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本革を知らない人は“フェイクレザー”も評価できない。これ今の経済の象徴?

これ…ゆゆしき問題だと思う。
僕は実はフェイクレザーという素材が大好きだ。
カバン、シューズ…色んなグッズでフェイクレザーグッズを持っている。安くて機能的で多様なテイストがあり、素晴らしいものを開発したなぁ!と感じてる。この商品が普及することには肯定的だ。
なんだけど、実はその『“フェイク”である価値がわからない人が増えてる?』もしくは『増えるんじゃないか?』と感じてる。そうなった時、フェイクレザーは市場からフェイドアウトするんじゃないかって?

どういうことか?
『元となる価値のものさし』を持たずに大人になった人がメーカーとかの“企画・提供する側のビジネス”に参加し始めた場合、価値概念を持ってないので幅広い商品(値段の高低や多様なデザイン、テイスト)の企画開発ができないのでは?……ということだ。

フェイクレザーは名前の通り、レザーを模したものだ。
なので、
①真似る対象の革について良いモノを選んでいるか?、
➁その選んだ革の質感模倣が精緻にできるか?の二つがポイントになる。

でも『本革』を知らないで育った人は、真似るべき革の善し悪しが判定できず、選べない。なので彼らが商品企画部に配属されて、フェイクレザーのバッグを企画するというミッションを負ったとしても、高級な(笑)フェイクレザーのバッグと廉価なフェイクレザーのバックを作り分けることができない。
そもそもレザーというものを知らないので、そのデメリットとか、雨のときにどんなことが起きるか?経年変化でどんなことが起こるか?わからない。
なのでフェイクレザーで作るメリット(メンテがいらないとか、防水性とか)も理解できない。
そんなプランナー、デザイナーが企画したフェイクレザーバッグって、もうフェイクレザーじゃない…んだと思う。だってその商品開発担当は模した元素材を知らないんだもん。

これは一つの象徴的事例として取り上げた。
似たようなことが、今、あらゆる商品ジャンルやサービスジャンルで起こってる気がする。今の消費者は色々なモノの価値が相対化され過ぎたのと、一つ一つの商品にお金を払わない癖が着きつつある(シェアエコノミー)……これはインターネット業界が牽引してる新しいビジネススキームなのだが、消費財マーケティングの面ではデメリットが大きい。

喩えてみると、ユニクロの商品ばかり着せられて育った子供~若者は、メートル単価2,000円以上のファブリック素材の着用体験をしていない。
もっと言うと、100%の天然素材アイテムを体験してない。
昔はどんな貧乏な家庭の子供でも100%コットンは体験してたし、手編みの100%ウールマフラーとか、ベストとかも体験してたと思う。
もちろん、機能性を考えると、100%天然素材ほど扱いにくいものはない。
洗濯に気を遣うし、ウールだったら下手すると家で洗濯できない。でもそのデメリットも含めて体験だったのだ。

『いやいや。モノからコトへの流れの中で、モノの価値なんてあんまり重視されなくなったんだよ!』
とおっしゃる読者もいるだろう。でもコトであっても、表層的に参加した経験だけで喜んでしまう人、その深さが判定できない人は増えてる気がする。

例えば、こんな学生対象のアンケート結果データがある。
※2020年卒マイナビ大学生のライフスタイル調査

こりゃ、確かにモノよりもコト志向だ。
なんと男女ともに『楽しさを感じること』のトップは『会って話す』こと。

そんなに皆、コミュニケーション好きだったのか?とちょっとびっくりする。でも、穿った見方をするとこれ…ちょっと変だ。
過去だったらこんなランキングは有り得ない。
例えば男子だったら音楽とか映画とかスポーツが上位に来ると思うんだけど(ゲームが上位なのはたぶん今と一緒)、それって『一人で黙々と楽しんでて、人と会話してない』なんてことは無くて、音楽とか映画の話題で仲間と会話したり議論していたはず。あるいはバンド活動でスタジオ借りて練習しながら他のパートのメンバーと掴み合いになりそうなくらい喧嘩したりとか…(笑)

『会って話す』って当たり前のことなので、取り立てて娯楽に位置付ける必要はなかった。何について話すのか?のテーマが大事だったのだ。そのテーマが音楽だったり映画だったりスポーツだったりデートの場所、ナンパの話だったりした。

もしかしたら(これは仮説)、これ話すことの中味も薄くなってはいないか?(LINE会話の延長?)
深い対話、緊張するような対話、お互いの価値観の根底に入り込んでいく対話、並走して探索型対話……など、対話には多様な深さがある。
そして相手をより深く知るには、前述したモノ系の話と同様、色々なコトへの洞察とか感受性が必要。つまり自分の価値概念を持っていて、かつ他人の価値概念も受け入れる度量が必要だと感じたりする。

モノでもコトでも、『本物じゃなきゃダメ』なんてことは僕は思ってなくて、フェイク、パクリ、オマージュ、コピー…どれも大好き。
でもパクるには“本物の価値が分かってない”とダメ、コトを楽しむのも同じ。プロの凄い人のやり方をウォッチしたり、ロケーションや道具立てや目指すところ を仲間と議論しないと面白くない。

目指す場所が見えない人たちが経済や消費を動かしてると、
その経済は必ず委縮してゆく。
そうならないためにもっと『価値概念』を持とう。
そのためには、本物を見て、好きになって、パクろう。
それが経済社会を前に進めるエンジンになると感じるのだ。


大吉!
5

Susumu Higuchi

株式会社シンクエージェント(https://www.think-agent.co.jp/ )というコンサルティング会社を経営。小売業に対してマーケティング、売場開発、デジタル化のを支援と指導。▶会社のNOTE:https://note.mu/thinkagent

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