忍殺TRPGソロリプレイ:【スマッシュ・アウト・アンラック】

◇前置き◇

 さて、早速ではあるが今回もソロシナリオに挑戦したいと思い記事を書き始めた。挑戦するのは三笠屋=サンの「ニンジャのアルバイト」である。

 挑戦者はコールドブラッドだ。前回も三笠屋=サンのソロシナリオにし、生還したニンジャである。カネ回りはいいはずなのだが、まあ目先のカネに釣られるやつなのだろう。大目に見て欲しい。

ニンジャ名:コールドブラッド
【カラテ】:4
【ニューロン】:3
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:4
【精神力】:3
【脚力】:3
持ち物など:
・ウイルス入りフロッピー
○指名手配犯(【DKK】+2で開始)
【万札】:29
【名声】:4

 では早速やっていく。ヨロシクオネガイシマス。

◇オープニングな◇

 生きていれば良いこともある。準備されたスシをつまみ、コールドブラッドはそう考えた。彼女はソウカイヤに所属するニンジャであり、今日はソウカイヤ配下のライジング・カープ・ヤクザクランを訪問したところだった。月々なミカジメ・フィー徴収のためである。重要ではあるが、ニンジャにやらせるにはチンケな仕事だ。

 このヤクザ事務所は初めてではない。ここを取り仕切るワカガシラのタキボの顔を覚えるくらいには付き合いができていた。

 とはいえ、だ。唐突にセッタイを受けるほど親しい仲ではなかったはずである。対面で愛想笑いを浮かべるタキボをひと睨みしつつ、コールドブラッドはタマゴ・スシを一度に二つ食べた。隣に侍るオイランが微笑とともにサケを注ぐ。ゼイタク!

「ドーゾドスエ」
「ドーモ。……なあタキボ=サン。セッタイはありがたいけどよ、オイランはいらねえだろ。アタシ、そんな趣味ねえぞ」
「い、いえいえ! オネエサンにはいつも世話になってるんで! 俺も細心の心遣いをですね……!」
「フーン……ま、悪い気はしねェな」

 サケを一息に煽る。オカワリを注ごうとするオイランを手で制し、コールドブラッドは身を乗り出してタキボの顔を覗き込んだ。包帯で隠されたそのバストは豊満である。

「に、しても、よォー……なんのつもりだ、エェッ?」
「で、ですからね。いつもマジメに頑張ってくださっているオネエサンに、感謝の気持ちッてやつでして……!」
「おお、わかってんじゃねェか。アタシはこう見えて……ソウカイヤの中じゃ比較的マジメだ。少なくとも最近はな。知ってるか? ミカジメ集めてる連中にも、ピンハネして自分の懐にチョロまかす奴がいるんだってよ」
「へ、ヘヘェ……ウチみてぇな小さいクランに、オネエサンのようなニンジャがやってきてくれて実際ありがたいですよ」
「だろォー? ハッハハハハハ!」
「ワーッハハハハハハ!」

 ニンジャの哄笑とワカガシラのどこかヤバレカバレな笑い声が事務所内に響き渡る。壁の端に立っていたレッサーヤクザたちの誰かがごくりと唾を飲んだ。そしてコールドブラッドは見逃していない。ワカガシラの額に滲む汗を。

 不意に笑いが止み、沈黙が広がる。妙に緊迫したアトモスフィアがその場を縛りつけたようだった。コールドブラッドはタキボを睨む。タキボは観念したように目を瞑り……カッと見開いた。

「オネエサン!」

 彼はそのまま床に転がり落ちるような勢いでドゲザした。ドゲザである! コールドブラッドは目を丸くした。なにかキナ臭さを感じていたが、ここまで強烈な反応が返ってくるとは予想だにしていなかったのだ。

 「お、オネエサンを見込んで、頼みがあるんです! どうか、聞いちゃくれませんか……!」

◆ソウカイヤのサンシタニンジャであるお前は、月々のミカジメ・フィー徴収のために訪れた小規模ヤクザクランの事務所で、なぜかスシとサケ、オイランによるセッタイを受けた。ワケもわからないままいい気分になっていると、突然その事務所を仕切っているワカガシラがドゲザし、頼みたいことがあると言い出した。◆
◆ワカガシラが語るところによれば、現在、ツキジのとある倉庫には密輸入されたメキシコライオンが保管されているのだと言う。それを強奪し、老いた彼のオヤブンに献上することで、クラン内でソンケイを高め、跡継ぎ候補として存在感を出したいのだそうだ。◆

「……言ってみろ」

 コールドブラッドは足を組み、タキボを見下ろした。タキボは顔を上げる。その表情は決死の思いが滲み出ていた。

「ら、ライオンが欲しいんです」
「アァ? テメェんとこのオヤブンにでも買ってもらえよ。まだ生きてんだろ、確か」
「それじゃダメなんで……俺がプレゼントする側にならなきゃいかんのです。強さと無慈悲さの象徴! そいつを献上して、ソンケイを高めたいんだ!」

 コールドブラッドは腕組みする。つまりは後釜狙いのポイント稼ぎ。わかる。理屈はわかる。だが。

「それをなんでアタシに頼む」
「単純な話なんで……高いんですよ、ライオンは。ここ最近、急に値上がりしやがった」
「あァ、お前らンとこじゃ買えねェってこと……オイ、アタシがライオンより安いとでも言いたいのかテメェは」
「そうじゃありません! まだオネエサンのほうが話を聞いてくれるかもしれねェってだけで!」

