ゴリラになった夏

ゴリラになった夏


数年前の夏、体と心のバランスを崩していた。

なかなか寝つけず、常に頭にもやがかっているような感覚が続いた。

「このままじゃまずいぞ…」

なんとか重い腰を上げて病院に行く。比喩ではなく、本当に自分の体かと疑うほど重い。まるで、大リーグボール養成ギプスを装着された星飛雄馬のようだ。

病院では、医師からセロトニンと呼ばれる精神を安定させる働きのある脳内物質を増やす方法を教えてもらった。

とりあえず日光に当たることと、バナナを食べること。いたってシンプルである。

その日以来、お昼休みは外のベンチでバナナをひたすら貪る生活が始まった。

「これを食べれば体調が良くなるはずだ。」

毎日少しずつ夏の太陽はジリジリと私の肌を焦がす。完全に白い肌から遠ざかっていたが、肌が焼けるほど日光に当たった、という証明になる気がして私の心は満たされた。

真っ黒に日焼けしてベンチでバナナを貪る姿は、まるでゴリラのようだっただろう。

そうして夏が終わる頃、上司から日に焼けた肌を茶化された。確かに、流行の白い肌とは正反対で将来はシミができるかもしれない。しかし、その夏を共に乗り越えて幸せになろうと努めた黒い肌を、私はとても気に入っていた。


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