忍殺TRPGソロチャレンジ:【アバンダンド・バレット・ウォンツ・トゥ・ビカム・ハッカースター】

◇前置きな◇

昨夜、私はダイスを振った。そしてニンジャが生まれた。それはこのような奴でした↓

ニンジャ名:アバンダンド
【カラテ】:2
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:5
【ジツ】:0
【体力】:2
【精神力】:5
【脚力】:3
持ち物など:
・カタナ
・生体LAN端子
○テッポダマ

見てのとおり、こいつは生体LAN端子を埋め込んでいる……つまりふわふわローンの債務者だ。そのため、このままのうのうとさせておくとふわふわロストしてしまう可能性が極めて高い。それは、悲しい……というわけでまたソロアドベンチャーだ。今回はヤクザの事務所に突入する。ヨロシクオネガイシマス。

◇本編な◇

破壊された自動販売機が立ち並ぶツチノコ・ストリート。その道の中央を堂々と歩く者あり。周囲の惨状からこの地域の治安の悪さすら推測できぬ愚か者か?否だ。この者はビズのために訪れている。名はアバンダンド。ニンジャである。

色とりどりのLANケーブルヘアを揺らし、火傷で爛れた顔を隠すこともなく、アバンダンドは口笛すら吹きながらストリートを進む。腰にはロングドスソード。モータル時代からの得物だ。

「……あァ、あそこか」

嗄れ声の呟きが溶けていく。その視線の先にあるのは一見普通の雑貨ビルだ。しかし、実際はそうではない。それは玄関前に立ちはだかる人影を見れば察することができるだろう。

5D6 → 1, 3, 3, 4, 4 成功

それはショットガンを弄ぶヤクザだ。ただのヤクザではない。闇に生きる者ならば一目で見抜ける。クローンヤクザである。詳しい者であればその型番まで見抜くのかもしれないが……アバンダンドにとって不要な知識だ。

「イヤーッ!」「アバーッ!?」

何故といって、コンマ数秒後には死んでいる存在のことに記憶容量を割くのは無駄極まりないからだ。いつ製造さらた者であろうと、ニンジャに敵わぬことは同じ。

「ハン。ザルだな、ザル……いない方がマシだぜ」

緑色の血を流す死体を跨ぎ、アバンダンドは雑居ビルの中へと侵入した。彼の目的はこの中にあるデスシャドウ・ヤクザクランのデータ事務所。さらに詳しく述べるのであれば、そこに保管されている未公開株の奪取だ。

「しっかし、なんだな。データ事務所っつうからハッキングかと思ったのに現地出向かよ。やってらんねェ……」

ブツブツとこぼしながら階段を登るアバンダンド。やがてその前に立ちはだかったのは……ドアだ。アバンダンドは一瞥ののちにドアノブを握り、捻る。返ってくるのは硬い感触。

「鍵つきか。ま、そりゃそうだよな」

アバンダンドは小馬鹿にしたように呟き、懐から細長い物を取り出した。安物のキーボードである。そのケーブルをドア脇のセキュリティシステムに差し込み、タイピング開始。そして……パワリオワー!

【ニューロン】判定:5D6 → 1, 1, 4, 6, 6 成功

「ブルズアイ!そうだよ、オレにはこっちのほうが向いてんだよ!」

小さくヤッタ・ポーズを取ってから、アバンダンドは後頭部に触れた。そこに穿たれた生体LAN端子を。小規模ヤクザ・クランのテッポダマとして働く日々はもう終わりだ。これからは悠々とハッキングで過ごす。そう決意したときにはローンを組んで違法サイバネ医院に飛び込んでいた。

……施術が終わったのはほんの数日前であり、今回LAN直結を避けたのは単純に怖かったからだ。もっとも、それを口に出すほど落ちぶれてはいないのだが。

「さて、さて……オジャマシマス、と」

アバンダンドは呑気に扉を開け放った。

おお、見よ。部屋の中にはずらりとUNIXが並んでいる。そして……ドスダガーを構えたクローンヤクザも!解錠を目の当たりにしたと見えすでに臨戦態勢!ヤクザスラングとともに駆けてくる!