 タキボは必死である。コールドブラッドは苦い表情でそれを見下ろした。このヤクザはまだ若く、腹に一物抱えられるような性分の男ではない。本心からの言葉だろう。

「……アタシに頼むってことは、目星がついてんだな? どっかから調達してこいって話だろ、どうせ」
「さ、流石オネエサン……ええ、その通りです。近頃、メキシコから密輸入されたライオンがツキジに保管されてるんだそうで」

◆凶暴なオーガニック猛獣であるメキシコライオンは強さと無慈悲さの象徴として人気が高い。闇カネモチやヤクザ・オヤブン、暗黒メガコーポ重役などにとって、邸宅でメキシコライオンを飼育することは自らのパワーを誇示するのみならず、ヘマをした部下や裏切り者をライオンの檻に放り込んで処刑させることで内外に無慈悲さをアッピールできるという実用性も兼ね備えているのだ。◆
◆無論、稀少なオーガニック生物であり、凶暴極まりない猛獣であるメキシコライオンの捕獲は困難を極める。需要に対する供給の追いつかなさからその値段は年を追うごとに跳ね上がっていき、今ではとても弱小ヤクザクランのワカガシラが出せる程度の金額ではなくなっている。そこでニンジャの力を借り、強奪したいと言うのだ。◆

「ツキジ、ねェ……」

 コールドブラッドは無言でオイランにサケを注がせ、一息に飲み干した。タキボが懐から万札を取り出し、恭しく掲げる。

「どうか、前金としてこれを! 結果がどうあれ、お返しはいりませんので!」
「人が失敗する前提で話してんじゃねェよ……アタシがライオン持ち帰ったら?」
「こ、これの三倍!」

 コールドブラッドは意味もなくオイランの肩を抱き、考える。以前のトーフ工場で稼いだカネはまだある。が、それがいつまでもあるわけではない。稼げるときに稼いでおいたほうがいいだろう。

「……あと、スシのオカワリを寄越せ。それでテウチにしてやる」
「あ……アリガトゴザイマス! おいテメェら、なにボーッと突っ立ってやがる! オネエサンに礼を言うんだよ!」
「「「アリガトゴザイマス!」」」

 壁際に立つレッサーヤクザたちが一斉にオジギ。コールドブラッドはこっそりと口の端を吊り上げた。そこから覗く牙はライオンめいて鋭い。まあ、悪い気はしない。一肌脱いでやるとしよう。

◆ワカガシラは前金として【万札】2を差し出した。成功すれば追加で【万札】6を払い、さらにうまくいかなかった場合でも前金は返さずとも良いと言う。ロクな稼ぎもなく、いつもカネに困窮しているお前にとってこんなうまい話は無い。お前は前金を懐に収め、捕獲用の麻酔銃を受け取って早速ツキジへと向かった。(【万札】2獲得、麻酔銃入手)◆

◇ツキジな◇

……イヤーッ!」

 所変わってツキジ・ディストリクト! 追加のスシを綺麗に平らげたコールドブラッドは、そのままタキボの仕事をこなすことにきめた。仕事はテンションの高いうちに済ませるに限る。

 長身を猫背でごまかし、彼女はブラブラと立ち並ぶ倉庫群の中を歩き始める。「ザッケンナコラーッ!」BLAMBLAMBLAM!「アイエエエエ!」遠くから聞こえる喧騒にコールドブラッドは目を細めた。少し先を、フランベフルジュを背負ったアンタイブディスト・ブラックメタリストの少女が駆け抜けていく。

「噂にゃ聞いてたが、思ったより盛況だな。これもマジメニンジャクンのおかげかね……」

 少しばかり前のこと。ミッションによりこの地を訪れたソウカイニンジャが、最奥部から冷凍マグロを持ち帰った。このお祭り騒ぎはそれがきっかけだ。どこからどう伝わったか、アウトローたちが二匹のマグロを狙い続々とこの地を訪れたのである。マグロラッシュというやつだ。

 その影響でいくつかの倉庫はベースキャンプに改造されてアウトローたちの住処となっているし、それ目当てに露天商や前後ワゴンオイランが集結し始めた。経済である。

◇ドーモ、モーターロクメンタイです。大丈夫、私がそばでナビしますよ。あなたは今、ツキジの廃倉庫群へと来ています。そこかしこから悲鳴や銃声や怒鳴り声が聞こえますね。◇
◇つい先日、ソウカイヤの探索によって地下ダンジョンから大量の冷凍オーガニック・マグロが発掘されたことにより、ツキジは歴史上幾度目かのマグロ・ゴールドラッシュ。廃倉庫のいくつかは探索ベースキャンプとして改装され、重サイバネのスラッシャーや暗黒メガコーポの探索傭兵などの危険なアウトローが辺りを闊歩しています。それらを目当てに銃やカタナ、薬物を売りさばく露天商、スシやイカケバブの屋台、前後コンテナの前から扇情的な眼差しを向けるオイランなども集まり、周囲は一種異様な活気に包まれています。◇

 (とんだオマツリ騒ぎを引き起こしてくれたよな、マジメニンジャめ)下卑た視線を向けてきたスラッシャーをひと睨みで失禁させつつ、コールドブラッドは麻酔銃を弄ぶ。タキボからの支給品だ。これでライオンを眠らせてからレッサーヤクザたちに運ばせる。そういう手はずになっている。

 (ま、こんだけアウトローどもがいれば、返ってアタシは目立たねえだろ……だよな?)彼女は不意に怯えた視線を周囲に振りまく。同じような考えから引き起こしたトーフ工場の狼藉は、よりによってラオモト・カンの懐刀たるダークニンジャにモニタリングされていた。

 ややあってから、コールドブラッドは勢いよく首を振る。今回はソウカイミッションではない。タキボの、あの弱小ヤクザクランからの依頼だ。そんなものにまであの冷徹極まりないニンジャが関与してくるはずもなし!

