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ファッション店舗の『売場作り』を変えよう! その2

商業施設のフロアレイアウト

日本のファッション市場とそれを担うはずの店舗が縮小して苦戦している理由は数多くあるが、
まずは商業施設(ショッピングモール)側の事情とテナント店舗側の目論見の食い違いがある。以下の大型郊外型SCのフロアマップを見て欲しい。

この中で
知っているブランドやショップ名称はたくさんあると思うけど、この広大なショッピングモール内で、何か単一のファッションアイテムを捜そうと思ったとき、貴方は探せるだろうか?
例えば今年のトレンドで言うと、“偏光レンズのお洒落サングラス、フェークレザーのお手頃台形ミニバッグとかボディバック、ビッグサイズ&ルーズフィットの麻混ニットベスト、厚底スポーツサンダル、オリーブイエローのマウンテンパーカー、レトロなドーム型ビニール傘、AOKIとかじゃないちょっと良いウォッシャブルスーツ……はい!あなたはどう探す?読者の中の男性諸氏。どうだろうか?

貴方はこれらのアイテムのメンズ用商品が上記のどのテナントショップにありそうか?想像できるだろうか?

そもそも最近のショップやブランドは、レディス&メンズ両展開(場合によってキッズアイテムも)なので、どのショップにメンズの洋服があるか?ショップ名を見ただけではわからない人も多いだろう。ましてや欲しいアイテムを取り扱ってるかどうか?探すのは半端な苦労ではない。

テナントショップ内の商品配置

そしてさらに、今度は各テナントショップの売場の中を見てみる。
店舗スタッフのオペレーションは40年前から変わってないファッション店舗だけど、売場の作り方は2~30年前とはかなり変わった。それは売場の区分けがアイテム分類ではなくLook(Style)分類になったことだ。

Look(Style)分類というのはターゲットとなる生活者の着用場面を想定してトータルコーディネートをトルソーなどで見せつつ、その構成アイテム(=ワードローブ)をまとめて陳列してゆく売場でのVMD※手法だ。

上記の写真を見てもらえればわかると思うけど、ぱっと見て着こなし方がわかりやすいし、商品の特徴も明確だ。
ただ問題がある、店舗内を全てこのLook単位の陳列にしてしまった場合、アイテム指名で着たお客様にとってみると、どこに何があるかわからないことだ。
『私はマキシ丈のテロっとしたワンピースが欲しいんだけど……』『この店にはどことどことどこにありますか?』
こんな風にお客様から聞かれたらもう、販売スタッフが走り回るしかない。そもそも、販売スタッフ自身がお客様の指名アイテムのバリエーションが自店にどれだけあったか?記憶してないことすら多い。

ファッションを購入しようとする人の頭の中って
何が起こってるか?実は、

①『このスタイルでこんなTPOに行ったら楽しいしモテルだろうな~』
というコト志向&仕上がり志向のイメージが浮かぶ。

➁『このアイテムのこのデザインが素敵』『今年は偏光サングラスのお洒落なヤツが凄い欲しい…2万円以下くらいで探したいな…』

という『コト(Style)志向  ×  モノ志向』
の購入マインドが交互に現れるのだ。

なのに、実店舗は(モールも店内も)この何れに対しても対応していないというか…中途半端だ…。その『生活者のニーズに無頓着な構造』の間隙を縫って急成長したのが、実は、ZOZOなどのオンラインファッションモールなのだ。
ZOZOは、LOOKに関してはWEARやショップスタッフコーデで対応しているが、そこから入ってくる人はまだ少ない。
結局のところ一番、顧客ニーズにはまったのは、ブランドやショップ横断でアイテム検索ができる部分だ。これが、実店舗と実モールでは全くできていないのである。

以下が筆者が作成したここ40年くらいのファッション業界史だ。

これまで何度か繰り返されてきたファッション小売業界の激震&再編は、実は本来の『生活者ニーズに基づいて起こってきたものではない。
平たく言えば、事業者側のエゴだ。
生活者側からの視点でみると、商品は確かにコストパフォーマンスは高くなったけど、商業施設全体の買いやすさや楽しさは決して進歩してない。
それはどのテナントも、『自分の店で買ってね!』『自分の店以外で買う想定はしてません!』というエゴな売場作りをしてるからだ。

また、それらの小売事業者に対して、
業績上の成長性だけを取り上げて、持てはやしつつ『時代の寵児!みたいに祭り上げてきたビジネスメディア側の責任 も大きいと思う。

生活者にとって、ホントに刺激的でしかも買いやすい店舗も商業施設もまだ登場していないのだ。
なので筆者の会社のシンクエージェントは、この状況に石を投げ込もうと思っている。ここまで語った生活者課題を解決するような、全く新しいデジタル複合型の商業施設の構築である。

その3に続きます。