忍殺TRPGソロリプレイ【オロチ・メイクス・フェイク・トゥ・プラウジブル・ニュース】後編

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ……いわゆるリプレイ記事となります。気楽に読めるよ。

 そして続き物でもある。前回のお話はこちら。

 スパーリングでヘルカイトからイポンを取ったディスグレイス。これはつまり、もはやこの任務においてヘルカイトからの援護がないことを意味する!

 さて、肝心の任務はどうなるか。早速行ってみよう。よろしくおねがいします。



◇護衛開始◇

 ……翌朝!

「ドーモ。はじめまして。ヤタウジ=サン。ディスグレイスです。本日護衛を務めさせていただきます」

「これはどうもご丁寧に! ドーモ、はじめまして。ヤタウジと申します。本日はよろしくお願いいたします」

 書類に記された先で待っていたのはスーツ姿の小男。粛々と名刺の交換を終えたディスグレイスは、それとなく彼の家を見た。こじんまりとしているものの、よく手入れされている。

 綺麗に七三分けされた黒髪を気にしつつも、ヤタウジはしきりに手を揉み頭を下げた。

「私のようなものにまで護衛をつけていただけるとは、まことに感謝してもしきれません。大変お手数をおかけします」

「ウフフ! お気になさらず。仕事ですので」

 微笑するディスグレイスの後ろに武装ヤクザリムジンが停車。下車した運転クローンヤクザが無機質に告げる。

「ドーゾ、オノリクダサイ」

「ハイ、ハイ。……この装甲リムジンは、各所に対スリケン加工が施された最新型です。ニンジャ同士の戦闘に巻き込まれても、そう簡単には壊れません」

「まあ。いつもこのようなリムジンで出社を?」

「まさか! 特例中の特例ですよ」

 談笑する横で運転クローンヤクザがドアを開ける。内部から涼しげな空気が流れ出した。周囲をそれとなく警戒していたディスグレイスは、ヤタウジが乗り込むのを確認してその後に続く。

 車内は広い。装甲板で覆われているため、外が見えないのが気になるといえば気になるか。そんなことを考えているうちに、装甲ヤクザリムジンは滑らかに走り出した。

 愛想のいい笑みを浮かべたヤタウジが、ハンカチで額の汗を拭う。

「いやはや、しかし……このようなお綺麗な方が護衛としていらっしゃるとは思いませんでした」

「あら、お上手ですこと!」

「いえ、本心ですよ! エート……ア、そうだ! ヒヤ・サケなどいかがですか?」

「お気持ちだけ。ここだけの話、サケにはあまり強くありませんの」

「ア、そ、そうですか……スミマセン」

 困ったように視線を彷徨わせるサラリマンに、ディスグレイスは微笑を向けた。その裏で、武装ヤクザリムジンがハイウェイに突入したことを感じとる。スプリングがいいのだろう。速度を上げても車内は平穏だ。

「サケがお好みでないのなら、スシはいかがですか? どうぞどうぞ、リラックスしてください。まさか重役の方々を差し置いて、私が狙われる可能性など、万に一つもありませんからな。ハハハ!」

 ヤタウジが笑う。どこか自分に言い聞かせるような調子で。ディスグレイスは無言で頷くのみだ。さて、キールバックたちはちゃんとやっているだろうか。

 

◇◆◇◆◇


「フアア……」

 欠伸を漏らしたシングルラブルを、キールバックが肘で突いて注意。チャを飲んでいたヨリチュネ係長が小さく噴き出した。

「フフッ……ア、シツレイ。ずいぶんお疲れのご様子で」

「エ? アー、そっすね。スンマセン」

「いえいえ、お構いなく! 例のアサシンとやらも、私なんぞを狙うことはないでしょうからな。寝てしまっても構いませんよ! ハハハ!」

 愛想笑いを返しつつ、キールバックはじろりとシングルラブルを横目で睨む。

(弛んでいますよ、シングルラブル=サン。いかに危険性が低いとはいえ任務は任務。シャンとしなさい)

