忍殺ソロTRPGログ【アベレージ・スモール・バケーション】

前置き

 当テキストは、ニンジャスレイヤー公式アカウントで時折行われるTRPGソロアドベンチャーを基にしたものです。著者もかつてニンジャを創り出し、そいつは何度かアドベンチャーをサヴァイヴしてきた。それは以下のようなやつだ。

【名前】アベレージ
【カラテ】:3
【ニューロン】:4
【ワザマエ】:4
【ジツ】:0
【体力】:3
【精神力】:4
【脚力】:2
【装備】ZBRアドレナリン注射器、万札63

 ジツもなく平凡極まりない能力のこいつも、なんだかんだテンプルからツキジダンジョンまで駆け抜け、結構なカネモチになっていた。これまではソロアドベンチャー間で万札を使う機会がなかったためである。

 しかし昨日、このようなツイートがあった。

 余暇ルール! これはカネを使う絶好の機会である。というわけで、アベレージに余暇を過ごさせてみることにした。

はじめての余暇

 しかし余暇にはアジトが不可欠である。最初はサンプルアジトを取得した前提でやってみるか……と考え、それで記事も書いていた。が、深夜になってモーターロクメンタイチャンから以下のお達しがきたのだ。

 小さいアジトの提供である。トイレがないので次回ソロベンチャーに挑むときは精神力を−1しなければならないのだろうか……などという葛藤もあるが、まあ本番が始める前にアナウンスしてくれるだろう。

 とにかく、このアジトを使うことにした。

◇ソロ用アジトをレンタル
 ・万札63→62

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ここか……」

 くたびれたヤクザスーツ姿の男は、扉の先にあったワンルーム・ドージョーを見やり目を細めた。彼の名はアベレージ。冷酷なるソウカイ・ニンジャの一人であり、本日よりこの一室の主人だ。

 うだつの上がらぬように見えるこのニンジャも、それなりに場数を踏んでいる。テンプルからマサシ・フラグメンツの奪取を始めに、行方不明となったソウカイ・シックスゲイツの捜索やアナーキスト暴動下のトーフ工場への要人救出。直近ではツキジ・ダンジョンから冷凍オーガニック・マグロを持ち帰り、首領たるラオモト・カンを喜ばせた。

 その成果がついに認められ、こうして彼専用のアジトが斡旋されたというわけだ。もっとも、部屋の中はサップーケイそのもの。タタミ敷きの床の上にぽつねんと置かれる木人と香炉のみ。トイレは別。なんとも世知辛い住居条件といえよう。

 が、アベレージはそこまで悲観していない。重要なのは、己が自由にできる空間ができたということ。己がむやみに溜めていたカネの使い道ができたということだ。

 必要最低限の荷物を入れたズダ・パックを部屋の隅に放り、どっかと腰を下ろしてアグラする。(さて、どうすごしたものか)彼は早速思案を巡らせ始めた。自身が平凡なニンジャに過ぎぬことはよく知っている。今後与えられるかもしれぬミッションを生き抜くためにも、少しでも準備をしておかねば……

余暇スロット1:ブラックマーケットへ買い物に行く

 余暇スロットは4つ提供されている。まず1つは買い物に費やすことにした……なにしろ万札はかなりある。無駄遣いしても許されるだろう。爆発四散後にカネを残しても意味がない。

 というわけで、以下の物品を購入することにした。

◇タクティカルニンジャスーツ購入 【体力】:3→4
◇パーソナルメンポ購入 【精神力】:4→5
◇*マキモノ・オブ・シークレット・ニンジャアーツ* 【ジツ】:0→1
 ・万札:62→27

 大盤振る舞いである。そしてマキモノ……これはジツを得るためのアイテムではあるが、危険な代物であるためダイスを振って判定を行わねばならない。D6を振り……アベレージはもともとジツを持たぬニンジャであるため、出目が3以下の場合、【ニューロン】が1減少してしまう。さてどうなるか。

D6→2 【ニューロン】4→3

 グワーッ!

 まあそういうこともある。ジツを取得できたことには変わりない。今回は初期獲得系のD6表で取得できるジツの種類を判定することとした。

 D6→3 カトン・ジツ習得

 取得できたのはカトン……使用者の多い例のジツである。アベレージ、ジツを取得しても平均的ニンジャの軛から逃げられぬのであった。ヤンナルネ!

