AirDesign が早くも 2ライナー EN-C グライダーを進化させにきた! | 全ての日本のパイロットに、日本語メディアについて一度考えてみて欲しい

1.AirDesign が 2ライナー EN-C クラスを進化させに来た!

日本のパラグライダーのパイロットの皆さま、大ニュースです!

「VOLT 4」、2ライナー EN-C クラスのグライダーを世界ではじめて商用リリースした AirDesign が、早くもこのクラスのグライダーを進化させにきました。

AirDesign が「VOLT 4」を発表したのが 2022年春。2年という、最近では極めて短い期間で次の後継機 「VOLT 5」として、新たな 2ライナー EN-C クラスのリリースを発表しました。

AirDesign 公式 HPより

トップメーカーである Ozone Paragliders が後発として昨年初めての 2ライナー EN-C クラス「PHOTON」をリリースし販売が極めて好調にみえるなか、この短い期間で「次の 2ライナー EN-C クラス」をリリースするマニュファクチャーとして意欲的な姿勢、そして「PHOTON」を見据えてどのような進化をさせてきたのかが極めて気になります。

この他、EN-B High クラスの RISE が流行りの耳付きになった「RISE 5」、新しい EN-D クラス「HERO2」といった AirDesign のニュースが、最近立ち上がった唯一の日本語パラグライダー専門メディア PARAWORLDWEB でも取り上げられています。

2.日本語のパラグライダー情報

極めて気になる「VOLT 5」の詳細ですが、そこはレビュー等の続報と国内輸入代理店であるフィールドマウンテン様の試乗機の準備を待つとして、今回は PARAWORLDWEB について思うこと。

(※ちなみに、フィールドマウンテン様では後継機が発表された VOLT 4 試乗機大放出キャンペーンを実施中です。ご興味ある方は、スクールまで。)

今回、AirDesign のニュース、私は下記のような段階を経て具体的なニュースを知ることになりました。

  1. (英語 )AirDesign がメールで「近じか新製品の発表をするかも」というグローバルへの臭わせニュース配信

  2. (日本語)2/4 国内輸入代理店であるフィールドマウンテン様がウェブサイトで公開した「VOLT 5 リリースの為の VOLT 4 試乗機大放出キャンペーン」の記事のスクリーンショットが SNS に掲示され目にする

  3. (英語)2/16 に AirDesign がメールでグローバルへスチューバイカップでの VOLT 5・他をリリースするという正式発表をニュース配信

  4. (日本語)2/16 に PARAWORLDWEB が上記 AirDesign のニュースを取りげて記事にする

AirDesing の正式発表メール配信
遅延なく公開された PARAWORLDWEB の同ニュース記事

イカロス出版が発行していた書籍版の「パラワールド」が廃刊になり、しばらくパラグライダーに関する日本語での専門メディアが存在しない状況となっていました。

今回の自分が上記の段階を経て新製品のニュースに接したことで、PARAWORLDWEB の登場により、海外のマニュファクチャーがプレスリリースや SNS やメールニュースで行う外国語での発信を日本語で入手できる環境が復活したことを実感しただけでなく、オンラインメディア故にほぼ遅延なく日本語情報が流れ、もはや、初老の私ですら書籍の雑誌を買うことは稀ななか、目にしやすく使いやすい SNS を通じて情報が届くことに、改めて PARAWORLDWEB のメディア性を感じる体験となりました。

この他、2/13 には、おそらく株式会社バーズアイビュー様の中の人がプレスリリース的に PARAWORLDWEB に新商品販売開始の情報発信をし、それを記事化したのではないかと想像される、「ICARO2000」の新ヘルメット「DIVO(ディーボ)」の発売記事が掲載され、いよいよ本当に専門のオンラインメディアとして機能し始める息吹を感じています。

「ICARO2000」の新ヘルメット「DIVO(ディーボ)」の発売記事

当方はパラグライダー機材を販売するパラグライダースクール・エリアの運営事業者のため、製品・商品の情報が日本語で情報発信されるのも遅延無く情報が手に入るのももちろんありがたい状況ですが、一般パイロットの方にとっても、製品・商品情報についてマニュファクチャーのサイトの製品情報をはじめ英語情報をあさったり、輸入代理店様がそれぞれに掲載する限られた情報をそれぞれ取りに行ったり、情報発信が極めて少ないスクールにわざわざ問い合わせるより、日本語の専門メディアがあった方がありがたいのではないかと思います。

