ニンジャスレイヤー二次創作【ジャスト・ジャム・セッション】

(noteをご覧の皆様: 今から始まるのはTwitter連載小説(それはnoteにも遍在する)ニンジャスレイヤーの二次創作です。オリジナル中心なので、そういうのやめろ!という方はどうぞ見逃してほしい。そして輝かしい未来へ……)



チリン、チリーン。フーリン・ベルの音がバーに新たな来客が現れたことを奥ゆかしく伝える。思い思いにサケを呷っていた客たちの視線が、意図せず入り口に集中した。そこに立ち尽くした人影が、ジロリとあたりを睥睨する。その視線を避けるように、客たちは俯いて各々の時間へと戻っていった。
来客は鼻を鳴らし、バーへ足を踏み入れる。ガン!突如響いた鈍い音に、客たちの視線が再び一点へ集中した。音の元は人影が背負う荷物だ……まるでカンオケのごとく巨大なハードケース。形状だけならギターのそれだが、サイズはウッドベースだ。そのちぐはぐさと音の原因に、客の誰かが噴き出した。
来客はすぐさま首を巡らせた。「アイエッ」視線の合った客の一人が小さな悲鳴をあげる。バーの中の空気が、やや張り詰めた。「……クソが」が、人影は小さく呟き、謎めいたハードケースを背から下ろす。「天井が低い。これだからネオサイタマってのはよ」呪詛めいた低い呟き。それはケースを引きずりながら歩き出し、カウンターへ到達する。
「いらっしゃい」「ズブロッカ、あるか」「もちろん」「よこせ」「ハイヨロコンデー」バーテンダーが冷静にグラスを差し出す。来客はそれを一息に飲み干した。「聞きたいことがあるんだがな」そしておもむろに話を切り出す。
「グレートホワイト=サン、知ってるか」その言葉にバーテンダーが一瞬硬直した。「……なぜです?」「探してる。ここによく来るんだろ?聞いたぜ」バーテンダーが微笑み、気づかれぬようにカウンター下のボタンを押した。
「残念ですが、最近いらっしゃっていません。身内にご不幸があったようで……」「ハ!」来客は笑う。タフガイめいて口元を覆ったバンダナの奥で。「そいつはメデタイ。俺にとっちゃな」バーテンダーの笑みが引きつる。チリン、チリーン。そのとき、もう一度フーリン・ベルが鳴った。
「ドーモ。ソーシャークです」突然のアイサツ。来客は振り向き、アイサツの主を見やる。紺色のヤクザスーツに身を包んだ……ニンジャ!「ヘッ」しかし突然のニンジャの出現に怯えることなく、その者はオジギを繰り出したのだ。然り、オジギである!「ドーモ、ソーシャーク=サン。ジョングルールです」
「成る程、ジョングルール=サン。不躾だが質問しても?」「5秒で済ませろ」「ヘリコプリオン=サンを殺したのはお前だな?」「そうだと言ったら?」その答えに、ソーシャークの目が鋭く細められた。「殺す」途端、バーの中をキリング・アトモスフィアが支配する。
「アイエ……」誰かが悲鳴を上げかけた、そのときだ!「スッゾ!」「スッゾ!」「スッゾオラーッ!」BLAM!BLAM!BLAM!入り口から駆け込んできた男たちがジョングルール向けチャカ・ガン発砲!「「「アイエエエエーエエエ!?」」」ナムアミダブツ、客たちが恐慌状態に!
「ハッハー!」ジョングルールは即座に足元のハードケースを蹴り上げ、盾とした。驚くべきことに防弾加工!「イヤーッ!」それと同時、ソーシャークがスプリント開始!その手甲からノコギリめいたサイバネ刃が飛び出す!危険!
「「イヤーッ!」」双方のカラテがぶつかり合う。ジョングルールがカンオケ・ハードケースを片手で振り回し、サイバネ刃を弾いたのだ。「イヤーッ!」「イヤーッ!」反動で跳び離れたソーシャークが三連続スリケンも側転回避!ワザマエ!
