忍殺ソロTRPGチャレンジ:【シー・イズ・ジャスト・コールドブラッド・シーフ】

前置き

 ニンジャスレイヤーのTRPGでは、数回ダイスを振るだけでニンジャを生み出すことができる。Dice makes Ninja…これは突き詰めるとシーライフなんかにも影響を及ぼしそうだが、そういう考察はここではしない。

 重要なのは、簡単に作れるあまり作ったきりでお蔵入りになってしまうニンジャが出ることである。私の場合、以下のニンジャがそうだ。

ニンジャ名:コールドブラッド
【カラテ】:4
【ニューロン】:2
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:4
【精神力】:2
【脚力】:3
装備など:
・ウイルス入りフロッピー
○指名手配犯(万札5、DKK2)

 生い立ちルールを初採用したニンジャである。指名手配犯というなんとも味のある生まれ。そしてニューロンが低いにも関わらず初期装備がウイルス入りフロッピー。おそらくハッカーを専門に襲撃する卑劣なやつなのだろう。私はそう考えた。

 しかし、このニンジャはまだ活躍していない。キャラメイクと同時に行われたツキジダンジョン探索では、アベレージ(この間余暇を過ごしていた、ソロアドベンチャー生まれの平均的ソウカイニンジャ)が挑戦者となったからだ。

 このまま放っておくのももったいない。というわけで、今回は自分でソロアドベンチャーに挑んでみることとした。

 せっかく指名手配犯だし……という理由で、挑戦するシナリオを三笠屋=サンの【ニンジャの火事場泥棒】とする。

 そういうことで、ヨロシクオネガイシマス。

◇オープニングな◇

◇ドーモ、モーターロクメンタイです。大丈夫、私がそばでナビしますよ。あなたは急行命令を受けましたが、運悪く現場から遠くにいたため到着が遅れてしまいました。すでにシックスゲイツ級を含む多くのニンジャがチバ救出のために工場内を探索しています。完全に出遅れてしまいましたね。これではチバを救出してラオモト=サンからボーナスを貰うのは絶望的です◇
◇チバ救出のキンボシを密かに狙っていたあなたは自分の運の無さに嘆息します。でも物は考えようですよ!目の前には今まさにアナキストの攻撃に晒されている工場があります。今いるエントランスすら死体だらけです。これからあなたが工場内で誰をどれだけ殺しても、金庫やUNIXを荒らして金目のモノを奪っても、全部アナキストのせいにできますよ!日頃の鬱憤を晴らすチャンスですね!◇
◇労働者やアナキストを好きなだけ殺し、金目のモノを好きなだけ略奪しましょう!他のニンジャがチバ救出に動いている今なら、あなたのジャマをする者は誰もいません!さあ、火事場泥棒の始まりです!◇

 アヤセ・ジャンクション工場地帯はアビ・インフェルノ・ジゴクめいた様相となっていた。爆発。燃え上がる炎。銃声。悲鳴。……その隙間を縫うようにして響くカラテシャウト。

「アー、アー、アー……」

 そんな危険地帯に足を踏み入れたのは、異様な出で立ちをした猫背の女である。フード付きのPVCレインコート。その袖から覗く腕にも、顔にも、乱雑にバイオ包帯を巻きつけている。「イヤーッ!」足元に転がっていた邪魔な死体を蹴り飛ばし、彼女は舌打ちした。

「もうはじまっちゃってるじゃんかよ……マジかよ……マジメどもがよ」

 胸元につけたソウカイヤのバッジが炎で照らされる。彼女の名はコールドブラッド。こう見えてれっきとしたソウカイニンジャなのだ。彼女は両手を後頭部に当て、大きく上半身を反らして向かうべき工場を眺める。そのバストは豊満であった。

「こりゃキンボシ無理だなァ……出遅れてるもんな……ダッル! イヤーッ!」

 彼女は足元に転がっていた死体を蹴り飛ばす。イラついたからだ。……数十分は遡るだろうか。彼女の元にミッションがもたらされた。武装アナキスト集団の襲撃を受けたニルヴァーナ・トーフ社のトーフ工場。そこを見学していた首領の子息、ラオモト・チバの救出である。

 首領の子息ともなればその権力は絶大だ。うまく立ち回ればコネを作れ、甘い汁を吸うことができる……。が、実際はこうだ。ミッションは自分以外のソウカイニンジャにも発布されたと見え、たまたま離れた場所にいた自分が向かう間にマジメな連中が突入している。どう見積もっても子息の救出は先取られ、コネどころかボーナスすら絶望的だ。

 コールドブラッドはぼんやりとエントランスに足を踏み入れる。あたりは一面死体だらけだ。武装アナキストか突入したマジメな連中がやったのか、どちらかはわからないが……

「…………待てよ」

 思わず立ち止まり、呟く。今の状況は極めてケイオスであり、事の済んだあとから被害を見直しても、その加害者など調べられようはずもない。

 つまり。コールドブラッドの目が喜悦に歪む。今のこの状況、奪うも殺すも自由だ。

「俄然、やる気が出てきちまったぜェーッ! イヤーッ!」

 彼女は足元の死体を蹴り飛ばし、入り口のドアにぶつけて叩き壊した。ナムサン! なんたる無法行為! だがそれを見咎める存在はここにいないのだ! 彼女は色付きの風めいて工場の内部へ駆け込む。狙うはカネ、命、そしてカネ!

◇本編な◇

◇工場内に入ったあなたの目の前には、溢れ出したトーフエキスが床を覆い、その上を逃げ惑う労働者とそれを襲うアナキストによる地獄絵図が広がっています。なんらかのケミカル物質が発火したらしく、あちこちから火の手が上がっていますね。これだけケオスな状況なら、あなたが何をしたってバレっこありませんよ!
◇「アイエエエ助けてーッ!私は高い学歴があり社会的貢献性が高くここで死ぬには惜しい人間なんだーッ!」職員と思しきサラリマンが労働者を突き飛ばしながらあなたの方へ走ってきました。なんかイラッと来ませんか?来ましたよね?じゃあカラテで殺しましょう!【カラテ】値に等しい数のダイスを振って下さい(判定無しの自動成功です)
4D6 → 2,6,6,6 サツバツ! 