(す、スンマセン……けど、その。昨日、すごかったじゃないですか。ディスグレイスのオネエサン……)

 ヨリチュネ係長の目を盗みつつ、シングルラブルが囁き返す。ニンジャ聴力無くしては聞き取れない声量だ。

 キールバックがわずかに頬を染め、視線を逸らした。

(……だから事前にお姉さまも言っていたでしょう? 無理して付き合わずともよいと)

(いや、文句言ってるわけじゃなくて……ディスグレイスのオネエサンが『そういう』趣味の人ってことは知ってましたよ。ご自身も公言してるし、スムーストーンのやつも触れ回ってたし。けどなんというか)

 居心地悪げに身じろぎし、シングルラブルは続けた。

(……不思議には思ってたんスよね。スムーストーンのやつ、ネンゴロになったとか言ってたけど。そのわりにはキールバックのオネエサン怒ってないなって)

(その理由、昨夜でわかりましたよね)

(ハイ……その、キールバックのオネエサン。昔はお一人でお相手してたんで? アレを?)

 キールバックに睨まれ、シングルラブルが慌てて口をつぐむ。そのやりとりに気づいた様子もなく、ヨリチュネ係長が静かにチャを啜った。


◆◇◆◇◆


 まあ、問題はないだろう。昨夜も加減はした。ディスグレイスは思考を切り替えようとして……ふと顔を上げる。ニンジャ第六感が嫌にざわめく。

 その直後! BLAMBLAMBLAM! 金属同士がぶつかり合う甲高い音が車内に響き渡る! 揺れる装甲ヤクザリムジン!

「アイエエエエッ!?」

 悲鳴を上げて蹲るヤタウジを横目に、ディスグレイスは僅かに窓を開けて外の様子を伺う。すると見よ! 車体に「す殺で事仕なか確」と威圧的なショドーを施した装甲リムジンが並走しているではないか! その車上には二人のクローンヤクザと……ニンジャ!

 ディスグレイスはたしかに見る。中折れ帽を被ったニンジャと目が合った。BLAM! 凶弾が放たれる……!

【ワザマエ】判定(難易度HARD)
(1,4,4,5,6) 成功

 窓の隙間を潜り抜けた弾丸はディスグレイスの頬を掠め、その背後のヤタウジ係長へ「イヤーッ!」

 届かんとするところ、ディスグレイスの右袖から伸びたバイオ触手がそれを巻き取り回収! ワザマエ! 彼女は目を細める。なかなかのニンジャ狙撃力。

ドーモ、アーバンホエールです。貴方の命を頂戴しにまいりました

 刺客の先制アイサツに口元を歪めたディスグレイスは、ヤタウジを見下ろす。

「お客様のようですので、相手をして参ります。しばらく伏せていてくださいな」

 震える相手の返事を待たず、射撃反対側の装甲窓を開き「イヤーッ!」ディスグレイスは決断的に車上へと飛び出した!