回避行動の最中でも、ジョングルールは手を止めなかった。ハードケース側面のボタンを押す。ハードケースから放たれたUNIX計算光が、薄暗いバーの中を一瞬だけ照らした。「イヤーッ!」ソーシャークがサイバネ刃でハードケースへと斬りかかる。刃はチェーンソーめいて回転し、火花を散らす。
ジョングルールの眉が釣り上がる。その目の前、ハードケースの一部がフスマめいて横にスライド。ぽっかりと空いた四角の穴の中へジョングルールは迷うことなく手を突っ込み、そして取り出した……ネックになんらかの機構が取り付けられたギターを。
「傷つけてんじゃねえ、高いんだぞ……イヤーッ!」ハードケースの陰から躍り出たジョングルールはギターを構えた。つまり、ネックにつけられた筒めいた機構をソーシャークへ向けた。ソーシャークが攻撃の手を止め、訝しげに見やる。彼は退避を「イヤーッ!」ギュウイーン!
それよりも早く、ジョングルールはギターをかき鳴らした。すると、見よ!ギターネック先端部の機構から噴き出したのは炎である!「グワーッ!?」ソーシャークはたまらず火に飲まれる。そして倒れこむ勢いのままにワーム・ムーブメントへ移行。装束にまとわりつく火を消さんとする。ガシャン。その耳に不吉な起動音が響いた。
……ロン、ポロン、ポロロン。ジョングルールがギターを爪弾く。その音色と同調するかのように、カンオケ・ハードケースが変形を始めていた。側面から展開されたサイバネ・アームで直立。そしてあちこちから突き出るのは銃口だ。それは風見鶏めいてボディを揺らした後、無慈悲にソーシャークとそのクローンヤクザたちへ照準を合わせた。
「イヤーッ!」ギュウウイイイイーン!ジョングルールがひときわ強くギターをかき鳴らす!ドウ、ドウドウドウ!それに答えるようにカンオケ・ハードケースが吐き出したのは……ナムサン、無数のスリケンだ!「グワーッ!」「「「アバーッ!?」おお、ナムアミダブツ……ナムアミダブツ!
ソーシャークの体にスリケンの雨が叩きつけられる。ばら撒かれた鉄の星がクローンヤクザたちに死のダンスを踊らせ、ついでに逃げようとしていた客たちをネギトロへ変えた。無慈悲!「イヤーッ!」ジョングルールが駆け出し、防御姿勢を取るソーシャークの元へ。
「イ、」「イヤーッ!」「グワーッ!」ソーシャークを蹴り上げ「イヤーッ!」「グワーッ!」拳を叩きつけ「イヤーッ!」「グワーッ!」首根を掴む!そして……セントリー・ガンめいて無慈悲な掃射を続けるカンオケ・ハードケース向け、その体をぶら下げた。
「やめ、」ロォン。ソーシャークの命乞いを、ジョングルールが片手で鳴らしたギターの音色が搔き消した。ドウドウドウ!カンオケ・ハードケースの集中射撃が、容赦無くソーシャークを撃ち抜く!「サヨナラ!」爆発四散!
……ロン。ジョングルールのギターに従い、カンオケ・ハードケースが動きを止めた。もはやバーの中に動く影はない。調度品は砕かれ、ブラッドバスめいた惨状が広がる。「……派手にやりすぎたかァ?」「その通りです。イディオットめ」予想外の返答。ジョングルールは弾かれたように振り向き、カラテを構えた。
声の主はジョングルールに背を向ける形でテーブルに座っていた。そのシルエットは襤褸めいたマントに覆われ窺い知れぬ。「なんだ、テメェ」ジョングルールは顔をしかめた。隙だらけのように見える。だが……
ただ一人残されたその影は、グラスを飲み干すとゆらりと立ち上がり、振り向き、そしてアイサツを繰り出した。「ドーモ。はじめまして。ジョングルール=サン。ディスコテークです」

◇続く?◇

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