 工場内部は惨憺たる有様だった。トーフエキスと思しき白濁液が床に垂れ流され「死ねーッ!」「アバーッ!?」「ヤメローッ! ヤメローッ!」その上で武装アナキストが工場労働員を追い回し、最終的に死のダンスを踊らせる。周囲では火の手が上がっていた。ケミカル物質に引火したのだろう。コールドブラッドは愉しげに目を細めた。良い余興だ。テンションが上がる。

「アイエエエ助けてーッ!」

 そこに水を差すように無粋な悲鳴が飛び込んできた。

 コールドブラッドはぎょろりと声の方向を見やる。逃げ惑う労働者を押しのけてこちらにやってくる者が一人。トーフエキスにまみれているとはいえ、高級そうなスーツを着用。おそらくはこの工場の職員か。

 助けて恩を売り、礼を請求するのも乙だ。コールドブラッドは気まぐれにそう考え、

「そこのキミ! どきなさい! 私は高い学歴があり社会的貢献性が高くここで死ぬには惜しい人間なんだーッ!」

 職員の言葉で次の行動をスイッチした。イラっときたからだ。

「イヤーッ!」「アバーッ!?」

 コールドブラッドは駆け寄ってくる職員に向け飛びかかり、強烈なヒザ蹴りをその顔面に叩き込む! 当然のごとく職員は転倒! 彼女は歪んだ笑みを浮かべ、もがく男の頭を踏みつけた。

「ハァー……エライ。エライなァー、おっさん。そんなに社会的にいい事してるんならさァー……」
「アバッ、ヤ、ヤメ、」
「さっさと天国に行ってブッダに会ってこいよォーッ! イヤーッ!
アバーッ!

 ◇「イヤーッ!」「アバーッ!」◇相手は無力なサラリマンなので、ニンジャのカラテを回避することはできません。あなたはサラリマンを殺し、懐から【万札】を1獲得。さらに【DKK】を1獲得して次に進みましょう。もし振った中に出目6が2個以上あったならば『サツバツ!』が発生!残虐ボーナスにより【万札】を3、そして【DKK】も3獲得します!◇
 【万札】:5 → 8
 【DKK】:2 → 5

 ナムサン! 職員の頭はスイカめいて粉砕! 周囲の死体をその地で彩る事となった。コールドブラッドは満足げに頷き、念入りに踏みにじると、意気揚々とその懐を漁り始めた。

「オッ、結構もってんじゃん……さすがカチグミ! しっかりあたしのために稼いでくれてるぜェ……」

 万札を3枚引き出した彼女は、いそいそと懐にしまいこむ。こちらに来る途中に出会ったペケロッパから引き出した分と合わせるとなかなかの量だ。コールドブラッドはもともとハッカーやペケロッパを専門に狙う強盗犯であり、指名手配すらされていた。もっとも、ソウカイヤに入った時点でその経歴は念入りに洗浄されたのだが……本人の性根が洗浄されるわけでもない。

「ま、こいつはもういいか。ブッダによろしく言っておいてくれ。あたしのおかげで早く天国に来れたってさ……」

◇◆◇◆◇

 上機嫌で内部を進む。剣呑な罵声や悲鳴など、彼女にとって恐ろしいものではない。なんといっても自分はニンジャなのだから。ふと、コールドブラッドは足を止める。その視線の先にあったのは工場の見取り図だ。

◇気ままな殺人を堪能し、リラックスした気分で金目のモノを探していたあなたは、壁に張られた工場の見取り図を発見しました。そこには工場長の部屋の位置が記されています。中には金庫に収められた万札やトロ粉末、カケジクやカタナなどのトレジャーがあるはずです!ワクワクしてきましたね!◇

 彼女はそれを凝視する。会議場やトーフ製造プラントの位置……それは今重要ではない。大事なのは、もっと金目のモノがありそうな……例えば、工場長の部屋の場所だ。

「……みィつけた」

 爬虫類めいた瞳が喜悦に歪む。早々に目星をつけた彼女は「イヤーッ!」風めいてスプリントを開始! 自分と同じことを考えている奴がいないとも限らない。そうした性根の腐った連中より先に、万札やオタカラを回収せねば!

 そのときである! BLATATATATATA! 「「「アバババババーッ!」」」無視できぬ銃声と悲鳴! 近い!

「なンだァ?」

 コールドブラッドは煩わしげに静止する。それと同時、重い足音とともに眼前の角から鉄塊めいた逆関節二足歩行ロボニンジャが現れた。こちらをターゲッティングしたそれは、ぎこちなくアイサツを繰り出す。

「ドーモ、モーターヤブです。直ちに休憩してください」

◇工場長の部屋を目指して走っていると、不快な電子音声が聞こえてきました。「ドーモ、モーターヤブです。直ちに休憩してください」BRATATATA!「「「アババババーッ!」」」あれはモーターヤブ!図体ばかり大きくてアタマの悪いポンコツです!どうやらアナキストにハッキングを受けて暴走しているようです。なんて脆弱なセキュリティ!同じオムラ社製品として恥ずかしい限りですね!◇

「……ドーモ。コールドブラッドです」

 反射的にアイサツを返し、コールドブラッドは顔をしかめた。角に倒れこんでいるのは労働者だ。このロボニンジャはポンコツとして有名だが、いくらなんでも工場で働く人員を無意味に殺すほど壊れてはいない……はず。つまり武装アナキストのハッキング影響下だ。

「休憩して休憩ください休憩休憩休憩!」
「イヤーッ!」

 BLATATATATA! ガトリング掃射をコールドブラッドは側転回避。ついでまた舌打ちを漏らす。エイミングは極めて雑。だからといってこんな鉄くずにかかりずらっていてはオタカラさえ逃してしまう。しかし奴の居座る道は工場長室へのルートだ。さて、どう切り抜けたものか「アイエエエ!?」

◇愚かな鉄クズは腹立たしいことに工場長の部屋へのルート上に居座っています。本当にジャマですよね!あんなものに構っているヒマは無いのでスキを見て突破しましょう!「アイエエエ!」おや?避難してきた労働者があなたを見てNRSを起こしてへたりこみました。これは何かに使えるかもしれません◇
◇どうしますか?
1:労働者をオトリにしてその隙に突破(自動成功)
2:【ワザマエ】でヤブをやり過ごして突破(目標出目4以上)

1を選択
1:労働者をオトリにしてその隙に突破
「アババババババーッ!」あなたは労働者を放り投げてオトリにし、あるいは抱え上げて肉盾として、ヤブのガトリングガン掃射をやり過ごしました。見事なフーリンカザンです!ネギトロになった労働者は気にせずに先に進みましょう!なお残虐行為により【DKK】を3獲得します◇

「あァ?」

 足元からの悲鳴に、コールドブラッドは唸る。そこにいたのは労働者だ。「ニンジャ! ニンジャナンデ!?」どうやら避難してきたと同時、ガトリングを回避する自分の姿を見てNRSに陥ったものらしい。やかましいのでカラテを振るおうとしたコールドブラッドは、

「……待てよ? イヤーッ!」「グワーッ!?」

 電撃めいた天啓! NRS労働者の首根を掴み、モーターヤブへと投げつける! 「休憩ーッ!」「アババババーッ!」当然のごとく迎撃され、NRS労働者はスイスチーズめいた残骸へと成り果てた。ナムアミダブツ!

