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「古着の街」下北沢でDr.Martensの靴紐だけ買った

 オシャレな人が集う下北沢に行った。雑多的は雰囲気で好きな街の1つだれけど、実際に足を運ぶのは数年ぶりだった。村上春樹著「1Q84」にも「猫の街」が出てくるように、何かカテゴライズされた街に興味を持つことが多いと思う。駅周辺にはベトナム料理や韓国料理等のアジア料理通りができていたし、駅上部にもポップアップショップが並んでいた。次世代のmiwaみたいな若いシンガーソングライターがおじさん達を集めている隣では、髭が立派はおじさんがシルバーのリングを並べていた。3月にしては早すぎる20度超えの暑さのせいでコートを脱いでいる人も多かったし、中には半袖の人までいた。ちょっと勇み足だなあと思った、強気だ。ファミリーマートでコーヒーを買ってから何人もの海外観光客とすれ違い、ミリタリーベストとビーニーを着こなすおしゃれな若者に圧倒され、あまたのスープカレー屋を横目に歩いた。階段を上ってふらりと入った古着屋で、モスグリーン色のカーディガンを試着させてもらうと「サイズ感バチいいっすね」と金髪の青年に褒められて思わず買いたくなった。値札を見ると18000円と書かれており、果たして古着なのだろうかと疑問抱いてしまった。「良い値っすけど、春秋冬着れるっすからね。おすすめです。冬は差し色でイケる」口コミ感のあるセールスに負けそうになりながら、ありがとうございますと言って店を出た。もう一つおすすめされたクリームソーダ色のカーディガンは試着もしなかった。「この服着るのが1日の目標になるっすよ」洋服に支配される生活が存在することを知った。

 少し小腹が空いていたので、駅に戻ってベトナム料理のフォーを食べた。日本人が好きそうな味付けだった。今まで食べた中で1番おいしかったのは、カナダ滞在中のレストランで食べたもので、フォーんとにおいしかった。多分週1くらいで通っていた。日本ではまだおいしいフォーに巡り合えていない。

 お腹を満たしてから入った古着屋はヨーロッパからの品を数多く取り揃えていて、値段も先ほどよりも妥当だった。裏地がペイズリー柄の革ジャケットや、オーストリアの民族柄が装飾されたジャケットを試着させてもらった。どちらも2万円しないくらいだった。店員のちょび髭のおじさんはミスドのフレンチクルーラーを食べていた。ちょっと買うものを決めてからまた出直してきますと店を出てから、Dr.Martens専門店に入った。ちょうどその日は3ホールの革靴を履いていたので、少し恥ずかしい気持ちだったのだが、案の定女性の店員に「いらっしゃいませ!あ、履いていただきありがとうございます。」と声をかけられてしまった。「その型はもう出てないのでかなり貴重です」とか「いいシワ入ってて育ってますね」なんて話しかけられ、サイドゴアブーツをおすすめされた。さすがに買う予定もなかったけど、5年以上履いて靴紐が痛んでいたので買い替えようと思った。虹色と黄色と白をおすすめされ、その結果モスグリーン色の紐に決めた。もしお兄さんが25歳までなら割引できますと言われた。すみません、26なんですと答えると、申し訳なさそうな顔をされた。こちらこそ色々申し訳ないなと思った。店を出ると風が冷たくなり、例年と同じような3月だった。アイデンティティと異国の匂いで煌々としたエネルギーを放つオシャレな街下北沢に感化されたわたしの足元には、モスグリーンが今も宿っている。

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