◇イクサ開始:1ターン目◇

画像1

 触手を貼りつけ、身体を引き揚げる。高速の風に煽られながらもディスグレイスはアイサツを繰り出した。

「ドーモ。アーバンホエール=サン。ディスグレイスです」

「ニンジャ一人か。護衛にしては不足では? ……大人しく中の重役を差し出せ、ソウカイヤ。そうすれば貴様の命は助けてやる」

◆アーバンホエール(種別:ニンジャ):A
カラテ		7	体力		7
ニューロン    	5	精神力    	5
ワザマエ	        5	脚力		4
ジツ		0	万札		12
◇装備や特記事項
装備:LAN直結型ハンドガン、生体LAN端子、サイバネアイ
スキル:『連続攻撃2』
スキル:『ピストルカラテ』
 『小銃』『重火器』属性を持たない銃器を持ち、かつ近接攻撃できる場合に使用可能。
 ピストルカラテを宣言後、所持する銃器による射撃を行う。攻撃難易度+1
 この時、隣接している敵もターゲットとすることができる。(射線が通らない敵はターゲット不可)
 所持する銃器のスキルセットは原則使用可能だが、『時間差』を宣言することはできない。
 ピストルカラテ使用者本人の、射撃に関するスキルセットは宣言することはできない。
 射撃後、近接攻撃を処理する。この時『連続攻撃』を宣言することはできない。
◆クローンヤクザY-10型 (種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ)	
カラテ		1	体力		1
ニューロン    	1	精神力		1
ワザマエ		3	脚力		2
ジツ		ー	万札 0
◇装備や特記事項
 ノーカスタム・チャカガン:『遠隔武器』、『ダメージ1』
装甲リムジン上でのイクサ:基本回避難易度がHARDとなる

 黒革ニンジャ装束を着こなすアーバンホエールが、挑発とともに銃口を向ける。ディスグレイスはわずかに片眉を跳ね上げた。この者の中では係長も重役に入るのか?

「いいえ、充分ですよ。貴方程度のニンジャであれば。わたくし一人で」

 その疑問を表に出さず、ディスグレイスは断言した。そしてアーバンホエールのニューロンが論理トリガーを引くより早く「イヤーッ!」その瞳から光線めいた妖光を放つ!

「なっ!? グワーッ!?」

ディスグレイス:カナシバリ→アーバンホエール
(1,1,1,2,2,3,4,4,4,4,4,4,5,5,6,6)
アーバンホエール回避
(3,4,4) 【精神力】5→4
抵抗!
(1,2,3,3,4) カナシバリ状態!

 動きの制限される車両上、アーバンホエールはこのアンブッシュめいた輝きを直視せざるを得ない! その身体が小さく跳ね、不自然に強張った。ディスグレイスは微笑する。今のは『入った』。

「イヤーッ!」「「アバーッ!?」」

 すぐさま相手のリムジン屋根に飛び移り、チャカ・ガンを構えていたクローンヤクザ二体をバイオ触手で打擲! その首が飛ぶ!

ディスグレイス:移動後バイオサイバネ→クローンヤクザ二体
(2,3,3,4) 撃破!
(1,2,3,6) 撃破!

「おの、おのれ……!」

 BLAM! アーバンホエールが銃弾を放つ。だがディスグレイスはその場から動きもしない。銃弾はあらぬ方向に飛んでいく。カナシバリの影響下にある者が、ろくなカラテなど振るえるものか。

アーバンホエール:射撃
(5) カナシバリにより失敗!



◇2ターン目◇

画像2

 アーバンホエールがニューロンを酷使し、必死に銃口をこちらへ定めようとする様を微笑ましく眺めてからディスグレイスは動いた。その身体が陽炎めいて揺らめく。

「イヤーッ!」「グワーッ!?」

 次の瞬間、彼女はアーバンホエールのワン・インチ距離まで踏み込んでいた。同時にバイオ触手の突き! メンポの隙間から血を溢したアーバンホエールはしかし、目を血走らせて彼女を睨む!

ディスグレイス:◉翻弄→アーバンホエール
【精神力】11→10
近接攻撃ダイス+5
ディスグレイス→移動後バイオサイバネ
(2,2,4,4,5,6)(1,2,4,4,4,5,6)
アーバンホエール回避
(5,6) カナシバリにより回避不可 【体力】7→5
解除判定
(2,4,5,6,6) 成功!

「イヤーッ!」「い、イヤーッ!」

 続くバイオ触手をアーバンホエールはブリッジ回避。ディスグレイスは目を細める。ジツを脱したか。大したものだ。ならば。

「……ヌゥッ!?」

ディスグレイス:ブンシン
【精神力】10→9
(1,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,5,6,6,6,6) 成功

画像3

 体勢復帰したアーバンホエールが呻く。彼の周囲に立ち上ったのは、朧なディスグレイスの幻影だ。その数、4つ!