 ……モーターヤブは察知できぬ。その瞬間に真横を通り過ぎたニンジャの存在を。

「ヘッヘヘ……助かったよォ。誰かは知らないけどさ……天国に行って、ブッダによろしく頼むぜ……」

 その呟きを咎める者はいない。

【DKK】:5 → 8

◇◆◇◆◇

◇工場長の部屋を目指して、あなたはどんどんトーフ工場の奥へ奥へと進んでいきます。プラントには「四角い存在」「凝固したアモルファス」などの製品名がショドーされています◇

 「四角い存在」「凝固したアモルファス」などの哲学的製品名がショドーされたプラントを横目に、コールドブラッドは工場長の部屋を目指していた。不意に彼女は目を細める。前方に影あり。自分と同じ方向に駆けていくそれはニンジャだ。おそらくはソウカイヤの。

(あいつもオタカラ狙いか? どうすっかな)

 最悪の場合、混乱に乗じて始末しなければなるまい。だが、幸いにもその選択肢を選ぶ機会はなかった。ガゴンプシュー! 前方ニンジャと自分を遮るように障壁が降りてきたからだ! ((ヌゥーッ!?))前方ニンジャのくぐもった呻きが届く。

◇細い廊下を全力疾走しているあなたは、前を走るソウカイニンジャの姿を認めました。すると・・・ガゴンプシュー!((ヌゥーッ!?))おっと、何かのトラップでしょうか。突如として隔壁が下りてきて、前のニンジャを閉じ込めてしまったようです。いくらサンシタとはいえウカツに過ぎますね!放っておいて先に行きましょう!◇

「なんだ? トラップか?」

 衝突寸前で足を止めたコールドブラッドは、障壁に手を押し当てる。よくよく周囲を見渡してみれば迂回路があり、こちらを通れば工場長の部屋へ向かう事ができるだろう。しかし……

◇おや、どうしましたか?
1:放置して先を急ぐ(自動成功)
2:【カラテ】で隔壁を破壊して救出(目標出目5以上)
3:【ニューロン】で制御端末をハッキングして救出(目標出目4以上)

◇2:【カラテ】で隔壁を破壊して救出(目標出目5以上)
正気ですか!?ああ、いや、なるほど!サンシタに恩を売っておこうという算段ですよね!ここで助けておけば後々使い捨ての手駒として使えるかもしれません!長期的視点に立った見事な判断です!【カラテ】値に等しい数のダイスを振って下さい!5以上の出目があれば成功です!◇
2を選択
4D6 → 4,5,5,5 救出成功!

 彼女は気まぐれな性分だ。カラテ貧弱なハッカーを前に、カネだけ奪うか命だけ奪うかを気分で決めることはしょっちゅうだった。コールドブラッドは硬さを確かめるかのように障壁を軽くノックし「イヤーッ!」唐突にカラテストレートを叩き込む!CRAAASH! SPLAAAASH!

「ウワッ、きたねッ!」
「ゲホッ! ゲホーッ!」

 中から溢れ出てきた謎めいた粘着物体に、コールドブラッドは眉をひそめる。それがユバであることに彼女が気づいたかどうか。が、今はそれと同時にまろび出てきたユバまみれのニンジャのほうが重要である。

「ゲホーッ……た、助かった! ドーモ! ヘブンリリーフです!」
「ドーモ。コールドブラッドです。あんたもソウカイヤ?」
「然り……おお、貴殿もか! なんたる天の助けか!」

 感激のあまり両手を握ろうとしてきたヘブンリリーフに、コールドブラッドは嫌な顔をして距離をとった。ユバまみれのニンジャはきょとんとしていたが、やがて気を取り直したように周囲を見渡す。

「ややッ、こうしてはおれん! チバ=サンも同じ苦難に遭われておられるやもしれぬ……! これにてシツレイ! イヤーッ!」

 そして返事を待たぬうちに駆け去って行った。取り残されたコールドブラッドはこめかみを掻き、ダラダラとした様子で工場長の部屋へと向かっていく。

◇「イヤーッ!」CRAAASH!出目5以上を出したあなたは、見事なカラテで隔壁を破壊!中からユバまみれになった汚らしいサンシタが出てきて、あなたにお礼を言って走り去りました。任務中であろうと仲間の窮地を見捨てないあなたの気高い行動は、サンシタ界隈で評判になること請け合いです!【名声】を1獲得して次に進みましょう!◇
【名声】:0 → 1

◇◆◇◆◇

◇いよいよ工場長の部屋は目前です!ですが、ドアの前にはアナキストが陣取っています。どうやら施錠されているドアを開けようとピッキングを試みているようですね。他のアナキストが命がけでアナーキー行為をしているのに自分だけコソ泥のようなマネをするなんて吐き気がしますね!不快且つ略奪の邪魔なので殺しましょう!
◇アナキストはピッキングに夢中です。好きな方法で殺しましょう!普段はあまり使わなかったり得意でない手段で殺してみるのも楽しいかもしれませんね!
1:【カラテ】で殺す(目標出目4以上)
2:【ワザマエ】でスリケンを投げて殺す(目標出目4以上)
3:【ニューロン】+【ジツ】でジツを使って殺す(【精神力】が1以上の時限定、目標出目4以上)


2を選択
6D6 → 1, 1, 2, 2, 2, 4 成功!
1、2、3、いずれも出目4以上を出せば成功!「イヤーッ!」「アバーッ!」ニンジャであるあなたのパワーの前に所詮モータルのアナキストはなすすべもありません!死体から【万札】1を獲得。もし【カラテ】で判定して出目6が二つ以上あった場合は『サツバツ!』が発生!残虐ボーナスにより【万札】を3、そして【DKK】を1獲得です。【ジツ】を使って判定した場合は【精神力】を1消費しておいて下さい。アナキストはピッキングに成功していたらしく、ドアノブを握るとドアはあっさりと開きました。次に進みましょう!◇
【万札】:8→9
【DKK:8→9

 カチャカチャと細やかな金属音。コールドブラッドはすぐにその音源を見つけ出した。目当ての工場長室前。屈み込んだアナキストが器用に手元を動かしている。ピッキング。その事実に気づいた彼女は容赦しなかった。「イヤーッ!」「アバーッ!?

