女に生まれて。

夫から提案があり、私たちは、”夫婦”という関係を終了し、一つの”家庭”を運営する”共同経営者”となった。この目的は、"お互いがお互いを干渉しない"ことにあるようだ。もちろん身体の関係もない。

この契約は私のバランスを崩した。

私の中にあった”妻”の部分が無くなってしまった。そこには"母"と"女"が在ったが、"妻"がすっぽり抜けたところへ、"女"が侵食していったように思う。

***

夫の不倫に苦しんでいたころ、離婚問題に強い弁護士に、あるアドバイスをもらった。

「暴力や借金がないなら、子供が小さいうちは別れず、手がかからないようになってから別れるのもひとつの手だ。離婚後、金銭的な理由で苦労しているシングルマザーを山ほど見てきた。

ただ、女性は年齢を重ねると再婚しづらい傾向にある。 婚姻関係を継続しながら、次のパートナーを探す女性もいる。」

***

朝起きてから夜に子供が寝静まるまでの、この約15時間は、子供を想い、子供の幸せを願い、健やかに育つようにと必死に働いているので、親として至福の時間であり、当然心が満たされている。

問題は、子供が寝ついた後にそっと布団から抜け出し、散らかった部屋を片付け、洗いきれなかった食器を片付けているこの1時間だ。

昼間は穏やかに波打っていた海が、夜には波が高くなり、私はそれに飲み込まれていく。世の中から隔離された場所で浮いている私に、女の部分が呼びかける。

***

誰かに頼りたい日がある。ただ話を聞いて欲しい日がある。

「頑張ってたね。君は間違ってないよ。」

パートナーが欲しい。けど離婚する勇気もない。弁護士がアドバイスしてくれたような女性になる度胸も行動力も時間もない。再婚も怖い。

自問自答する毎日だ。

夜が怖い。

早く朝になればいいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?