今回取り上げたのはあくまでも製品・商品に関する情報になりますが、掲載されている情報は海外のパラグライダー関連のニュースであったり、フライトサイトの情報であったりと、パラグライダーをする限り楽しめる情報があるため、そのような情報を日本語で発信してくれるメディアは、より一般パイロットの皆さまに有用なのではないかと感じています。

「ICARO2000」の新ヘルメット「DIVO(ディーボ)」の発売記事の例の通り、いうまでもなくマニュファクチャーやインポーターにも、オンライン専門メディアは有用です。

Web サイトの情報はブラウザが機械翻訳をしてくれる時代とはいえ、日本語ネイティブで高いレベルでパラグライダーを理解する人間が直接書く記事はやはり違ううえ、少しでも日本語のパラグライダーに関する情報発信がなされて日本のパラグライダーが盛り上がることが、全体にとって有用なのです。

3.日本のパラグライダーのパイロット全員に一度想像してみて欲しい

この PARAWORLDWEB  について、日本のパラグライダーのパイロットの皆様に一度想像をしてみて欲しいのです。

日本のパラグライダー人口は、諸説ありますが 7千人と言われています。

仮にこの先、PARAWORLDWEB が有料での記事販売を始めて日本のパイロット全員が 100円/月の購入をしたとしても、70万円/月の売上規模。

対価を支払い PARAWORLDWEB の日本語記事を読むユーザー層は書籍版パラワールドの購買層と一致すると推測できますが、書籍版パラワールドの正確な実販売部数は不明....

ですが、一般的に web の情報に対価を支払わない慣習がいまだに強いことも含めて 7千人の日本のパイロット全員が購買する訳は絶対になく、良くて 購買者の割合(以下、「カバレッジ」と書きます)は 5% で 350人くらいでないかと想像します。となると、100円/月で月間売上 3.5万円の夜なべ内職レベルな売上規模。

驚異のカバレッジ 30% を達成しても 2100人で月間売上 21万円の日本の大卒新人給与なみ。(売上21万円なので、諸経費を差し引けば新人給与以下の所得ですよ。まあ、大卒給与も額面でこんなもので社保等々源泉徴収されるとあれですけど…)

単価を上げて売上を伸ばす選択肢はあるだろうけど、単価を上げれば購買者が減りカバレッジは下がるのが当たり前の結果。単価向上とカバレッジ低下の均衡点が、仮に1人当たりの単価100円/月の時より総売上があがる点だとしても、PARAWORLDWEB  月間売上高はたかが知れている。

仮に PARAWORLDWEB を google 等のオンライン広告の媒体とするとしても、もしくは仮に youtube チャンネルとして google から広告収入を得たとしても、そもそもが 7千人の市場を相手にしていたら、チャンネル登録者数も視聴数も限られ大した収益とならないことは間違いありません。

更に言うと、最近の一般的なオンラインメディアは、オンライン広告がウザすぎるので、できればオンライン広告の媒体となって欲しくない。

PARAWORLDWEB  は、もっと大きな市場を目指して英語記事を作ってもよい訳ですが、そこは Cross Country Magazine 等の老舗をはじめ、既存の英語メディアとの競合が待っている市場でしょう。

中の人は、過去に書籍版パラワールドにも関わっていたキャリアであるため、そんなことは当然わかってやっている訳です。

4.魂入ってる

にしては、です。
にしては、Web サイトの作りがスタート時点としてきっちりとできており魂が感じられます。

スタート時点で、多数の記事があり。個人のブログ等ではなく、キッチリとメディアの体裁となっていました。中の人は1人で立ち上げたはずなのですが、にしては、質が高いのです。

オンラインでメディア的立場でブログでの情報発信する際には、「まずは、自分・自社の専門分野で100記事作る」という行動指標がスタートを成功させるための KPI とし挙げられることが一般的です。これを達成する勢いを十分に感じられるスタートでした。