 ナムアミダブツ! 投擲されたスリケンが容赦なくピッキングアナキストの後頭部を撃ち抜いた。もしものときのため、わざと周囲に散らばるよう投擲していた予備のスリケンが虚しく壁に突き立つ。

「アッハ! ブルズアイ、ブルズアイ」

 コールドブラッドは愉しげに手を叩き、アナキスト死骸の懐を探って万札を抜き取る。そして死骸を引き剥がし、無造作に投げ捨てた。ドアノブを握り、ひねってみる。軽い感触。アナキストはピッキングに成功していたのだ。笑みが浮かんだ。

「最後に善行を積んだなァ? 天国に行けるぜ。お前」

 死骸に言葉を投げかけたあと、コールドブラッドはドアを開け放った。

◇◆◇◆◇

 「アイエエエエ!?」工場長の部屋でまずコールドブラッドを出迎えたのは悲鳴であった。悲鳴の主は高級そうなスーツの中年男性。その胸元には「工場長」の名札。成る程、わかりやすい。コールドブラッドは視線をややずらす。机の上には唐草模様のフロシキ。そこに包まれようとしているのは万札やトロ粉末だ。責任逃れに金目のモノを掻き集め、トンズラを試みたか。

◇「アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」突如として部屋に入ってあなたを見た高級そうなスーツを着た中年サラリマンは、NRSを起こして失禁しました。胸には「工場長」の名札が付いているので間違いなく工場長でしょう◇
◇机の上には唐草模様のバイオフロシキが広げられており、その上には万札やトロ粉末が乗っています。アナキストの襲撃を防げなかった責任を取らされるのを恐れて、金庫や机から金目のモノをかき集めて逃げようとしていたのでしょう。自身の仕事や立場を放り捨て、カネだけ持って逃げるなんて許せませんね!◇

「ドーモ。コールドブラッドです」
「アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 NRS発症により工場長はへたり込み失禁。そのブザマを嘲笑し、コールドブラッドはもう少しこの男をからかってやろうと考えた。そのときだ。ピピッ! 携帯IRCにメッセージ着信! 仕方なく彼女は内容を確認する。

◇おや?携帯IRCにソウカイネットから着信が来ていますね。確認してみましょう。『チバ=サンを発見。保護完了につきミッション終了。救出命令を受けていたニンジャは帰還せよ』・・・どうやら、キンボシを他のニンジャに奪われてしまったようですね。あと少し早く工場に到着すれば、チバ救出の栄誉とボーナスはあなたのものだったかもしれないのに。なんだか手柄を横取りされたような気分ですね◇
◇イライラしますか?それとも落ち込みますか?どちらにせよ誰かに暴力を振るって気分をスッキリさせるべきですよ!ほら、ここに工場長という手頃なカラテ・サンドバッグがあるじゃありませんか!◇
◇さあ、遠慮せずに!
1:工場長を殺す(自動成功)
2:工場長を見逃す(自動成功)

1を選択!

 内容は簡潔なものだった。ラオモト・チバの発見および保護に成功。救出ミッションを受領していたニンジャは直ちに帰還せよ……

「……ファック」

 コールドブラッドは苛立ちで顔を歪める。自分より早く到達したばかりか、速攻で仕事を片付けたマジメ野郎。勝手にこっちにまでタイムリミットを押しつけていったのだ。彼女は怒りのままに工場長に歩み寄り、

「助け」
「イヤーッ!」
「アバーッ!?」

無造作に蹴り殺すと、机の上の万札とトロ粉末を乱暴に懐に入れた。なんにせよ潮時だ。最低限の稼ぎはいる。素直に引き上げなければ、目をつけられかねない……ただでさえ彼女は指名手配犯という前身のために警戒リストに入れられているのだ。

◇1:工場長を殺す(自動成功)
「イヤーッ!」「アバーッ!」お見事!あなたのカラテは卑劣な臆病者を粉砕しました!工場長が持ち出そうとしていた【万札】を10、それにトロ粉末を一つ獲得!オマケに【DKK】も1獲得です!次に行きましょう!◇
トロ粉末入手
【万札】:9→19
【DKK】:9→10

◇◆◇◆◇

 それでもコールドブラッドはなお未練がましく室内を見渡す。彼女のようなソウカイニンジャにとって、今は絶賛のボーナスタイムだ。少しでも多くの稼ぎが欲しい。不意に、彼女の視線が一点で止まった。

◇他にも何か金目のモノがあるかもしれませんよ?部屋の中を見回してみましょう!おや、あれはなんでしょうか?◇
◇あなたが見つけたものは?ダイスを振って出た目で決定します。
1か2:カタナ
3か4:偉大なるショドー
5か6:見事なカケジク

1D6→5 見事なカケジク発見!

 ……それは壁に掛けられたカケジクであった。見事な筆致でブッダが描かれている。ふと、コールドブラッドは絵の中のブッダと目が合ったように思った。彼女はやや逡巡し……駆け寄ってそのカケジクを回収する。

「まァな、アレだよ。ブッダがいるべきは天国であってさ……こんなジゴクみてェなとこじゃねェ……これは善行だよ、善行……」

 誰にともなく言い訳するようにブツブツと呟いてから、コールドブラッドはそそくさと工場長の部屋を後にした。

◇◆◇◆◇

 カケジクや万札を詰め込んだフロシキを背負い、コールドブラッドは足早に長い廊下を進む。あたりに転がるのは死体ばかり。先ほどとは打って変わって嫌に静かだ。

「ゾッとしねェなァー……なんだよ、マジメどもは帰るのもハヤイのかよ……」

 独り言も漏れるというものだ。本当に、ゾッとしない。幼い頃に行ったオバケ屋敷を思い出す。なにか背中から恐ろしいモノが忍び寄ってくるような……

 漠然としていた怖気が、急激に形を成した。足元で。

◇戦利品の入ったバイオフロシキ包みを背負い、ウキウキ気分で死体だらけの狭く長い通路を歩いていたあなたは、突如として強大なニンジャ存在感を感じてビクリと足を止めます。一体何事でしょう?◇

「ウウウ……」
「何ッ!?イヤーッ!」

 コールドブラッドは反射的に跳び離れ、これまた反射的にカラテを構えた。錯覚ではない。ニンジャソウルの気配だ。それも相当に強大な!

