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糸井重里さんと対談企画⑥失敗しながら生きていく。


6)失敗しながら生きていく。


糸井
「しいたけ占い」以外だと、いまはどんなことをしているんですか?

しいたけ.
実は最近、はじめて星座とかを絡めないコラムの本を書かせていただいています。星座だとどうしても12分の1しか読んでもらえないというのがありますし、占い以外のことについても書いたり話したりしていきたいという思いがあるんです。

糸井
しいたけ.さんは、占いのなかにも作家的な部分があるから、その本もおもしろくなりそうですね。もしかしたら、いずれフィクションとかを書いてもおもしろいかもしれない。

しいたけ.
ありがとうございます。実はぼく、フィクションを書くのも大好きで、ずっと昔、架空の日記を大量に書いていたんです。大好きな女優さんと一緒に暮らしている体(てい)のもので、さすがに闇に葬ったんですけど。

糸井
ああ、バカだねぇ‥‥(笑)。
でもしいたけ.さんは、今も、この先も楽しそうですね。

しいたけ.
はい、楽しいです。おかげさまで。

糸井
いま自分の存在が“しいたけ.さん”ということになってるのも楽しいですよね。顔出しもしていないし。

しいたけ.
そうなんです。

糸井
自分自身を占うこともあるんですか?

しいたけ.
そこはやらないようにしています。それをすると、いろんなことが落ちていってしまう気がするんです。
例えば「この会社と組んで大丈夫か?」みたいなことを自分の占いでやってしまうと、人と生きていくことが技術論になって、自分の生きるという物語が色を失っていってしまう気がするんです。だからそこは、どんどん失敗していきたいなと思っています。

糸井
そこは「さるかに合戦」をやらかしたあとの世界こそが、自分が生きる場所だからってことですね。何もない自分で、どう生きていくかというか。

しいたけ.
わかります。ほんとそうだと思います。

糸井
人って何もないとき、自分だけのオリジナルの何かを生まざるを得ない状況だからこそ、生み出せるものがあるんですよね。すでに良い材料があると、頭が動かない。
しいたけ.さんが若い時、畳としか話してなかった時代に得たものが今のメシのタネになっているというのも、同じ話ですよね。材料がない場所でがんばったからこそ、という。

しいたけ.
そうですね。

糸井
今って検索すればいろいろなことがわかって、失敗しにくい世の中ですけど、ほんとに大事なことって、多少失敗しようが、やっぱり自分で決めたほうがいいと思うんですよ。
野球の例になるけれど、バントの成功率が6割で、打ちにいったほうがいい根拠がなにもなくても、最後は自分の心で決めた方がいい。
ぼくは、一番大事なときにそれをやったら、「さるかに合戦」の次が打てると思うんですよ。「確率的にバントだろ」みたいな判断のしかたをすると、次が打てないんですよね。せいぜい、被害を食い止めるための何かしかできない。

しいたけ.
はぁー、「さるかに合戦」をやらかして、よかった(笑)。

糸井
そうそう。
で、「さるかに合戦」って、ほんとはそこからものすごく勝ちたいわけじゃないですか。

しいたけ.
勝ちたいですねえ。
ぼく、次の日から、かなり大学での居場所をなくしましたから(笑)。

糸井
でも、その経験があるからこそ、いまの自分がいるのかもしれないし。相手の女の子が、果たしてそのまま好きな彼のところにいってどうなったかなんて、たかが知れてますよ。‥‥知らないけど(笑)。
きっとしいたけ.さんの「俺」の人生のほうがおもしろいですよ。こっちはその失敗で経験を積んでいるんだから。

しいたけ.
そうですね(笑)。よかったです、ほんとうに。

糸井
最後にうちのスタッフから、なにかありますか?