 ……それでも、仕事はちゃっちゃと終わらせよう。コールドブラッドはやや歩く速度を上げた。

◇一般市民ならば恐ろしくて近寄ることすら躊躇う危険地帯ですが、ニンジャであるあなたにとっては何の問題もありませんよね!後ろ暗いところのある連中の吹き溜まりなので、騒ぎを起こしてもマッポに通報される心配が無く、思う存分ニンジャの力を振るえますよ!◇
◇それに、今回はソウカイヤからのミッションではなく、単なる個人的アルバイトです。途中で放り出して帰ってしまっても、ケジメもセプクもありません。クライアントはソウカイヤ傘下の弱小ヤクザクランなので、結果がどうあれあなたに文句を言える立場ではないのです!前金だけいただいてそのまま帰っても自由!いつものミッションと違って気楽そのものですね!さあ、アルバイトを始めましょう!◇

◇◆◇◆◇

「ここか? ここだな」

 アウトローたちの喧騒から離れ、廃倉庫群を歩いていたコールドブラッドは、ある倉庫の前で足を止めた。耳をすませば聞こえてくる。荒々しい猛獣の息遣いが。念のため、タキボからIRCに送られていた物理アドレスも確認。間違いなし。

 ここはダンジョンから離れた地域。マグロ目当てのスラッシャーたちはおらず、従って彼らに向けた警備員の類もいない。(イイことすると、ブッダが微笑むってか)コールドブラッドはにんまりと笑った。

◇あなたは廃倉庫群を歩き、メキシコライオンが保管されているという倉庫へと到着しました。ニンジャ聴力やニンジャ嗅覚を働かせると、中から漏れ出してくる動物の息遣いや獣臭がハッキリと感じ取れます。ここで間違いないようですね。◇
◇ダンジョン入り口からやや離れた場所にあるためか辺りに人は無く、また見張りも立ってはいません。ですが、入り口は厳重にロックされています。あなたの腕の見せ所ですね!さっそく開錠してみましょう!◇

 とはいえ、である。

「……まァ、鍵くらいはあるわな。ガキじゃあるまいし……」

 思わず気の抜けた呟きが漏れた。倉庫の入り口は当然のごとくシャッターが下りており、電子ロックがかけられている。最低限のセキュリティというわけだ。

 コールドブラッドは肩を鳴らし、電子ロックの前へと屈み込んだ。

◇さて、どうしますか?
1:【カラテ】で入り口を破壊(目標出目5以上)
2:【ワザマエ】でロックを解除(目標出目4以上)
3:【ニューロン】でハッキングして解除(目標出目4以上)

【ワザマエ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 1, 2, 3, 4, 5, 6 成功

「ンー……いけるだろ、これくらいなら」

 ナンバーキーを観察し、目を細める。汚れの具合からよく押されているであろうキーを割り出し、パターンを変えて打ち込む。……数度目の試行。4、6、4、3。パワリオワー!

「楽勝、楽勝。ハッカー・ドージョーのほうがまだ手間がかかるぜ」

 機嫌よく立ち上がったコールドブラッドは、無造作にシャッターを押し上げ中にエントリーした。

◇目標出目以上を出せたあなたは、見事に倉庫のロックを打ち破ることができました!この程度、ソウカイニンジャにとってはベイビー・サブミッションですね!意気揚々と倉庫内にエントリーして次に進みましょう!◇

◇◆◇◆◇

 倉庫の内部は実に暗い。光源はLEDボンボリのみだ。それでも、コールドブラッドにとっては充分。彼女はすでに十数個もの鋼鉄製ケージを見出しており、その中にオーガニックな猛獣たちがうろついているのを捉えていた。

 警戒の唸り声と獣の匂いが充満する中をコールドブラッドは悠々と歩き、目当てのケージ手前で停止。輝く目でこちらを睨み付けてくるのは、立派なたてがみを備えたメキシコライオンである。こいつに麻酔を打ち込み、レッサーヤクザどもに回収させる。ベイビー・サブミッションだ。

◇LEDボンボリが放つ頼りない明かりで薄暗く照らされた倉庫内には十数個の鋼鉄製ケージが並び、ケモノ臭さと動物の唸り声に満ちています。目的であるメキシコライオンが収められた檻はすぐに見つかりました。後は麻酔銃を撃ち込み、無力化したところで檻を開けてヤクザクランへと連絡し、回収のためのトレーラーを寄越してもらうだけです。ラクなアルバイトでしたね!◇

 コールドブラッドは麻酔銃を構える。メキシコライオンの唸り声が強くなるが、どうということはない。所詮は檻の中の獣だ……彼女は目を細め「ザッケンナコラーッ!BLAMBLAM! 突然の銃声に目を見開く!