「「「「「ウフフ! さあ、どれが本物でしょう?」」」」」

「……舐めるな! イヤーッ!」

 BLAM! アーバンホエールのLAN直結型ハンドガンが火を吹く。それは通常の仕様であればあり得ぬほどの反動を彼にもたらした。特殊改造されているのだ! 放たれた弾丸が幻影の頭を撃ち抜き、消滅させた!

 BLAM! 回転する視界の中、アーバンホエールはもう一度射撃。弾丸が幻影の心臓を撃ち抜き、消滅させる。「イィィィィヤァァァァーッ!」二度の射撃反動により回転速度を増したアーバンホエールのカラテが三人目のディスグレイスへ、

アーバンホエール:集中ピストルカラテ→ディスグレイス×2
(2,3,6) 幻影! ブンシン×1消失
(1,2,5,6) 幻影! ブンシン×1消失
アーバンホエール:カラテ→ディスグレイス
(1,2,2,2,2,2,2) オイオイ

 KABOOM!

「ヌゥーッ!?」

 ナムサン。間近で起こった爆発がそのバランスを崩した。宙を切るカラテ! ディスグレイスは訝しみ、前方を見やる。

 そしてすぐさま原因を理解した。「アイエエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」爆発炎上した車から転げ落ちた運転手が悲鳴! 不幸にもニンジャのイクサを目撃してしまったことによるNRS症状に相違なし!

 そしてそれには留まらぬ! 突然の衝突事故、そして運転手の叫びが前方車両に恐怖を呼び、KABOOM! KABOOM! そこかしこで衝突と爆発を生む! ナムアミダブツ! なんたるアビ・インフェルノ・ジゴクか!?

 ディスグレイスは舌打ちする。モータルの事故はこの際よしとしても、ヤタウジが重役会議に遅れることだけはなんとしても避けねばならぬ。つまり……

 ブロロロロロ! ヤタウジの乗る装甲ヤクザリムジンが突如加速! 蛇行し、事故車の隙間を通り抜けながら速度を増す。ナムサン、運転クローンヤクザの冷徹な判断による無秩序走行だ!

 ブロロロロロ! 当然のごとく足元の装甲リムジンもそれを追う! ディスグレイスは振り落とされまいと両脚にカラテを込め、アーバンホエールを見据えた!


◇3ターン目◇

画像4

事故発生により基本回避難易度U-HARDな

 ディスグレイスの幻影がアーバンホエールの周囲を巡る。油断なく本物を見定めようとした彼の目に「イヤーッ!」「グワーッ!?」金の妖光が飛び込んだ。

コマ×2消失 攻撃ダイス+2
ディスグレイス:カナシバリ
(1,1,1,1,2,2,3,3,3,4,4,5,5,5,5,6)
アーバンホエール回避
(1,3,4) 【精神力】4→3
抵抗!
(1,2,2,5,5) 成功

 アーバンホエールは歯を食いしばり、ニューロンを侵食しようとするジツを跳ね除ける。そこにバイオ触手が迫った。

ディスグレイス:集中バイオサイバネ
(1,1,1,2,2,2,4)(3,3,3,4,5,5,6,6)
アーバンホエール回避
(3,4)(1,2)
サツバツ判定
5 両腕破壊!

イヤーッ!」「アバーッ!?