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 アジトを得たアベレージがまず向かったのは、ツキジ近くで発見したブラックマーケットであった。有用そうな品はいくつか見つけていたものの、セキュリティの薄いボロアパートでは購入するのもためらわれたものだ。今は違う。ソウカイヤ管理のアジトがある。好きなものが買えるというわけだ。

「ハイ、ニンジャスーツこれね。最新式。強化ケプラー繊維で軽くて丈夫。アナタお目が高いよ。メンポもすぐ注文通り作るからね。お代は先払い」
「……わかっている」
「オッホ! カネモチ! 今後ともゴヒイキに!」
「メンポはいつできる。数日かかるか」
「すぐよ、すぐ。それまで店の中見てるいいね。安くするよ」

 指を舐めて受け渡された万札を数え始める小男の店主を見て、アベレージは眉をひそめた。ニンジャ用の装備品を扱っているだけあり、ニンジャへの応対も慣れているということか。

 アベレージは近くの姿見に何気なく視線を送る。くたびれたヤクザスーツに身を包むくたびれた平凡な男がこちらを見返している。彼は不意に笑いたくなった……姿格好だけニンジャに近づいて、平凡から逃れられるとでも? (やめだ)彼は首を振る。元来が悲観的な性分なのだ。自分が所詮、数あるソウカイ・ニンジャの一人……それも使い捨てられる程度のニンジャであることは、よく理解している。

 別のことに意識を向けろ。現実を見てもデスパレートになるだけだ……アベレージは何気なく店内を見渡す。湾岸警備隊の横流し品と思しき兵器。得体の知れぬカタナ。そのようなもので雑多に飾り立てられている。移動するにも一苦労なほどに。

「……む」

 その一角で、アベレージは目を留めた。ぽつねんと置かれたマキモノ。ひどく場違いな品だ。何気なく近づき、手に取る。題すら冠していない。こんな骨董品めいたものが、なぜこの店に。不可解だった。

 店長の声が背後から飛んでくる。

「ア、それ興味ある? やっぱりお目が高いね、アナタ。めったにないシロモノよ」
「……骨董品か?」
「違う、違う! 由緒あるマキモノよそれ……ヒヒッ! 平安時代の……ニンジャ。ニンポの使い方が描いてある。そういう噂……」
「噂だと? 中を見ていないのか」
「しないよそんなこと! だってニンポよ? 普通の人間にはアブナイ、アブナイ……エッヒヒヒ! でもアナタならダイジョブかもね」

 アベレージは鼻を鳴らす。愚弄されたように感じたからだ。もちろん、それで反射的に店主を殺すようなことなどしない……このあたりはソウカイヤの管轄であり、そのような蛮行を行えばすぐさま他のソウカイニンジャが飛んでくるだろう。それは、うまくない。

 代わりに彼はマキモノを紐解いた。ジツの使い方に興味がない……といえば嘘になる。ジツがあれば、平凡という枷から離れられるかもしれない。そのような根拠のない切実さだってある。まあ、間違いなくニセモノだ。そうであることを確認して店主の審美眼を疑い、値下げ交渉に移るのも悪くはない。

 マキモノを開き、中を見た。アベレージの視界に飛び込んできたのは炎だった。

「アイエッ!?」

 彼は小さく悲鳴をあげる。いつの間にか、自分が地面すら不確かな空間に放り出されたように感じたからだ。異様なアトモスフィア。(イヤーッ!)(イヤーッ!)周囲に響く朧なカラテシャウト。炎。剣戟。炎。……炎。

 自らを取り囲む炎が、一斉に流れ込んでくる。

「アバーッ!?」

 アベレージは膝をつき、苦悶した。炎が己の中を荒れ狂い、臓腑を、ニューロンを焼き焦がしていく。このままではマズイ。彼は無我夢中で腕を振り上げ……「イヤーッ!」KABOOOM!

「アイエエエエ!?」

 ……店主の悲鳴でアベレージは正気に戻った。パラパラと重金属酸性雨が自分の上に降り注ぐ。彼は頭上を仰いだ。真上の天井が焼け焦げ、大きく穴を開けている。彼は振り上げた己の掌を見た。蛇の舌めいて炎が這い回り、やがて消えた。

「これは!」
「ニンポ!? ニンポナンデ!?」

 店主が叫ぶ。典型的なNRS症候群だ。降り注ぐ雨とその悲鳴が、高揚したアベレージのニューロンを冷ましていく。手に持ったはずのマキモノは、煤となって床に散らばっていた。

「……イディオットめ。ジツだ、これは。カトン・ジツ……」
「アイエエエ……」
「店主。あのマキモノはいくらだ。カネはある。代金は支払おう」

 アベレージは落ち着き払って言った。彼はまだ、己の中で炎が荒れ狂っているように思った。

余暇スロット2:ザゼン・トレーニング

 スロット2つ目はザゼン・トレーニングで過ごすこととした。本来ならカラテを鍛えたいところだが、ジツ取得の影響でニューロン値が下がってしまったためである。3ならばまだ戻せる可能性があるだろう。

