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だがこの旧中流が日本の強みでもあったのは紛れもない事実なのだ。

『このように新型コロナ禍の直撃を受けたのは、まず非正規労働者、そして自営業者や個人事業主だった。ここに新型コロナ感染症の「階級性」があらわれている。その流行は、日本がれっきとした階級社会であるという事実をあらわにしたのである。もっとも非正規労働者が脆弱な立場にあることは、すでに広く知られていた。しかし今回、新たにあらわになったのは、自営業者や個人事業主など、階級論の用語を用いれば旧中間階級に属する人々の脆弱性である。一般に現代社会には、資本家階級と労働者階級という2大階級のほかに、2つの中間階級がある。それが、新中間階級と旧中間階級である。新中間階級とは企業などで働くホワイトカラーや専門職のことである。一方の経営者、他方の現場で働く労働者の、文字通り中間に位置する階級で、資本主義の発展によって新しく生まれてきた階級である。これに対して旧中間階級は、ひとりで経営者、そして現場で働く労働者の両方を兼ねるような働き方をしている人々で、前近代社会から存在している古い階級である。新中間階級と旧中間階級は、近代日本における2つの「中流」である。一方は、学歴や技術をもち、組織のなかに地位を築く「中流」。他方は、事業に必要な有形無形の資産をもち、独立自営で働く「中流」である。この2つの中流は、普通の人々に手の届く「ほどほど」の目標であり、だからこそ「中流」の多い社会は望ましい社会だとみなされてきた。ところが新型コロナ禍は、この2つの「中流」に大きな違いがあることを浮き彫りにした。業種によって違いはあろうが、新中間階級は在宅勤務で大方の仕事をこなすこともできたうえ、さしあたって雇用と給料は保証されていた。ところが他方は廃業の危機に、ひいては階級としての存続の危機に追い込まれたのである。~いまここで旧中間階級を衰退させてしまうようなことがあってはならない。そうなれば生活の豊かさと社会の多様性が、大きく損なわれるだろう。そして、すでに深く進行してしまった「中流崩壊」は、最終的に完成するだろう。~「総中流」がいくら幻想を含んでいたとしても、たしかに「中流」の人々は存在していた。また「中流の崩壊」が語られるようになって久しいが、いまでも「中流」の人々は、たしかに存在している。ある時期までの日本人が「総中流」をもてはやし、またこれを信じたのは、それが社会のひとつの望ましいあり方を示していたからだろう。誰もが豊かで幸せな生活を送ることのできる社会という理想が、ここには含まれている。したがって、単なる幻想と片付けるわけにはいかない。現実の社会を、ここへと近づけていく努力を放棄してはならない。新型コロナ禍を経験したいま、旧中間階級を守り抜くことは、そのための第一歩である。』

今のヒノモトの新中流と旧中流の分断は旧中流を自己責任として切り捨てるつもりで制度設計をしてきたきらいがある。それは日本経済の牽引を軍隊式の階級制で進めてきたヒエラルキーを好む官僚制に他ならない。だがこの旧中流が日本の強みでもあったのは紛れもない事実なのだ。

日本人は「1億総中流」崩壊の深刻さを知らない
コロナで自営業者や個人事業主が苦しんでいる
https://toyokeizai.net/articles/-/365785

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