関連イベントの情報を示してあげることが読者のメリットになるかもしれません。あるいは同じ人が過去に喋ったセッションについて紹介すれば、その人の背景をより想像しやすくなり話に説得力が増すのかもしれません。いずれも、その業界を追い続けているから持てる引き出しであり、オンラインでもオフラインでも変わらない強みになるはずです。まあ、いまはまだ腹落ちしていないんですが。

※ 写真は フリー写真素材ぱくたそ から使わせていただきました。

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