更に、Web 制作の経験がある方や SEO を知っている方ならわかっていただけると思うのですが、サイトの HTML のソースコードを表示すると、Metaタグ がきっちりと記載されています。

Metaタグは、ザックリ言うと、google 等の検索エンジンに「消費者が、このキーワードで検索をしたときに、ウチのこの HP を表示してね」と機械的に伝える(アピールする)ために Webサイトの中に記載するものです。

SEO(上記のような、検索エンジンに見つけてもらい、検索時に上位表示させて自社 HPに集客をする施策) の基本の「キ」で HP制作時にはやって当たり前ではあるけど、大枚はたいて「集客に強い」と唄う Web 制作会社に頼んで、こんな設定すらもされていないコーポレートサイトが納品されているのを見ることがしばしばあります。

私は Web 制作も SEO 対策支援も仕事にしていませんが、コンピュータなら一般の人には皆同じなので、そんな事業主の方から「検索エンジンで自社名を検索しても出てこないんんだけど...」と相談されてボランティアで対応するなんてことはよくある話。

昨今、最大手である google 検索が死んだ言われる時代とはいえ、競合もほぼいない自社名で検索をしてトップ表示されなかったら、事業としては HP 制作をした意味なんてほぼゼロ。依頼主である事業者の依頼内容や依頼の仕方の問題なのか Web製作事業者の仕事の問題なのかさておき、この障壁を乗り越えらないケースが多々あります(もちろんそれでも、商品やサービスやビジネスモデルが素晴らしく、立派な事業を営まれていることも、事業が成長することも多々あります。でも HPは目的通り機能しない。)。

PARAWORLDWEB  は、スタートからそんなハードルは軽々と乗り越えみせました。

中の人は「初めて HPつくった。吐きそう。」と言っており、基盤としてつかっている CMS の Wordpress(記事を書いたり管理するためのソフトウェア) を触るのだって一苦労だったはず。

仮に「いや、インストールと設定は他の人にお願いしたんで...」とか「ノンカスタマイズでテンプレートとプラグインの設定をしただけなんです」ってだけだとしても、一般的にそんなに簡単なことではないのです。SEOの技術的な観点や設定だけでなく、タグ内に書かれているワードや文面だって、きっちりと考えられたものになっています。中の人に魂がなければできません。

PARAWORLDWEB、市場規模に見合わぬ魂が入ってる。

5.その時が来たら、PARAWORLDWEB の魂をパイロットに救ってほしい

大して話をしたこともないので、私は、中の人がこの後どうするのかはわかりません。ですが、記事や動画をみていても、PARAWORLDWEB   は決して貴族の遊び的に作り続けられる質でも活動でもないことは確かです。

チラっと耳にした限り、PARAWORLDWEB   とは関係なく最低限、生活基盤となる環境はあるのだろうとは思います。が、対価が得られなければこの質での PARAWORLDWEB   は続けられないと思う。

いつか、昨今の Web では当たり前な「投げ銭」や「この先は有料」っていう記事販売、あるいはサブスクリプション契約での記事販売をするかもしれない。(あくまでも、私が勝手に心配して妄想しているだけです。中の人がどうするかわからないので悪しからず。)

私は、普段、情緒的な言葉や表現があまり好きではありません。耳障りが良いだけで何の解決にもならん上に、公私の公の立場で言うにはとるに足らないお気持ち表明か、陳腐な煽動であることがほとんど。

が、あえて書くと、将来機会が来たら、中の人が込めた、この日本語のパラグライダー専門メディアである PARAWORLDWEB  の魂を日本のパイロットが救ってあげて欲しいのです。

書籍版パラワールドがそうであったように、もしかすると将来 PARAWORLDWEB   も、マニュファクチャーやインポーター、あるいはスクールの広告を収益事業として始めるかもしれません(あるいは、アパレルや車の広告も)。