◇あなたは早速麻酔銃を構えようとしますが・・・「ザッケンナコラーッ!!」BLAM!突如として廃コンテナの陰からチャカ・ガンを構えた警備クローンヤクザが飛び出し、あなたに向かって銃撃してきました!回避して下さい!◇
【回避】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 2, 2, 4, 5, 6, 6

 「イヤーッ!」コールドブラッドはその場でブリッジ回避! 胸のすぐ真上を銃弾が過っていく。眉間にしわを寄せた彼女は「イヤーッ!」そのままバク転跳躍し、廃コンテナの陰から飛び出してきた銃撃者向けスリケンを投擲!「グワーッ!」命中!

「なンだよ、クローンヤクザか?」

 コールドブラッドは不機嫌に呟く。警備ならば潔く外に出ていればいいものを。横着するからブッダが怒り、このようなことになる。「アバッ……ザ、ザッケ……」額から緑の血を流すクローンヤクザがまだ生きていることも、彼女の苛立ちに拍車をかけた。この不届き者をカイシャクすべく、コールドブラッドはゆっくりと歩み寄る。

◇「イヤーッ!」出目4以上を出したあなたは見事に銃弾を回避!「イヤーッ!」「グワーッ!」そのままカラテもしくはスリケン、あるいはジツを叩き込んでクローンヤクザを吹き飛ばしました(特に意味は無いのですが、ジツを使って対処したい場合は【精神力】を-1しておいて下さい)!「アバッ・・・ザッケ・・・」おやおや、まだ息がありますよ。存外にしぶといですね。トドメを刺すために次に進みましょう!◇

◇◆◇◆◇

 クローンヤクザはもはや虫の息。力なくもがく様を冷酷に見下ろしていたコールドブラッドは、カイシャクすべく足を上げる。そのとき!

「ザ……ッケンナコラーッ!」

 BLAMBLAMBLAM! 銃弾が放たれる! アブナイ!? ……否だ。もはやクローンヤクザの手は震え、間近にいるコールドブラッドに狙いを定めることすら能わない。でたらめな方向に飛んでいった弾丸に鼻を鳴らしてから、コールドブラッドは死にかけのクローンヤクザの頭を踏みつぶした。ナムアミダブツ。

「余計な根性使うんじゃねェよ……ブッダが怒るぜ、まったく」

 ぼやきつつ、コールドブラッドは振り返り、改めて麻酔銃を構えて檻の中へと狙いを定めた。そして気づく。そこにはなにもいない。唸り声が横から聞こえる。視線をずらす。檻の外に出たライオンが、怒りの眼差しをこちらに向けている。

◇あなたは虫の息のクローンヤクザをカイシャクしようとしますが・・・「ザ・・・ッケンナコラーッ!」BLAMBLAMBLAM!死にかけヤクザは最後の力を振り絞り、震える手で銃を数発撃ちました!ですが、所詮はヤバレカバレ。あなたが回避するまでもなく銃弾はてんでバラバラの方向に飛んでいきます。「アバッ」最後の力を使い果たしたクローンヤクザはそのまま事切れました。◇
◇クローンヤクザの死を確認したあなたはあらためて麻酔銃を構えようとしますが、倉庫内のアトモスフィアの変化に気づきます。見れば・・・なんということでしょう。メキシコライオンが檻の外に出ています!これは一体!?◇

「……ブッダファック。こいつァどういう……ア!」

 反射的に視線を走らせたコールドブラッドは、すぐに原因を見て取った。倉庫壁面。ケージ電子ロックの制御用と思しきUNIXが火花を散らし、黒い煙を吹いている。なぜか? 考えずともすぐわかる。あの死にかけが放った弾丸が命中したのだ!

◇倉庫内に目を走らせたあなたは、すぐに原因を発見しました。倉庫壁面に設置された制御用UNIXが火花を散らし、黒い煙を吹いています。先ほどのヤバレカバレで放たれた銃弾がUNIXに命中して誤作動を起こし、メキシコライオンの檻にかかっていた電子ロックを解除してしまったのです!◇

「ブッダ、ファック! おい、今日はブツメツじゃねえぞブッダ=サン!」
「GRRRR……!」

 喚きながらコールドブラッドは麻酔銃を捨て、カラテを構える。理不尽なことに、メキシコライオンの眼差しはしっかりとこちらを見据えていた。確かにこのライオンも理不尽にこの場に連れてこられたのだろう。だが適当に居合わせたコールドブラッドにその怒りが向けられる謂れはない!

「GROWL!」

 だが、ライオンもそんなことは知ったことではないのだ! 野生のカラテをそのツメに漲らせ、飛びかかる!

