私も老化は病気ではないと考えています。

『「自分はそんなに長生きしたくないから、関係ない」一方でそんな声も聞こえてきそうです。ただ、人生100年時代は、そうかんたんに死をむかえられる時代ではなくなります。1960年代、日本人の平均寿命は70歳前後でした。当時は脳卒中や心筋梗塞のような、突然おそってくる「急性疾患」によって寿命を終える人が多くいました。健康に気をつかう人もそうでない人も、70歳前後で亡くなっていたのです。~このように日本では多くの人が高度医療の恩恵にあずかるようになり、かつてのように急性疾患で亡くなる人は減りました。ただ、長生きできるようになったぶん、晩年を寝たきりや認知症になって過ごす人の数は年々増えています。~いま生きている人は、人生の途中で仮に急性疾患になっても助かる確率が上がりました。ただ、助かった後、体力が病気前と同じレベルには戻らない可能性があります。私たちの体は加齢によってそれなりに老化が進行していくためです。急性疾患に加え「老化」も心配しなければならないのが「人生100年時代」です。私たちは急性疾患や老化で衰えた体にむち打ち、100歳まで生きねばならない確率が高まっています。あるいは認知症や寝たきりのように、健康を損ねた状態で晩年を過ごす可能性が高いのです。しかしながら、私たちの人生100年をサポートしてくれるはずの現代医療にも問題が横たわっています。最大の問題は、いまの医療システムが「人生70年時代」から更新されていないことです。本来なら、医療は人生100年に合わせ、急性疾患の予防だけでなく老化を遅らせる方策、認知症や寝たきりにならないための方策を患者さんに提供するよう進化していなければならないはずです。ところが現代医療はまだ、圧倒的に急性疾患への対応に重きをおいています。病院の診療科が臓器別・器官別になっていることからもそれはわかります。腎炎なら腎臓専門医、肝硬変なら肝臓専門医が対応します。しかし、個別の病気を診ることのできる診療科はあっても、全身の老化に対応できる診療科はありません。~人生100年時代は急性疾患が減ったかわりに、健康と病気のあいだを「老化」というキーワードがつなぐ時代です。どこからが病気でどこからが健康かの明確な境界線がない時代なのです。そのような時代にあっては臓器別や器官別の疾患だけでなく、全身の老化によって起こる症状について的確な医療や生活習慣改善のアドバイスができる医師の存在が不可欠です。それなのに、いまだに私たち医師は高血圧症のような生活習慣病も「病気扱い」をして、急性疾患と同じように薬による診療をおこなっています。ただ、私にいわせれば生活習慣病は「病気」ではありません。「老化」です。老化に薬で対応しようとしても無理なのです。体に負担をかける生活習慣によって引き起こされた高血圧症、糖尿病、高脂血症は、病気ではなく「老化」です。生活習慣や加齢からくる筋力低下、認知機能低下も「老化」です。ときには血圧を上昇させるような病気が別にあり、それが原因で高血圧を引き起こしている場合もあります。しかし、そうでない生活習慣由来の高血圧症は、「病気」ではなく「老化」だと私は考えています。生活習慣病の患者さんの体は、長年、体に負担をかける生活習慣によって老化が進行しています。高血圧なら過剰な塩分摂取、暴飲暴食、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、喫煙などが体に負担をかける生活習慣にあたるでしょう。老化は体の一部分だけで起こったりはしません。全身にひとしく起こるものです。そのため、高血圧がめだつからといって、血圧だけを薬で下げても本質的な解決になりません。なぜなら、表に出ている症状がないだけで、全身の老化は進んでいると考えられるからです。~老化は全身の問題ですから、本来なら体をひとつのシステムとして診られるようになるのが理想です。そのうえで医師は、老化の原因である生活習慣にアプローチする、薬以外の方策を考えなくてはなりません。しかし、現状では、診療科は臓器や器官ごとによって細分化された専門分野にしばられています。そのため全身の老化をしっかり診ることはできず、薬以外の方策ももちあわせていません。老年医学を専門とする医師もいるにはいます。ただ、老年科の医師は寝たきりや介護の専門家として経験を積む場合が多いのが実情です。老化が進むことにより、引き起こされる全身の変化を中年期や壮年期から見てくれる診療科はないのです。ようするに私も含めた現代の医師は、人生100年時代に生きる人間の体を総合的に診る視点と素養に乏しいといわざるを得ません。全身の老化に対して、現代医療はお手上げ状態なのです。ひょっとしたら将来、人生100年時代を生きる私たちに合った医療を提案する体制に変わるかもしれませんが、今のところその予定もなさそうです。医療体制を変えるにも、十分な議論と長い時間が必要でしょう。しかしながら、人生100年時代はそこまで来ています。私たちには、もうあまり時間がないのです。~健康維持のための習慣は、まさにこの「緊急でないが重要なこと」にあたります。このことをどれだけ強く意識しつづけ、そこに時間を割きつづけることができるか。それが死ねない時代、つまり「人生100年時代」の健康マネジメントにとってもっとも重要な視点だと、私は考えています。』

私も老化は病気ではないと考えています。壮年~中年にかけて「現代医療」に見放された病を患ってみて「現代医療」の限界を思い知りました。ヒトのイキモノとしての基本スペックは50年くらいが「耐用年数」の様な気がします。「死ねない時代」の医療とは?を毎日考えています。

人生100年時代…医療が未だに「人生70年」に固執する理由
「死ねない時代」をどう生き抜くか
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66867

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