──せっかくしいたけ.さんが来てくださっているので、2018年の後半から2019年にかけて、占い的に「みんな、こんな感じのことを気をつけるといいよ」みたいなことがあれば教えていただけたら嬉しいです。

しいたけ.
なるほど、わかりました。
ひとつ指標のようなものをお伝えしますと、ぼくは2017年からその動きがすごく強くなってきてると思ってるんですが、今日の話と同じで「正直」というキーワードが、2018年度の終わりに向かってますます加速していくと思っています。
2017年、アメリカでトランプ大統領が出てきたのも「正直」がポイントの話じゃないですか。身も蓋もない話で、ヒラリーさんが負けて「だって、実際カネがないから援助できないじゃん」みたいなことを言うトランプさんが勝ったというのが象徴的なんですけど。
ある種の理想論とカッコつけに対しての、「いまはそれじゃないんだ」というムードがすごく強くあるというか。

糸井
「屁をしたな」みたいなやつですよね。

しいたけ.
そうなんです。
実際に人を見てて思うけど、いまはみんながその「正直」を志向する流れがすごくあると思っています。
やっぱり個人でも、「カッコつけようとすると負ける」みたいなことですね。悪いことをしたときに正直に謝るとか、何かができないときに「実はお金がない」とか正直に言ってしまったほうが、めちゃくちゃに見えて、実はそこから対話が始まるみたいな感じを、いまはすごく受けています。
変な話、いまタレントの人が自分の恋愛を告白したりとかしてますよね。それも、同じ流れだと思うんです。各個人が「何を守るために仮面をかぶってるんだろう」ということをすごく突きつけられている気がして。
思い切って仮面を脱いだときには、けなされるかもしれないし、それはダメだよと言われるかもしれない。でも、それでもいまは各個人が、「カッコつけるか、それとも正直な話をするか?」なら、正直な話をしてしまったほうが、いい気がするんですよね。

糸井
ほんとにそうだねえ、ほんとそうだ。隙があるとか、弱みがあるとかも含めて、しょうがないよね。そんなところをメッキしてもね。

しいたけ.
しょうがないと思います。むしろ「社運を賭けてやったけど大失敗した」とか、そっちの話のほうが、たぶんおもしろがってもらえて、応援されるというか。

糸井
そんな感じで大丈夫?

──ありがとうございます。聞けて嬉しいです。

糸井
こんなところかな。
実はぼくは今日、会う前からしいたけ.さんのことを勝手に「感性が似てるかも」と思ってたんですけど、ほんと似てましたね。

しいたけ.
そうですね。僭越ですが、こんなに話が合っていいのかなと思った瞬間が何度かありました。すごくおもしろかったです。

糸井
ぼくもおもしろかったです。ありがとうございました。

しいたけ.
こちらこそ、ありがとうございました。


(しいたけ.と糸井重里さんの対談はこちらでおしまいです。お読みいただき、ありがとうございました)

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しいたけ.後日談


いやぁ、本当に改めてありがとうございました!この対談は僕もずっと見返しています。

最後に、ここまで読んできて頂いた読者の方に占い師として喋りたいことがあって、僕は今2019年の上半期占いを執筆しています。

ちょうど、今の時期、2018年がもう少しで「それぞれのまとめ」を迎えていって、2019年という新しい年を迎えていく狭間にあたる時期にあたります(早いですね。嫌ですね。笑)。

その時、改めて今の時期って「正直」という動きが強いんじゃないかって。

つまり、それぞれの人達がなんのために「今の仮面を被っているか」って問われている気がします。

たとえば、もう女優さんだからと言って「恋愛を絶対に隠さなければいけない」という仮面を被っていることが、全部良いことだとは世間ももう、そうは考えていないところがあるんじゃないかって。

もちろん、「私はこういう人間です」と仮面を脱いで、正直な自分を出した時に、「それは違うよ」とか「それはやり過ぎだよ」っていう指摘はあると思うのです。

でも、その「指摘」自体も本人を潰すためにされたものじゃなくて、その指摘から始まる「コミュニケーション」も大事になるんじゃないかと思ったのです。

誰かに何かを言われたからといって、そこで律儀に心を毎回折る必要はなくて、それは別に自分のこれまでのすべてを否定されたわけじゃないから、そこで堂々と「間違っているかも知れないけど、私はこうしたいんですよねぇ」って正直に言うのもありなんじゃないかって。でも、自分に何かを指摘したすべての人を無視するんじゃなくて、「そういう意見もあるんですね」と言って対話を続けていく。


2019年は「ひとりの、閉じた世界」からの対話が強まっていく年になるんじゃないかと改めて思いました。


最後までお読みいただいてありがとうございました。これからも「正直」をベースに色々なものを皆さまに「こういうの、面白くないですかね?」とか、そういうものを伝えていけましたら。

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