 あるいは、動かぬ大地を踏みしめていたのならば話は違ったかもしれぬ。しかしそれは所詮、たらればの話に過ぎない。今の彼は装甲ヤクザリムジンに追いすがるために荒れ狂うリムジン車上におり、その状況で幻惑的な触手のカラテを避け切ることは出来なかった。それだけの話だ。

 真っ赤な視界の中、彼は自分の腕ごと道路へと放り出される愛銃を見た。触手が巻きつき、引き寄せる。恐るべきミコー装束ニンジャの元へ。

「死ぬ前に。一つ、いいことを教えておきましょう」

「アバッ……?」

 微笑を浮かべる女の顔。アーバンホエールの眼前に、一枚の名刺が吊り下げられる。アシタダ・ヤタウジ。部署は……もはや読むこともできない。彼の目はその役職に引きつけられていた。係長。

「わたくしが護衛し、今そこのリムジンの中にいる方の名刺です。……意味が、わかりますか? アーバンホエール=サン」

「アバッ……バカな……」

「貴方がどのような情報を頼りに襲撃相手を決めたかまでは存じ上げませんが……ウフフ! マジックモンキーめいていますね」

「最初から……作戦は失敗……? そんな……!」

 アーバンホエールの顔に絶望が広がる。事実上、それがカイシャクとなった。

アーバンホエール【体力】5→0 爆発四散
残虐ボーナス 1d3→2 【万札】2→4
ドロップ【万札】4→16

サヨナラ!

 アーバンホエールは爆発四散! 「イヤーッ!」ディスグレイスは短いザンシンを終え、前を走る装甲ヤクザリムジンへ飛び移る。背後ではアーバンホエールの乗りつけた装甲リムジンが急速に遠ざかっていった。

 ディスグレイスはそれを一瞥し、開きっぱなしの装甲窓から車内に戻る。人手があればインタビューを試みるべきだったのかもしれないが……今優先すべきはヤタウジ氏の護衛である。

「ドーモ。お騒がせいたしました」

「あ、アイエエエエ……」

「多少運転は荒っぽくなるでしょうが、もう安心でしょう。スシをいただけますか?」

 畏怖の視線を向けるヤタウジに、ディスグレイスは微笑した。


◇エピローグ◇


 ……19時55分! ネコソギ・ファンド会議室前!

「イヤーッ!」「アイエエエエ!?」

 風めいて階段を駆け上がってきたディスグレイスは、会議室の前で抱えていたヤタウジを降ろす。しばし腰を抜かしていた様子の彼は、震える脚で立ち上がった。

「……フー。この時間ならなんとか、ケジメもセプクも無しで済みそうです」

「なによりです。わたくしのせいで遅れたとあっては申し訳が立ちませんので」

 結局、運転クローンヤクザのドライビングをもってしても到着は間に合わない。そう判断したディスグレイスはヤタウジ課長を抱え、己の脚でここまで運び込んだのである。

 数度深呼吸したヤタウジは、真っ直ぐにディスグレイスを見た。もはやその顔に怯えの色などない。会議に挑むセンシの顔つきだ。

「ディスグレイス=サン。本当にありがとうございました」

 深々とオジギした彼は、決然と会議室は入室。バタン、とドアが閉まる音をきっかけにディスグレイスは息を吐いた。まさか自分が貧乏くじを引くとは!

 携帯IRC端末でキールバックたちを呼びつけながら、ディスグレイスは踵を返す。今回のイクサもなかなかのものだった。身体が火照っている。クールダウンが必要だ。


◇◆◇◆◇


 後日。トコロザワ・ピラー、会議室にて。多くのソウカイニンジャたちの前、ディスグレイスはヘルカイトと対峙していた。

 ヘルカイトは憮然とした表情で彼女を見やってから、マキモノを広げて読み上げる。

「ンン……ゲイトキーパー=サンからのお言葉です。『ディスグレイス=サン。この度の作戦において敵ニンジャを爆発四散させた手腕は見事であった。よってここに褒賞を与える』……ドーゾ」

「ドーモ」

 おお、と前列に座るソウカイニンジャたちが騒めいた。ディスグレイスに手渡されたのは万札の束! ソンケイ、羨望、嫉妬……さまざまな視線を受けつつも、ディスグレイスは粛々と自席に戻った。