◇「GRRRR・・・」メキシコライオンは怒りに満ちた視線をあなたに向けます。無理やり連れてこられたライオンの目には、密輸業者もあなたも変わりない敵として映っているのでしょう。「GROWL!」一際大きく吠えたライオンは、鋭いツメに野性のカラテを漲らせてあなたに飛び掛ってきました!麻酔銃は間に合いそうもありません!ここはひとまず攻撃を回避して下さい!◇
◇「GAAARH!」メキシコライオンは前足を交互に繰り出して二回連続攻撃を仕掛けてきました!回避難易度はNORMAL(出目4以上必要)!回避ダイスを二回に分けて回避して下さい!ダメージは一撃につき1、両方命中すれば2ダメージとなってしまいます!◇
回避判定(難易度NORMAL)
3d6 → 3, 5, 6 成功
3d6  → 1, 3, 6 成功

 動揺していたコールドブラッドの精神は、しかしすぐに苛立ちに塗り替えられた。たかだか少し図体がデカい程度のネコチャンが、檻から出られた程度で!「GAAARH!」両前足の二連撃が迫る!「イヤーッ!

 コールドブラッドは退かなかった。側転もなしだ。彼女は踏み込み、ライオンの攻撃をくぐり抜けてワン・インチ距離に達した。そして!「イヤーッ!」「ARRRGH!」その鼻っ柱を叩き折らんばかりの勢いで頭突き! 吹き飛んだライオンは慌てて立ち上がり……開け放たれたままの入り口めがけ駆け出したのだ!

◇「イヤーッ!」「ARRRRGH!」攻撃を回避、もしくはニンジャ耐久力によって持ちこたえたあなたは、反撃のカラテをメキシコライオンに叩き込みます!「GRRR・・・」一度の切り結びであなたとの力量差を把握したライオンは、野生動物の生存本能に従って逃走を選択、倉庫出口へ向かって走り出しました!逃がすわけにはいきません!急いで麻酔銃を構えて次へ行きましょう!◇

◇◆◇◆◇

「チッ……ネコチャン風情が、ふざけやがってよ」

 コールドブラッドは毒づき、麻酔銃を蹴り上げた。そしてキャッチし、遠ざかっていくライオンに向けて構える。その目が煩わしげに細められた。

◇あなたは逃走するメキシコライオンに麻酔銃の狙いを定めます!【ワザマエ】判定を行って下さい!目標出目はNORMAL(出目4以上必要)です!◇
【ワザマエ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 2, 3, 3, 5, 5, 6 成功

 プシュン! 圧縮空気が炸裂する小さな音。コールドブラッドは狙撃姿勢を解く。二撃目は必要あるまい。麻酔弾がライオンの尻に突き刺さるのを、彼女のニンジャ視力ははっきりと捉えていた。

「……ARRRRRGH……」

 果たしてその見立て通り。ライオンは倉庫出口目前で力尽き、そのままいびきをかき始める。コールドブラッドは舌打ちし、携帯IRCを取り出した。

「モシモシ、タキボ=サンか? ネコチャン……じゃねえわ、ライオン。ライオン確保したから、さっさとコブンを送ってくれ。ハイ、ヨロシク」

 手短に通話を済ませ、ライオンの元へ。近づかれても起きる様子はない。まあ、当然だ。そういう麻酔だ。手持ち無沙汰に麻酔銃を弄んでいたコールドブラッドは、ふと思いついたように屈み込んだ。そしてライオンのたてがみを撫でる。思ったよりもゴワゴワしていた。

◇出目4以上を出せたあなたの銃弾は見事メキシコライオンに命中!「ARRRRGH・・・」ライオンは倉庫出口目前で力尽き、そのまま眠り始めました。やりましたね!これでアルバイトはほぼ完了です!IRCでワカガシラに連絡を入れ、回収用トレーラーを寄越してもらいましょう!後は残りの万札をもらうだけですね!次に進みます!◇

◇◆◇◆◇

 ……数分後! 倉庫前に到着した回収用トレーラーから、レッサーヤクザ二人が現れコールドブラッドにオジギした。

「「センセイ、ドーモ!」」
「ハイ、ハイ。ドーモ。ライオンはそこな。そいつで大丈夫だろ」

 コールドブラッドはやる気なく親指で床にへたばるライオンを指し示す。レッサーヤクザの若い方が目を丸くし、興奮したように駆け寄ってその顔を覗き込んだ。

「ウオッ……すげえ! でけえ!」
「バカ! 後にしろそういうのは! ……スンマセン」

 申し訳なさそうに詫びを入れてくる年長レッサーヤクザに、コールドブラッドは気のない様子で手を振り、気にしていないことを伝えた。そんなことより早くここを離れたい。先ほどの弾丸といい、今日はどうもツイていない。

(ナンデだよォ、ブッダ……今日のアタシはちゃんと人助けしてるじゃないですか。ねェ?)

 背後で始まったライオン回収作業から目を離し、コールドブラッドは天を仰ぐ。重金属酸性雨こそなけれど、今日もまた重苦しい灰色の雲。気が滅入るようだった。コールドブラッドは視線を戻し、動物用ストレッチャーにライオンを縛りつけようとするヤクザ二人を眺める。動かなければ猛獣もカワイイがある。かもしれない。

 ……不意に、猛烈に嫌な予感がコールドブラッドを襲った。倉庫の外から、なにか何かが這い回るようなカサカサとした音が聞こえてくる…… 

◇ワカガシラに連絡を入れて数分後、倉庫前に回収用トレーラーが到着しました。「「センセイ、ドーモ!」」中からは二人のレッサーヤクザが現れ、あなたに対して深くオジギをしました。彼らは荷台から動物用ストレッチャーを下ろすと、さっそくライオンの回収作業にかかろうとします。◇
◇ほとんど仕事を終え、リラックスしながらその光景を眺めていたあなたですが、突如としてニンジャ第六感が危険を察知しました。急いでニンジャ聴力を働かせると、何やらカサカサと動く音が倉庫の外から聞こえ、それはだんだんと近づいてくるようです・・・!◇

「おい、テメェら! 離れろ!」
「「エッ?」」

 突然の警告に、レッサーヤクザたちが怪訝な顔を上げたその時!「シューーーッ!」「「アバーッ!?」」外から伸びてきた二本の巨大なハサミがレッサーヤクザたちの胴体を掴み、両断! 当然のごとくヤクザ二名は即死! ナムアミダブツ!

