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科学系コンテンツを作る人におすすめ『なぜ科学はストーリーを必要としているのか』

科学のお話は、多少なりとも多くの人が気になっているところ。

そして、書き手のほうもなんとか興味をもってもらおうと努力している。

しかし、実際にできあがる文章の多くは事実の羅列になり、読むのが退屈になってしまう。

したがって、事実の羅列ではなく、ストーリーを構成してワクワクする文章に仕上げることで、より多くの人に読んでもらえるようになる。

* * *

本日紹介する本は、ランディ・オルソン『なぜ科学はストーリーを必要としているのか』です。

想定する読者は、研究予算申請書を書いたり一般向け講演をしたりする研究者ですが、ライター(特に科学や技術関係の分野)が読んでも価値あるものです。

* 1 *

科学関係の文章は、どうしても正確性を重視するために事実の羅列になりがち。

もちろん、それはそれで重要です。正確性が担保されていない文章は読者を混乱させ、さらには誤解をさせる可能性すらあるからです。「盛った」プレスリリースや新聞記事は嫌いです。

でも、事実をられるしただけの文章は波がなくて退屈になってしまう、と思い当たる節があると思います。僕はあります。

だからこそ、読者が退屈にならないよう、つまりは自分の考えが相手に伝わるよう、文章の構造を意識したものを仕上げる必要があるということです。

* 2 *

本で取り上げているのがABTテンプレート。And(そして)、But(しかし)、Therefore(したがって)という語句を使って文をつなげることで、盛り上がりを作ることができます。最初に準備、And(そして)で事実をつなげ、But(しかし)でストーリーを大きく動かす、最後にTherefore(したがって)で解決法や結末を書くというテクニックです。

例えば、この記事の最初の文章は、このテンプレートのままに書いたものでした。

科学のお話は、多少なりとも多くの人が気になっているところ。
そして、書き手のほうもなんとか興味をもってもらおうと努力している。
しかし、実際にできあがる文章の多くは事実の羅列になり、読むのが退屈になってしまう。
したがって、事実の羅列ではなく、ストーリーを構成してワクワクする文章に仕上げることで、より多くの人に読んでもらえるようになる。

だからといって、大風呂敷を広げて過度な演出をすればいいというものではありません。あくまでも「正確性が担保されたうえで、より読みやすくするような工夫」です。

そのため、ABTテンプレートは、正確性が要求される科学の分野だからこそ活用できるテクニックといえます。

* 3 *

この本の問題があるとすれば、300ページ超えとなかなかの大作であるところ。書店で手に取ると怯んでしまう可能性があります。

さらに、所々に個人的なエピソードが挟まっていて、忙しい人こそ読むのが面倒になるのかもしれません。

でも、ぜひ読んでほしい本です。

そこでおすすめなのが、4部に分かれているうち、テクニックが書かれている3部だけでも先に読むこと。あとは、所々になる図を見るだけでも参考になります。

* 4 *

この本を読んだ結果、ABTテンプレートを試してみたくなると思います。

なので、この記事の「* 数字 *」の中はすべてABTテンプレートにしたがっています。少しくどいと思うところもありますが、悪くなさそうです。本書でも、繰り返し構造、フラクタル構造のことが書かれています。

しかし実は、「* 数字 *」の中だけでなく、記事全体がABTテンプレートになっています。
「* 1 *」で準備
「* 2 *」でABTテンプレートという事実
「* 3 *」で「この本の問題があるとすれば」と書き出して順調な路線から少しはみ出すこと
「* 4 *」で実際に試した結果

したがって、構造を意識する文章を書くのは大変だけれども、かなり役に立ちそうだ、ということを身をもって知ることができたわけです。

* * *

日本には「起承転結」という論理展開があります。これとABTテンプレートを合わせると、「(起)。そして(承)。しかし(転)。したがって(結)」となります。ちょっと接続詞を意識するだけでも、読者を丁寧に案内できるはずです。明日からのゲンコォでがんばりましょう!

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