 おお、見よ。死体と思われていた労働者の一人がよろよろと立ち上がる。焦げた衣服がニンジャ装束へと作り直された。周囲に燐光を放つ球体が漂い始める。そして……白く輝く目でコールドブラッドを見据えた!

◇「ウウウ・・・」なんということでしょう!床に転がっていた死体の一つが起き上がりました!あなたが驚いていると、その死体は見る見る内にメンポと装束を生成して身にまとい、全身から凄まじいほどのカラテを発し、さらにはジツ由来と思われる不可思議な光を体から漂わせました。これはニンジャソウル憑依・・・それも強大無比なアーチ級のソウルです!◇

「ドーモ……セントエルモです……!」
「……ドーモ。セントエルモ=サン。コールドブラッドです……!」

 二人のニンジャはアイサツを交わす。これはニンジャにとって絶対の礼儀。古事記に精通した読者諸氏には当然の知識であろうが……

 コールドブラッドの額から冷や汗が滲む。なんたる死にかけから偶然にニンジャソウルを得ただけのニュービーに関わらずこちらを圧倒するほどのカラテ威圧感か! 彼女は直感的に理解する。こいつは……格が違う。

 なお悪いことに次の行動も予測できた。すなわち「イヤーッ!」カラテだ! セントエルモが襲いかかる!

◇ニンジャはあなたのことを認識したようです。「ドーモ」「ドーモ」「イヤーッ!」大変!アイサツを終えたニンジャが襲いかかってきました!強大なアーチ級ソウルに憑依された直後のニンジャは、その半神に等しい力を制御できずに暴走状態に陥る場合があるのです!あなたが対処できる相手ではありませんよ!早く逃げて!◇

「い、イヤーッ!」彼女は燐光を纏ったセントエルモの拳をブリッジ回避!連続バク転で距離を取り、即座に携帯IRCを起動! これはあからさまに自分のカラテを超えた事態だ!

CLDB:ドーモ。撤収中にニンジャソウル憑依者と遭遇。極めて強大。タスケテ

 ジリジリとにじり寄ってくるセントエルモと睨み合う。(ヤバイ、ヤバイ……ヤバイって!)コールドブラッドは叫び出したい気持ちを押さえつける。やはり今日はブツメツなのか。ブッダ、先ほどお助けしたじゃないですか? 縋るような思いでカラテを構える……

 ピピッ。電子音がクモの糸めいてやってきた。コールドブラッドは慌てて内容を確認する。

FMTN:ドーモ。チンタラやってやがったな、エエッ? その憑依者はおそらくアーチ級。暴走状態。応援送る。持ちこたえろ

「ブッダファック……!」

 コールドブラッドは顔を歪める。笑っていいのか、泣いていいのかすらわからない。だが、命をつなぐ糸は確かに送られた……!「イヤーッ!」

◇あなたは素早く距離を取り、大急ぎで携帯IRCで敵性ニンジャ存在の発見とアーチ級憑依者の可能性を報告します。幸いにもチバ救出作戦にはシックスゲイツのニンジャも駆り出されており、この工場内にいる彼らがすぐにも救援に来てくれるはずです。あなたはそれまで何とか逃げ延びなければなりません!ここが踏ん張りどころですよ!生きて帰りましょう!◇
◇「イヤーッ!イヤーッ!」敵ニンジャは情け容赦ないカラテパンチ二連発を繰り出してきました!回避ダイスを分割して回避しましょう!目標出目は4以上です!【カラテ】【ニューロン】【ワザマエ】の中で「最も高い値」に等しい個数のダイスを、二回に分けて振って下さい(高い値が5ならば1回と4回、もしくは2回と3回、といった風に)!【精神力】に余裕があるなら自動成功を使うのもアリですよ(ただし、自動成功が使えるのは1ターンに一度きりです。一回は自力で対処するしかありません)!それぞれの振った中に4以上の出目があれば成功!あなたはダメージを受けません!全力で逃げながら次に行きます!◇
ワザマエ6より、3・3で二回ダイスを振る。
1回目:3D6→1, 2, 4 回避成功!
2回目:3D6→2, 3, 6 回避成功!

 「イヤーッ!」コールドブラッドはセントエルモの拳をスウェー回避! その拳には相変わらず謎めいた燐光が纏わりついている。絶対に危険だ……「イヤーッ!」セントエルモが左の拳を叩きつけんとす!「イヤーッ!」コールドブラッドは……跳んだ! その頭上を飛び越え、そのまま逃走にかかる。ワザマエ!

「ざ、ザッケンナコラーッ! ソウカイニンジャ、ナメてんじゃねェ……!?」

 負け惜しみとも嘲笑とも取れぬ言葉を投げかけやうと振り向いた彼女は、その表情を凍りつかせた。おお、見よ。セントエルモはこちらを見据え、両拳を腰だめに構えている。周囲の燐光がバチバチと稲光を放ち、収束していくではないか!

「……オイ、なんだそれ。き、聞いてねェぞ……!?」

 コールドブラッドは悟る。セントエルモがなんらかのジツを……ヒサツ・ワザを放とうとしていることを。ドクン。心臓が強く脈打ち、時間が泥めいて鈍化する。周囲に遮蔽物なし。あの渦巻くカラテからして、おそらく跳躍や匍匐での回避は不可。逃走は……無理だ。彼女のニューロンは無慈悲に死をちらつかせた。

 否!  まだだ!  一つだけ手が残されている!