「ハァーッ!?」

 反射的に飛び離れたコールドブラッドは自分の目を疑った。倉庫の外から窮屈そうに入り込んできたのは、巨大なバイオズワイガニ! 泡を吹き出し、怒り狂っていることは明らか! 

 何の前触れもない登場で呆気に取られていたコールドブラッドは、ふと気づく。カニの体に突き刺さった鋼鉄の星を。スリケンだ。しかもどういうわけか、クロスカタナ紋が刻まれている。ソウカイヤの支給品である。

 ……ふと、彼女は思い出していた。マグロラッシュの発端となったマグロ回収ミッション。たしかその回収時に、ニンジャと交戦してなお逃げ延びたバイオズワイガニの情報があった、ような……

◇あなたがレッサーヤクザ達に異変を知らせようとしたその瞬間!「シューーーッ!」「「アバーッ!?」」突如として二本の巨大なハサミが振るわれ、瞬く間にレッサーヤクザ二人を両断、即死させました!カラテ警戒するあなたの目の前に姿を現したのは・・・なんということでしょう、怒り狂った巨大バイオズワイガニです!◇
◇「シューーーッ・・・」バイオズワイガニは油断なき警戒の泡を噴出しながら飛び出した目であなたを睨みつけます。よくよく観察すれば、その体にはスリケン・・・それもクロスカタナ紋の入ったソウカイヤ支給スリケンが突き刺さっています!このズワイガニはもしや、ツキジダンジョン探索の報告にあった、ソウカイニンジャと交戦、スリケンとカラテを受けながらも生き延びて逃走したという個体なのでは・・・!?◇

「……イヤイヤイヤイヤ、まさかだろ……」
シューーーッ!

 脳裏に浮かんだ考えを否定しようとしたコールドブラッドは、目の前のバイオズワイガニの様子からそれを諦めざるを得なかった。このカニは怒っている。自分を見てより怒りを激しくした。正確には……胸元につけたクロスカタナ紋のバッチを見て!

「…………フッザケルナ! クソ! クソが! ちゃんと仕留めろマジメニンジャ野郎!」

 やはり今日はツイていない。諦念めいた思考を、コールドブラッドは怒りで打ち消した。

◇「シューーーッ!」バイオズワイガニはあなたの装束やメンポに印されたクロスカタナ紋を発見し、著しく興奮したようにハサミを開閉させます!どうやら完全に敵と認識されたようですね。このズワイガニを撃退しなければライオン回収は不可能でしょう。◇
◇さて、どうしますか?
▶︎戦闘を回避し、撤退する
▶︎巨大バイオズワイガニと戦う

 バイオズワイガニは怒り狂っている。その巨体で倉庫出口を塞ぎ、ここで確実に仕留めてくれると言いたげだ。だが……コールドブラッドはそれと同等、あるいはそれ以上に怒り始めていた。

「……ダッテメッコラーッ……人がマジメによォ、ア? 人助けしてやろうッてときによォ……ア? なに邪魔してくれてんだカニ風情が……」

 彼女は自身の肉体を覆っていた包帯を解き始める。豊満なバストがあらわになった……一瞬だけだ。すぐにその皮膚を鱗が覆い、増幅された筋肉によって全身が巨大化する!

▶︎巨大バイオズワイガニと戦う
「シューーーッ!」威圧的にハサミを振り回すバイオズワイガニに対し、あなたは無慈悲なカラテを構えました。ほんの一回ニンジャから逃げおおせたことで調子に乗った下等な甲殻類に、真のニンジャの世界を見せてやりましょう!◇
◇ではあなたの攻撃です!カラテなら【カラテ】、スリケンなら【ワザマエ】、ジツなら【精神力】を1消費して【ジツ】+【ニューロン】の値だけダイスを振って下さい!ヘンゲヨーカイ・ジツを持っている人は攻撃前にヘンゲしておくのもいいですね。出目5以上が出れば攻撃成功、巨大バイオズワイガニに1ダメージを与えます。戦闘用バイオサイバネやカタナによる強攻撃、特殊な武器やジツなどで攻撃した人は1ダメージ以上与えられることもありますね。「シューーーッ!」出目4以下なら失敗。ダメージを与えられずにズワイガニの攻撃フェイズです。◇

「よくもまァ依頼人のコブン殺してくれたなテメェ……アァ!? 説明が! 面倒に! なるだろうが!

 バイオズワイガニが警戒するように後ずさった。その眼前でコールドブラッドの肉体はどんどんと巨大化し……バイオズワイガニと同等の大きさにまで成長! これぞコールドブラッドのカクシ・ワザ、ヘンゲヨーカイ・ジツである!