■リザルトな■
A:ヘルカイトの助けを借りずにアーバンホエールを爆発四散させた
【万札】16→52
【名声】19→21
【余暇】3 獲得

「……続いて、ミッションに参加した有志諸君への報酬に移ります。リッスン! 騒がない!」

 やや上がりかけた歓声にヘルカイトが釘を刺す。そんな彼を、ディスグレイスはじっと眺めていた。


◆◇◆◇◆


 ボーナス支給後、会議室には二人のニンジャが残っている。すなわちディスグレイスとヘルカイトだ。

「……なにか御用件でも? ディスグレイス=サン」

「ええ。ちょっとお聞きしたいことがありまして」

 タタミ3枚分の距離を保ち、ディスグレイスはヘルカイトを見据える。その空気が僅かに軋んだ……もしその場に第三者がいれば、そのような錯覚さえ起こしたかもしれぬ。

「重役の皆様方は随分と早いお着きだったようですね? 装甲ヤクザリムジンの数も、わずかに足りないように見えました」

「ナンセンス。キョート風のやり方に疎いと、よくその口で言えましたね? 率直に言ってみなさい」

「……今回の護衛任務、実際に重役を護衛したニンジャはいなかったのでは?」

 ヘルカイトはまじまじとディスグレイスを見据え……不意にメンポの奥で笑みを漏らした。それだけでディスグレイスには充分だ。

 彼女は顔をしかめ、詰め寄る。

「通りでやたらとニュービーが多いと思ったのです……!」

「愚かなクジラをコエビで釣り上げる。コエビは作法と実戦経験を積み、立派なロブスターへとなるかもしれぬ。食われれば……それまでのこと。効率的でしょう?」

「それは認めざるを得ませんね。ですがもう一つ! なぜわたくしを引っ張り出したのです?」

「『ウナギにドジョウを一匹混ぜる者あり。ならばウナギにはかえって手を抜くべからず』……ミヤモト・マサシのコトワザには通じていませんか?」

 平然とした物言いに、ディスグレイスは顔をしかめた。楽しげにその様子を眺めていたヘルカイトが不意にその表情を改める。

「まあ、それだけではありません。ソニックブーム=サン直々の頼みでもありました」

「……あの方が? 何故」

「ネオサイタマ流に言いましょう。これは貴女の昇格試験も兼ねていた。そして……貴女は見事それに合格しました」

「は?」

「そこで問い返しはやめなさい。……まったく! ビホルダー=サンとソニックブーム=サン。そして大変不服ではありますがこの私、ヘルカイト。我々が貴女をシックスゲイツ候補として推薦します」

 ディスグレイスの目が丸くなった。その反応が意外だったのだろう、しかめつらしい顔を保っていたヘルカイトが不意に吹き出し、顔を手で覆う。

「小憎たらしいと思っていましたが……ハハハ! そのような滑稽な様を見られるならば、成る程! この役割も悪くないものですね!」

「ちょっ……ちょっと待ってください!」

「待ちません。タイム・イズ・マネー! 今から候補生に与えられるトコロザワ・ピラーの区画を案内します。ついてきなさい。……駆け足!」

「は、ハイ!?」

 一方的に宣言し、ヘルカイトは踵を返す。そのまま足早に会議室を出て行く彼の後を、ディスグレイスは慌てて追うのだった。


【オロチ・メイクス・フェイク・トゥ・プラウジブル・ニュース】終わり


◇後書きな◇

 ディスグレイス、ヘルカイトとのスパークリングのおかげで【名声】20を超えシックスゲイツ候補となりました。私のバースではまだシックスゲイツに欠員が出ていないので候補生止まり。彼女がシックスゲイツになる日は来るのだろうか……

 ともかく【名声】20超えにより【ジツ】値7が目前に迫ってきた。あとは余暇の問題だ。

 それではここまで読んでくださった皆様方! そして楽しいシナリオを書いてくださった古矢沢=サンにくりーむ=サン! ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?