「スッゾコラーッ!」「ウオッ!?イヤーッ!」

油断しきっていたアバンダンドは慌ててカラテ・パンチを放つも、空振り!目測を誤ったのだ!なんたるブザマ!

2D6 → 2, 3 失敗!
5D6 → 1, 6, 6, 6, 6 成功

「チィーッ!よくもオレに肉体労働なんぞ……」「ザッケンナコラー!」「イヤーッ!」

振り回されるドスダガーを、アバンダンドは身を低くして回避!そのままクローンヤクザの後方へと駆け抜け、ロングドスソードを納刀する。

「グワーッ!?」

クローンヤクザが崩れ落ちた。ニンジャ動体視力をお持ちの読者であれば見えるはずだ……そのアキレス腱が綺麗に断たれていることを。すれ違いざまの精密な斬撃であった。

「やっぱクローンヤクザはダメだな。ドスダガーの使い方が雑だ」

吐き捨て、立ち上がったアバンダンドは、もがくクローンヤクザに接近。そのこめかみは無造作にロングドスソードを突き立ててカイシャクした。ナムアミダブツ。

さて、ここからが本番だ。アバンダンドは深呼吸し、適当なUNIXの前にドッカと腰を下ろす。そして軽く肩のストレッチを済ませ、ホームポジションを取った。あとは目的の未公開株券データを引き抜くだけ。ベイビー・サブミッションといえた。しかし……

「……それだけじゃ、割りに合わねえよな」

思わず独りごちる。仮にこのまま株券をハッキングできたとしよう。その結果得られたボーナスはほとんどローン返済に費やす必要がある。手元には何も残らない。虚無!

それではクローンヤクザを殺した手間がタダ働きへと成り下がる。それはよくない。アバンダンドの目に危険な決意の光が灯った。やるならば皿までだ。すなわち、デスシャドウ・ヤクザクランの銀行口座を狙う。

彼は生体LAN端子に触れる。今こそ直結のときか?いや、それは拙速な判断だ。未公開株はともかく、クランの講座ともなればセキュリティが段違い。下手をすればニューロンを焼き切られる。

「……ハン!ここで死ねば、オレは所詮くだらんテッポダマだったってことよ!」

アバンダンドは猛烈なタイピングを開始!時間とともに汗が滲み、デスクの上へと落ちていく。そして!

2を選択
5D6 → 2, 2, 4, 5, 6 成功! パワリオワー!

パワリオワー!電子のファンファーレが鳴り響く!アバンダンドは思わず背もたれに体重を預けた。さすがに全額を奪うのは難しかったが……ローンを返済してもなお余りあるカネが、自分の口座へと入金されたのだ!無論、ビズの目的である未公開株券も論理強奪済み!ゴウランガ!

だが、安らぎの時間は短い。ファオンファオンファオンファオン……アバンダンドのニンジャ聴力は、嫌というほど聞きなれたNSPD武装パトカーのサイレン音を捉える。思わず舌打ちが漏れた。表で死んだクローンヤクザの死体を見て、バカな市民が通報したか。

「これだから現場仕事は嫌なんだよ……!」

再びタイピングを開始。ハッキング痕跡を綺麗にしてからアバンダンドは立ち上がり「イヤーッ!」窓を乱暴に蹴破ると、そのままネオサイタマの闇へと消えた。向かうはトコロザワピラー。そして、ローンを返済して身軽なひと時だ。

【万札】:20 - 10 = 10

◇リザルトな◇

……そんなわけで、この債務者ニンジャは毒矢の餌食にもならず、ふわふわとロストすることもなく戻ってきた。ステータスに変化はないが、最終的にはこんなだ。

ニンジャ名:アバンダンド
【カラテ】:2
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:5
【ジツ】:0
【体力】:2
【精神力】:5
【脚力】:3
持ち物など:
・カタナ
・生体LAN端子
○テッポダマ
・【万札】10

これでTRPG産ニンジャも片手の数となった。いつでも大規模なミッションに挑めそうである。

<終わり>







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