ヘンゲヨーカイ使用 【精神力】3→2
5d6 → 1, 3, 3, 5, 5 成功
2ターンの間、【カラテ】4→7
【カラテ】判定(難易度HARD)
7d6 → 4, 4, 4, 5, 6, 6, 6 サツバツ! カニ5→3

ゴウオオオオーン!」オオトカゲとなったコールドブラッドはそのまま突撃を開始!バイオズワイガニ向けてその巨体を叩きつける!「シュシューーーッ!?」踏ん張ることができず、そのまま外へ! 対面の倉庫シャッターへ激突!「シューーーッ!?」バイオズワイガニが苦悶した。その体に突き刺さっていたスリケンが、先の攻撃でさらに奥に詰め込まれたのだ! バイオ血液が噴き出す!

◇「シューーーッ!」バイオズワイガニの攻撃です!両手のハサミを時間差で叩きつけ、二回連続攻撃を繰り出してきました!先ほどのメキシコライオンと同様、回避ダイスを分割して回避してください!回避難易度はNORMAL(出目4以上必要)、ダメージは一発につき1です。回避できた人は再び攻撃を。できなかった人は【体力】を1減らし、生き残ったなら攻撃。そうでないなら爆発四散です。◇
回避判定(NORMAL)
4d6 → 2, 4, 5, 6 回避
3d6 → 1, 3, 4 回避

 「シュシューーーッ!」だがこのバイオズワイガニもさるもの! ソウカイニンジャと渡り合った経験がそのカラテを増したのだろうか、時間差をつけその巨大ハサミをたたきつけんとす!「イヤーッ!」しかし、おお、ゴウランガ! オオトカゲはバク転し一撃目を回避! 二撃目を尻尾で弾き散らし無効化! なんたる巨体からは想像できぬニンジャめいたアクロバティック!

 オオトカゲとバイオズワイガニは距離をとり、睨み合う。もしこの場に暗黒ニンジャ史に詳しい考古学者がいたならば、このカイジュウ・ムービーめいたイクサになんらかのニンジャ真実を見出していたかもしれぬ。

「ゴウオオオオーン!」

 コールドブラッドが吼え、跳躍! そのままバイオズワイガニへと飛び掛った!

◇これを巨大バイオズワイガニに5ダメージ与えるまで繰り返して下さい!オーガニックスシやトロ粉末を持っている人は自分の手番の時に使って回復するのもいいですよ。◇
2ターン目(ヘンゲ継続中)
【カラテ】判定
7d6 → 1, 1, 2. 3, 4, 5, 6 成功 カニ3→2
回避判定
4d6 → 1, 1, 1, 6 回避
3d6 → 3, 4, 5 回避

 「シュシューッ!」バイオズワイガニは回避せんと横移動を開始。しかし「ゴウオオオーン!」「シュシューッ!?」突如として横回転を始めたオオトカゲの尻尾に巻き込まれ、大きく吹き飛ばされる!

 ギャリギャリギャリ! 脚のツメで無理やりブレーキをかけたバイオズワイガニは「シュシューッ!」着地したオオトカゲ向けハサミ二連撃!「ゴウオオオーン!」だが、オオトカゲは……ゴウランガ! 尻尾を支えに二足で立ち上がり、丸太めいた腕でこれを弾く!

3ターン目
ヘンゲ継続 【精神力】2→1
【カラテ】判定
7d6 → 1, 1, 3, 3, 3, 3, 6 成功 カニ2→1
回避判定
4d6 → 1, 3, 4, 5 成功
3d6 → 1, 5, 6 成功
4ターン目(ヘンゲ持続)
7d6 → 1, 2, 2, 2, 4, 4, 5 成功 カニ撃破!

 「シューッ……!」バイオズワイガニの目に、一瞬だけ悔恨の色が浮かんだ……もしその場にカニに詳しいニンジャがいたのであれば、そう判断したかもしれぬ。ハサミを外側に大きく弾き飛ばされたバイオズワイガニは、大きく隙を晒す。オオトカゲはそれを見逃さぬ!「ゴウオオオーン!」鋭い牙を備えた顎を大きく開き、食いつきにかかる!

 「シューッ!」バイオズワイガニは左のハサミでかろうじてガード「ゴオオオオーッ!」「シュシューーーッ!?」否! オオトカゲの牙はハサミに食らいつき……そのまま乱暴に食いちぎったのだ!「シューーーーッ!」バイオズワイガニは反撃に移らずそのまま逃走! 悔しげに泡を吹きながら、廃倉庫群の闇へと消えていった。

 ペッ、とハサミを吐き捨てたオオトカゲの身体が急速に縮み始める。そして最終的にほとんど裸となったコールドブラッドの姿へと戻ったのだ。彼女のバストは豊満である。

「ハァーッ、ハァーッ……オトトイキヤッガレ! カニ! この、クソ! 死ね! どっかでくたばってマグロのエサにでもなっちまえ! クソ!」

 バイオズワイガニの消えた闇に怒りをぶつけていたコールドブラッドは、思い出したようにその場にへたり込む。ヘンゲヨーカイ・ジツは強力無比だが、そのぶんジツの維持には神経を使うのだ。

