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ネイルサロンの憂鬱

先日訪れたネイルサロンで感じたもやもやと、そこで考えた、「速い」という顧客価値のこと。

「安くて速い」ネイルサロンのこと

一時期、ジェルネイルサロンに通っていた。
どこのお店でも、だいたい3週間〜1ヶ月に一度はメンテナンスに通う必要がある。自分の中での予算はだいぶ限られていた。
低価格のお店になると、おのずとシステマチックになる。
そのお店は予約時間もデザインもあらかじめアプリで登録しておくというシステムだった。

お店では、担当のネイリストさんがほぼ無言で
わたしの爪をものすごいスピードで塗っていった。
会計時、そのネイリストの方とその上司であろう方との雑談が聞こえた。
どうやら、そのネイリストさんは仕上げるまでのスピードの早さを上司に高く評価されたようだった。


顧客にとっての「速い」の価値とは

さて、前述のサービスを受けて、わたしの満足度は高いものではなかった。

・実は「速く」ない
 第一に、ネイルの仕上げは早かったが、わたしの来店から退店までにかかった時間は案外に短くなかったのだ。

というのも、 来店すると同じ予約時間とおぼしき女性客が既に数名待っていた。一人ずつ名前が呼ばれ、デザインと色の最終確認をする。
私の一つ前の女性は色の変更でとても悩んでおり、私はその間その話し声を聞きながら待っているしかなかった。
また、ジェルネイルサロンでは塗り始める前に、付いていたネイルをオフし、地爪の長さと形を整える工程がある。
そのときお店は混雑していたのであろう、3人の担当者が入れ代わり立ち代わりそれらの前工程を途中まで施し、次の担当者が来るまで待たされた。

「速い」ことはきっと顧客の価値になる。でもそれを測るなら企業目線でその担当者の仕事のスピードを測るのでなく、顧客目線で来店から退店までの時間を測るべきだ。本当に顧客がそのサービスを受けるのに要した時間的コストについて考える必要がある。

 ・忙しい人に寄り添っているか
「速さ」を必要とする人は、自ずと「忙しい人」である。忙しいということについて少し考えてみたい。
忙しい人とは、例えば仕事の拘束時間が長い人。スケジュール表が真っ黒で隙間がない人。好きなことのできる時間が限られる人だと思う。

忙しい人のニーズに合わせる場合、前述の通りサービスの一部の工程が速いだけではもちろんだめだ。当初想定した時間にお店を出られない可能性があるなら、後に予定を控えている人は予約を入れにくい。そもそも仕事の拘束時間が長くて遅い時間でないと来店できないのかもしれない。ぱっと空いた時間ができたとき、予約なしに来店するほうが都合が良いのかもしれない。

こうした色々なケース全てに応えることはもちろん難しいけれど、
自分の顧客は、本当などんな人で何を必要としているのだろう?これは考える余地がある。

サロンで過ごす時間=「自分のための時間」だから。

低価格のお店にこれを求めるのはわがままかもしれないけれど、私が個人的にサロンに求めているのは速さより、居心地の良さである。

ネイルサロンにおいては施術中手先が使えなくなるので、雑誌も読めないしスマホもいじれない時間を退屈させないお店側の工夫があると、とてもうれしい。
予算を奮発してウェディングのためのネイルをお願いした別のお店は、
どの担当の方も施術中はずっと話しかけてくれて、手先が使えない不自由を感じなかった。
時間は思いのほかかかったが、かえって「丁寧にやってくれた」という気持ちになったし、ある意味黙って仕上がりを待つよりは「短く感じた」。

「安い」「速い」はどんなサービスにおいても価値になる。
でもサロンのように「その人のための時間」になりえるサービスは
「速い」が「機械的になされた」「雑になされた」という印象にすり替わらないような工夫がないと、いつか淘汰されてしまうのだと思う。

ジャリ銭投げてくれたらうれしいです!