 というわけで、判定。

1D6 → 2 失敗!
万札 27 → 24

 ……どうやら今日はダイス運があまりよくないらしい。悲しい。

余暇スロット3:ザゼン・トレーニング

 というわけでリベンジ。なるべく元に戻したいが、果たして。

1D6 → 5 【ニューロン】:3→4
万札 24 → 21

 なんとかうまくいった。ダイス一つだとこういうこともあるわけだ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「スゥー……」

 アジトに戻ったアベレージは早速ザゼンを試みていた。マキモノより得られた神秘のカトン……その反動ともいうべきニューロンのさざ波を鎮めようという目論見からだ。据え置きの香炉からは、帰り際に購入してきたインセンスが立ちこめている。

「ハァー……」

 アベレージは瞼を閉じ、己の中に注ぎ込まれた炎と対面する。まだ燃え盛る炎はしかし、ややその勢いを減じているように見えた。(ヘイキンテキ。ヘイキンテキだ)アベレージは己に言い聞かせる。炎は消えることがない。ただ、穏やかになりつつある。そのようなアトモスフィアが感じ取れる。

「……フゥーッ」

 アベレージは立ち上がり、掌を上に差し向ける。そして集中。「イヤーッ!」カラテシャウトとともに、その掌に蛇めいた炎が生じた。それはぐるぐると渦を巻き、やがて消えた。

「伸びしろが増えた、か」

 その呟きは、誰に聞かれることもなく空に消える。

余暇スロット4:カラテ・トレーニング

 とうとう余暇スロットも最後である。もちろん、カラテ・トレーニングだ。ジツを得たとはいえ、ノーカラテ・ノーニンジャである。早速ダイスを振っていく。

1D6 → 4 【カラテ】:3→4
万札 21→ 18

 危ういところだが、成功。これでアベレージは数値ともに平均的なニンジャとなったのだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 アベレージは備え付けの木人に連続カラテパンチを叩き込んでいた。当初の予定とはだいぶ遅れてしまったが、どうしてもこれだけはやっておかねばならないと思っていた……すなわち、カラテ・トレーニングである。

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 アベレージは思い出す。ソウカイ・シックスゲイツたるヘルカイト救出の折に遭遇した、あの恐るべきザイバツ・ニンジャを。あのときは奇跡的に助けが入ったが、そうでなければあの場で爆発四散していてもおかしくはなかった。己のカラテが足りないためだ。

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 カラテ・パンチを繰り出す。木人がぐらぐらと揺れる。だからこそ、今だ。少しでもカラテを積み、強くならねばならぬ。彼は平凡なニンジャであり、容赦なく使い捨てられる程度のサンシタだ。だが、死にたくはない。故に鍛える。

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! ……よし!」

 左右のカラテ・パンチを打ち込んでいたアベレージは不意にザンシンした。そして事前に注文していたオーガニック・スシを猛然と食べ始めた。スシは完全食品であり、カラテを積んだあとには欠かせない。少なくとも彼はそう感じていた。

 そして実際に、彼のカラテは……わずかにではあるが、充実したのだ。

余暇終了:結果

 というわけで、いくつかのトラブルはあったものの、アベレージは成長した。以下のような感じだ。

【名前】アベレージ
【カラテ】:4
【ニューロン】:4
【ワザマエ】:4
【ジツ】:1(カトン)
【体力】:4
【精神力】:5
【脚力】:2
【装備】ZBRアドレナリン注射器、万札18、タクティカルニンジャスーツ、パーソナルメンポ

 より平均的に近づいた。まあ、ジツの取得などは彼のセイシンテキにも響いてくるだろう。フレーバー的な意味で。次のミッションにも期待が持てる。

おまけ

 ツキジ・ダンジョン探索前にももう一人ニンジャを作っていたので、そのデータも付録として提示しておく。

【名前】コールドブラッド
【カラテ】:4
【ニューロン】:2
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:4
【精神力】:2
【脚力】:3
【持ち物】:ウイルス入りフロッピー
【生い立ち】:指名手配犯

 生い立ちルール適用により、すでにDKKがたまっているサンシタニンジャである。ニューロンが低いのにウイルス入りフロッピーを持っているのは、きっとハッカーを襲撃して手に入れたのだろう。その罪で指名手配されている……ということにした。

 アベレージよりはバックグラウンドが想像しやすいニンジャである。

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しかな

テキストカラテ・スクラップブック

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