「対症療法」と「自然治癒力」の助けをかりて病を治す

『「薬を飲んで、病気を治す」というのが、一般の方が抱きがちなイメージだが、残念ながらそれは多くの場合で間違いだ。ほとんどの薬は、病気を完治させるほどの効果はなく、病状を多少改善させる程度の力しかない。ところが医療業界では、そのような「そこそこ有効性があるが病気は治らない薬」であるほど、かえって製薬会社の利潤につながる構造がある。患者は延々と治らない薬を飲み続けることになるからだ。こういう言い方をすると目くじらを立てる方が多いだろうが、「生かさず殺さず」という程度の薬のほうが製薬会社にうまみがあるわけだ。~製薬会社の収益の源泉は、当然ながら医療費である。日本は1961年に国民皆保険制度を導入し、今では保険診療で医療を安く受けるのがごく当たり前の風景になっている。医療費の自己負担は多くても3割で済み、残りの7割以上が保険料で支払われる。医療費があまりに高い場合は、高額療養費制度も整えられており、自己負担限度額の上限まで設けられている。これは世界的にも賞賛される、患者にとって素晴らしい制度であることに異論はないはずだ。ただし、サラリーマンの給与明細で、社会保険料負担が年々上がっていることはすでにお気づきだろう。それもそのはず、高齢化も影響し、国民医療費は増え続けているからだ。国民医療費の1人あたり負担額は33万3300円に及び、国民医療費の財源の約39%が公費、約49%が保険料であり、患者の自己負担分は約12%に留まっている(2015年度)。すなわち、製薬会社の利潤の多くは税金や保険料が出どころ、ということになる。~その高額売上リストを見て気づくのは、病気を完治させる薬がほとんどないことだ。飲むのをやめてしまうと効果がなくなるため、必然的に年単位で飲み続けることになる。それは、私のような医者の立場から言えば、定期的に通院してくれる患者(固定客)を獲得することになる。一方、製薬会社の立場に立つと、このような治らない薬こそ長期的に安定した収益をもたらす「儲かる薬」となるわけだ。病気をすぐに完治させてしまうような特効薬は短期間しか使われないため、商業的な観点からはあまりうまみがあるとは言えない。~抗生物質は新薬が開発されたとしても、なるべく使わないようにして、ここぞという時だけ処方し、しかも必要最小限の期間だけ使うべきとされている。医学的には正しい対応だが、製薬会社としては、あまり処方されず、短期間だけ使われる特効薬ではまったく儲けにならない。新薬開発には多くの労力と投資が必要なため、抗生物質ではそれに見合う収益が期待できないと考えられており、新薬の開発が進まないことが国際的にも問題となっている。~医療においては、新薬が古くて安い薬よりも優れるとは限らない。しかし、同じ効果で安い薬よりも高い薬価の新薬を積極的に処方するように、医者に対して、あの手この手で製薬会社のマーケティングが繰り広げられる実態がある。~いずれにせよ、医薬品処方を決める医療現場においては、製薬会社の経済的合理性と医学的な妥当性は必ずしも一致しない場面がある。製薬会社の販売促進と患者にとっての良い医療とが、矛盾することもあるのだ。国民皆保険の存続が危ぶまれる中、この業界タブーに対してはもっと社会的な議論が盛り上がってもいいだろう。さて、一般のビジネスパーソンは、「血圧やコレステロールが高い、痛風や糖尿病と診断された」というとき、一体どう対処すればいいだろう。病気になったから薬を飲む、という方法は、問題の単純な裏返しに過ぎない。たとえて言うなら、スポーツアスリートがトレーニングを軽視して、薬に頼って安易にドーピングに走るようなものだ。味気ないアドバイスと思われるだろうが、安直に「生かさず殺さずの薬」に頼るだけでなく、生活習慣全般を見直すという地道な努力を、イチローのように長年にわたって傾け続けることが必要だ。』

「対症療法」と揶揄する事がよくあるが現代医療のほとんどは「対症療法」なのだ。また、原因不明の病には「原因療法」は到底できず「対症療法」と「自然治癒力」の助けをかりて病を治す他に方法は無いのだ。

”治らない薬”が一番いい!?医師が明かす製薬業界「不都合な真実」
ドキッとする話です
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64131

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