それはそれで、中の人の事業判断なので勝手にやって頂ければよい。専門メディアはあった方がパラグライダーに関わる全員にメリットがあるし、経済的に最低限回るか潤わない限り継続も発展もなく、上に書いた通りの小さな市場で事業として成立するのは1つくらいなもののなかこの質で先陣をきって立ち上げられたのだから、頑張っていただきたい。

でも、仮に PARAWORLDWEB   が何らかの広告収入を得られる状況となっても、パイロットが対価を払いメディアを支え、消費者としてメディアに意思を示せるようしておくこと、そしてそのメディアが健全に成立していることが、結局のところパイロット自身が最も幸せとなる文化を育む地味に重要なポイントになるのではないかと感じています。

だから、PARAWORLDWEB  がまず継続できるように、そして将来のパラグライダー文化のためにも、「有償」に踏み切った際にはいちはやく早く日本のパイロットがささえて欲しい。そんな思いを PARAWORLDWEB  について抱いています。

という訳で、今回はやや情緒的な内容でした。煽動を目的としておらず、赤裸々な思いの丈の発表なので、悪しからずです。は、お気持ち表明ではあります。

6.蛇足:自分語り(専門メディアがなくなると何が起こるのか)

少し自分語りをすると、私は、以前 UNIX という種類の OS で動くコンピュータを販売する企業に勤めていたことがあります。パラグライダーのパイロットの皆さまも昨今は LINUX というOSがインターネットを支える基盤となっていることをご存じかと思いますが、インターネットバブル当初はインターネットの基盤といえば UNIX であり私の勤めていた企業のサーバー製品とプログラミング言語を選択することが一番という時代がありました。

そのようなバブル的な時代前から、「UNIX Magazine」という OS の専門雑誌があり、会社のマーケティング部門の担当者が仕事をしていたのだとおもいますが、勤めていた会社名を冠した「xxx World」などという専門雑誌も販売されており、技術的なマーケティングから商業的なマーケティングまでメディア媒体として一定の役割を果たしていました。既にインターネットは世の中ありましたが、スマートフォンの登場により誰もがネットに繋がる前の時代であり、書籍はより大きな役割を果たしていたと言えます。

UNIX が LINUX 等に駆逐され市場と会社が縮小していくにつれ、このような専門雑誌がつぎつぎと廃刊になり、縮小する会社からの限られた情報発信だけとなることで、ユーザーに情報が加速度をついて浸透しなくなっていきました。そして、最後は全くマーケティングが行われず誰にも名前すら全く知られていない新しい技術・製品・サービスの新規事業の立ち上げにかかわり苦労した経験があります。最終的に所属していた会社は、自分が企業提携の担当をしていた業績好調な会社がふんだんな予算をかけて行う技術的なマーケティングに敗北し競合する技術が全く市場で通用しなくなったあげくこの企業に買収され(当時「企業提携は、机の上で握手しながら下では蹴りあう行為」と教えてくれた方がいます。その表現を借りるなら、蹴り殺されました。グローバルでの会社の動きと市場趨勢の結果であり末端の私になにができたのかという感も、組織の問題も憤りも感じはしますが、仕事として大敗北の経験です。)、会社を辞めた 10年後には私が所属する会社の UNIX だけでなく、UNIX という種類の OSの市場自体がほぼなくなったという経験があります。

企業用の製品を販売していたため、パラグライダー業界とはやや異なる環境とはいえ、専門メディアが無くなるという事態で何がおこるかは想像しやすく、メディアがなくなるという事態に私はやや敏感です。

専門メディアとマーケティング、大事。

我々のような事業者だけでなく、パラグライダー愛にあふれるパイロットの皆さんも、これ以上、日本のパラグライダー市場が小さくなるのは望む状況ではないと思うのです。なので、PARAWORLDWEB に期待しているし、パイロットの皆さまにも温かい目で見守って頂きたいと思っています。

※ Solaris がアップデートされないのはさておき、プロプライエタリな UNIX 市場、決してなくなっていません…更には現在の Mac OS は BSD系 UNIXを基に開発されており、iOS はそのカーネルを共通にしており、その意味でも UNIX は決して無くなっていません。が、ややこしいのでここでは触れないことにします。UNIX Love な方、目くじらを立てないでくださいませ。

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