◇嵐のような凄まじいカラテ連撃をしのいだあなたに対し、敵ニンジャは立ち止まって奇妙な構えを取りました。たちまち超自然の風圧が巻き起こって通路の壁がミシミシときしみ、不穏な気配が敵ニンジャの体から発せられました。なんらかのジツ、それも恐らくヒサツ・ワザ級の攻撃を放つ気です!◇
◇危険を感じたあなたは咄嗟に身を隠そうとしますが、この細い通路ではそれは不可能です。さらにはジャンプや伏せるなどしての回避もできないでしょう。背を向けて逃げ出そうものならその瞬間にあの恐るべきジツが解き放たれ、なすすべなく爆発四散してしまうでしょう・・・あなたは覚悟を決めます。自らのカラテ、スリケン、そしてジツを準備動作中の敵ニンジャに叩き込み、攻撃を中断させるしかありません!◇
◇最後の力を振り絞って下さい!あなたならきっとできますよ!
1:【カラテ】でトビゲリを仕掛ける(目標出目6以上)
2:【ワザマエ】でスリケンを投げる(目標出目6以上)
3:【ニューロン】+【ジツ】でジツを繰り出す(【精神力】が1以上の時限定、目標出目4以上)

3を選択:【ニューロン】2+【ジツ】2=4
4D6→2, 2, 4, 4 成功!
【精神力】:2 → 1

「ウ……」

 コールドブラッドはその場に蹲る。すべてを諦め、ハイクを詠もうというのか? 否。彼女にそんな殊勝な精神はない! 見よ! コールドブラッドのレインコートが内側から歪に膨れ上がり……取り払われる!

「ゴウオオオーン!」

 ……セントエルモは目を見開く。今、彼の元に突進してくるのはヤバレカバレのニンジャではない。青黒い鱗と鋭い爪牙を備えたオオトカゲだ! これぞコールドブラッドがひた隠していたヘンゲヨーカイ・ジツ!

「GRRRRR!」
「グワーッ!?」

 CRAAAASH! 轟音と閃光が廊下を埋め尽くした。彼が放とうとしていたセント・デン・ジツは不発に終わり、オオトカゲの鱗を焦がすだけに終わった。コールドブラッドは……まだ生きている! 「GRRRR!」「グワーッ!?」たくましい尻尾でセントエルモを薙ぎ払い、吹き飛ばす!

そしてそのまま背を向け、改めて逃走を開始した。その身体は徐々に萎み、半裸の女の姿となる。コールドブラッドは舌打ちし、緩みきった包帯を締め直した。無論オタカラとレインコートの回収も忘れない。

「ファック! 嫌なこと思い出させやがってよ!」

 ……このジツを得たとき、コールドブラッドは極めて高揚していた。彼女は迷うことなくハッカー・ドージョーへと押し入り、ヘンゲし、ドージョーの中を悲鳴と血でいっぱいにした。もし偶然近くを通りがかっていたソウカイヤのスカウトがいなければ、絶頂はもう少し長く続いただろう。

 現実は? 飛び込んできたニンジャに、コールドブラッドは容赦なく打ちのめされた。ソニックブームと名乗ったそのニンジャは、怪物となった彼女を恐れることはなかった。恐怖するのは彼女の方だった。彼女はドゲザし、ソウカイヤ入りすることで命を繋いだ。

このジツを使うといつもそのことを思い出す。結局、あの姿はハリボテに過ぎないのではと自己嫌悪に陥る。……今回は、まあ、役に立ったが。

◇「イヤーッ!」「グワーッ!」1、2ならば6以上、3ならば4以上の出目を出したあなたの攻撃は、今まさにヒサツ・ワザを繰り出そうとしていた敵ニンジャへ強烈なカウンターとなって突き刺さりました!「グワーッ!」ジツを発動寸前に中断された敵ニンジャは、行き場を失った力を制御できずにもがき苦しんでいます!今の内に逃げましょう!◇
◇「ドーモ」逃げるあなたの前に、シックスゲイツ級の強力なニンジャ(もしくはソウカイヤの精鋭ニンジャチーム)が現われてアイサツをしました。救援が到着したのです!「ドーモ」あなたから敵ニンジャの特徴を伝えられると、救援ニンジャはアーチ級憑依者とのイクサに向かいました。これでもう安心ですね!◇

◇◆◇◆◇

「ヤヤッ! 貴殿は!」

 どこまで逃げてきただろうか。だんだんと疲れてきたところで、横合いからどこかで聞いたような声が投げかけられた。コールドブラッドは背中のフロシキをこっそり隠しつつ、そちらを見やる。

「アンタ……エート、ヘブンリリーフ=サン?」
「然り! ハハ、無事でなによりだ。強大なニンジャに襲われたと聞き、気が気でなかったぞ!」
「……ハン? まさか、アンタが増援?」

 コールドブラッドは訝しむ。その声には露骨に失望の色が滲んでいたことだろう。この者はどう見積もったところで、自分とゴジュッポ・ヒャッポ。到底あのオバケめいたセントエルモには敵うまい。

 が、彼は鷹揚に笑い、首を横に振った。

「いやいや、まさか! 俺などでは盾になるのが精一杯といったところ。なに、道中で対処チームのお二人と出会ったのでな。貴殿のことを思い出し、こうして道案内させていただいたのだ」
「アッ、そう……じゃ、増援ってのは」
「ウム。……センセイ方! こちらです!」

 ヘブンリリーフが背後へ声をかける。コールドブラッドは何気なくその視線を追い……接近してくる二人のニンジャに言葉を失った。

 一人は男。シルクハットにマント、宝石が飾り立てられたロッドという気取った出で立ち。なにより異様なのは、その顔面を覆うドクロ・ペイントだ。ただの道化師とも取れる格好だが、全身から放たれるアトモスフィアはそうではないと語っている。

 彼はコールドブラッドを見やり、大仰なオジギを繰り出した。

「ドーモ。運のいいお嬢さん。フューネラルです」
「ど、ドーモ。フューネラル=サン。コールドブラッドです……」
「ハハ、そう固くならずともよい! 貴女はターゲットの情報を知るゲストであるからして。ああ、そうそう!」

 わざとらしく手を叩いたフューネラルは、傍に立つもう一人のニンジャを指し示した。こちらは女。鼻から上を覆うタイプのメンポ。喪中めいた黒のゴシックニンジャドレス。唇だけが艶かしく赤い。

「代理のアイサツで許してもらえるかね? 彼女はブラックウィドーだ。こう見えて人見知りでな。シツレイと思わないでいただきたい」
「……アッハイ。その、問題ないです」
「感謝する! さて、ビズの話に移ろうじゃないか。貴女の遭遇したアーチ級のニンジャとやら、果たしていかなる御仁だったかな?」

 あっけにとられていたコールドブラッドは、この一言で調子を取り戻した。彼女はなるべく簡潔にセントエルモのことを報告する……謎めいた燐光を放ち、触ると痺れる。収束して放つこともできるのではないかという予測も含めてだ。

 興味深げに頷いて聞き役に徹していたフューネラルは、嬉しげに手を打った。

「成る程! いや、貴女は報告がお上手だ。これはずいぶんと助けになる!」
「は、はァ……アリガトゴザイマス」
「では、私はそのセントエルモ=サンとやらの肝を冷やしに行くとしよう。ブラックウィドー=サンは待ちきれずに向かってしまったようだからね」

 コールドブラッドはぎょっとして隣を見やる。そこにいたはずのブラックウィドーは、いつの間にか姿を消していた。代わりに残されたのは綺麗な円形の穴である。ドトン・ジツだろうか?

