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シキミ
2020年4月19日 23:47
火をつけるように花をかざる棚の上 机の上 洗面所ぽっぽっぽっとあかりが灯るほのおが揺れるようなちいさな呼吸音があちこちから聞こえはじめる棚の上に置いたデルフィニウムがため息をついた机の上のトルコキキョウが深呼吸している洗面所のカーネーションがクスクスわらったあちこちに灯るちいさな明かりがやさしく部屋を照らしだす
2020年4月19日 23:25
左目から涙がおちる左目から涙がおちる乾いた右目はよるを見ている僅かなひかりを乱反射させながら左目から涙がおちるまっすぐな道を歩いた花を虫を踏まないように歩いたまばたきをふたつして花や虫をうらんだ
2018年3月4日 00:27
寂しさはよる知らない街で知らない景色を電車の中からぼんやり眺めるときひる家族の怒鳴り声から逃げて寒々とした部屋で縮こまるカーテンの影のなかあさ泣き暮れて腫れた瞼越しに見える朝日が充血して熱を持った瞼を焦がすころ寂しさは孤独ではない寂しさは目隠しをされて猿轡をされて冷たい地面に転がされた私の上を気付かず跨いで進んでいく人の群れに絶望するとき
2018年2月8日 01:08
部品の足りないロボットが足を引きずり砂漠を行くロボットは設計図を知らない「足りない」ことしか分からない飢えより惨い渇望がロボットの足を動かし「どこか」へ向かわせる
2018年1月7日 00:16
駅で降りる乗客たちを神妙な顔で見る私たち下車した人たちは笑いながらこちらに手を振るゆったりゆったり手を振るトコトコと再び走り出す電車が短いトンネルを抜けるとゴーンゴーンと大きな花火が上がる目が眩んだ乗客が後ろを振り返るトンネルの形に切り取られた光が乗客だった人たちの僅かな影でゆらめくのだ私たちの切符だとそちらには行けないからこれからも新しい年
2017年12月31日 00:54
どんよりとした雲の合間から炭のような黒い手が伸び私の胸に爪を立てたつうと皮膚を引き裂き肉を押し退け骨を避けて進む先に心臓脈打つそれをぐっと掴みそのまま宙吊りあははははどくどくどく鼓動の早さで震える身体どくどくどく手足を縮めどくどくどく恥ずかしいああ恥ずかしいあはははは人びとはやさしいから宙ぶらりんの私の下を早足で通り過ぎて
2017年12月29日 00:30
大事に大事に抱えてる金色に輝くその箱の中身を誰もが夢想したある日から鍵が掛けられある日から鎖が巻かれ中身を誰もが幻想した時が経ちぽろりぽろりとメッキが剥げる鍵は壊れて鎖は錆びつきそれでも箱は開かない誰もが錯覚したその箱の中身は一体なんだろう誰もが想像に飽きた頃1人で箱を開けてみる指は錆びに汚れひしゃげた鍵穴に手子摺ったその箱に入っ
2017年8月6日 22:33
胸を丸太で突くような息苦しさと動悸に似た心臓の震えに耐え一瞬あとに広がる光に目を細めるシャワーのように静かに広がる光の線と混乱して飛ぶ蝙蝠と人々の歓声と光の線が消える瞬間小さな小さないくつもの玉になってそれは空気の澄んだ冬の夜空のようでじっとりとした皮膚に吸い付く浴衣の感覚を忘れ私は浮遊感に身を任せた音波に打たれる胸の苦しさと光の美しさと人々の騒めき
2017年7月26日 15:18
わたしが両手いっぱいにのせているその小さい水晶のようなものはひとつひとついびつだがどうにか丸さを保っているこのひとつひとつにわたしを吹き込むのだふきこんだそれは透明からさまざまな色に変わり手からこぼれ落ちて道をつくる点々と落ちるにじいろのそれはわたしが歩んだ場所を色あざやかに飾るのだしかし色づいたそれを見ることはできなかった色づいてこぼれ落ちるその瞬間は
2017年7月18日 23:19
不安の種を食べた苦くて甘いいびつな形駅の階段を上っているときか14階の屋上から右折する車を見たときか発芽に最適な36度チカチカひかって種が萌え規則的な鼓動のリズムが母親が子供の背中を優しく叩くように細くて長い白い根を育ててく心をしっかりにぎりしめじわじわじわじわ侵していく優しく優しく締め上げてたっぷり栄養吸い上げる不安の種は結実し不安の種を撒
2017年7月13日 22:21
死臭が吹くプランクトンの死の臭い腐ったそれらは深く沈み分解され海から酸素が奪われる死臭が吹くよく知る不快なその香り海に浮かぶ死体が沈む死臭が吹く顔を背けるその匂いそれは死の臭いだからかもし死が甘いものならこの風も甘く感じるだろうか
2017年7月12日 01:32
雪を撫で冷気をはらんだ風が吹く足首をなで項をなでて頭上高くに抜けてゆく風の隙間を見つけたらすぐさま差し込む強い日が冷気に喜ぶ項を焼くじりじりとじりじりと四肢で感じる温度差がここがどこかを教えているハイマツの影にらいちょう頭上を気にしてちいさい影と共に歩むまた飽きずに一人旅に行ってきました。らいちょうが見たかったなあという詩。へたくそな上に
2017年7月4日 03:35
描けずに迎える午前三時黒鉛は擦りきれ進まないこんな時間の来訪者久々の友 食欲だおうどん食べたいおうどんが土鍋でクツクツ煮えている箸で持ち上げると汁を跳ね上げくったりと出汁に沈んでいくようなとろとろにとろけた白ネギとほんのすこしの豚肉のかけらほんのり甘い出汁がふわふわと湯気を押し上げるおうどんが食べたいああ食べたい卵をひとつ落とそうかう
2017年7月7日 01:53
ざあざあと雨ばかりを運んだ季節外れの台風が去りおおみず飲みの紫陽花が最後とばかりにみずを飲む雨にとけだす地面のいろを吸い上げてアスファルトに覆われた地面のいろを暴露するじつはね地面はほとんどみどりいろ植物たちが吸い上げた色素をふくんだみずが葉を茎を染め上げるあちらの地面はむらさきいろこちらはももいろあおいろとおおみず飲みの紫陽花は地面のい