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日本の『ファッション業界』建て直しの提案【その3】。“服の楽しみ方”再構築。

ファッション市場の沈滞。
洋服が売れなくなったり、平均購入単価が下がったことの原因として、
服の訴求価値そのものが『ライフスタイル型消費』と結びつきにくくなったこと、それに対してファッション業界側が何も対応をしてこなかったこと……があると僕は考えている。

例えば、インテリア雑貨や食品販売の場合は、生活の楽しみ方、部屋のデコレーション、インスタ映え、健康習慣…などを提案することでコトに付随する需要を喚起してきた。
それに対してファッションはあくまでも、『貴方が綺麗になります』『こんなのがトレンドです』『こんなのがお洒落です』といった昔ながらの業界内に閉じた提案しかしておらず、新しい価値観やライフスタイルに訴えてこなかった。
デジタルシフトが進み、就業スタイルも変わり、コト志向・体験志向が高まるなか、ことファッション業界では『ライフスタイル提案』と言う掛け声はあっても、実際の人々の生活の変化に追従した商品やサービスを開発してこなかったと言える。

また、元々支持されていた90年代頃の服の楽しみ方やスタイル、テイストの発信を新しい世代にちゃんと伝える努力してこなかった。
そこに新しく登場したファストファッション、廉価型SPA、オンラインモールが価格を破壊し、付加価値を付けないまま『洋服なんてこの程度の支出で見合う商品』という認識が進んだ。
その分の消費シェアを奪ったのは、スマホやネットアプリや食品カテゴリーなどであろう。
この記事では、ならばファッションはどう生活や好奇心に訴えるべきだったか?を掘り下げてみようと思う。

服の価値として訴求すべきライフシーン

消費者調査等で『なぜ服を買わなくなったんですか?』という質問を投げかけると、
『買いたい服がない』という答えが返ってくる。これは実は正確な返答ではないのだ。
正確には『服をお金をかけて楽しむような“シーンが自分の生活の中に見当たらない!』という答えなんだと思う。
生活や職場のドレスコードがカジュアル化して、必死でお洒落することがむしろカッコ悪い…という空気感になってくると、ファッションの費用対効果は減衰してくる。また、今の若い世代は人と差別化するよりも埋没すること・目立たないことを好む傾向が強まったので、ますます、自分なりの工夫をしなくなる。

仮に男性にスポットを当てたとき、以下のような日常の生活シーンで、こんな格好をして行けば『楽しい』『受ける・モテる』『話題が拡がる』『自分に自信が持てる』などの提案が本当は必要だと思う。これは、マーケッター的には『シーンメイキング』というけど、ファッション業界はこのシーンメイキングが酷くおざなりだ。

●アウトドア
●タウンデート
●カジュアルデーのオフィス・職場
●ビジネスシーンでのプレゼンテーション
●職場の同僚との週末の交流
●趣味や副業系コミュニティへの参加
●国内旅行/海外旅行
●アフター6のパーティ・交流会
●気の合う友人との飲み会
●彼女未満の女性とのデート
●自宅での料理・調理・家事時間
●自宅でのリラックスタイム
●友人の家への訪問やホームパーティ参加
●息子との二人デート
●屋外フェスへの参加
●ライブハウスやクラブ
●海辺の散歩
●トレッキングやハイキング
●帰郷シーン
●リラックスタイムのカフェ
●美術館やアート巡り
●友人や親族の結婚式・パーティ参加
     ………………

各シーンで、気の使いどころが違うし、自分をどう見せたいか?が違うはず。女性はそれをかなり意識してファッションや化粧を変えてるよね。男性はそこに演出や脚色があんまり無い。ホントはもっと創意工夫して遊べばよいのにと思う。仕事ひとつとってみても、デスクワーク中心の日とビジネスイベントに参加する日は同じ格好で良いのか?みたいな話。

上記のシーンの中で例えば、『彼女未満の女性とのデート』のポイント訴求と実事例をピックアップしてみる。

ウェアリング・ソリューション
●キレイ目だけど気張り過ぎない、抜け感重視
●上着脱いでもちゃんとしてる感が必要
●小技でディテールで、センスの良さと気の使い方をちらつかせる
●店をあまり選ばない(相性が厳しくない)ウェアリング
●シックなカラーリングに差し色トレンド
●基本はインテリジェントに見せる
●丈バランスで体型を適宜カバーする。

どんなウェアリングが良いか?ビームスのスタッフコーデから探してみた。

ここまでが『彼女未満の女性とのデート』にマッチしたコーデ。反対に一見良さげだけど止めといた方が良いのをピックアップしてみた。
以下挙げてみる。

これはネクタイが重すぎで抜け感がない。ジャケット来てる間はバランス良いが、脱いだ時に一気に崩れそう。恋人未満の人とのデータでは止めた方が無難。
以下、もう一例。

これはシャツのシルエットとシューズ&ソックスが微妙。トレンドとしてはビッグシルエットなので、時流にあってるんだけど、女性は男性のビッグシルエットをお洒落と思う人と思わない人に分かれる。グルカサンダルにソックスはいてしまうというの実はお洒落なんだけど、これも理解されない可能性あり。かといって裸足だと、軽い奴イメージに見られる可能性もあり。

といった感じ。
コンタクトする相手との関係とかシーンによって、ウェアリングは工夫が必要ということなので、この辺を見極めれるようになってくるとファッションの面白さがダントツに増してくる

これをファッション業界側が具体的に提案してくれる、場合によってはシーンまで提供してくれる(コト型サービスやマッチングサービス)と洋服を楽しむ方向へつながるよね?

どんな場面で、自分をどう見せて、楽しむか?
コトを楽しむ道具、自分を表現する武器、としてのファッションが、今の時代、求められてるんじゃないかな??