 そして視線を戻してさらに仰天する。いつの間にか、フューネラルの姿すらない。幻想的に輝く蝶の群れが、ひらひらとコールドブラッドの逃走経路を辿って飛んでいくところだった。

「……いやはや。ああいった御歴々は敵に回したくないものですなぁ」

 ヘブンリリーフが嫌にしみじみと呟く。いずれにせよ、コールドブラッドのミッションはこれで終了となったのだった。

◇◆◇◆◇

 セントエルモは怒り狂っていた。普段通りに始まり、普段通りに終わるはずの仕事は突然の襲撃ですべて破壊された。武装アナキストの銃撃から逃げ惑う中、彼は確かにニンジャを見た。何人もだ。きっと、奴らがこの災厄を引き起こしたにちがいない。根拠もなく、そう思った。

 周囲に浮かぶ光玉が放電する。そして自分もニンジャとなった。奴らと同じように災厄をもたらす側となった。だから……まず、自分の場所をめちゃくちゃにした奴らをめちゃくちゃにしてやる。セントエルモはそう考えた。先ほどのニンジャには逃げられたが、なに、ニンジャはたくさんいる。今の自分には奴らを殺せる力がある。膨大な力が。

 床に溜まった蛍光色のトーフエキスを蹴り散らし、セントエルモは次の獲物を探す。自らの怒りをぶつけるための。

「おやおや。随分とカッカしてらっしゃる!」
「イヤーッ!」

 嘲り声。振り向きざまに腕を振るえば、燐光がスリケンめいて飛んでいく。それは声の主を撃ち抜く……はずだった。セントエルモは訝しむ。誰もいない。

 視界の端を蛍光色彩の小さい影が飛んでいく。

「まったく、いきなりのアンブッシュとは。まるで獣のようじゃあありませんか?」
「イヤーッ!」

 腕をふるう。燐光のスリケンはまた宙を穿つ。なにかがおかしい。ニンジャ。ニンジャにちがいない。どこだ。

「「「フォフォフォハハハハハ!」」」

 嘲笑が木霊する。途端、周囲が極彩色の渦に呑まれた。「ヌゥーッ!?」セントエルモはカラテ警戒する。彼は渦の正体を知った。それは蝶だ。蝶の群れが蛍光色のトーフエキスから飛び立って……蛍光色……?

「こ、れ、は!?」
「ドーモ。ゴキゲンヨ。セントエルモ=サン」

 嘲りの声はすぐ近くで聞こえた。色彩をまるでカーテンのようにかき分け、ドクロめいた顔が覗く。

「私はフューネラルです」
「……! ドーモ。フューネラル=サン。セントエルモです! イヤーッ!」

 動揺を怒りで塗りつぶす。新たな獲物。今度こそ焼き尽くす! セントエルモは燐光を纏うカラテパンチをフューネラルに叩き込む! KABOOOM!

「グワーッ!?」

 ……セントエルモは不思議に思った。何故? 何故、自分が苦痛に苛まれている? 数秒前の出来事がロールバックされる。彼のカラテはフューネラルに突き刺さった。奴は哄笑した。次の瞬間、奴の身体が弾け飛んで……黄緑の飛沫が……

「グワーッ!?」
「やれやれ。いくら高尚なソウルが宿ろうと、元が低俗ではどうしようもない」

 セントエルモは悶絶する。彼の全身にはクナイ・ダートが突きたっている。やや離れた位置に出現したフューネラルはしげしげとその様子を眺め、不意にステッキで地面を軽く突いた。直後!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」

 セントエルモの足元の床が突如崩壊! バランスを崩し転倒した彼は、落下してくる影を見た。避けようとする。できぬ。トーフエキスから伸びたムカデどもが四肢を縛る。

 そして。

「アバーッ!?」

 彼は絶叫した。落下した影は、容赦なくセントエルモの四肢を切断した。カシャカシャと小さな金属音を立てて離れたのは喪中めいた黒のゴシックドレスの女。その裾から、クモめいたサイバネ脚が覗く。これでまとめてケジメしたのだ。

 フューネラルの声が響く。

「彼女はブラックウィドー=サンだ、セントエルモ=サン。綺麗なアンブッシュだったろう?」
「アバッ……アバッ」
「安心したまえ! 我々は貴方を殺しにきたのではない。協力を仰ぎにきたのだ……ちょっとした研究のね。まあ、もう少し生きていられる。運がいいだろう?」

 おどけたような物言いに、もはや言葉を返す気力はない。セントエルモの光が、今消えた。

◇おめでとうございます!あなたは暴走するアーチニンジャの襲撃から生き延びることができました!戦利品の詰まったバイオフロシキを抱えてエンディングへ向かいましょう!◇

◇エンディングな◇

……トコロザワピラー!

