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やっぱり政を治めるのはもうヒトでは無理なのかもしれない。

『ともかくこの政権を特徴づけるのは、「安倍一強」とも言われた、国民による前代未聞の全権委任状況であった。批判や異論の多いアベノミクスを頑なに貫き、特定秘密保護法や「共謀罪」法など、難しいと言われていたものを次々と強引に成立させた。消費増税の実現もまた異論を封じて実現されたものである。他方で、この政権の周りで生じた様々な疑惑もまた、解明されることなくうやむやなまま闇に葬られた。森友・加計問題、さらには桜を見る会では、存在するはずの文書までもが次々と消えた。そんな中でも国民が温かく安倍首相を見守ってきたのは、すべてこの国の舵取りをまかせるのは安倍政権しかないと国民に思わせ、国民もそう信じたからである。すべては全面信頼による全権委任状態だったからといってよい。ところがこの半年ほどの間で、驚くべきことが露呈してしまった。新型コロナ感染症対応の失敗である。万能と思われていたこの政権が、まったく危機管理能力を欠いた、政策形成能力の乏しい政権だったことが明らかになってしまったのである。アベノマスク、増えないPCR検査、減収世帯30万円から国民一人当たり10万円一律給付への転換、GoToキャンペーンに持続化給付金と、打つ政策が次から次へと誤りを指摘され、修正を余儀なくされる事態を繰り返した。いまのところ、事態が好転する気配はなく、新たな悪性ウイルスが侵入してくる危険もささやかれる中、総理自身が状況を重く受け止めたことで持病が悪化し、自ら政権から身を引いたということなのだろう。それどころか、せっかく到来した緊急事態宣言下の強力な国家総動員体制を、自ら前に立って指揮することもなく、かつ新型コロナウイルスの危機が去ったわけでもないのに、早々に解除している。まるで急ぎ、責任から逃れるかのように。もし本当の有事が起きたとき、「この人たちがトップで大丈夫なのか」という体たらく。なぜこの政権は、コロナ対策にきちんと向き合えなかったのだろうか。様々な説があるが、基本的にはやはり、この政権にその能力がなかったからに他ならない。コロナ危機を迎え、おそらくこの政権には、「危機」とは何かについての心構えさえできていなかった。考えてみれば2011年の東日本大震災・原発事故は旧民主党政権で迎え、自民党はこの危機に直接対応していない。~筆者がずっとこの点で引っかかっていたのは、安倍政権発足直後に、ある人から言われた次の言葉である。「大変だ。安倍さんの無能におかしな官僚がたかってまずいことになっている」と。言い方にトゲがあるが、その後の事態を明確に予言した言葉である。やわらかくいえばこうなる。「安倍首相の人の良さにつけ込んで、一部のおかしな人々がつきまとっている。が、安倍首相がそのことに気づかないので、彼らによってゆがんだ政策が実現されるようになってしまった」と。とはいえそれでも、第2次安倍政権発足直後には、ここまでのことはなかったはずである。だが、この政権の末期には安倍首相の周りは完全に取り巻きだけになり、新型コロナ禍ではもっとも身近な人物とだけで大事な物事を決めるようになっていたようだ。そのことにより、統治に必要な、幅広く多様で異論を含む情報が決定のうちに入らなくなってしまった。かわりに我田引水の作用ばかりが働いて、政策や事業を打っても打っても、目標に届くことはなく、別のところにその利益が流れるようになってしまったものと思われる。とはいえこれまでは、そうした状態が、体のいい言葉や数字に次々と置き換えられてきたので、ただ見ているだけだと、国民には何がおきているのか分からずにきた。しかしそれが、この新型コロナで一気に顕在化してしまったというわけだ。~だがまたこの破壊は、必ずしも安倍政権に始まったものでもなく、それ以前からの流れの中にあることは明確に認識しておく必要があろう。統治の崩壊は、民主党政権下でも進行していた。いや、その前の小泉政権でも「自民党をぶっ潰す」といっていたが、これが実は現在の統治の機能不全につながった可能性が高い。そしてたどっていけば、平成期の政治社会変革の全体が統治の破壊に関わっており、さらには平成に入る直前の中曽根政権による行財政改革にこそ、その発端は見出せるのかもしれない。~だがこの体制は、決して統治の確実性にはつながらず、こうした人事が何度か繰り返されたことで、内閣総理大臣という職の周辺に、統治を担うのにどうにもふさわしくない人々が集まる構造ができあがってしまった。それが統治崩壊の直接的な原因になったのではないか。それゆえ、この国が安倍長期政権脱却後に、本来の正しい統治の姿に戻るためには、このゆがんだ選挙・人事に関わる政治構造を変革する(元に戻す)必要があるということになる。が、報道では、次の自民党総裁選は、現政権に近い人々に都合よく設定されそうだから、なおも安倍政権と同様の統治体制がつづく可能性が高い。他方で、安倍晋三首相だったからこそ、結局は憲法改正をはじめ、真にこの国の根幹に関わる変革はなしえず、政権の後半は友人たちへの優遇だけにその権力を行使したものといえる。それ故、「一強政権」がもつ本当の怖さを、我々はまだ味わってはいないのでもあった。』

人間なら誰でも長くその地位にいれば「驕り」や「勘違い」をしてしまう。やっぱり政を治めるのはもうヒトでは無理なのかもしれない。

「安倍一強」の終焉…何でもできた政権はこうして国家を破壊した
コロナ危機で露呈したこれだけのこと
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75291

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