見出し画像

「十人十色」番外編~E君の回答~

こんにちは、志高塾です。

中学受験を経験した生徒の親御さまに、その体験談をお話して頂く「十人十色」。先日開催されたこの会で、初めて生徒本人がスピーカーを引き受けてくれました。現在高校3年生で、この春に国立大学医学部へ進学するE君です。
※彼のスピーチは今週の「志高く」に掲載されていますので、以下のリンクからぜひご覧ください。
Vol.631 歩んで来た道歩んで行く道 | 志高塾 | 西宮北口校・豊中校・高槻校 (shiko-juku.com)

後日、「十人十色」に参加されたある親御さまから、E君についていくつかご質問を頂きました。
今回は、それに対して彼が提示してくれた回答を掲載いたします。
中学受験を考えておられる親御さまにはもちろんのこと、子どもとかかわるすべての大人に、そして自分の道に悩み迷う子どもたちに読んでもらいたい、とても良い内容だったからです。

等身大で、真摯な彼の言葉に、じっくりと耳を傾けてみてください。


E君の回答

先日は十人十色にて、ご清聴ありがとうございました。
ご質問の件について、順番にお答えします。ご参考になれば幸いです。

①「小6でインターに転校するまでどのように英語を続けていたのか?」

十人十色ではお話しませんでしたが幼稚園がインターだったため、公立の小学校に通い始めてからも、ひと月に何度かは(ネイティブとの)英会話に通っていました。とは言っても、受験のこともあって5年間ずっと通うことはできず、小6でインターに転入した際もその英語のレベルは凄く低かったかと思います。(実際、英検準2級に落ちました)

ですので、ゼロスタートではなかったとはいえ、英語が常に必要とされる「インター」や「(留学先の)現地校」といった環境に身を置いて初めて、英語能力が上がると考えています。

「授業の進み方への苦労」についてですが、私は特に感じませんでした。寧ろ、これまで「受験」で競争を強制されていたのが、IBの初等教育の環境に身を置いたことで「自分の意見を持つ」「ただ物事の表面を学ぶだけでなく、背景などのより深い領域に目を向け、議論をする」などを求められるようになり、自分らしくいられた気がします。

ただ、これを通して「どちらの教育が良いのか」などの是非は一概に判断できません。たまたま、私が議論や探求学習が好きだっただけ・当てはまっただけだからです。

②「インターの考えに納得した父の考えの変化は?」

IBDPを履修・取得し、大学に合格したことで結果的に父はこれまでのインターやIBの教育について、肯定的に捉えているとは思いますが、やはり根底にある偏差値教育の価値観は簡単に、ましてや数年といった短期間で払拭できるものではないかと思います。実際、進学先をどの大学にしようかと悩んだ際も父と私でその意見は割れましたし、判断材料も全く違っていました。私はカリキュラムなどを軸に考えていましたが、父としては「偏差値が高い=良い教育をしている」なのだと思います。(強ち間違えではないと思う反面、そうでない場合も多々あるかと思います)

ただ、IBの実践的な教育方針(論文の提出が各科目で必須ということなど)に父が共感していることも事実なので、「なかなか簡単には変わらないものの、少しずつ理解・共感してくれている」というのが率直な回答です。

③「IBに向いていたと思うか?」

私はそう思います。IBも最終試験のペーパーテストが大学へ提出するスコアの7~8割を占めているので、結局「受験勉強」という側面もありますが、残りの2~3割の点数は各科目の論文や課外活動の評価が反映されます。普通の受験勉強では勉強で得た知識を高校生のうちに実践に生かす機会は少ないかと思いますが、IBの論文では実験などが必要でその過程で「数学、物理、統計、英語」など複合的な思考力や知識を求められるので、そこはやりがいやモチベーションにつながったと思いますし、純粋に面白かったです。(大学の論文の短縮版のような具合です)そういう意味では、「プレ大学」みたいな感覚ですね。

④「中学受験を断念したという感覚があるのか?」

全くありません(笑)親の期待とは裏腹に、どれほど勉強をしても周りの受験生には太刀打ちできないと考えていたからだと思います。寧ろ自分の中では、「そうなって当然」というか「それが自然な流れだろう」という感覚があります。でも結果、それでよかったと思っています。

⑤「中学受験を無理にする必要があるのか、辞めるのがいいのか?」

これは難しい問題だと思いますが、やはり上記同様、一概に判断できるものではないと思っています。

先日、十人十色で松蔭先生も仰っていましたが、中学受験は「勉強がどのくらいできるかというゲーム」という一言?一文?に尽きると思います。ビデオゲームやボードゲームなど、どんなゲームでも負けてばかりだと楽しくないですし、辞めたくなります。反対に勝っているとその優越感からどんどんと楽しくなってきます。

精神的にも未熟で、将来のビジョンもまだ定まっていない小学生にはそのゲームを続けるべきか、一旦引くべきなのか、わからないと思います。ですので、そこを松蔭先生や親御様といった大人が、本人のキャパシティや性格を鑑みて上手にガイドしてあげる必要があるのだと思います。
挫折を味わった結果、それをエネルギーに次に進める子もいれば、そこで自己肯定感を失って中学からの勉強のモチベーションが失墜してしまう子もいます。また、それは受験で合格という成功を勝ち取っても然りです。

ただ、(あくまで持論ではありますが)やはり人間、常に何か必死になれるものや全力を注げるものが必要だと思います。また、それが勉強である必要は全くないと思います。ただ、必死になれるフィールドで挫折や悔しさ、それを跳ねのけて乗り越えるという体験は必要だと思います。それが他分野(例えば、勉強)にも大いにつながってくるのではないでしょうか。

大分長くなってしまいましたが、何かご参考になる部分があれば幸いです。
またご質問等あればご連絡ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?