「ムハハハハ! よいぞ! 迅速な報告、的確な対応! 実にアッパレ!」
「ハハーッ!」

 コールドブラッドは深くオジギした。彼女とて頭をさげるときがある。ソウカイヤの首領、ラオモト・カンの前などだ。

◇ここはソウカイヤの本拠地、トコロザワピラーです。「ムハハハハ!よいぞ!迅速な報告、的確な対応、実にアッパレであった!」実子であるチバが無事に救出されたことで上機嫌なラオモト=サンは、稀少なアーチ級ソウル憑依者を発見して報告し、救援到着まで持ちこたえたあなたの働きを大変評価してくれています!◇

 ……彼女のあずかり知らぬところではあるが、現在のラオモト・カンは非常に上機嫌であった。まず、チバが無事に救出されていたこと。それについで、ボタモチめいて提供されたアーチ級ソウル憑依者の存在のためだ。コールドブラッドは、間が良かった。

 ラオモトが鷹揚に手を叩く。しずしずと応じたオイランが、コールドブラッドの前に漆塗りのオボンを差し出した。ゴウランガ! その上にはカネ! 目を見開き、コールドブラッドは思わずドゲザした。

「ア……アリガトゴザイマス!」
「ムッハハハハ! これからも励むがよい!」
「ヨロコンデー!」

◇ラオモト=サンが合図をすると、漆塗りのオボンに乗せられた【万札】10を持ったオイランがしずしずと現われ、あなたにこれを与えました。ドゲザして謝意を表わすあなたを見てラオモト=サンはさらにご満悦です。「ムッハハハハハ!」あなたは評価され、【名声】2を獲得しました!フル・ルールを適用している人はここでカルマ・ロンダリングを行ってもいいですよ。『ふわふわローン』でサイバネを入れていた人は【万札】10を返済するのを忘れずに!◇
せっかくなので、カルマ・ロンダリングに挑戦。
【DKK】:10→0
2D6 → 2,4 → 6 「どれ、ワシがひとつ稽古をつけてやろう」

 コールドブラッドは恐る恐るオボンの上のカネを受け取り、指を舐めてから数え始めた。工場長の逃亡資金と合わせれば、かなりの額……!

 不意に、ラオモトが口を開いた。

「ときに、コールドブラッド=サン。あそこの工場長はいくらほど持ち出そうとしていた?」
「ハ、ハイ! ラオモト=サンのくださった金額と同じ……エッ」

 質問の意味を数秒遅れて理解し、コールドブラッドは凍りつく。ソウカイヤ首領は彼女を凝視した。

「アーチ級ニンジャソウルの持ち主と出会う前も……貴様は存分に暴れておったようだ」
「エッ……エッ? な、なぜ」
「あの場にはダークニンジャ=サンも向かわせておった。モニタリング済みよ」

 彼女はぎこちなく視線をずらす。ラオモト・カンの背後。影めいて佇むオブシディアン装束のニンジャあり。すなわち、懐刀と称される恐るべきダークニンジャ。いつの間にそこにいたのか、コールドブラッドにはわからなかった。

 ラオモト・カンが立ち上がる。凄まじい威圧感に、コールドブラッドは失禁しかけた。

「貴様はヤクザであって野良犬ではない。あまりに無法な行動をとるならばケジメだ」
「ア、アイエ……」
「……だが、儂はそれをせん。何故かわかるか?」
「アイエエエエ……わ、わかりません」
「貴様が同じソウカイニンジャを救い……そして、アーチ級ソウルの持ち主を儂にもたらしたからだ」

 ゆっくりと。ラオモト・カンが近づいてくる。絶望的に見上げるコールドブラッドへ、彼は言った。

「立てい」
「エッ……」
「ワシがひとつ稽古をつけてやる。ありがたく思うがいい」
「エッ」
「あまり惚けておるようならばその首をケジメだ」
「アイエエエエ!? イヤーッ!」

 コールドブラッドは絶叫とともに連続バク転! そしてヤバレカバレのカラテを構えた!

……まさかの事態である。とりあえず【カラテ値】で判定を行っていく。ラオモト・カンは素手であり、7つのニンジャソウルを用いない。稽古だからだ。なお、ラオモトのステータスは以下となる。
◆ラオモト・カン
【カラテ】:17
【ニューロン】:9
【ワザマエ】:14
【ジツ】:6
【体力】:15
【精神力】:9
【脚力】:6

 コールドブラッドの全身はもはや冷や汗塗れだ。ラオモトはすでにそのカラテを構え……こちらを手招きしている。先に打て。そういうことか。「イヤーッ!」コールドブラッドはデスパレートなシャウトとともに突進する!

コールドブラッド攻撃:4D6 → 1,2,4,5 成功、2ダメージ
ラオモト・カン回避:17D6→ 1,1,1,2,2,3,3,3,3,4,4,4,5,5,5,6,6 回避!

 「イヤーッ!」コールドブラッドは嵐に突っ込んだかのような錯覚を覚えた。なにをされたのかもわからぬ。彼女の渾身のカラテは至極あっさりと弾き飛ばされ……彼女自身は宙を舞っていた。「イヤーッ!」嗚呼、カラテシャウトが追ってくる。

ラオモト・カン攻撃:17D6 → 1,1,1,2,2,3,3,3,3,4,4,5,6,6,6,6,6 サツバツ!

 「アバーッ!」コールドブラッドは吹き飛ばされ、壁に激突し、そのままずり落ちてへたり込んだ。「フー……」ラオモト・カンはザンシン。おそらくはカラテ・ストレート。だが、その軌跡すら追いつくことができなかった。これがソウカイヤ首領の実力だというのか!?

「オ、オミソレ、シマシタ、アバッ」
「……ムハハハハ! そのザマでおべっかを使えるか! なかなかのニンジャ耐久力!」

 ラオモトは鷹揚に笑い、散らばっていた万札をオイランに集めさせ、それを改めてコールドブラッドの前へと差し出させた。

「貴様は貢献者ゆえ、これをケジメの代わりとする。下がれ」
「アバッ、アリ、アリガトゴザイマス……アバッ」

 コールドブラッドはよろめき、立ち上がる。改めてソウカイヤの恐怖を思い知らされた心地だ。だが……今の恐怖に比べれば、工場の体験のなんと細やかなことか!

 彼女は再度オジギをし、万札を懐に入れ、よろめきつつもラオモトの前を辞した。その顔には謎めいた笑みが浮かんでいた。

【終わり】

◇リザルトな◇

ニンジャ名:コールドブラッド
【カラテ】:4
【ニューロン】:3(+1)
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:4
【精神力】:2
【脚力】:3
装備など:
【万札】:29
・ウイルス入りフロッピー
・見事なカケジク
○指名手配犯(DKK2)

 まさかのラオモト戦追加。TRPGはなにが起こるかわからないとはいえ、こんなになるとは思わなかった。そして文字通りのカラテの強さを味わうこととなったのだった。

 ともあれ、これでコールドブラッドもソロを体験し、少し輪郭がついてきたのではないだろうか。そのうちアベレージやオーキッドと組ませ、サンプルシナリオに挑戦してみたいところだ。

 以上、お付き合いいただき、ありがとうございました。

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