 彼女は倉庫の入り口を見やる。相変わらず高いびきをかくライオンと、真っ二つになって死んだレッサーヤクザたちの死体が相変わらずそこにあった。

「ハァー……帰るか」

 ようやく怒りの冷めたコールドブラッドはのろのろと立ち上がる。とりあえず、包帯を巻こう。それからライオンと死体を回収だ。

◇「イヤーッ!」「シューーーーーッ!」あなたは巨大バイオズワイガニに5ダメージを与えることに成功しました!「シューーーッ・・・」バイオズワイガニは悔しげに泡を吹き出しながら、カサカサとどこかへと逃げていきました!やりましたね!あなたは眠るメキシコライオン、それにレッサーヤクザ両断死体を荷台に詰め込み、トレーラーを運転してヤクザクラン事務所へと向かいました。エンディングに進んで下さい!◇

◇エンディングな◇

 ブロロロロロ……ライジング・カープ・ヤクザクラン事務所前。戻ってきた回収トレーラーに顔を明るくしたタキボは、運転席から降りてきた人物を見て顔を青ざめさせた。

「ド……ドーモ! オネエサン! オツカレサマで!」
「おう」

 全身包帯にPVCレインコートの女ニンジャが、不機嫌に答える。タキボの頬を汗が伝い、彼は死を覚悟した。迎えにやらせたヘイホとギントがおらず、コールドブラッド本人が運転。なにか不慮の事故があったにちがいない。

◇「ドーモ!」トレーラーを運転し、ヤクザクラン事務所へと到着したあなたは、ドゲザするワカガシラに出迎えを受けました。レッサーヤクザ二人の姿が見えないこと、ニンジャであるあなたが自らトレーラーを運転していることから、何らか想定外アクシデントが起こったことに感づいたワカガシラは、あなたの怒りを買ったのではという恐怖に顔を青ざめさせています。◇

「あ、あの」
「来い」

 不機嫌なニンジャの言葉に黙らされ、タキボは処刑場に赴く気持ちでコールドブラッドの後を追う。コールドブラッドが荷台を開け放つ。そこには。

「お、オオ……」

 タキボは目を見開く。ストレッチャーに拘束されたライオン……いや、それよりも両断されたヘイホとギントの死体にだ。両者とも腰から真っ二つにされ、驚愕の顔も凄まじい。

「こいつは……!」
「一応言っておくがな、アタシじゃねえぞ。むしろ、アタシは! 被害者だからな! 見ろ、こいつを!」

 口調も荒く、コールドブラッドがさらに何かを荷台から引きずり出す。ナムサン……それは人間を切断できるほどに巨大なカニのハサミだ。ぽかんと口を開けるタキボの前で、コールドブラッドは苛立ちとともにハサミを勢い良く叩く。

「散々だ、今日は! クソクローンヤクザがクソネコチャンの檻を開けやがるわ、帰ろうとした矢先にクソカニは襲ってくるわ!」
「カ、カニ……? その、オネエサンは大丈夫だったんで?」
「大丈夫じゃねえように見えんのか、アア?」
「アッハイ、お元気そうです! では、その、カニは……?」
「アア? ハサミ食いちぎったら逃げてったよ。それ、適当に処分しておいてくれ」

◇メキシコライオンの回収に成功した場合
あなたは荷台を開け放ち、眠るメキシコライオンとレッサーヤクザ両断死体をワカガシラに見せ、事情を説明しました。ワカガシラはレッサーヤクザの死に衝撃を受けたようでしたが、クラン構成員の死体を放置せず回収してきてくれたことに対して感謝の言葉を述べ、残りの報酬をさらに上乗せした【万札】8をあなたに渡しました。◇

 タキジは呆然としていたが……やがて改まったように向き直り、120度近くオジギをした。

「オネエサン。アリガトゴザイマシタ」
「ん」
「その……ライオンはもちろんですが、うちの若ェモンを、わざわざ……スンマセン……ウウッ……敵討ちまで……」
「……アー。まあ、な。そいつらが死んだのは完全に事故だし。まあ悪かったとは思うけどよ……」

 ぽりぽりと後頭部を掻くコールドブラッドに、タキボは懐から取り出した茶封筒を手渡した。さらに懐から、万札を上乗せ。

「受け取ってください。ヘイホとギンジの分です」
「……おう」
「その、オネエサン! アリガトゴザイマス! このご恩、いつか必ずお返しいたします!」

 タキボはドゲザした。コールドブラッドは戸惑ったように彼を見下ろし……踵を返してネオンの街へと消えていく。顔を上げたタキボは、いつまでも彼女の背を目で追っていた。

◇再びドゲザするワカガシラに見送られながら、あなたは報酬を持って事務所を立ち去ります。やれやれ、ちょっとしたアルバイトのつもりがとんだ冒険になってしまいましたね!これであなたはこのヤクザクランに大きな貸しと恩義を作ることができました。いずれ何かの形で役に立つこともあるでしょう。もしかしたら報酬の万札以上に大きな財産になるかもしれませんね。ですが、今はとりあえず、手元の報酬でパーッと遊んで疲れを癒すことです!さぁ、ネオンの街に繰り出しましょう!◇

◇リザルトな◇

 というわけで、クリアである。万札はこうだ。

【万札】:29→39

 ごねムーブが似合いそうだからと挑ませたコールドブラッドも、最終的にカニとのカイジュウ決戦を始めてしまい、まあ面白いところが見れた。

 ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?