見出し画像

イタリアひとり旅③ ジェラートをください。

初めて降り立ったヴェネツィアは、オリーブとほんのすこしオレンジの匂いがした。

空港に着いた私は、とりあえずスーツケースを受け取り、送迎サービスの添乗員さんと合流し、タクシーでホテルへと向かった。
途中までは車で、本島に入ってからは水上タクシーでの移動であった。
ヴェネツィアは水の都である。
車が通行禁止なので、つまり船が主な移動手段である。
警官も、宅配便も、普通のおじさんも、みんながみんな船で水路を往くのである。なんという優雅さ。

青い空、輝く水面。
目に映る全てのものに感動していた。

ホテルで荷物を降ろし、添乗員さんと別れ、いざ探索!

今回の旅の目標は生きて帰ることだが、それとは別に小さなミッションを決めていた。それは、「毎日ジェラートを食べること」。
何を隠そう私はアイスが大好物なのである。
ひとりで迷路のような町並みを歩き回り、適当に目に入ったジェラテリアへ向かう。

ここで問題が発生する。

イタリア語が、読めない。

ヴェネツィアの小さなジェラテリア、沢山のジェラート、ちょっと怖そうな店員のおじさん、そしてイタリア語で書かれたメニュー。
食べたいのに味がわからない。
かといって何味なの?と気軽に聞けるコミュニケーション力は持ち合わせていない。英語力も、もちろんない。
言い忘れていたが私は、学校の科目の中で体育の次に英語が苦手なのである。

何も言わずに立ちすくむ私を、怪訝そうに見る店員さん。眼光が鋭い。
黙ってる客は怪しい、とてもわかる。すまないが、イタリア語が読めないのだ。
しばらく悩んだ末、仕方ないと腹をくくり放った一言がこちら。

「ボンジョルノ!!私、一番おいしいジェラートが食べたい!(意訳)」

小学生である。
どう考えてもおつかいの子どもレベルの発言だった。正しい英語ではなかったかもしれないがニュアンス的にはこんな感じだった。だがそれでいいのだ。
結果、おじさんはステキな笑顔でジェラートを売ってくれた。何味だったのかは結局わからなかったが、多分チーズとクッキー的な感じだったと思う。ありがとうおじさん。ジェラートはめちゃくちゃ美味しかったので多分熱意が伝わったと信じてる。

ジェラートを食べて英気を養ったところで、ヴェネツィアの観光名所、サン・マルコ広場へ足を進めたいと思い再び路地を進むのであった。